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ドン=ジョヴァンニ

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第二幕その二


第二幕その二

「陥落させに行くんですね」
「その為にこれがあるのだ」
 何時の間にかその手にマンドリンを持っている。
「そしてだ」
「そして?」
「御前の服を借りる」
「えっ、私の服をですか?」
「そうだ。御前の服だ」
 こう彼に告げるのだった。
「御前の服をな。借りるぞ」
「どうして旦那が自分の服で行かないんですか?」
「侍女に貴族の服で出る奴がいるものか」
 こうしたことにまで気を回すジョヴァンニだった。
「いないな。そうだな」
「まあそうですけれど」
「わかったら着替えるぞ」
 早速自分のマントと上着を脱ぎはじめていた。
「いいな」
「わかりましたよ。それじゃあ」
 何だかんだでそれに頷くレポレロだった。そして主と服を交換する。ジョヴァンニはレポレロの服を着てからそのうえで。ある家の窓のすぐ下に向かうのだった。
「その家だったんですか」
「ここから感じる」
 また勘であった。
「ここからな」
「相変わらず物凄い勘ですね」
 レポレロも呆れるばかりだった。
「相手がいる場所までわかるなんて」
「女のいる場所には独特のものがあるのだ」
 これはジョヴァンニにしかわからないことだった。
「だからだ。今ここでな」
「じゃあまあやって下さい」
 主の服を着ているレポレロは少し離れた場所でこう言うだけだった。
「お好きなように」
「うむ。それではな」
 窓辺の下に来た。そうしてマンドリンを手に歌おうとする。だがここであの声が聞こえてきたのだった。
「鎮まるのです、私の邪な心よ」
「げっ、この声は」
 今何処からか聞こえてきた声を聞いて顔を顰めさせたレポレロだった。
「ドンナ=エルヴィーラさんの声じゃないですか」
「胸の中で動揺するのは止めて。あの信仰を知らない裏切り者に憐れみを持ってはいけないのよ」
「まずいですよ、これは」
 レポレロは顔を顰めさせて主に告げた。
「あの人とまた鉢合わせしたら」
「私はチャンスを逃がさない」
 彼は言うのだった。
「御前はそこに立っていろ」
「ここにですか?」
「そうだ、ここだ」
 自分の前に立たせるのだった。そしてそのうえで。
「エルヴィーラよ」
「えっ!?」
 主が自分の後ろから大声でその最も会ってはならない相手の名前を言ったのを耳にして思わず声をあげた。
「今何て」
「私の愛する人よ」
「あの声は」
「そうだ。私だ」
 さらに言うジョヴァンニだった。
「許しておくれ」
「神様、何ということでしょう」
 エルヴィーラの声が感激したものになっていた。
「何という不思議な感激が私の胸に蘇るのでしょう」
「またあの人は」
 レポレロはそんなエルヴィーラの声を聞いて顔を顰めさせた。
「まだ旦那のことを信用するのか」
「降りてくるのだ美しい宝よ」
 ジョヴァンニはさらに言う。
「わかってくれるだろう、御前こそ私の心が恋焦がれるその人なのだ」
「私が」
「そう、そなただ」
 その偽りでしかない言葉を続ける。
 
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