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Magical Girl Lyrical NANOHA- 復元する者 -

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第1話 始まりの日

 
前書き
こんにちは。

こーひーぱんと申します。

拙い文章ですが、徐々に向上するよう頑張ります。 

 







薄暗い部屋にカーテンから指す木漏れ日。
家具はシンプルな物で揃えられ、本棚には多くのジャンルの書籍が端整に並べられている。
この部屋の主である少年は、ベッドで掛布団を被りながら、寝息を立てながら健やかに眠り続けている。
暫くすると、ベッドの横の勉強机の上に置かれたスマートフォンのアラームが鳴り響く。


「う……ん~……」


少年が寝返りを打ちながら、ごそごそと布団から顔を出し、机の上にあるスマートフォンに手を伸ばすとアラームを切る。
そのまま、布団を退けてベッドから起き上がる。


「ふぁ~~……ねむ……」


ベッドから起き上がると、クローゼットへと向かい、着替える。
寝癖のあるセミロングの黒髪を直しながら、自分の通う小学校の制服に袖を通す。
クローゼットに備え付けられた鏡で身だしなみを整える。


「よし!」


着替えを終え、クローゼットを閉め、部屋を出る。
階下は、朝食の支度をしているだろう母の軽快な包丁音が聞こえ、ご飯の美味しそうな匂いが鼻腔を擽る。

僕、高町 葛葉。
現在9歳、私立聖祥小学校の3年生にして。

神様より“力”を携えられた転生者(うまれかわり)である。

これは、僕と僕の妹……高町なのはが魔法と出会った最初の話。

色々な出逢いと別れを経験した。

全ての原点。

始まりの物語






第1話 [始まりの日]









階段を降りていくと既に朝食の準備は終わっていた。
キッチンでは、母…高町 桃子が調理後の軽い片付けをしており、一名を除き、全員が居間のテーブルに着席している。
葛葉は、その約一名を除き、家族と挨拶を交わす。


「おはよう!」

「「「「おはよう、葛葉」」」」


元気良く声を出すと、父母と兄姉から挨拶が変えてくる。
席に座り、新聞を読んでいる父、高町 士朗。
その向かい側に並んで座っている兄、高町 恭也と姉、高町 美由希。
そしてあともう一人…。

それが現在の葛葉の家族達である。
両親は現在、喫茶店を営んでおり、兄は大学……姉は高校生である。


「なのははどうした?葛葉」

「まだ寝てるんじゃない?」

「起こしてあげなよ、くーちゃん」

「起こしてもまた寝るから無駄」


最早、諦めの境地である。
我が双子の妹……高町 なのは。
寝起きが頗る悪く、起こしに行っても中々起きない。


「なのはの寝坊も困ったものねぇ」

「そう思うなら母さんが起こして来てよ」

「兄妹でしょ?お兄ちゃんなんだから、面倒見てあげないと」

「双子だから、歳は変わらないよ…… 」


めんどくさい事この上ない。
小学三年生にもなって一人で起きれないとは情けない。
とはいえ、遅刻させる訳にもいかない。
母の言葉に従い、席を立ち、起こしにいこうとする。
それど同時に、二階から大声が聞こえた。


「にゃゃゃゃゃゃ!!」


家中に広がる焦ったような声。
それを聞き、葛葉から溜め息が盛れる。


「起きたか……」


起こしにいこうとする矢先であったが、どうやら我が家の姫君は目覚めたようだ。
視線をそっと居間に置かれた時計に移す。
時間的余裕はほぼない。
改めて、深い溜め息が口から零れる。

僕の1日はこうして始まる。
いつも通り、何事もなく。
今日も愚妹を引き摺って、バス停まで走らなければならないと思うと気が重い。




★★★★★




通学に通うバスの中。
バスの奥に座る四人の子供。
一人は葛葉で、疲れた顔をしている。
もう一人は彼の妹。
茶髪を白いリボンでツーサイドに纏めている少女…高町 なのは。
その隣に並んで座る二人の少女。
金髪の少女は、アリサ・バニングス。
紫掛かった黒髪の少女は、月村 すずか。
小学一年生からの友達である。
今もとても仲が良さそうに話している。


「葛葉くん大丈夫?」

「毎回毎回、大変ねぇ、アンタ」

「もう次回は見捨てていく」


アリサとすずかの気遣う言葉に肩を落とし、息を吐く。
このバスに乗るまでの道行き。
寝坊したなのはを担ぎ、猛ダッシュ。
何とか、出発時間ギリギリに間に合った。
お陰で朝からどっと疲れた。


「明日から問答無用で置いてくからな」

「葛葉~見捨てないで~!」


無慈悲に告げる葛葉。
それを聞き、なのはが横に座る双子の兄の腕に抱き付く。


「離れろ。ウザい」

「酷い!」

「自業自得だ」


毎回起こしに行く身になってほしい。
疲れる事この上ない。


「頑張って起きろよ」

「むぅ~……葛葉のイジワル」


腕に抱き付きながら、葛葉を恨みがましく見詰めるなのは。
その視線を彼は涼やかに受け流す。
他愛もない兄妹の会話と友人達の語らい。
前世で望んでも手に入らなかった日常を葛葉は謳歌していた。










バスは予定通りに学校に到着。
バスから下りて、四人は校門を通り、校内に入っていく。
教室に向かい、クラスメイト達と挨拶を交わす。
自分の席に座り、授業の準備を始める。
2度目の小学生故に、授業内容は楽勝だ。
授業の準備だけをして、寝る体勢に以降する。


「あ、ダメだよ。ちゃんと起きてないと」

「聞かなくても余裕だよ」

「アンタねぇ~」


いつの間に近くに来たのか。
アリサやすずかに咎められる。
それを無視し、眠りに付こうとする。
今日もなのはを引き摺って疲れた体力を回復させないと。


「コラ!葛葉!」

「まぁまぁ、アリサちゃん」


無視して、瞼を瞑る。
心地よく、微睡みに落ちる。
起こそうとするアリサをすずかが宥める。
その近くになのはも近付いてきた。


「にゃははは…葛葉はいつも通りだね」

「もう…これじゃあ、なのはの事言えないじゃない」

「にゃ!アリサちゃん、どういう意味!?」

「そのままの意味だと思うけど…」

「すずか…アンタも酷いわね」


眠る葛葉の机の周りで騒ぐ三人。
男子勢から羨望の眼差しを感じるが無視をする。
全く、静かに寝かせてほしいものだ。





暫くして授業開始のチャイムが鳴り、三人は葛葉の席から自分の席へと戻っていく。
午前の授業を全て睡眠に費やし、お昼休み。
四人 弁当を持参し屋上へと向かう。
屋上にあるベンチに腰掛け、弁当を食べながら談笑する四人。
すると、なのはが三人に将来の夢について聞いてきた。
葛葉が寝てる間の授業で先生に出された課題のようだ。
アリサやすずかは、朧気ながら自分のやりたい事を話す。
葛葉も無難な夢を語ろうと口を開く。


「そうだな……翠屋の二代目店主かな~」

「何よ、なのはと似たようなものじゃない」

「将来の夢と言われても、難しい課題だよ?」

「だよね~ 」


葛葉の言葉にすずかも同意する。
漠然と将来の夢と言われても解らない。
まだ、子供である自分。
前世で死んだ時の年齢は18歳。
色々と先行きを考えなければならなかった年齢であったが、何も決めていなかった。
否……決めようとしていなかった。
元よりこの身は、未来を選べる身分でなかった。
現世においても同じ事。
神に願い、わざわざ与えてもらった“力”も使い道が解らない。
前世の事を少し思い出していると、なのはが声を掛けてきた。


「葛葉?」

「ん?何、なのは」

「どうしたの?何か難しい顔してるけど…」

「……何でもないよ」


顔を覗きこみ、尋ねてくる。
なのはの問いに心配を掛けないよう首を振る。
口元に笑みを浮かべながら、頭を撫でる。
いきなり撫でられ、理由が解らず、不思議そうな顔をする。
なのはの頭を撫で終えると別の話題で話を逸らし、弁当に口を付けながら、話を続けた。
楽しく談笑をしながらも、頭の隅で考え続ける。

2度目の人生を与えられた。
自分は恵まれた存在だろう。
しかし、当の本人はあまりにも“生きる目的”が欠如している。
生まれ落ちて、9年。
前世と合わせれば、27歳。
もう、良い大人だ。
未だに目的も定まらず。
ただ、生きているだけ。

神は何故、僕を転生させたのだろう。
僕にそんな価値があるとは思えない。
自我がはっきりしてから考え続ける命題。
答えはまだ見つからない。
此処に入れば、見つかるだろうか。

前世では見付かる事が叶わなかった。

僕の道。

幸福の在処を……。








放課後。
四人並んで並木道を下校する。
アリサとすずかは普段、習い事等で一緒に帰れる事は少ない。
二人とも、良家のお嬢様であるが故に色々と大変そうだ。
楽しんでやっているようだからタフだな、と思う。
今は自分の横で楽しげになのはと話している。
その中で会話の方向が葛葉にも飛んできた。


「葛葉、アンタも習い事とかしたら?」

「例えば?」


どうやら、なのははまだ将来の夢というやつに悩まされているようだ。
アリサとすずかが、何か習い事をしたら提案したのだろう。
無難なアドバイスだが、間違いではない。
何処で何が切っ掛けになるかは解らない。


「ピアノ……とか?」

「それ、二人ともやってるだろ?仲間欲しいだけじゃん」

「ふふふ、バレた?」

「だけど、葛葉…ピアノ弾けるでしょ?」

「二人が弾いてたのを見よう見まねで弾いただけだ」

「それはそれでムカつくはね」


苦い顔をして此方を見てくるアリサ。
涼しい顔で受け流す。


「葛葉って大抵の事は何でも出来るからね」

「なのは、それは言い過ぎ。出来ない事ぐらいある」


何処の完璧超人だ。
出来ない事等、腐るほどある。


「そうかな?」

「なのはより理系の点数が悪い」

「それは苦手なものでしょが!」


アリサからツッコミが飛んできた。
しかし、事実。
理系はなのはが得意。
逆になのはは、文系が不得意だが、僕は文系が得意だ。


「兄妹で得意なものが分かれてるよね?」

「双子だからな」

「関係ないでしょ、それは」

「お互いに足りない部分を補ってるだよ」

「ものは言い様ね」


話しながらそのまま、道なりに話しながら下校していく。
すると、突然なのはが周囲を見渡し、キョロキョロし出す。
不思議に思い、声を掛けようとしたその時………。


(……誰か……)

「は?」

「?……何? 葛葉くん」

「すずか、何か言ったか?」

「ううん、何も言ってないよ?」


葛葉の疑問にすずかが首を振り、否定する。
不思議に思い、当たりを見渡す。
気のせいだったのだろうか?


「どうしたのよ?」

「何か聞こえないか?」

「?……何も聞こえないわよ」


葛葉の言葉にアリサが耳を澄ませるが、何も聞こえない。
すずかも不思議そうな顔をする。


「空耳か?」

「そうじゃない」

「……」


何か釈然としないながらも自分を納得させ、歩き出そうとするが……。


(……誰か……)

「っ!?」


再び頭に響く声。
今度は、先程よりもはっきり聞こえた。
声の感じる方向に視線を向ける。
横にいるなのはも同じ方向を向いていた。
歩道沿いの林の中。


「葛葉も聞こえた?」

「あぁ……なのはもか?」

「?どうしたの、二人共?」

「気のせいじゃない……」


確かに聞こえた、助けを求めるような声。
すずか達には聞こえないのだろうか。
二人を見て、首を傾げている。


「こっち!」

「あ、なのは!」

「なのはちゃん!」

「もう、何なのよ……」


なのはが林に駆け出していく。
急に走り出した彼女を追い掛ける三人。
歩道沿いの柵を越え、林の中に入り、進んでいく。
なのはを追い、林の中を突き進んでいくと、少し開けた場所に出た。
そこには何かを抱え込むように座っている妹の姿。
腕の合間から覗く小さな生き物。
少し汚れているが、綺麗な毛並みをした小動物。
イタチの様に見えるが、少し違う?

動物を心配そうな顔で見るなのはに、三人が駆け寄っていく。
葛葉がなのはに声をかける。


「なのは」

「あっ……葛葉」

「急に走り出すな。危ないだろう?」

「ごめんね……だけど、この子が」

「そう、その動物どうした?」

「ここに倒れてて、怪我してるみたいなの」


なのはがイタチもどきに視線を移す。
葛葉も気になり、覗き込むように見た。
確かに、擦り傷等が見受けられる。
他の動物と喧嘩でもしたのだろうか。
葛葉の左右からアリサとすずかも、なのはの腕に抱えられているイタチもどきを見る。


「イタチかな?」

「フェレットじゃない?」


動物の種類について議論する二人。
だが、今はそれどころではない。


「この近くに動物病院ってあったか?」

「うん、この先にあったはず……」

「じゃあ、行こう。此のまま居てもしょうがない」


なのはを立たせ、手をひいて歩き始める。
アリサとすずかもそれに続く。
林から抜け出し、目的の病院へと歩を進める。
優しく不安げな表情のまま歩くなのは。

暫く歩いていくと目的の病院に付き、イタチもどきを診察してもらう。
怪我は軽いものであった様で、大事はないと先生が話す。
飼い主がいるのか、野生動物かどうかは確認が直ぐに出来ないため、今日は病院で預かってもらうことになった。
病院から出る間際、眠っている様子のイタチもどきをもう一度見詰める。
あの場では、少し動揺していて気づくのが遅くなったが、この生き物から微かに“ある気配”を感じる。
僕の持つ“力”に似て非なる“力”の脈動。
気になりはしたが、イタチもどきを先生に任せ、帰路につく。

この何気ない日常のヒトコマが分岐点。
僕となのはが、ある事件に関わる事になった。

運命の出会いを告げる始まりであった。









 
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