転生者が歩む新たな人生
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第27話 学年末試験の顛末
前書き
前回勘違いしてましたが、この世界では隔週で土曜日は授業があるようです。
第26話を修正しました
土曜日だが、授業がある。当然朝のホームルームも。
本来学校を無断欠勤しているネギの代わりは、副担任である源先生がするべきであるが、関係各所に頭を下げて事態の収拾に動いているので、2-Aのホームルームを任されてしまった。
出欠席の確認後、寮でほとんどの生徒には説明したが、一部いなかった生徒もいるので改めて説明する。いや、説明させる。
「早乙女と宮崎、前に出て説明しろ」
昨日からむかついているので、つい言葉も荒くなる。
おどおどしつつ宮崎が、わかっているのかいないのか楽しげに早乙女が、一連の行為の説明をする。
「この2人は事態をしっかりと把握していないようなので、捕捉しておく。ネギ・スプリングフィールド教育実習生と先程宮崎が挙げた6名の計7名は、昨晩、公共施設である図書館島の、開館時間外に、図書館探検部が補完していた鍵と地図を用いて、不法侵入し、中等部生の禁止区域に入り込み、「魔法の本」なるものを無断拝借しようとし、消息を絶った。ちなみに無断拝借とオブラートに包んでいるが、実質、計画的窃盗な。ここにいる早乙女と宮崎も含めて、良くて停学、悪いと退学も含めて処罰を検討している最中だ。なお、学園長が図書館島の司書長を通じて7名の身柄を確保できると断言しており、怪我等はなく元気にしているらしい」
「「「「「えぇぇぇぇぇーっ!?」」」」」
気持ちはわかるが、うるさい。
「それから、色んな噂が流れてるみたいだが、変な噂を信じてお前らも暴走すんなよ」
まぁ、少なくとも2-Aのクラス解体は只の噂ではなく、職員会議の議題に上がっている根拠のある噂だが。
「サギ先生。ネギ先生はどうにかならないのですか? きっとアスナさん達バカレンジャーに唆されたのに違いありませんわ」
「雪広~。よーく考えてから発言しろ。ネギ・スプリングフィールド教育実習生が唆されること自体がおかしいだろう。というか、止めなきゃいかん立場だろうが。それができん時点で処罰が降りる立場と言うことなんだよ」
「そ、そうですか………」
本来、雪広あやかという生徒は賢い生徒なワケで、ネギの立場を理解するが故に言葉が詰まる。
ちなみに具体的な処罰が告げられてやっと自分の置かれている立場が理解できたのか、早乙女の顔は真っ青になり、宮崎は今にも倒れそうだ。
「何にしろ、月曜日には期末試験だ。悔いの無いようしっかり勉強しておけ」
そう言って2-Aのホームルームを終わらせ、職員室に戻り、次の授業の準備をする。
なお、他のクラスでも話題になっているようで、授業の終わりにやっぱり聞かれた。
☆ ★ ☆
司書長とやらと連絡が着き、皆無事だと言うことで警察には帰ってもらい、その後、ネギ達7人が図書館島のエレベーターから出て来た。
新田先生を始め、怒り心頭の先生達のお出迎えだ。
一目見てネギ達の脳天気さがわかった。
何もわかっちゃいない。ひいき目に見て木乃香が恐縮しているぐらいか。だが、その木乃香も自分達が何をしていたのか理解してないな。
「無事で良かった。だがお前ら、自分が何をしたのかわかっているのか?」
もしかして事件後一睡もしていないのか?
酷い隈の新田先生が話し出す。
………。ダメだ。何もわかっちゃいない。
心労で新田先生が倒れてしまわないか心配だ。
懇々と新田先生に説明され、やっと自分達が世間的に見て窃盗未遂の不法侵入者とわかったのか、皆顔面蒼白だ。ネギにいたってはうつむいて涙をこぼしている。
泣いて許されるもんじゃないが、泣くことしかできんのだろう。
ただ、「これじゃぁ、立派な魔法使い(マギステル・マギ)に………」とかぶつぶつ言ってるので、悪いことをしたことを悔いているのではなく、立派な魔法使い(マギステル・マギ)への道が閉ざされたと思って泣いているのかも知れない。そうだとしたら本当に救いようがないが。
「時期が時期なので、彼女らの処分は明日からの期末試験が終わってから話し合うことにしましょう。とりあえず、それまでは自室学習するということでどうでしょうか?」
替わる替わる先生がお説教をした後に、1人の先生がそう提案してきたので、とりあえず、この場は解散となる。
ネギをフォローしようと出張って来た学園長もさすがに何も言えんかったようだ。ここにいる先生達の怒りが想像以上だったんだろうな。
当たり前か、勉強もせずに「魔法の本」を頼って周囲に迷惑をかけるなんて、「先生」をあまりにも馬鹿にしてる。
その晩、木乃香から念話があったが、図書館島に潜った生徒達は皆一心不乱に勉強しているらしい。
さすがにあれだけ説教されれば、自分達の立場もわかるらしい。まぁ、宮崎や早乙女から潜っていた間の様子も聞いたらしいしな。
明けて月曜日。期末試験開始である。
オレは副担任と言うことでクラス固定ではなく、各クラスを順に見て回る仕事だ。
今回の事件に関わった8人の生徒には2-Aとは別の特別教室で試験を受けてもらう。実質、停学者の試験救済扱いである。監督官は新田先生が名乗り出た。
見て回った際、木乃香を除く7人が徹夜明けなのか、コンディションが最悪で今にも寝そうなのが一目でわかった。
次の教室に行こうとすると、密かに応援したいのか、こそこそと中を覗いているネギを見つける。
さすがにこれを咎めるのは無粋かと見て見ぬ振りをして行こうとすると、おもむろにネギは【覚醒】の呪文を唱え出す。この呪文はいわゆる眠気を消し目を覚まさせる呪文だ。どうやら、最悪のコンディションの生徒達に力を貸したいらしい。
………。
ダメだ、コイツ。
気持ちはわからないでもないが、魔法で手助けしようなんて何考えてるんだ?
何も考えてないんですね。
魔法の秘匿云々もあるが、それ以前に同条件で受けなければならない試験を一部の生徒だけ贔屓するとかありえんわ。
呪文が完成する直前に特別教室に魔法封じの結界を展開し、阻害する。
魔法が失敗したのがわかったのか、きょろきょろ周りを見回し、オレが邪魔をしたのに気付く。
ばつが悪そうにこちらを見るかと思ったら、「なんで邪魔をするの!」と詰め寄って来る。
「もういい、黙れ」
相手にするのも馬鹿らしいし、他のクラスも見て回らないといけないので、そう言って学園長室へネギを連れて行く。
学園長と話しをする時間も惜しいので、「試験中の生徒の手助けをするつもりで【覚醒】の呪文を使おうとしたのを現行犯で捕まえました。説教と処分をお願いします。では。」と告げて出て行く。念のため、学園長室にサーチャーを入れ、事の成り行きを観察しておく。
最初ネギはオレのことをどんなに酷いか学園長に訴えていたが、学園長でもネギの話しを聞く内にどういうことかわかったようで、長い頭を抱えてしまう。
ご愁傷様です。
良い機会と思ったのか、魔法の秘匿や私見に寄らない公平性について、懇々と学園長はネギを諭す。
なんか、学園長の教育者らしい態度を初めて見たな。
まっ、無駄にならないと良いけどなぁ。
そう思いつつ、仕事に集中することにする。
☆ ★ ☆
3日間かけておこなった期末試験も終わった。
各々採点作業を終え、先生方は一息の休憩を取る。
もちろん、問題なのはこの後だ。
図書館島における一連の事件の処罰を確定しなければならない。
ネギ・スプリングフィールドの件もあるので、職員会議の前に事前に魔法先生方が集まって協議することになった。時間も無いので、学園長の持つ10倍速のダイオラマ魔法球内で協議することになった。
ことがことなので、女性の先生方も何も言わず、協議が始まった。
学園長はあくまでも今回の件のみで話し合い、最終的には「子供のしたことじゃから」と言って収めようとしたようだが、一部の先生から「惚れ薬の件(図書室破壊も含む)」や「授業中の野球拳」などの疑問が噴出し、「ふぉぅ?」とか焦っていたようなので、ドロブネという助け船を出してやった。
つまり、オレが把握していることを全て話した。
「くしゃみで魔力を暴走させ服をはぎ取る」「魔法バレした時に何の説明もなく記憶消去しようとする」「それも失敗しパンツを消す」「相手の許可無く読心術を使う」「禁止されている惚れ薬を作り、集団パニックを起こし、図書室内の器物破損」「授業中に野球拳をしてストリップ」「図書館島に不法侵入し窃盗行為をするのを止めるどころか手伝う」「一部生徒のために試験中に魔法で手助けしようとする」などなど。
………。いやぁ、ろくなことしてないなぁ、ネギ。
おや、学園長が全てをバラされて口をぱくぱくしている。魔法先生達のほとんども呆れて口もきけないようだ。
こんなに酷いとは思ってなかったんだろう。
「卒業試験(日本で先生をすること)を中止すべきだ」「「英雄」の息子だぞ」「生徒のためにならん」「子供なんだから大目に見るべきだ」「その子供が先生をすることが卒業試験なんだぞ」「やはり子供に先生をさせるべきではなかった」「今更そんなことを言うな」「裸にされることぐらい何だ」などなど。
まさに議論百出。
感じ的に7対3ぐらいで、試験終了派が多いな。
意外だ。まっとうな考えをする魔法先生も多いんだな。
ちなみに「魔力暴走で裸にされるのが大したこと無い」なんて言う、「「英雄」の息子を大事に育てるのに些細なことなんて気にするな」という魔法先生には、「では、その意見をもう一度大きな声で女性の先生の前で言ってもらえますか。その後で裸にしてあげますから」と言ったら青い顔をして無言になった。
「ネギ君はまだ幼い。ここはそう、試験は一旦中止して小学校に通わせ、一般常識や倫理を学び直してもらうというのはどうだろう。その後、改めて先生をしてもらえば良いじゃないか」
ガンドルフィーニ先生が意外にもまともなことを言う。もっとガチガチな考えを持ってて、ネギを擁護するかと思ってた。
この意見は賛同者も多くオレも賛成したが、学園長は気に入らないようで、結局学園長の鶴の一声で却下となり、引き続き教育実習生をさせることになった。
議論をした意味がなかったと、かなりの魔法先生が不満を持ったようだが、その辺学園長はわかっているんだろうか?
☆ ★ ☆
一般の先生も交えた職員会議が始まった。
8人の生徒達は3日間の停学処分及び春休みの間の補習授業、部活動の禁止となった。警察沙汰になったこともあり、軽々に終わらせることもできず、このような処分になった。ここでしっかり修正しないと8人の為にならん、という危機感がほとんどの先生にあり、この辺はすんなり決まった。まぁ、3日間の停学処分を期末試験の3日間に充て、停学処分は記録に残るだけにしたのは甘いのかそうでないのか。
なお、神楽坂は、学生は学業が本分と言うことで、ある程度成績が上がるまで、バイトの許可を取り消すこととなった。
また、今回の件で図書館島及び図書館探検部の様々な問題が一気に表面化し、「仕掛けられた罠は危険じゃないか?」とか「探検しないと探せない図書館に意味があるのか?」とか「そもそもどんな本があるのか把握できてるのか」とか、今更感あふれる事態が問題となった。
結局、図書館探検部は無期限の活動停止となり、図書館島は地下3階より下は閉鎖することとなった。
また、夏休みから地上階の本を各学部へ移動させ、地上階及び地下3階までの本の全ての搬出が終了次第、大学部を中心として有志を募り、1階層ずつ本の搬出を開始することとなった。
図書館探検部に関わる先生以外がすんなり賛成したことで、この辺は直ぐに決まった。やはりどの先生も不便に思っていたようである。ちなみに魔法先生は地下階に必要な魔法の書物がある場合、この決定に関わらず、探索可能と事前に聞かされていたので、特に反対しなかったようである。
この件を告げた時、綾瀬が涙目で抗議してきたが、その根拠は結局「今まで許されてきた」「どうして今回だけ」の2点で、事実上根拠になっていない。
まぁ、気持ちはわかる。中等部から大学部、加えてOB・OGまで含めると何人になるのか知らないが、自分達のせいで、図書館探検部は事実上の廃部なのだから。
木乃香からも「どうにかならへんの?」と切々と念話で訴えられたが「問題を起こして問題を浮き立たせたお前らが悪い。自分の行動に対する責任感というのをいい加減学べ」と一蹴した。
これら以外にも根本的なところで、2-Aつまり将来の3-Aという外部受験もあり得る年になるこのクラスをどうするかというのも話し合われた。
ネギの担任という学園長の思惑が外れたことにより、話しが混沌化したのだ。
ぶっちゃけ誰も担任をやりたがらない。
本来副担任しか持てない先生がステップアップできるということで、自薦他薦があるだろうに。それでは、今他のクラスを担任している先生が3-Aを受け持ち、空いたところに副担任の先生がステップアップしてはどうかという意見も出たが、肝心の担任を持っている先生が3-Aへと動きたがらず没ってしまった。
なお、高畑先生が担任に返り咲くという意見は誰1人として挙げず、学園長も空気を読んだのか、言わなかった。
最終的に3-Aを解散して1人または2人ずつ割り振るかという結論が出そうになった時、「それだけはダメじゃ」と学園長が強権でごり押しした。「こういう前例ができてしまうと安直にクラスを解散するようになる」ともっともらしい理由を挙げたので一応皆納得したが、「そもそも毎回クラスを変えるようにすればいいんじゃね?」と気付いたが、黙っておいた。
結局成り手がいない3-Aの担任を、新田先生が学年主任を降格するカタチで就くことで落ち着いた。なんでも新田先生は、今回警察沙汰にまで大きくなった件のケジメをつけるため、辞表を出すつもりだったという。懐から辞表を出してそうおっしゃった。だが、3-Aの担任がどうにもならない故に、担任になることで辞表の代わりとすると辞表を破りながらおっしゃられた。
この火中の栗どころか業火の栗とも言える責任をあえてかぶろうとする、まさに教師の鑑である。
辞められなくって本当に良かった。
辞表の話しを聞いた時、どの先生もそう思ったらしい。
そして、そこまで新田先生を追いつめる原因(学園長と連絡が取れなかったこと)となった学園長に、厳しい目が向けられることとなったのは仕方のないことである。
なお、学園長は1年間の減棒30%となりました。
最後の最後に2-Aの試験の結果だが、停学組の1日目の居眠りなどもあり、最低記録を更新し、どちらにしろ今回の試験結果では、ネギの本採用はなかったと言うことだった。
後書き
というわけで、この作品内では3-Aの担任は新田先生が就任することになりました。
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