ドン=ジョヴァンニ
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第二幕その十八
第二幕その十八
「もうここまで来たら」
「言った筈だ」
ジョヴァンニは蒼白にすらなっていない。手を掴まれてもそのまま立っていた。
そうして。彼は言うのだった。
「嫌だとな」
「何て無茶苦茶な」
レポレロは今度は完全に呆れていた。
「本当にこのままだとどうなるか」
「時間はない」
また騎士長が告げてきた。
「その証に見るのだ」
「な、ななななななっ!!」
レポレロはまた驚きの声をあげた。騎士長が消えると辺り一面紅蓮の炎に包まれ。そして地が割れそこから不気味な声が聞こえてきたのだ。
「貴様の罪を悔い改めるのだ」
「さもなければ我等が引き立てていこうぞ」
「これは悪霊達か」
ジョヴァンニはもう自由になっていた。しかしそれでもまだ退こうとはしない。その場に立ち炎に囲まれたうえで立っているのである。
「地獄の悪霊達か」
「そうだ、その通りだ」
「どうするのだ?」
恐ろしい声が響いてくる。
「悔い改めるのか?」
「どうするのだ」
「例え魂を引き裂かれようとも」
だがジョヴァンニはその悪霊達に対しても言うのだった。
「身体を潰されようともだ」
「旦那、本当にこのままじゃ」
レポレロは主の結末を見た。
「地獄に」
「さあ、どうするのだ?」
「生き方をあらためるのか」
「馬鹿を言え」
ジョヴァンニは毅然として返した。
「悔い改める位ならばだ」
「どうするのだ?」
「地獄か?」
「そうだ、地獄だ」
彼は毅然として言うのだった。
「地獄に行ってやろう。喜んでな」
「よかろう」
「それではだ」
無数の悪霊達が地の底から姿を現わしてきた。どれも人か魔物かわからない異形の姿をしている。その彼等がジョヴァンニを取り囲んだ。
次の瞬間には炎がジョヴァンニと魔物達を取り囲む。しかしその中でもジョヴァンニはその態度を変えていなかった。
「地獄にも美女達はいるだろう」
笑ってさえいた。不敵な笑みである。
「ならば私はその美女達と遊ぼうぞ」
「いいだろう」
「ではそうするがいい」
こうしてジョヴァンニは悪霊達と共に紅蓮の炎の中に消えた。すると炎は消え部屋は元に戻った。後には呆然となるレポレロだけが残された。
そしてこの場に。残された者達が来たのだった。
「さあ、遂に追い詰めたぞ」
「悪党、覚悟しなさい!」
まずはマゼットとツェルリーナが言う。
「叩きのめしてやるからな」
「とっちめてやらないと気が済まないわ」
「その通りです」
アンナも言うのだった。
「あの男を鎖につないでやります」
「そう、この僕の手で」
オッターヴィオはその手に銃を、腰に剣を持っている。何時でも戦えるようにしてあった。
「捕まえてやる。若し逃げようとするならば」
「いえ、あの方は逃げませんよ」
だがここでレポレロが言うのだった。
「というか逃げられなくなりました」
「!?それは」
「どういうことなんだ?」
「貴方達が探しているあの方はですね」
さらに彼等に話すのであった。
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