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ドン=ジョヴァンニ

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第二幕その十七


第二幕その十七

「それがどうかしたか」
「私はそなたの為すべきことも知っている」
 騎士長はまた言ってきた。
「だからこそ答えるのだ」
「何をだ?」
「私の場所に晩餐に来るのか」
 彼に誘いをかけてきた。
「私の場所に。どうだ?」
「ふむ。卿の晩餐にか」
「どうするのだ?」
「断るに決まってますよね」
 レポレロは何とかテーブルに手をかけてそのうえで立って主に問うた。
「こんなお誘いは」
「決まっている」
 ジョヴァンニはその彼の方を振り向かずに述べた。
「それはな」
「嫌ですよね」
 レポレロは絶対にこう答えて欲しかったのだ。
「こんなお誘い絶対に」
「絶対に?」
「そうです、絶対に断りましょう」
 こう主に告げ続ける。
「本当に。恐ろしいことになりますよ」
「だからもう私は決めている」
 やはりレポレロの方を振り向かないジョヴァンニであった。
「私は行く」
「えっ!?」
 レポレロはここでいよいよ血相を変えた。蒼白な状態から今度は卒倒しそうになった。
「じゃあ旦那は」
「招いてくれて礼を言う」
 ジョヴァンニは立ち上がり騎士長の方に歩み寄る。レポレロは硬直してしまっている。
「それではだ」
「約束の証にだ」
 騎士長は己に近付いてくるジョヴァンニに告げるのだった。
「私に手を預けてもらいたい」
「いいだろう」
 その言葉に従い手を預ける。するとその騎士長の手は。
「石の手か」
「そうだ」
 地の底から響き渡る様な声だった。
「逃れないのか?」
「行った筈だ」
 その石の手に掴まれてもまだ平然としているジョヴァンニであった。
「私は行くと」
「では告げよう」
 そのジョヴァンニの言葉を受けてさらに言う騎士長であった。
「今の生活を止めよ」
 エルヴィーラと同じことを告げるのだった。
「今の生活をだ。懺悔をしてな」
「私に懺悔をせよというのか」
「そうだ」
 やはりそれだというのだ。
「最早猶予はならん」
「私は悔い改めない」
 だがそれでもジョヴァンニはこう答えるのだった。
「決してな」
「悔い改めるのだ、悪党よ」
 騎士長はなおも彼に告げる。
「さもなければだ」
「どうだというのだ」
「御前の行く場所は一つしかない」
 地の底から響き渡る様な声がまた響いた。
「それはだ」
「だから旦那」
 レポレロも後ろから必死に主に告げる。
 
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