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管理局の問題児

作者:くま吉
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第10話 ちょwwwタキシードが高すぎてツライッ!!(>_<)

 
前書き
遅れて申し訳ございません。

いやマジでスイマセンでした。 

 


「パーティーですか?」

 ある日の昼食中、リクは疑問の声を上げた。

「うん。この前解決した事件のお礼でパーティーの招待状貰っちゃって。一緒に行く人いないからどうかなって」

 そう言ってフェイトは二枚の招待券を見せる。
 それを見ながらリクは考える。
 勿論この前のなのはの件があるので気持ち的には行かないでほぼ決まって―――。

(上手いメシが食えるならアリなのか?管理局の執務官等、高官達がぞろぞろ来るパーティーだ。かなり豪華なんだろうな)

 ―――いなかった。
 リクの心は行きたいと訴えている。しかし理性が「え?それってどうよ?」とも訴えている。

「何の話してるの?」

 そんな時なのはがやってくる。
 後ろにはスバルやティアナを含めたフォワード新人四人がいる。
 その時リクはティアナと目が合うが、ぷいっと逸らされた。その際にティアナの顔が僅かに赤らんでいたが、パーティーの事で頭が一杯だったリクはそれには気付かなかった。

「えっと、リクをパーティーに誘おうと思って」

 フェイトが素直にそうなのはに告げる。
 素直は良い事なのだが、「アレ」以来なのははリクの事に関してのみ非常にシビア…というか心が狭くなるのである。

「えっと…フェイトちゃん?別にリクくんを誘う必要なんてないと思うけど。レイくん辺りに頼めば…」

 しかしフェイトはかけがえのない親友。
 一言「リッくんと二人きりでパーティーなんて絶対ダメ!!」などとは言えない。なので遠まわしにフェイトの思惑を阻止しにかかる。
 だがここで誤算が一つ。
 レイ自身、容姿が整っており、パーティーに連れていくなら問題はない。けれどレイは無類の女好きだ。そしてフェイトはそんなレイを嫌うまではいかなくともかなりの苦手意識は持っている。なので。

「えっと、レイはちょっと…」

 と、こういう反応になってしまう。
 ならば「他の人は?」と言いかけるが、下手にフェイトに適当な男を紹介して、その後取り返しのつかない事になってしまっては大変だと思い直し、なのはは言いかけた言葉を呑み込む。
 リクとフェイトを二人っきりにしたくないとはいえ、フェイトが変な男に引っかかるのは見過ごせない。
 結果として良い案が浮かばず、なのはは頭を悩ませる。
 その間にも話は進んでいく。

「リクどうかな?人助けをすると思って」

 フェイトは無意識下で上目使いをしながら、リクを見つめる。
 フェイトの反則的なまでの可愛さと、綺麗な瞳、そして上目使いのコンボ。心なしかフェイトの周りがリクには輝いて見えた。

「…分かりました。喜んで行かせて貰います」

 無剣リク。
 なんだかんだ単純な男である。







 次の日、リクはパーティーで着るためのタキシードを買う為、ミッドチルダにある商店街に来ていた。
 幸い給料のほとんどは使わずに残してあるので、フェイトの横に立つのに恥ずかしくないレベルのものは買えるはずだ。
 そう思いながら辺りの店を眺めていた。

「どうせなら高いやつ買いたいよな」

 初めて買うタキシード。
 まあ、18歳で、そこまで管理局の階級も高くないので、買う機会がある方がおかしいのではあるが。
 しばらく歩いていると、それなりに綺麗で、高級そうな面構えの店を発見した。

「あそこ良さそうだな」

 その店で買う事に決め、中に入る。

「いらっしゃいませ」

 現れたのは気品漂う四十代くらいの男性。
 全体からダンディズムが漂っている。

「タキシード買いたいんですけど。今度パーティーがあるんで」

「左様ですか。では、どうぞこちらに」

 リクは案内され、店員の後ろを着いていく。

「この辺り全部がタキシードとなっております」

 そこには多種多様なデザインのタキシードが数多く置いてあった。
 かなりの数あるので、普通なら迷うのだが、リクは迷わない。

「この中で一番高いやつってどれですか?」







「くそ、まさかこんなに高いとは…」

 リクは買ったタキシードの値段を思い出し苦い顔をした。
 先程、一番高い物を、と言って出てきたタキシードの値段が予想していたよりも遥かに高く、一瞬取りやめようと思ったが、今更「やっぱ止めてもう少し安いやつないですか?」というのは流石に恥ずかし過ぎたので、結果買ってしまったのだ。
 つまり唯の馬鹿である。

「まあ、これで一応人前に出ても恥ずかしくない物は買えたはず」

 なんだかんだ満足しているリクは、六課隊舎への道を歩きながら小さく笑う。
 正直、頭が悪いとしか言わざるを得ない額を払ったのだが、リクは現在最高に頭が悪いので、一切気にならない。
 と、その時。

 ボォオオオン!!

 凄まじい爆音と、衝撃が辺りに響き渡る。
 その音に、リクは即座に反応し、音と衝撃の出所を見る。リクがそこを見ると同時に、彼は感じた。馴染みなれた「ソレ」を。

「これは…魔力か?」

 立ち上る煙。そこから漂ってくる魔力を、リクは持前の感覚で鋭敏に感じ取った。そして、魔力が感じ取れるという事は、あの爆発は魔法によって起こされた可能性が高い。
 それは即ち。

「魔導師があれを起こしたのか?」

 魔導師の犯罪。
 それは「普通」の人間が起こす犯罪とはレベルが違う。
 普段管理局の局員は、自身が扱う魔法に非殺傷設定を設けている。だからどれだけの威力で魔法を放ったとしても、死ぬ可能性は限りなくゼロに近い。だが、一度非殺傷設定を外せば、魔法は質量兵器よりも遥かに危険で恐ろしい武器となる。

「くそ…っ!」

 リクは買ったタキシードを持って全速力で駆けだす。
 同時に、ポケットから通信端末を取り出した。ちなみにこの通信端末、「持っていない」という事をなのはに言ったら「もう、しょうがないなあ」と可愛らしく笑いながら買って貰ったモノだ。
 完全なヒモである。
 そんな通信端末から緊急連絡先に通信を掛ける。緊急連絡先は六課の隊長室、つまりはやてへと繋がるようになっている。
 幾度かのコールの後、通信が繋がる。

『はいはいどちら様ですか?』

 聞こえてきたのは可愛らしい声。
 その特徴的な声で、リクは、通信に出たのがはやてのユニゾンデバイスであるリインフォースⅡだと気付く。

「あ、もしもし。オレオレ」

『えっと…、あっ!その声はリクさんですね!どうしたんですか?』

「お、良く声だけでオレだと判断出来たな」

『えっへん!リインは出来る子なのです!所でリクさん本当にどうしたのですか?困り事ですか?』

「ああ、近くに血塗れで狂ったような笑い声を上げてる大量殺人鬼がいるから応援が欲しいんだが」

 勿論嘘である。
 しかし、純粋なリインはその嘘をまんまと信じてしまう。

『ええ!?た、大変です!大変です!今すぐ手の空いてる隊長を向かわせます!!』

 それだけ言ってリインは通信を切った。
 余りにも疑いなく信じている様子だったので、結果としてリクは罪悪感を感じているが、非常事態なのは間違いない。なので、最終的に過剰な戦力を寄こしてきてもそれはそれで良いかと考えた。

「とりあえず俺は何とか時間稼ぎをしないとな」

 リクは呟き、走る速度を上げる。
 現在彼は義魂丸を持っていない。非番であり、そしてタキシードを買いに来ただけだったので、必要ないと判断したのだ。
 局員の危機管理としてはマヌケもいい所だ。リクは内心で自分を罵倒する。
 だからといって事態が好転するわけではないが。

(流石に義魂丸がなくちゃ魔導師相手に勝つ事は難しいな。まあ、近接戦闘に持ち込めれば、アキレベルの白打…体術の使い手でもなければなんとか勝てるが…)

 それでも複数であった場合は勝つ事は非常に困難だろう。
 しかしリクは自分の甘さが招いた事態である事を認識し、覚悟を決める。

(死者が出る事だけは阻止出来れば…ッ!)

 そう考えるも、先程リクが見た爆発の規模では既に死者が出ている可能性がある。少なくともケガ人は出ているだろう。
 リクはただただ全力で走るのだった。
 そしてリクが目指す目的地では、何度目かの爆発音が響くのだった。







 リクが現場に到着した時、既にあたりは無残な姿になっていた。
 ビルは大きく損壊し、道には無数の穴が開いている。車は爆発した後なのか、真っ黒の金属の塊になっている。
 そして何より、周りには傷つき、血を流し倒れている一般人が数多くいた事だ。

「な…っ」

 驚愕し、そんな声しか出せないリク。
 が、リクは頭の片隅で現状の分析も行っていた。

(この惨状、明らかに銀行強盗や、宝石泥棒等を目的としたものじゃない。これは、恐らく―――)

 ―――破壊を目的としている。

 その考えに至った時、リクは自身の魔力感知で犯人を捜した。
 犯人自体は一瞬で見つかった。しかしその姿は明らかに異常だった。

「ア~ぅ~あー…」

 焦点の定まっていない眼。口からは涎を零し、意味のない声を発し続けている。犯人であろう男は完全に自我を失っていた。
 そして何よりも驚愕すべき点。
 男が来ているバリアジャケット。それが管理局員が来ているデザインと全く同じだったことだ。

「おいおい。あのヤク中がこれの犯人なのか?しかも管理局員ときたか」

 リクは他にも共犯者がいないか探すが、どこにも見当たらない。
 相手が単独犯だと分かったなら、リクの行動は早い。リクは手元にあった拳程の大きさの瓦礫を持つ。

「あーヴ~がぁぁあ!!」

 犯人である男は魔法を放とうとする。
 足元に広がるのはミッド式の魔法陣だ。

「させるかッ!!」

 リクは手に持った瓦礫を全力で男目掛けて投擲した。
 瓦礫は見事男の頭部に命中する。しかし、バリアジャケットを展開している以上、この程度の攻撃は大したダメージにはならない。
 リクもそれ自体は理解していた。
 これは、相手に隙を作らせる為のものだ。
 瓦礫が当たった事により、男は魔法の発動を強制的に中断させられる。それと同時に男の敵意は、瓦礫をぶつけた存在、リクに変わった。

「ぐげぶぁらあぁぁぁ!!」

 狂った声を上げながら、男は手のひらをリクに向けた。

「遅い」

 そう呟くと同時にリクの体は爆発的な加速をみせた。
 十メートル以上あった距離を数瞬で詰める移動法。これは昔、リクが地球という星に行った時に出会った人に教えて貰った移動法だ。
 日本にある古武術や、中国拳法に伝わるソレ。名を。

 ―――縮地という。

 男から魔力弾が放たれる。
 しかし、なのはに比べれば遅すぎるその攻撃をリクは横に移動した難なく躱す。そして相手の懐に潜り込んだ。
 ここまで近づけば、純粋なミッド式では完全に不利だ。
 自身にとって有利な距離まで詰めたリクは、男の顔面に渾身のアッパーを叩き込む。

「ぶヴぃらぁ!!」

 男の気色の悪い声を聞きながら、リクは先程男が魔力弾を放つ為に自分に向けた腕を掴んだ。
 そして、掌を捻り、上を向かせ、それと同時に下へ向く肘。その肘を下から上に、垂直に…蹴り上げる!

 ―――ボキィ!!

「があああああああああああああああああああああああああ!!!」

 余りの痛みに、男は絶叫を辺りに響かせ、リクの手を強引に振り解き、床でのたうち回る。
 この技もリクが地球に行った時に教えて貰ったものだ。
 現在ミッドで最も有名な格闘技、ストライクアーツ。このストライクアーツには関節技等の攻撃方法がない。少なくともリクは知らない。その理由は、ストライクアーツは競技用、つまりスポーツに近い武術である事。魔法と併用して戦う為、関節等の考え方が不要な事。等が関係しているのはないかと、リクは勝手に想像している。
 そんなストライクアーツがこのミッドでの格闘技というものへと印象である。

(見慣れていないが故に対処出来ない。俺の作戦勝ちだな)

 と内心ドヤ顔するのだが、そもそも自我が無い相手に作戦もクソもないので、結果として意味ない事だ。

「リク!」

 上空から知った声が響いてきた。
 リクが視線を向けると、そこにはバリアジャケットを展開したフェイトが来ていた。
 フェイトを見て、「そういえば今日非番とか言ってたな…」と思い出すリク。

「大丈夫!?」

 フェイトはリクが今日義魂丸を持っていなかった事を知っているので、その顔は心配で染まっている。

「心配しなくても大丈夫だ。それよりこの男運んでくれ。右腕が折れてるから治療も頼む」

「あ、うん。分かった」

 未だ激痛で鈍い声を上げている男をフェイトはバインドで高速し、デバイスを外し、手錠をかけた。
 これで今回の事件は一応の解決はした。
 しかし未だ解決しなければ謎が残り、ケガをした人の手当。そして壊れた町の修復等、様々な問題が残っているのであった。

 
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