ドラクエⅤ・ドーラちゃんの外伝
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ドーラちゃんの脱出☆大作戦
明日のために!その一!
戦闘の経験を、積みましょう!!
と、言うことで、まだ幼くて村から出して貰えないドーラちゃん(五歳)としては、村内の洞窟に潜るしかありません。
魔物が出る洞窟を、村の敷地内に囲い込んでるのもどうなの?って話だが、そんなのは私の知ったことでは無い。
作戦一。
普通にお出かけ。
「サンチョ!おでかけしてきますね!」
「今日はお天気もいいし、お散歩日和ですね。おわかりだとは思いますが、村から出てはいけませんよ?」
「はい!どうくつに、いってきます!」
よいこは、行き先もお家の人に言っていかないとね!
「……いけません!怪我でもされたら、旦那様がどんなにお嘆きになるか!もちろん、このサンチョもです!!」
……まあ、そうなるよね!
「でも。おとうさんに、ひのきのぼうを、もらいましたから。だいじょうぶです!」
「それは、これから旅にご一緒される時の、護身用に準備されたんです!おひとりで洞窟に潜るなんて、とんでもない!!」
「……わかりました。」
ミッション、失敗!
作戦、その二。
黙ってお出かけ。
「いってきます!」
でもごあいさつはします。
「……お嬢様。ひのきの棒を背負って、どちらにお出かけですか?」
「ちょっと、そこまで!」
「……洞窟に、潜るおつもりでしょう!いけません!」
ちっ、鋭いな!
いや、普通か。
「そんなこと、ないですよ?すぶりで、つかいかたに、なれておかないと!」
「それなら、サンチョもご一緒しましょう。旦那様には遠く及びませんが、これでも腕には、覚えがありましてな!」
くっ……そう来るか!
確かに、初期レベルは結構高かった……!
……とりあえず、教えてもらうのも悪くはないね!
「はい!おねがいします!」
「そうですか、そうですか!では、参りましょうか!腕が鳴りますな!」
なんか嬉しそうに武器を取りに行くサンチョ。
喜んでるし、無駄ではないし。
まあ、いいか!
ミッション、まあ失敗。
《娘を案じる父の視点》
最近、娘の様子がおかしい。
サンチョの話では、洞窟に潜りたがっているらしい。
禁じられたために、目を盗んで潜ろうと考えているようだ。
「サンチョ。ドーラのことだが」
「はい。決して洞窟に潜り込んだりされませんように、目を光らせておきます!」
「そう出来れば良いんだが。あれは妻に似て、賢く、意志の強い子だ。いくら禁じても、いつかは出し抜いて潜り込むことも、あるかもしれない」
「それは……。左様でございますね……」
「武器を見咎められたから、今度は武器を置いて出掛けようとでもするだろう」
「それは……!丸腰ということに、なるではありませんか!!」
「そうだ。あまり締め付け過ぎても、却ってドーラの身を危険に曝すだけだろう。そこで頼みたいのだが、次にドーラが洞窟に向かおうとしたら、気付かない振りをして、陰から見守ってやってはくれないか」
「そんな!頼みなどと、そんな必要はございません!旦那様は、命令してくだされば、いいんです!」
「本来は父として、俺がやるべきことだろうからな。だが、俺では」
「ああ……そうでございますね……いやいや!それでも、ご命令でいいんです!このサンチョに、お任せください!!」
「ああ。任せた」
本来なら側に付いて、戦いの手解きでもしてやるべきなんだろう。
多少傷付こうとも、命に別状が無い限りは、また当人に戦う意志がある限りは、手を出さずに見守ることも、必要だろう。
だが、ドーラに魔物が近付いて来るのを見ると、考える前に身体が動いてしまう。
妻を拐ったであろう魔物を、大事な娘に、近付けたく無い。
この上、ドーラに何かあっては、俺は己を保てる自信が無い。
棄てたとは言え其なりの立場にあった人間が、情け無いことだが。
だが俺にとっては国よりも、世界中の何よりも、否、総てよりも大切であり、優先すべき存在が妻であり、娘だ。
見ていないところで危険な目に遭うのも耐え難いが、本当に命を落とすよりは、まだいい。
陰でどれほど苦しもうとも、ドーラが無事に戻ってさえ来れば、何時も通りに振る舞うことは出来る。
苦しむ様など、見せなければ、いい。
《再び、美少女ドーラちゃん》
作戦その三!
正当派、大本命!偽装工作!!
前の二つはね、そもそも隠す気無かったというか、見逃してくれる気があるかどうかの確認みたいなものだからね!
こそこそする必要が無いなら、堂々と行きたいじゃない!ダメだったけど!
まあダメだったなら仕方ない、折角のおニューのひのきの棒も、使えないけど仕方ない。
代わりになりそうな手頃な棒を調達してー、なんか出かける口実作ってー、言った通りのことしてきた証拠品があれば、なおいいね!花でも摘むか!
いいじゃない、いいじゃない!
美少女ドーラちゃんらしくて、いいじゃない!
よーし、これで行こー!
《洞窟を管理する戦士の視点》
村の長パパスさんから、おかしな頼み事をされた。
パパスさんの娘のドーラちゃんが、洞窟に忍び込もうとするのを見ても、気付かない振りで見逃して欲しいと言うのだ。
目に入れても痛くないという言葉が喩えに聞こえないほど可愛がっている、まだ幼い娘の、ドーラちゃんをだ。
一人娘で、あれほど可愛らしいとなれば、多少、いやかなり、いやいや相当な親馬鹿……!ゴホン、子煩悩になるのも致し方無いというものだが、だからこそこの頼みは解せない。
しかし、パパスさんの真剣かつ思い詰めた様子に、事情を聞くことも出来ず、ただ了承した。
そんな事情で今、いつも通りに洞窟を見張りながら、ドーラちゃんが来るのを待っている。
今日来るとも限らないが……お?
あの、遠くに見えるのは、正しくドーラちゃん!
幼女趣味は無い俺でも、将来どれ程の美女になるものかと期待して見守ってしまう、いや、そういった対象としてで無くとも可愛らしさに思わず頬が緩んでしまう、あの美少女ぶりは、間違い無い!
……さて。
気を抜くと視線を向けてしまいそうになるので、意識してさりげなく視線を外すか……。
……おかしい。
視線を外していても、気配も消せない女子供が通れば気付かないはずが無いのに、一向に通り抜けた気配を感じない。
……人の気配!
来たか!
意識して振り向かずにいた俺に、気配の主が声をかけてくる。
「これは、これは。いつも、ご苦労様です」
……この声は!
この、人の良さそうなテノールは!
顔に似合わず意外と良い声の、これは!
間違い無い、少なくともドーラちゃんでは無い!
「……サンチョさん。洞窟に、ご用ですか?」
「ええ。旦那様にお聞きでしょう、うちのお嬢様がいらしてますのでね、こっそりと。様子を見に」
「ドーラちゃんなら、通ってはいないようだが?」
「いえいえ、間違い無く入って行かれるのを、この目で見ましたから。急ぎますので、これで」
せかせかと洞窟に向かうサンチョさんの背中を見送り、思う。
いくら、パパスさんの娘とは言え。
ろくに戦闘もしたことが無い幼い少女の気配を、仮にも戦士の端くれであるこの俺が、見逃したというのか……?
……最近、弛んでいたかもしれないな……。
留守にすることも多いとは言え、パパスさんの強さを、無意識に当てにしてしまっていたか。
いかんいかん、いざという時に村を守るのも、仕事のうちなのだ。
精進せねば。
まずは、素振りでもするか。
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