トリコ ~ ネルグ街出身の美食屋! ~
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美食屋、転生する!
前書き
どうも。元にじファンユーザーで今は主にアットノベルスに作品を投稿させていただいてますラドゥと申します。
この作品は元はにじファンに投稿していた作品で現在はアットノベルスとハ―メルンにも投稿している作品です。
暇つぶしにでもお楽しみください。
ここは【転生管理局】。俗にいう『輪廻転生』の流れに魂を乗せるために管理する天界の役所の1つである。
そんなこの場所で今、1つの異常事態イレギュラーが発生していた。
「なにいっ!魂を壊しただとぉ!?」
「す、すみませんっ!!」
そういって頭を下げる少女。艶やかな金色の髪にぷるんとふるえる柔らかそうな唇。その目尻に涙の溜まった大きな瞳は宝石のように美しい。正にこの世のもの(…)とは思えないほど美少女といえた。
それもそのはず、彼女の背中からは穢れを知らないであろう純白に輝く翼が一対。頭にはリング状の光が輝いていた。
彼女の名前は『シャルロット』。俗にいう【天使】という存在である。なぜ彼女がこうして頭を下げているのかというとそれにはとある理由があった。その理由とは、
「どうするんだいったい。こんな、こんなに
魂を破損させてっ!」
そうこの少女はよりにもよって自分たちが管理するはずの転生待ちの魂。その魂を破損させてしまったのだ。
通常この転生管理局では魂はそれぞれに特殊な造りのケースにて保管される。このケースはちょっとやそっとでは壊せないほど頑丈で、大天使クラスの力でやっと壊せるほどだ。なぜここまでするのかというと、答えは一つ。それは『魂の強度』に問題がある。
本来魂とは大変デリケートな物で、他人にいわれた悪口程度で魂が埋め込まれている胸元に痛みが走ることがあるほどだ。
通常は肉体や情報を伝達する神経などに護られておりめったなことがない限り壊れることはない。…まああまりにショックな出来事や肉体や神経に負荷を与えると魂が耐えきれずに壊れてしまうのだが。その状態の人間のことを人間界でいうところの『廃人』というところだ。
人間界でそのような状態になった時にはそれは個人の責任として完全に魂の情報を初期化し、再び輪廻の輪に乗せればいいのだが、こちら、つまり天界のミスとなると話は違ってくる。
「本当にすみませんでした!!」
「……はぁ。私にいっても仕方なかろう。規則は規則。お前には従ってもらわなければならない。そう、ーーーーーー『魂を破損させたものはたとえ神であろうともその被害者に従わなければならない』という規則を」
「そんなぁ…」
そうもし魂を天界側が破損させてしまったら、保障としてその者を特典付きで別世界に送り魂の自然回復を待たせるていうこと、その魂を破損させたもの者はその被害者の願いを何がなんでも叶えなくてはならないというものだ。
例えば『億万長者にしてくれ』だったり『ギャルのパンティおくれ!』だったり。そして最悪『奴隷になれ』といわれても必ず従わなければならない。
ゆえにこの転生管理局が発足されてからは少なくとも魂を破損させた人物、いや天使はいなかったのだが、今回ケースから魂を取り出す作業の際にシャルロットが誤って魂を割ってしまったのである。それはもう、どうやったらこうなるぐらいに粉々になってしまった。それはもう転生管理局の局長である彼女、先ほどシャルロットを叱っていた【大天使ヨミエル】しか直せないほどに。…密かに「こいつわざとやったんじゃないか」とヨミエルが思ったほどに。
「とりあえずこの魂を再生して持ち主の人格を呼び出すぞ。話はそれからだ。ーーーーーーまあ、あまりにも悪人すぎるのであれば交渉くらいはしつやるから」
「うぅ…。わかりましたぁ…」
そしてヨミエルはバラバラになった魂の再生を始めた。ピンセット(…)を使い、木工用ボンドでくっつける作業を。…宗教家がみたら何人かは確実に無宗教になりそうな光景であった。
~二時間後
「ふう、できた…」
どうやら魂を繋ぎ合わせるのに成功したらしい。…くっつけた継ぎ目がないのは仕様ということで突っ込んではいけない。
その頃、件のドジっ子天使、シャルロットが何をしていたかというと、
ぽりぽり
「あ、できました~?」
お菓子を食べていた。
「………………」
ヨミエル様の怒りの 沸点は臨界点を天元突破した。
☆
☆
???サイド
「…ここはいったい」
俺の名前は『アキト』。何故だか名前しか思い出せないがこれだけは理解できる。
ーーーーーー俺は死んだということが。
両親の顔も友人がいたかも、そして自らの姓も覚えていないのに何故か自らが死んだという情報ははっきりと覚えているとう常態。明らかに異常といえるだろう。
「いったいどうなっているのだろうか…」
「それは私が説明しよう」
「っ!?」
誰だっ!?
俺が声のした方に振り向くと、そこにいたのは黒い髪をした絶世の美女と、
地に伏す一体の死体?があった。
「まだ死んでないよっ!?」
「うおぅっ!?」
俺の心の声に反応したのか先ほどまで血まみれで地に伏していた少女は、バッと立ち上がってこちらに詰め寄ってきた。
「わ、わかった。わかったからちょっと離れてくれ!」
近すぎだから!
「あ、す、すすすみません!」
そういって俺に詰め寄ってきた少女は顔を真っ赤にして俺から離れた。結構純情みたいだ。
「で、あんたらはいったい誰でここはどこなわけ?」
とりあえず俺は目の前の二人にここがどこなのか教えてもらうことにした。
俺がそういうと黒髪の女性にいた金髪の少女がもうしわけなさそうな顔を顔をしていた。なんだ?
黒髪の女性はその金髪の少女を見てため息をつきながら口を開く。
「私の名前はヨミエル。一応大天使に分類されるものだ」
「は、はあ…」
大天使っていうとミカエルとかそういう…?
「…まあそうだな。まあ今は階級などどうでもいい。今回君がここにいるのにはちょっとしたわけがあってだな。――――――――シャルロット」
びくっ!
「ひゃ、ひゃいっ!」
ヨミエルさんが名前を呼ぶとヨミエルさんの隣にいた金髪の少女がびくっと震えると噛みながらも返事をした。…なんであんなに緊張してるんだこの子。
金髪の少女、シャルロットが一歩前にでる。
「え、えとはじめまして。僕の名前はシャルロット。ここ転生管理局で下級天使として働いています」
…………えっと。
「質問いい…?」
「は、はいどうぞ!」
「転生管理局って?」
なんかお役所みたいな名前だけど…。
「あ、それはですね。かくかくしかじかです」
「なるほどまるまるうまうまと。把握」
「待て、今ので把握できたのか!?」
このくらい俺らの業界じゃ朝飯前ですよ?
「どこの業界なんだ…」
なんかヨミエルさんが疲れたような顔をしているが気にしない。
「つまりここは輪廻転生を管理する場所で、ヨミエルさんはここの局長。君はここの下っ端天使と」
「う、うん。そうだけどそんないい方しなくても…」
シャルロットさんが傷ついたような顔をしているが気にしない。
「それで俺の魂を君が破損させてしまったためにこれからどうするか俺をここによんで決めるということでいいんだな」
「う、うん。本当にごめんなさい!!」
俺の目の前でシャルロットさんが勢いよく頭を下げた。
いやていうか、
「なんで謝られてんの俺?」
「それはですね」
「私から説明しよう」
俺の疑問に答えたのはシャルロットさんではなくヨミエルさんの方だった。
「君も理解したとおり、天界で破損した魂は別世界に転生させて自然回復をさせなければならない。これは地上で壊れた魂ならば情報を初期化かして無理やり再生させればいいのだが天界で壊れた魂にはそれが不可能なためだ。ちなみに君の魂はあまりにバラバラだったためにある程度私が再生させたが、いまだに傷が残っている状態だ。」
なるほど。
「あれ?でもなんで別世界に転生させる必要があるんですか?」
魂を回復させるためなら今まで自分たちが住んでた世界に転生させればいいんじゃ?
俺の疑問にヨミエルさんは答えてくれた。
「それは魂に刺激を与えるためだ」
「刺激?」
「ああ。」
ヨミエルさんによると魂の回復を促すにはとある方法により刺激を与えるのが一番手っ取り早いそうだ。
その刺激とは『充実した生』。つまりは俗にいう『波瀾万丈な人生』をおくらなければその転生先での魂の完全回復は難しいらしい。
なので転生先には魔法少女のいる世界や海賊王を目指すゴム青年のいるところなどの『創作物』の世界が多いらしい。
「ふむ。大体把握した。でもなんでそれでシャルロットさんがここまで謝ってんだ?ミスで魂を壊されたっていっても創作物の世界なんて面白そうな世界に転生させてくれるんだしそこまで気にしてないんだが…」
俺がそういうと、シャルロットさんは目尻にさらに涙を浮かべ、ヨミエルさんは本当に申し訳ないというような顔を浮かべていた。
「転生先で寿命意外で死を迎えた場合、その対象者の完全なる死。ーーーーーー魂が完全に抹消されるからだ」
「っ!?つまりそれは…」
「そう、私たち大天使や君たちが『神』とよぶ私たちの上司でも再生は不可能となる。元になるものがないからな。」
つまり転生先で病気に掛かって死んだだけであらゆる意味で俺の存在は消えるのか…。
「本当に、本当にごめんなさい。私にできることならなんでもしますから!」
俺の沈黙を怒りと受け取ったのかシャルロットさんは頭を下げ続ける。
ふむ。
「別に気にしなくていいぞ?」
「………へ?」
「ほう」
シャルロットさんは俺の言葉に呆けたように顔を上げ、ヨミエルさんは面白い物を見るような目で俺を見てくる。
「いやだから特になにもいらないって」
「な、なんでですか…?」
いや、だって。
「わざとじゃないんだろう?だったらしょうがないだろうが」
誰にでも失敗はあるし。
「で、でも!」
「それにだ」
俺はシャルロットさんの目元から流れている涙を拭ってやる。
「あんたみたいな美人の泣き顔はもう見たくない」
「え………?」
シャルロットさんは最初俺が何をいったのかわからないような顔をしていたが、俺の言葉の意味を理解すると顔を真っ赤に染めてモジモジしだした。…なにこの可愛い生物。
「案外くさいことをいうのだな君は」
ヨミエルさんが呆れたような顔でこちらを見ていた。
しょうがないでしょ!特殊な性癖でもないかぎりシャルロットさんみたいな美少女の泣き顔なんて見たくないって、男ならさ!
「やっぱりくさいな」
ほっといてー。
「ゴホンっ!それでは転生を開始するがなにか希望の世界はあるか?」
いや、希望もなにも…。
「俺、名前と死んだとっていう情報くらいしか記憶にないんたけど?」
その俺の言葉を聞くとヨミエルさんは忘れてたという顔をしていた。
「そうだったな。君は魂の破損により記憶が欠落していたのを忘れていた。ーーーーーー少し待て」
ヨミエルさんが手をかざすと、空中に数枚のパネルのような物が浮かび上がる。
「これは君の魂から読み取った君が整然よく読んでいた書籍だ」
パネルに書かれている文字はその書籍の名前らしい。
パネルには、
『ドラえもん』
『となりのサザエさん』
『トリコ』
『北斗の拳』
『カイジ』
…生前の俺はどんな趣味だったんだ?
「ちなみにこの中で君が選択可能なのはトリコだけだが」
「選択肢ないじゃないすかそれ」
ふふとヨミエルさんは俺の言葉に微笑んだ。…綺麗な笑みだなぁ…。
「む~、えい!」
「いたっ!…何すんだシャルロットさん」
俺がヨミエルさんの笑みに見とれていたらシャルロットさんが急に俺のことを蹴ってきた。なんなんだいったい…。
「ふんだ。ヨミエル様なんかにデレデレして!…さっきは僕のこと美人っていってくれたのに」
おい、ヨミエルさんが「なんか…」って地味にショック受けてるみたいだけどいいのか?それと後半声が小さくて聞こえなかったんだが。
「そういえば記憶がないんだったな。どんな話か聞いてくか?」
「あ~それは大丈夫です」
なんか流石に常識とかそういう記憶は残っているみたいで。さっきパネルにのってた漫画もどういう漫画かくらいは記憶してましたから。
「…思い出に関する記憶だけ消えているということか?」
「遭難じゃないですかね」
「かねっておい。…まあいい。それでは転生特典だが」
「それって自分で選べるんですか?」
「まあある程度はな。あまり世界観を壊すようなのは無理だが…。その分数は5つとこの業界では破格の数だ」
どこの業界だ。…まあいい。だったら、
「とりあえずあらゆることの才能と成長の限界突破を」
これで修行さえすれば大分成長できるはず。
「…ふむ。成長の限界突破は問題ないが、あらゆる才能は少し難しいぞ?」
「そうなんですか?」
「うむ。たとえばこの能力で戦闘を極めて超一流になったら他の分野では命がけで修行してもせいぜい一流どまりだ。それでもいいならそのままつけるが」
ん~。まあそれならいいかな?どうせ強くなるためにつけただけだし。
「それでかまいませんよ」
「わかった。…よしこれで後3つだ」
「じゃあ後は小松シェフ並みの食運をください」
トリコの世界ではこれがあるかないかで大分違うからな。
「わかった。これで後は2つだな」
う~ん。意外にないもんだなぁ。願いってのも。
(そういえばトリコの美食四天王だっけ?彼らは動物のパートナーを連れていたな…)
主人公のトリコがバトルウルフで占い師のココがエンペラークロウ。そしてサニーがマザースネークだったか。
よし、決めた。
「パートナーになる動物をください」
「動物?」
俺は首を傾げるヨミエルさんにこれから行くトリコの世界の主人公たちが自分のパートナーになる動物たちがいることを告げる。
「ふむわかった。ならばこれをやろう」
そういってヨミエルさんが手をかざすと俺の足元に1つの円柱状のケースが出現した。
「これは?」
「それは『鏡心きょうしんの卵』。この卵からは持ち主によって異なる獣が生まれてくる。普通に動物をやるよりこのほうがおもしろいだろ?」
なるほど。確かにこのほうがワクワクするな。一から育てたほうが愛着も沸くだろうし。
「ありがとうございます。ヨミエルさん」
「構わない。仕事だしな」
それじゃああと1つはなんにしようかな…。あ、そうだ。
「あらゆる傷や病を治す力ってできますか?」
それがあれば大分死ににくくなると思うんだが…。
「出来ないことはないが、それだとその能力だと始めは制限をかけさせてもらうぞ?力量が上がる度に能力が上がる仕様になるがそれでもいいか?」
まあ、そんなとこだろな。
「はい、構いません」
「うむ、わかった。それでは「待ってください!」うん?どうしたシャルロットよ」
「僕も連れて行ってください!」
「…ふむ、それはなぜ?」
ヨミエルさんはシャルロットさんの宣言にも動じた様子はなくただシャルロットさんに疑問を呈す。
「僕は正直、アキトさんにあうまでいろいろ不安でした。どんな人なんだろう、どんなひどい命令をされるんだろうって、自分のやったことを棚に上げて自分のことばっかり…」
…あれ?そんなこと考えてたの?
「でもアキトさんはそんな僕のことを許してくれた。だからそんなアキトさんの力に僕はなりたいんです!」
…正直感動した。ええ子やなあぁ…、シャルロットさん。自分の間違いをちゃんと認め、なおかつ恩返しのために危険な世界に自分から飛び込んでまでついてきてくれようとするなんて…。
あ、でも仮にも天使が勝手に転生なんかするなんていいのか「いいぞ」いいのかよ!
「どのみちシャルロットは何かしらのペナルティをこなさなくちゃならなかったからちょうどいい。」
そうゆうことですか…。
「アキトさんは僕がついてっちゃ迷惑かな…?」
気づいたら涙目でこちらを見ていたシャルロットさんがいた。って、
「そ、そんなことないぞっ!」
「本当…?」
う、可愛い…。
「本当だって!やっぱり1人で知らない世界はこころぼそかったからな」
「…えへへ。ならよかった♪あ、それから僕のことはシャルロットでいいよ?」
「わかった。よろしくなシャルロット」
「うん!」
「ゴホンっ!もういいか?」
「「あ、すみません…」」
ヨミエルさんの咳払いでようやく俺たちは自分たちの世界から帰ってくる。
「やれやれ。いちゃつくなら転生してからにしてもらいたいものだ」
な、なにいってんだこの人は!?
「い、いちゃついてなんかないです!」
「そうですよ!」
「おや、では君はシャルロットが嫌いかね」
え、とと、突然なにをいってるんだこの人は!?
「き、嫌いなわけないでしょう…」
「では好きかね」
「そこまで聞くかあんたあぁ!?」
俺はこのヨミエルさんの嫌がらせのような質問を無視しようと思ったが、
くい、くい
「ん?」
「…………(じぃー」
「…………」
「…………(キラキラ」
…とてめ期待のこもった眼差しで俺を見つめてきた。
えっと…。
「す、好きですよ」
まあ、嘘ではないしな。美少女で優しいなんて好きにならない要素がないし。
俺がそういうとヨミエルさんはニヤニヤしだす。
「そうかそうか。よかったなシャルロット」
「はい♪」
「え…」
それってどういう…。
「それは転生してからシャルロットに直接聞きなさい」
ヨミエルさんがそういうやいなや指をパチンと鳴らすと俺とシャルロットの体が光り出す。
ちょっ、まだ聞きたいことが!
しかしそんな思いもむなしく俺とシャルロットは光に包まれてその場から消えてしまうのであった。
そして最後に聞いた言葉は
「これからよろしくね、旦那様♪」
シャルロットの可愛らしいお嫁さん宣言だった。
おぅ、マジですか…。
後書き
感想や誤字脱字の指摘などお待ちしております。
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