問題児たちが異世界から来るそうですよ? ~無形物を統べるもの~
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The PIED PIPER of HAMERUN 一時中断
「おーい!飛鳥ー!どこだー!?」
一輝は大祭運営本陣営の宮殿で飛鳥を探していた。
一時中断した後に六実姉妹と合流して帰ってくると、耀が飛鳥を探していたので、一輝も手伝うことにしたのだ。
六実姉妹はケガ人の手当てなどを手伝いに行っている。
「いねえな、飛鳥。あのプライドの高い飛鳥が疲れて倒れてるとは思えないし・・・」
もし、倒れそうだとしても無理をするやつだという認識のようだ。
「可能性としては・・・捕まった?あいつのギフトは格上には効かないし。身体能力もな・・・」
一輝がそんな思考を重ねていると、耀とアーシャが話をしているのを見つける。
「じゃあ、私は行くぞ。」
「うん。ありがとう。」
二人が話を終えるのを見計らって、一輝は耀に話しかける。
「お疲れ様、耀。」
「あ・・・一輝。お疲れ。どうだった?」
「あいにく、こっちにもいなかった。見かけたって人もいなかったな。」
「そう・・・飛鳥、どこに行ったのかな・・・」
そんなことを話しながら、ふらふらとゆれる耀。
目の焦点も合っていない。
「私、もう一回探して・・・」
ゆれ幅がどんどん大きくなっていき、言葉の途中で倒れる。
「お、おい!大丈夫か!?」
一輝は、慌てて倒れる耀を途中で受け止め、声をかける。
いくら声をかけても全然反応が無いので、額を触ってみると・・・
「わっ、凄い熱だな・・・このタイミングで熱ってことは・・・」
一輝は耀の腕などを見て、あるものを探す。
そして、一輝に有ったのとほとんど同じ位置に、それを、黒い斑点を見つけた。
「やっぱりあったか・・・。鳴央たちも、高熱を出して倒れる人が多いって言ってたし、同じ症状だろうな。」
一輝はDフォンを取り出し、鳴央に電話をする。
「もしもし?」
「鳴央か?俺だ。耀が熱を出して倒れた。病室を一部屋、準備しといてくれ。」
「解りました。隔離部屋の個室を一部屋、準備しておきます。」
「よろしく。」
一輝は電話を切り、音央にいくつか食材と、薬草や霊草の類を準備しておくよう、メールでリストを送って頼むと、耀を抱えて隔離部屋へと歩き出した。
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一輝は耀を運んだ後、鳴央に止められたのを無視して、耀が眠る別途の脇で頭を抱えていた。
「さて・・・飛鳥は行方不明だし、耀は倒れるし、しかも原因が黒死病って・・・」
一輝の心は絶望の連鎖中である。
もうあと少しでばよ○ーんである。
「しかも、このルールは無いだろ。いくら仕方がなかったといえ・・・」
「どんなルール?」
「うわ!!」
一輝は、すっかり寝ていると思っていた耀が話しかけてきて、思いっきり驚く。
絶望の連鎖がば○えーんに達していたのも原因の一つかもしれない。
最大連鎖、おめでとう。
「そんなに驚かなくても・・・」
「いや、寝てると思ってたやつが急に離しかけてきたら驚くだろ・・・
おきてて大丈夫なのか?」
「うん、大丈夫。おなかがすいて起きたくらいだし、大丈夫だと思う。」
「ハハハ・・・耀らしいな。おかゆ作ってくるから食べながら話そう。」
そういって一輝は部屋から出て行こうとし、扉に手をかけたところで振り向く。
「言い忘れてたが、耀は黒死病にかかってるから、おとなしくしとけよ。」
「え・・・黒死病ってたしか・・・」
耀が何か思い出そうとしているのをみて、一輝は厨房へと向かう。
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「たしか・・・ここが厨房だったよな。」
一輝はなんとなくそれっぽいところに向かい、扉を開く。
「おじゃましま~す。」
「あ、一輝。頼まれたものは準備しといたわよ。」
そこには音央と一輝が頼んだ食材、素材、それに調理器具もあった。
「ここにあんたが来たってことは、耀ちゃんは目を覚ましたの?」
「ああ。おなかがすいたって言ってたからおかゆを作りに来た。」
「耀ちゃんらしいわね・・・。あんたのほうは、あの部屋にいて大丈夫だったの?」
「問題ない。いっただろ?俺の中には出来たての黒死病の抗体があるって。」
「いまだに信じられないんだけどね・・・。まあいわ。私は鳴央の手伝いに行くから。」
「了解。これ、ありがとな。」
「私はサラマンドラの人に頼んだだけ。気にしなくていいわよ。」
そういい残して、音央は厨房から出て行った。
「さて・・・おかゆを作りますか。」
一輝はおかゆの材料以外をギフトカードにしまい、おかゆを一人分作ろうとしたところで、量を五倍に変更した。
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「おかゆ出来たぞ、耀。」
「・・・なんでその量?」
一輝が持つおぼんには土鍋が五つのっていた
「普段の耀の食べっぷりを見た結果だ。全部味は違うから、飽きは来ない・・・と思う。」
一輝は土鍋の一つから少しおわんにとり、耀に渡す。
「さて、じゃあ質問タイムと行きますか。何が聞きたい?」
「ハム、モグモグ・・・。さっき黒死病って言ってたけど、それって敗血症の? 」
「それで合ってるけど。」
「一輝はここにいて大丈夫なの?」
「問題ない。おれはもう、その病気にはかからないからな。」
「?それって・・・」
「その辺の説明は後にさせてくれ。たぶん、他の質問にいけなくなる。」
「・・・解った。それはあとでいい。」
耀は気づいたらおわんを空にして一輝のほうに突き出していた。
いつの間に食ったんだ・・・。
「はい、どうぞ。」
「ありがとう。次の質問だけど、審議決議の結果はどうなったの?」
「はい。これが最終的な“契約書類”。」
一輝は黒く輝く“契約書類”を耀に渡す。
『ギフトゲーム名“The PIED PIPER of HAMERUN”
・プレイヤー一覧
・現時点で三九九九九九九外門・四〇〇〇〇〇〇外門・境界壁に存在する参加者・主催者の全コミュニティ。(“箱庭の貴族”を含む)
・プレイヤー側・ホスト指定ゲームマスター
・ 太陽の運行者・星霊・白夜叉(現在非参戦のため、中断時の接触禁止)。
・プレイヤー側・禁止事項
・自決及び同士討ちによる討ち死に。
・休止期間中にゲームテリトリー(舞台区画)からの脱出を禁ず。
・休止期間中の自由行動範囲は、大祭本陣営より500m四方に限る。
・ホストマスター側 勝利条件
・全プレイヤーの屈服・及び殺害。
・八日後の時間制限を迎えると無条件勝利。
・プレイヤー側 勝利条件
一、ゲームマスターを打倒。
二、偽りの伝承を砕き、真実の伝承を掲げよ。
・休止期間
・一週間を、相互不可侵の時間として設ける。
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。
“グリムグリモワール・ハーメルン”印』
「こっちにとって有利だったり不利だったり・・・なんだか大変なルールになったね。」
「ああ。しかも、まだ謎解きの糸口もつかめていない。」
「まったく?」
「すくなくとも、俺が最後に十六夜にあった時点ではな。気になるんなら十六夜に聞いてくれ。」
一輝は言葉を切り、耀に問う。
「さて。もう質問は終わり?」
「まだ一番大切なことを聞いてない。どうして一輝は黒死病にかからないのか。」
「・・・もう他にないならいいか。それは、中断した辺りで黒死病にかかって、それをその場で治したから。ただそれだけのことだ。」
耀がとても驚いている。
自分の力でギフトによる病を治したといっているのだ。普通の反応だろう。
そこであることに気づいたように、身を乗り出す。
「私の黒死病もなおせる? 」
「悪い、無理だ。俺のギフトは他人の体の中には使えないんだ。」
「そう・・・。」
耀はあからさまにがっかりする。
《まあ、一つだけ方法はあるが・・・この方法はな・・・。》
一輝はその方法を封印している。
「じゃあ、他に私を治す方法はない?」
「・・・可能性がある方法は一つあるが・・・色々結構つらい上に、ゲーム再開までに治る可能性は2~3%。かなりおすすめはしない。」
「でも、治る可能性はあるんだよね?」
「ああ。」
「じゃあ、お願い。」
「・・・一応、メインの材料を伝えておくぞ。」
「何?」
「俺の血。これが半分以上を占める。」
一輝は言葉を切り、説明を始める。
「この方法に使う飲み薬は、俺の血にいくつかの薬草、霊草を混ぜて、俺のギフトでそれにある性質を・・・抗体を服用者の体内に吸収される性質を与えるもの。
量も結構あるし、副作用として、服用時にかなりの痛みを与える。」
こんなところだ、と一輝は言葉を切る。
「・・・・・・一輝はそれを作る際につらくはないの?」
「まあ、つらい。血を俺が生きれるギリギリまで使うからな。それでも、オマエが望むなら、俺に来るつらさはオマエが感じることになるものより楽だし、構わないぞ。」
耀は少し悩むようなしぐさをして、回答する。
「おねがい、私も皆の手伝いをしたい。」
「OK。今から作ってくるからちょっと待ってろ。」
―――――――10分後―――――――
「ハイ・・・完成・・・。」
ものすっごいフラフラになった一輝が日本酒の瓶に似た形の瓶に入れた薬を持って、かえって来た。
「一輝・・・本当に大丈夫?」
「・・・大丈夫・・・。死ぬことはないから・・・。」
とても信じられる状態ではない。
「それ・・・一気に飲んでもいいけど、死ぬことは絶対になくても、苦痛がバカにならないからお勧めしない。
でも、全部飲んだほうが治る確率は上がるから、うまいこと前日までに全部飲んだほうがいい。」
「うん。ありがとう。一輝は早く休んだほうがいいんじゃ・・・?」
「そうする・・・。おやすみ、耀。」
「うん。おやすみ、一輝。」
そう会話を交わして、一輝は部屋を出て行く。
「さて・・・全部飲んだほうが効率は上がるって言ってたよね。」
耀は一輝の忠告を無視して、瓶の中身を一気に飲み干した。
後書き
久しぶりに3000字を超えた。
結構疲れる・・・
では、感想、意見、誤字脱字待ってます。
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