幻の月は空に輝く
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暗闇の中の出来事・3
「ラン。お前には関係ない。帰れ」」
イタチが言い切る。でも、私にも引けない理由がある。私は、サスケとイタチの中間あたりに立ち、イタチを見つめた。
「帰らない。イタチさん。どうして俺がここに来たのか。このタイミングでここに現れたのか。わかりますか?」
途中まで今日だってわからなかったけど、それはひとまず置いといて、私はイタチを見つめ続ける。
「……」
イタチは無言のまま私を見てる。私という存在を量りかねているのかもしれない。この世界のナルトは強い。だからこそ、ストーリー通りに進んでいるイタチとサスケは間違いなくナルトに殺される。
サスケの性格は、今のナルトが嫌うもので構成されている気がする。
「本来なら、これは止めるべきじゃない…のかもしれない。俺という存在を明るみに出すべきじゃない」
殺される可能性が高いからね。元々両親は四代目に助けられたわけだし。しかも、宵闇一族が排除される要因全てが私に詰まっているからね。予知能力があると言われても、原作知識という認識しかないんだよね。
「それでも俺は……イタチさんとサスケが好きだから、止めさせてもらう」
鳥の姿で空を飛んでいたテンが、地面へと降り立つと同時に本来の姿に近い狐の姿をとる。勿論尻尾は9本。銀の毛並み。
イタチの眼が見開かれた。銀の狐の姿を取ったテンから感じるチャクラは尾獣と同じ物。チャクラを抑えているから、イタチとサスケにしか感じ取れないだろう。
しかも今は、見張り役の暗部全員に嘘の映像を送り込んでいる。ここに俺とテンがいるのは不自然という事もあるけど、目立つ事も避けたい。
「ラン、お前は何者だ?」
咄嗟に、サスケと私の間に入るイタチ。無意識の行動には本音が出るね。でも、用心の
為に間に入っただけで、私に対しての殺気はまだ感じない。
「俺は……宵闇族嵐誓を継ぐランセイが告げる。イタチさん。このままだと未来は貴方の思いとは違う形を描き出す」
「……」
月に照らされ、私の銀の髪が光り輝き、青だった瞳は光りを帯びた。人間離れをした空気を纏い、ランはサスケへと目を向けた。
「思考を停止し、考える事をやめ、イタチだけを憎む。
それは、サスケが尊敬しているイタチが、心からこれを望んだと思うか?」
シャラン。と頭の中に鈴の音が鳴り響く。
この感覚は、まだ生まれて間もない頃に感じた。
いつの間にかのびた髪。本来の姿に近付いたテンカの顔が、私のすぐ横にある。9本の尻尾は、私を護るように動いていた。
「相手を護りたいなら、イタチ──…君は君を生かす事を考えろ」
頭がボーとしている。自分の口が勝手に動いているような気がする。
「…ラン」
イタチが呼んだみたいだけど、私の意識は混濁中で何も答えられない。
〈イタチ。今ランセイが告げた言葉の意味を考えておけ〉
頭が揺れたと思ったら、傾く私の身体。それをテンが尻尾で包み込んでくれた。
〈10分程で意識を取り戻す。その後の話し合いが終わるまで、擬装しておいてやる。暗部が10人。我に化かされているとは気付かず、見張っている気になっている。忍の質も下がったな〉
私の身体を大事そうに尻尾で包み込みながら、イタチにこれからどうしたいのかを叩きつける。
イタチやサスケにしてみたら、さっきまでの私が気になって仕方ないのかもしれない。今は、いつもの私がテンの尻尾に包まれて眠っているけど、倒れる直前の姿は20歳ぐらいだった。
そんな姿を見て、しかも9つの尻尾を持つ銀の狐に護られている私を不思議に思わないはずがない。
尾は9本だが、ナルトの身体に封じられた九尾とは違う九尾の狐。
「ん」
ぼやけていた周りの風景が、段々はっきりと見えてきた。
途中記憶がない。何を言ったんだっけ。
「テン。どうなった?」
テンのふわふわもふもふな尻尾をベット代わりに眠っていたみたいで、どのぐらい時間が経ったのだろう。キョロキョロと辺りを見回し、サスケとイタチの姿を確認した。
良かった。イタチがまだいた。
「ラン?」
「イタチさん…」
若干緊張しているイタチを、私はジッと見つめた。
「……さっき言った事は本当か?」
テンの尻尾は相変わらず私を包んだまま。
「本当。嘘じゃない」
眠たい。本当にものすごく眠い。でも話をしなきゃいけないと、目をこすりながらイタチを見た。
「でも、行動を…これから暁に行くと思うが、そのまま暁に潜り込んで欲しい。サスケはイタチさんを憎んでるフリをしてほしい」
なるべく、流れは変えたくない。物語から外れると、私の持っている情報が役に立たなくなる。
「ラン……でも兄貴は皆を……父さんや母さんを」
握り拳を作ったサスケの声は震えていた。
「今は話せない。けど、一族の無事は俺を信じてとしか言えない」
ギリギリだけど皆助けられたと思う。ナルトの両親は魂に傷を負ってしまったから、未だに傷が癒えずに眠りについているけど、うちは一族はそこまで掛からずに癒えると思う。
絶対にばれない亡骸のダミーをテンに用意してもらっているから、それも大丈夫だと思う。真実を口にしてしまえば、その時点で癒しが止まってしまう。
だから、これは口に出来ない。言葉を発した時点で終わり。
「イタチさん。サスケ。お互い話せないこともある。それでも、手を組んでほしい。里を騙す事になっても」
私は手を差し出した。この後の選択は2人次第だ。緊張で表情が歪みそうになるけどそれを無理やり抑え込む。
「ランを信じる。俺は、兄貴を憎むフリをすればいいんだな?」
サスケが私の手に自分の手を重ねてくれた。
「あぁ」
「俺は暁で様子を見る。それでいいか?」
イタチも手を重ねてくれた。
「はい。お願いします」
予想よりもあっさりと仲間になってくれた二人。それが不思議だったけど、上手くいったからいいのかな。
「言い忘れてた。二人とも、宵闇族の事は忘れてくれ。それを知っている事で命を狙われるかもしれない」
テンと私の関係も説明はしてないけど、イタチさんは多分何かしらには気付いたかもしれない。でも、それを口に出すイタチではなかった。
おそらくだけど、私たちの事を調べるかもしれない。でも、イタチなら上手くやってくれそうな気がする。
〈ラン。そろそろ帰るぞ〉
「ん。わかった」
狐から鳥の姿へと戻るテン。
「おやすみ」
イタチとサスケに言い、再び風を纏い、うちは一族の土地から抜け出した。後はサスケとイタチの演技力にかかってくる。それは頑張ってほしい。
あぁ…でも宵闇族に興味をもったならそれは私の責任だ。
つい言っちゃうんだよね。あの状態になると。自分が自分でコントロール出来なくなる。なんでだろうなぁ…。
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