遊戯王GX-音速の機械戦士-
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-クイーンとの邂逅-
前書き
今回はデュエルはありません。
明日香、ヒロインにしようかどうしようか…
実技テストから数日後、デュエルアカデミアから合格通知が届いた。……まあ、実技テストはギリギリだったが、筆記で二番だったから、そっちの方で優遇されたんだろうと思う。
そして、これから太平洋にある、デュエルアカデミアに向かう為の飛行機に乗る時間である。……だか、現在俺は、
……走っていた。全速力で。
「遅れるっ……!」
あと5分…全速力で走って、間に合うかどうかの距離か。そんな時、前を良く見ていなかったせいで、男の人とぶつかってしまった。結構な勢いでぶつかってしまった為、俺と男の人も揃って尻餅をついた。
「すまない、大丈夫か?」
ぶつかってしまった人は尻餅をついてはいたが、怪我はなさそうだということを確認する。
「ああ、大丈夫だよ」
「それは良かった。では、急いでいるので!」
相手の無事を確認したので、急いで走り出したところ。
「ああ、ちょっと待って」
と、ぶつかってしまった男に呼び止められた。
「何ですか?」
彼は笑みを浮かべながら、ベルトについていたミニバッグからカードを二枚取り出した。そして俺に差し出すと、ニヤリと笑ってこう言い放った。
「ラッキーカードだ。彼らは君の下へ行きたがっている」
「はい?」
……いきなり何をいいだすんだこの人は? というのがその時の感想だった。
「まあ、受け取ってくれ」
彼は強引にカードを二枚押しつけると、手を降って去っていった。
「…何だ今の。って、時間が!」
俺はぶつかってしまった男の見送りもそこそこに、ひとまずは飛行場に向かって走って行った。
……日頃の行いが良かったのか、それとも日頃きちんと運動していたから良かったのか、何とか間に合って俺は飛行機の席に座っていた。そして隣の席には、俺と同じく少々息を切らした三沢がいた。
「どうした三沢。お前はきちんと起きるタイプだと思ったが……?」
「いや、何。普段はそうなんだが、調べものに熱心になると時間を忘れてしまうんだ」
三沢は苦笑いを浮かべながらそう言った。……はて、このデュエル・アカデミアに主席で合格する男の調べものとは何だろうか。
「調べものって、何をしたんだ?」
「それは勿論、君の【機械戦士】デッキのことさ」
「俺のデッキのことをか?」
三沢の予想外の答えに俺は目を白黒させた。そんな俺の様子がおかしかったのか、三沢も少し吹き出していた。
「ああ、試験の時の逆転劇は凄かったよ」
「そりゃ……どうも」
自分のデッキのことを褒められて悪い気はしない。だが、いつも馬鹿にされているので、急に誉められると妙にくすぐったい。
「しかし、【機械戦士】デッキは最弱のデッキなどと呼ばれていたが、かなり謎が多いデッキだったぞ」
「謎? ……そんな話は聞いたことが無いんだが、聞いてもいいか?」
俺の言葉を聞いて三沢は逆に驚いていた。昔から、あまり噂話のようなことには、興味を引かれない性質ではあった。
「知らないのか?」
「ああ」
「そうだな……曰わく、ペガサス会長自らがデザインしたカードだ」
「……いきなり凄いのが出て来たな……」
明らかにデマじゃないか、と流石に愕然としてしまう。
「ああ、いや、確かにこれは俺も驚いたが、これは正しくないようだ」
「まあ、だろうな……ただのコモンカードだろうに」
俺の一言に三沢は、『いや、これがそうとも言えないんだ』という風に首を振った。
「いや、あのカードデザイナー、フェニックス氏が残したシリーズの内の一つらしい」
「……フェニックス氏!?」
――フェニックス氏。プラネット・シリーズなどのシリーズを描いたカードデザイナーだが、何者かに殺されてしまったために彼の作り出したカードはとても希少価値がある。
「おいおい、冗談は止めてくれよ三沢」
「いや、恐らくこれは真実だ。と、いっても、機械戦士たちに希少価値は無く普通にパックで当たるがな」
これは俺の予想だが、と、三沢は前置きを言う。
「恐らく、フェニックス氏が新人の頃に書いたカードなんじゃないか?」
「なるほど。他には何か噂でもあるのか?」
「後は…そうだな。曰わく、【機械戦士】デッキは、カードの精霊が宿っている」
「……そこまで来るとオカルトだな……」
俺はあまりオカルトは信用してはいない。絶対にない、などと頭ごなしに否定する気にはならないが、カードの精霊とやらはあまり信じることが出来なかった。
「ああ。この噂は流石に俺も信じられなかった」
「だろうな……そういえば、三沢のデッキはどんなデッキなんだ?」
三沢は俺のデッキを知っているが、俺はデュエル場を直していたため、三沢のデュエルを見ていなかった。俺の質問に、三沢はふむ、と少し考える動作をして――
「いや、秘密にしておこう。そっちの方が面白そうだ」
などとのたまった。……どうやらこいつ、ただの秀才という訳では無いらしい。
「おいおい、狡いじゃないか…と言いたいところだが、確かに、そっちの方が面白そうだ」
……そんな話を二人で笑いあって話していると。
「おい、見ろよ!島が見えてきたぞ!」
その一言に皆で窓を見れば、そこにはデュエルアカデミア――俺たちがこれから三年暮らす学校があった。
……校長先生の長話が終わり、俺は黄色の服を渡された。
――ラー・イエロー。
入学テストの筆記試験・実技試験ともに優秀な成績を収めた物が入れる寮だ。当然、一番である三沢も横で同じくラー・イエローの服を受け取っていた。
「三沢。お前だったら、特例でオベリスク・ブルーからでも良かったんじゃないか?」
オベリスク・ブルーは中学からいる奴で、成績優秀な者、もしくは女子がいける。高校からである三沢は主席だろうとラー・イエローからだ。それを分かって言っている俺の冗談に三沢は笑う。
「まあ、俺がオベリスク・ブルーになるのは君と同じ時だな」
軽口を言い合いながら、俺たちはラー・イエローの寮に向かった。
コテージ風の雰囲気の良い寮の、各自一人ずつに用意された部屋に向かって、制服に着替えた。…いつも黄色い服を着ていなかったせいか、あまりしっくりこない。
仕方ないので、制服の前のボタンを上げてジャケットのようにすることにした。すると……まあ、少しは見れるようになったと思う。
部屋から出てみると、隣の部屋の三沢も着替え終わっていたようで廊下にいた。当然俺のように着崩してはおらず、見本のようにしっかりと着こなしていた。
「遊矢、歓迎会が始まるまで、もう少し時間がある。ちょっとここを散歩しに行かないか?」
「良い考えだな。」
これからそれぞれの寮で歓迎会が開かれるそうだが、それにはもう少し時間がある。その前に俺と三沢は二人で散歩に行くことにした。
「こうしていると、自分がデュエルアカデミアに入ったことを実感出来るな」
ラー・イエローの周りを散策中、三沢がそんなことを呟いた。
「そうだな…ちょっと、校舎の方に行ってみないか?」
「ふむ…ちょっと時間がギリギリだが、まあ大丈夫だろう。行こうか」
校舎の正門前に来ると、その本校の大きさに目を奪われる。一体中にはどれほどの設備があるのだろう。
「やっぱ大きいなぁ」
「ああ、ここが海馬兄弟が作ったという、デュエルアカデミアか…」
海馬兄弟。海馬コーポレーションがここのオーナーだったな。確か。……そんな時、一人の女子が俺たちに近づいてきた。
「あなた達、三沢大地と黒崎遊矢でしょう?」
話しかけて来た金髪の女子。染めたりはしていないような綺麗な色のロングヘアだった。
「そうだが、お前は?」
「私の名前は天上院明日香。あなた達のことを実技テストの時に見てたのよ」
「天上院明日香…と言うと、あのデュエルアカデミアのクイーンか?」
三沢が聞き返す。そんなこと良く知ってるな。事前に調べているんだろうが。
……対する天上院は、その名前はあんまり好きじゃないんだけど、と頬を赤らめている。
「で、そのクイーンだかって呼ばれてる天上院は何の用だ?」
「クイーンって呼ばないで。明日香よ」
「分かったよクイーン」
「……明日香って言ったでしょ?」
「まあ、そんなに怒るなよ、クイーン」
「明・日・香!」
アカデミアのクイーンはからかうと面白かった。三沢もやり取りがツボに入ったのか、顔を背けて明日香に見えないようにして笑っていた。
……そんな時。
「明日香さんに何してんのよあんたたち!」
大声で叫びながら女子生徒二人が走ってきた。
「明日香様、ご無事ですか?」
駆けつけた黒い髪の方がクイーン(笑)に話しかける。そして赤い髪の方がこちらを向き、強気に俺たちを威嚇してくる。
「で、あんたたちは明日香さんに何してんのよ!?」
「……何かしたか、三沢」
「君、やったのはこいつだ」
先程のことをとぼけようとした俺に対し、三沢はこっちを指差してそう言った。……どうやら逃げることは出来ないらしい。
「あんたね! さあ言いなさい。明日香さんに何をしたの?」
「一人だけ助かる気か三沢!?」
何故か興奮状態にある赤髪にクイーン(笑)が仲裁に入る。
「ちょっとジュンコ。私は特になにもされて無いわよ!」
「そうだ、そのクイーン(笑)の言ってる通り!」
「そうそう、……って(笑)って何よ!?」
クイーン(笑)が反論して来る。そして、その肝心の説得を赤髪は聞いてなかった。
「あんた、黒崎遊矢ね!」
「ああ」
「……よし、デュエルよ!」
……おい、言葉のキャッチボールしようぜ?
「アタシが勝ったら明日香さんに何したか白状して明日香さんに土下座して貰うわ!」
「ちょっとジュンコ、落ち着いて」
「大丈夫ですわ明日香様。こんな運だけで入ってきた最弱デッキなんて蹴散らしてみせます!」
……カチンときた。
「やってやろうじゃないか。お前の名前は?」
三沢がデュエルディスクを渡してくる。まさかとは思うが、あいつ、この展開を読んであんなこと言ったのか?
「枕田ジュンコよ」
そう言って枕田もディスクを構えると、デュエルの準備を完了させた。
「さあて、このアカデミアの実力を見せてもらおうか!」
「フン、恥ずかしくて明日香さんに近づけないようにしてやるわ!」
「「デュエル!」」
後書き
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