戦国異伝
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第百三十一話 二人の律儀者その二
「朝倉にとっては屈辱であろうがな」
「しかしそれも戦国の習いです」
「それなら仕方ありませぬな」
「さて、これで織田家は越前も手に入れる」
そしてだった。
「さらに大きくなるな」
「北陸にも領国を持ちますな」
隆景が言う。
「東海、近畿、四国に加えて」
「では織田家は北陸にも勢力を伸ばすか」
隆元は末弟の言葉を聞いて述べた。
「そうなるか。しかし北陸には一向一揆がおるぞ」
「加賀ですな」
「あそこは一向宗の国、あの国に勢力を伸ばせるか」
「それは戦で破ればいいのではないか?」
元春はこう兄に言った。
「一向宗とな」
「いや兄者、一向宗は厄介な相手ですぞ」
隆景は次兄にこう返した。
「数は多くしかも一揆でありながら武具もよい」
「そういえば鉄砲も多く持っておるな」
「加賀は特にです」
隆景は元春に述べていく。
「あの地はまさに一向宗の国なので」
「国を手に入れようと思えば国の民全てと戦わねばならぬか」
「そうなりますので」
「では織田殿といえど一向宗とは戦をせぬか」
「するにしてもかなりの勇気が必要です」
そうだというのだ。
「越前を手に入れても加賀まで攻め入るかといいますと」
「わからぬか」
「兄者は一向宗と戦いたいでしょうか」
こう元春に問うた。
「あの者達と」
「侍と戦うのは好きじゃ」
元春は毛利家の武を代表する者だ、柱が長兄である隆元であり文が隆景とされている。元就はこの三人を毛利の三本の矢としているのだ。
「しかしそれでもな」
「民と戦をするのは、ですな」
「好きではない、一向宗でもな」
「その通りです、それはそれがしもです」
「わしもじゃ」
隆元もそうだと言う。
「そうした戦は好まぬ」
「しかも一向宗との戦は果てしない殺し合いになります」
このこともあった。
「上杉謙信殿も手こずっておられる訳は」
「そこにあるか」
「一向宗は死を恐れませんので」
このこともあった、一向宗を敵に回すことが憚られる理由は。
「果てしない殺し合いになります」
「こちらが止めたくともじゃな」
「だから難しいのです」
「そういうことか」
「おそらく織田殿は暫くは北陸は越前だけです」
そこで止まるというのだ。
「そこからどう動くかですが」
「当家に来るか」
隆元の目が強いものになった。
「そうなるか」
「それも充分に考えられます」
「当家は天下を望まぬ、しかし来るのならば」
「戦をするしかありませぬ」
今度は長兄に答える隆景だった。
「ここは」
「そうか、しかし織田家との戦はのう」
「当家としても望むものではありませぬな」
「我等はまず家を守らねばなりませぬ」
だからだというのだ。
「ですから織田家との戦は」
「何としても避けねばならぬな」
「その通りです、しかしそうも言っていられぬ場合もあります」
それはどういった場合かというと。
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