問題児たちが異世界から来るそうですよ? ~無形物を統べるもの~
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メイド二人
異世界に召喚された次の日の朝、一輝は普通に起きた。
昨日の頭痛はすっかり治ったようだ。
「ふぁ~。腹減った~。」
一輝は寝巻きから普段着に着替え、寝巻きを空間倉庫の中の洗濯機に入れ、スイッチを入れると部屋を出る。
今日はガルドとのゲームだと言っていたので、皆起きているだろう。なら、メシもあるだろう。そんなことを考えながら食堂に向かう。
「シャクシャク。」
ついでにりんごを食べながら。そんなに耐えれんのか。
そうやって、りんごを三個食べたところで食堂に着いた。
「おはよ~。」
「「「遅い!」」」
「・・・皆、早起き過ぎない? 」
そこには十六夜たちだけではなくリリと同い年くらいの子や、それより年下の子もいた。
メンバー全員大集合である。
「ところで、朝食は? 」
「向こうで受け取ってこい。」
「了解。」
一輝が朝食を受け取りにいくと、四人分渡された。
十六夜、飛鳥、耀、一輝の分だそうだ。
「お前ら、まだ食ってなかったのか?」
「ええ。一輝君のギフトについて聞いておこうと思って。」
「起きるのを待ってた。」
「・・・スイマセン。」
惰眠をむさぼった結果、謝ることになった。
「それで、何を聞きたいの?」
「そうだな・・・。まず、お前のギフトはいくつあるんだ?」
「ギフトカードに出たのだと、三個というか十二個というか・・・見てもらったほうが早いか。」
一輝は三人に見えるようにギフトカードを出す。
「・・・確かに何個とするか迷うわね・・・何もないところから物を取り出してたのはこれ?」
「ああ。空間倉庫っていうみたいだな。便利だぞ。」
というと、物をしまってある倉庫の扉を全て開ける。
「・・・持ち物全部入れてる?」
「必要なものだけ出せば、部屋が散らからずにすむからな。」
ちなみに、この持ち物とは、家電製品まで含んでいる。
「ってか、思いっきり財産持って来てんじゃねえか。」
「問答無用で呼び出されたからな。それはどうしようもなかった。」
一輝は倉庫を閉じる。
「・・・式神多いね。」
「確かに、こんなにいるの?」
「あんなザコども、いらねえだろ。」
「あれは、オマエが異常なだけだからな?数については、これくらいならまだ普通。多い人は億超えるからな。」
「どんな人は超えるの?」
「自分自身は弱いけど、式神を操ることだけは出来る人と、儀式系の術を使う人。」
「その二パターンだけか?」
「だけだな。それ以外の人は持ち歩いても邪魔なだけだし。」
一輝は朝食を食べ終わって、デザートのりんごを倉庫から取り出して齧る。
さっきあんだけ食っといてまだ食うか・・・
「ズルイ・・・」
「何が?」
「リンゴ。」
耀は一輝の手にあるリンゴをさして言う。
こいつ、食いしん坊か?
「なら食べる?まだ有るけど。」
「食べる!」
一輝はりんごを三つ、倉庫から取り出し、三人に渡す。
「ハイ、捥ぎたてをどうぞ。」
「ありがとう。」
耀はそのまま齧り付く。
「ありがとう。でも捥ぎたてって・・・その倉庫の中には畑でもあるのかしら? 」
「あるぞ。」
「それはもう、倉庫じゃなくねえか?」
「倉庫って出てるなら倉庫なんだろ。」
十六夜と飛鳥の二人はそれもそうかと納得し、りんごを齧る。
一輝はその間に百二十個のりんごを取り出して、皮をむき食べやすい大きさに切るという作業を三秒でこなし、一個分ずつ皿に盛ると、風に乗せて子供たち全員に配る。
普段の生活でも便利なギフトである。
「子供たちもどうぞ。」
「「「「「「「「「「「「「「「ありがとうございます!」」」」」」」」」」」」」」」
キーン、と耳鳴りがするほどの大声で百二十人の子供たちが叫ぶ。
四人はまるで音波兵器のような感覚を受けた。
「昨日の比じゃねえな。」
「まだ耳鳴りがするわ。」
「皆、元気だな。」
《・・・。私、ここでやってけるのかな。》
十六夜に飛鳥、一輝は大声に驚き、耀はやっていけるのかどうか、昨日以上に不安になる。
「んで、今日皆はガルド戦?」
「ええ。あの外道を必ず裁いてみせるわ。」
「頑張って。俺もあの二人を連れて応援に行く。」
「たぶん、そのころには終わってる。」
そんな話をして、一輝たちの朝食は終わった。
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一輝は音央と鳴央を迎えに行くためにサウザンドアイズにきた。
「おはようございます。仕事熱心ですね。」
「・・・おはようございます。」
「じゃあ、お邪魔しま~す。」
「当店はノーネームお断りです。それ以前に、まだ開店していません。」
「今日はお店の客としてじゃなくて、白夜叉に呼ばれてきてるんだけど?」
聞いていたのだろう、女性店員は一輝を中に通す。
「白夜叉は私室に?」
「はい。お二人もそちらにいると。」
「了解。」
一輝は昨日来た記憶を頼りに目的地にたどり着く。
「白夜叉。入るぞ。」
「それは入る前に言うべきではないか?」
「それは俺達に言っても無駄だ。」
一輝の台詞に白夜叉は笑い声を上げる。
「そんなことより、一つ質問いいか?」
「うむ。かまわんよ。」
「じゃあ単刀直入に。何でここにメイドが二人?」
一輝は後ろを・・・自分の後ろに座っているメイド二人をさして言う。
「似合っておるだろう?」
「かなりな。」
「ならよいではないか。」
「それもそうか。」
「よくないわよ!」
一輝と白夜叉の会話にメイドの一人・・・音央が突っ込む。
「いや、お前らのメイド服姿が似合っていることは重要だろ。」
「私達がメイド服姿なことに疑問はないのですか?」
「昨日、白夜叉があんなことを言ってたしな。」
「あの時点で予想がついてたなら言いなさいよ!」
「もったいないだろ。」
一輝はこうなることを期待していたようだ。
「そんなに嫌なら着替えたら?」
「元々着ていた制服は白夜叉さんが持っていますから・・・」
「そうか。白夜叉・・・」
「なんじゃ?」
「超グッジョブ!」
「うむ。」
一輝と白夜叉がお互いに親指を立てる。
「敵に回るのですか!?」
「まあ、元々着替えを許可する気は無かったけどな。」
「何であんたに命令されてるのよ!」
「いや、だって、お前らは俺に隷属してるんだし・・・これくらいよくね?」
「はぁ。もういいです。」
鳴央は諦めたようだ。
「私は嫌よ!」
「他の服を希望するなら、出品は白夜叉だぞ?」
「これでいいわ!」
手のひら返しである。
「じゃあ、この服はもらっちゃっても?」
「もちろんじゃ。そこの二人のサイズぴったりに作ってあるからな。守りの恩恵もついておる。」
白夜叉はメイド服をあと三着に、寝巻きを何着か二人に渡す。
「さて、本題に入ろうかのう。これが依頼の品だ。」
白夜叉は柏手を叩き、一輝たちの前に黒い携帯電話が現れる。
「これが?」
「ああ。おんしの依頼の品、名を『Dフォン』という。」
「使い方は?」
「おんしが持っておった携帯電話のように電話やメールが出来る。そして、召喚はデータフォルダの中にある画像を選択すればよい。」
「簡単でいいな。」
「写真についてはいくつか種類があるから、好きなのを選択するとよい。」
一輝は試しに、鳴央の選択肢を見てみる。
そこには制服にメイド、巫女服、和服、ナースetc。
《二人は昨日、白夜叉の着せ替え人形にでもなってたのか?》
もう一つ、音央の選択肢を見てみる。
そこには制服にメイド、露出の多い妖精のような格好、ナースetc。
《間違いないな。》
どうやら、二人は着せ替え人形になっていたようだ。
だが、二人の写真にそれぞれ一枚ずつ、これはどうなんだという写真がある。
「・・・二人とも。もう少し警戒心もとううぜ?」
「昨日は何かテンションがおかしくなってて・・・」
「ノリノリだったんです・・・」
「いや、そうじゃなくてさ。こんな写真を撮られてるぞ。」
そういうと一輝はディスプレイを・・・二人の下着姿の写真を見せる。
「茨姫の檻!」
「奈落落とし!」
次の瞬間、音央が茨で白夜叉を縛り上げ、鳴央が開けた真っ黒な穴に放り込む。
「急に何をするか!」
そのまた次の瞬間には白夜叉は目の前にいた。
「さて、もう用事は済んだし帰りましょう。」
「そうですね。帰りましょうか。」
「今日はガルドとのゲームだし、そっちを見に行こうよ。」
「何か一言ないのか!」
「あなたが「あんたが「お前が悪い!」」です!」
一言を要求されたので、一言を返して、一輝たちはサウザンドアイズからゲームの会場に向かう。
後書き
音央の写真の中にあった妖精の格好は、101番目の七巻に挿絵があったあれです。
では、感想、意見、誤字脱字待ってます。
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