問題児たちが異世界から来るそうですよ? ~無形物を統べるもの~
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The PIED PIPER of HAMERUN ①
「魔王が・・・魔王が現れたぞオオオオォォォォォ!!」
一輝が“契約書類”を読み終えるのとほぼ同時に、白夜叉の全身を黒い風が球体に包み込んだ。
「な、何!?」
「白夜叉!!」
一輝が黒い風を操ろうとするが、一切操れず、むしろ風は勢いを増し、白夜叉を除く全ての人間を一斉にバルコニーから押し出した。
「「きゃ・・・!」」
「音央、鳴央!」
空中に投げ出された一輝は水を足元に送り、同じように空中に投げ出された二人を確保して着地する。
横を見ると、十六夜が飛鳥を抱えていた。
「二人とも、無事?」
「ええ。」
「ありがとうございます。」
二人の無事を確認した一輝は、十六夜たちのところに合流する。
「魔王が現れた。・・・そういうことでいいんだな?」
「YES。」
黒ウサギの言葉に、メンバー全員が緊張を見せる。
「白夜叉の“主催者権限”を破られた様子はないの?」
「ありません。黒ウサギがジャッジマスターを勤めている以上、誤魔化しも利きません。」
「じゃあ、むこうはルールに則ったままここに現れているの?」
「いったいどうやって・・・。」
メイド二人がそんなことを考えているが、今はそれどころじゃない。
「二人とも、考えるのは後だ。」
一輝は十六夜のほうを向き、自分達の受け持つ役割を伝える。
「俺達は観客の避難誘導をしてくる。この中で一番、臨機応変に動けるのは俺だからな。」
「ああ。まかせた。」
一輝はメイド二人を連れて、避難誘導に向かう。
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「全員落ち着いて動け!無駄にあわてるとかえって遅くなるぞ!」
一輝が声を張り上げるも、誰も聞く気配が無い。
一輝はあきれ返って、Dフォンを取り出す。
「音央、鳴央、作戦変更。無力な女子供を優先的に助けろ。そいつらさえこの場から抜ければ、残りのやつらは勝手に逃げてくれる。」
「了解!」
「分かりました!」
二人の返事を聞いてから、通話状態のままでDフォンをしまい、ギフトカードを取り出す。
「式神展開!“攻”ならびに“防”!」
そして、ギフトカードの中にある“功”“防”の式神を全て展開する。
「汝らに命ずる。今、この土地にいる無力なるものを助けよ。安息の地に運びたまえ!」
式神たちは命令に従い、小さな子供などを抱え、安全なところへと運んでゆく。
「後は勝手に逃げてくれるだろうし、護衛にてっするか。」
と言い振り返ると、後ろから黒い霧がこっちに向かってくるのに気づいた。
「このパターンで、あれがなんでもないってことは無いよな?」
絶対に無いと言えるだろう。
《だよな!》
相変わらず、こっちの文に介入してくるな、コイツは・・・
《さて・・・今回のあれは、病魔の類っぽいし・・・》
一輝は、今回の相手が魔王であることを思い出し、お札を十枚手に持ち、三十枚ずつを両方のポケットにしまうと、手持ちのお札を掲げて、唱える。
「禍払いの札よ、この場に在りし病魔を喰らい、平穏をもたらさん!願わくば、すべての死を喰らいたまえ!」
一輝の言葉に反応し、お札が黒い霧を吸い込んでゆく。
だが・・・
「うそっ!こんなに速いペースで!?」
始めてから十数秒で、十枚全部が使用不能になり、崩れ落ち、一輝がもろに黒い霧を浴びる。
「マズイ、マズイ!!」
慌ててポケットに入れてたのを全部掲げ、ギフトカードから千枚を取り出し、足元につむ。
「さて・・・全力でいかないと飲み込まれそうだな。」
一輝は吸い込むスピードを上げさせ、一切取りこぼしが無いようにする。
「・・・早くだれかが、これを止めてくれないかな・・・。」
そろそろ積み上げておいたお札が切れそうである。
と、そのとき・・・
「“審判権限”の発動が受理されました! これよりギフトゲーム“The PIED PIPER of HAMERUN”は一時中断し、審議決議を執り行います!プレイヤー側、ホスト側は共に交戦を中止し、速やかに交渉テーブルの準備に移行してください!繰り返します――――――――」
という黒ウサギの声とともに黒い霧は消えた。
「ひゃー・・・。あんなに有ったお札がもう一枚も残ってない~・・・。」
かなりのピンチだったようだ。
一輝はそのまま座り込み、服の袖で額を拭うが・・・
「ん?何だこれ?」
腕に黒い斑点があるのを発見する。
「こんなのは今まで無かったし・・・ってことは、これはあの黒い霧の影響?」
こんな状況だというのに、冷静に判断する一輝。
そのまま、冷静に対処を開始した。
《とりあえず、自分の中の免疫反応を強制的に底上げして・・・あと、自分の中の邪も払っておいて・・・》
その他もろもろのことを、二つのギフトを同時に使うことによって対処し、まだ正体すら把握していない、自分の体内の異物を全て取り除いた。
おまけで、一輝の体内にこの病気(?)に対する抗体が出来たが、これを他人に与えるにはいくつか面倒なことをしないといけないので、使うことは無いだろうと、一輝は思っていた。
思っては、いた。
後書き
こんな感じになりましたが・・・相変わらず十六夜たちの影が薄い・・・
というか、一輝以外のキャラの出番が少ない・・・
では、感想、意見、誤字脱字待ってます。
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