問題児たちが異世界から来るそうですよ? ~無形物を統べるもの~
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CAPTURE the GRAIAI
一輝は一人、コミュニティの門で待ち伏せをしていた。
仲間の一人が悪巧みをするような顔をしていたのがどうしても気になったのだ。
「・・・まだ来ないか。気のせいだったのか?」
暇なときの癖で携帯を取り出し、圏外であることを思い出し、しまう。
代わりにICレコーダーを取り出し、イヤホンを耳にさす。
「・・・・・・・」
ついでに、Dフォンを取り出し、暇を持て余す。
「本格的に、気のせいか?」
「なにがだ?」
「おわっ!?」
ふとつぶやくと、後ろから声が聞こえる。
振り向くと、そこには十六夜がいた。
「いつのまに・・・ってか、どうやって・・・」
「いや。お前が待ち伏せしてたからちょっと驚かせようと思ってな。」
「なるほど。」
なぜその理由で納得するんだ。質問の回答にもなっていないだろう。
「で?待ち伏せの理由は?」
「オマエが、面白いことをしようって顔だったから、一枚かませてもらおうかと。」
「ちょうどいいな、戦力が欲しかったんだ。時間もないしな。」
「何をする気だ?」
「その辺は、歩きながらにしよう。」
そのまま二人は歩き、二つの建物が建っている場所にたどり着く。
両方の建物には“ゴーゴンの首”の印が掲げられている。
「ここでは、最下層のコミュニティには常時解放しているゲームがある。」
ようやく、十六夜が説明を始める。
「んで、二つともクリアすると、何とビックリ。ペルセウスは自らの伝説と旗印を賭けたゲームへの挑戦を許してくれる。」
「OK。目的は理解した。俺はどっちを担当すれば?」
「右の建物のほうだ。力任せのゲームは俺のほうが得意だからな。」
「了解。ついでだし、出来なかったほうは罰ゲームでどうよ?」
「はっ。後で後悔するなよ!」
そして、二人はそれぞれの建物へと向かった。
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《これは・・・潮の香り?》
一輝は、入ったら吹いてきた風にそんな感想を得た。
そのまま、地下の最奥までたどり着くと、そこは、回り一面海の、小島だった。
「・・・建物を一直線に進んだら、小島?」
一輝は首を傾けるが、箱庭だし、こんなこともあるか、という結論に達した。
「「「伝説に挑戦するものよ。名を名乗れ。」」」
どこからか、三重に重なった声が聞こえる。
「ノーネームの寺西一輝!そっちも姿を見せるのが礼儀ってもんじゃないのか?」
一輝が名乗りを上げると、目の前の海水から三人の老婆が現れる。
「我らは“グライアイ”おぬしはペルセウスの伝説へと挑みに来たのだな? 」
「ああ、そうだ。」
「では、ゲームを始めよう!!」
一輝の目の前に、“契約書類”が現れる。
『ギフトゲーム名 “CAPTURE the GRAIAI”
・プレイヤー一覧 寺西 一輝
・クリア条件 グライアイを捕らえ、その誇りを奪う。
・敗北条件 プレイヤーが戦闘不能になる。
プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。
宣誓 上記を尊重し、“寺西 一輝”はギフトゲームに参加します。
“グライアイ”印』
「「「キサマの力、見せてみよ!!」」」
その言葉とともに、三人は立っていた場所・・・海水へと溶けていく。
「こうして海水へと消えた三人を捕らえるのか。普通にやったら骨が折れるな。」
そう、普通にやったなら、かなり面倒くさい。ならば・・・
「普通じゃない方法でやれば、問題ないな!」
そう声を上げ、一輝は・・・
その場にある海水を全て操り、自分の頭上へと集め、圧縮する。
「な、何だと!?」
「我らは海水に溶け、同化していたはず!!」
「キサマ、一体何をしたのだ!!!」
その場には、さきほど解けたはずのグライアイたちがのこる。
「別に、ただ海水を操って、自分の近くに集めただけだ。」
「それでは我らが分離されたことの説明がつかん!」
「物分り悪いな、この老婆達。俺は海水だけを持ち上げたんだ。いくら同化したところで本質は変わらない。お前らは海水ではなく、グライアイだからな。」
そう、一輝はそこにある液体を操ったのではなく、海水に限定して操ったのだ。
「さて、お前達の逃げ場はなくなったことだし、攻撃開始といきますか。」
一輝は頭上にある海水を少しずつ、塩とその他に分離し、水圧によって塩を放つ。
マシンガンのように、放つ。
「「「ギャアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!」」」
グライアイが逃げ回るのを狙い撃つ。
ちなみに、当たった地面はかなり抉れている。
「こ、降参・・・」
「は、ルール上認められておりません。」
「しまった!!」
このゲームのルールに“降参”は存在しない以上、それは無意味である。
「いや~。降参を認めてあげたいのはやまやまだけど、ルールにないからな~。となると、捕らえて、その誇りを―――これはペルセウスの伝説に沿ってるんだから、目かな?―――を奪うしかないよな!そのためにも、攻撃をして弱らせないと!!」
「「「このアクマ!!」」」
女怪からアクマ呼ばわりをされる一輝である。
「そう思うんなら、これからは降参ありのルールにするんだな!」
一輝が立ち去った後、グライアイたちはすぐに、降参ありをルールに組み込んだそうだ。
「さて、そろそろ遊・・・攻撃をやめて捕獲に入るとしますか。」
「キサマ、いま遊びって言いかけなかったか!?」
一輝は聞き流した。
「さて、それでは、捕獲開始!!」
一輝は今回、初めて武装をするが、グライアイたちはそれをみて言葉を失う。
「「「・・・・・・それは?」」」
「武器だが?」
恒例行事になりかけているこのやり取りである。
今回の武器は・・・単三乾電池。一輝が携帯の充電用に持ってきたものの一部だ。
「我らを愚弄する気か!」
「俺にとってはかなり強力な武器だし、捕獲用の道具でもある。」
「そのようなものが、役に立つわけが・・・」
「サンダー!!」
「「「ギャアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!」」」
一輝は、中の電気を増幅し、グライアイに放った。
「乾電池を馬鹿にした罰だ!!」
「そんなことで・・・」
「さて、もう一発分は残ってるな。」
「申し訳なかった!!」
グライアイのうちの一人が全力で土下座をする。
「では、檻に閉じ込めるとしますか。」
一輝は電気の檻を作り、グライアイの上に落とす。
「触ったら、さっきと同じぐらいの電流が流れるから。」
一輝はしっかりと警告してから、檻に近づく。
そして、目を持っているグライアイに近づき、その目を奪う。
「試練を乗り越えしものに、伝説へ挑戦する権利を与えん。」
どこからか、厳かな声が聞こえ、目の前に蒼の宝玉が現れる。
「それが挑戦権を示すギフトじゃ。」
「受け取るがよい。」
「キサマにはその権利がある。」
「それじゃあ、遠慮なく。」
一輝は持っていた目をほうり、宝玉を風呂敷に包む。
グライアイたちは目を落とさないように、必死になって取ろうとしている。
「お、スイカっぽい。」
一輝は風呂敷をつかみ、建物をさる。
「さて、あとはコミュニティに戻るだけ。頑張ろう!!」
なんだか、一輝には似合わない一言である。
後書き
こんな感じになりました。
では、感想、意見、誤字脱字待ってます。
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