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神葬世界×ゴスペル・デイ

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第一物語・後半-日来独立編-
  第三十五章 日来の女達

 
前書き
 今日は女子回。
 乙女チックスタート。 

 
「にしても私達、何もしてませんねえ」
 と言うのは、長莵神社の鳥居下にいる美兎だ。
 戦闘中というのに我関せず、と眺めるように戦いの様子を見ていた。
 美兎の他にも数名の女子学勢が、同じように鳥居の下にいる。
 一人は覇王会伝達者の飛豊だ。
「まあ、仕方無いだろ。戦えないんだし」
「他に出来ることがあるかも」
「見守ることで手がいっぱい」
「伝達者らしく、皆に戦況を伝えたりとか」
「レヴァーシンクとアストローゼの方で充分」
「やる気無いですね」
「運動系じゃないからな」
 ははは、と笑う二人。
 戦いの音を聴きながら、しばしの沈黙。
 え、ちょ、話題が尽きたんですけど。これどうしろと? 灯、ヘルプです。
 階段に美琴を抱きながら座っている灯に助けを求めたが、案の定無視された。
 美兎よりも美琴とじゃれついていた方が楽しいため、彼女の助けを断ったのだ。
「じゃあ、恋か……」
 だからと恋和に助けを求めようとしたが、先程誰かから通信が入り離れたためここにはいない。
 完全に手詰まりだ。
 何かやるべきことはないかと親に聞いたのだが、安全な場所で待機、と言われたのでこうしているわけだが。如何せん落ち着かない。
 巫女ならば制限付きではあるが力を使うことが出来るのだが、自分はまだ巫女候補のため力の使用自体を禁止されている。
 巫女候補ということは、つまりはまだ未熟者と言うことであるからだ。
 沈黙にそわそわしていると、上斜め右方向から天上に向かって一線を描くものがあった。
 何なんのかと目を凝らす美兎は内心、
 話題ゲット――! イケます、まだ私イケますよお!
 盛り上がっていた。
 方向からして左舷前方船・日暮の方を指し、期待に胸を膨らます子どものように目を輝かす。
「あれ、あれって何なんですかねえ? ね――?」
「なんかさっきから様子おかしいぞ」
「そうですか? 何時も通りだと思いますけど」
「美兎は沈黙苦手ですから話題見付けて嬉しいんですよ、きっと」
 言うのは灯と美琴が座っている階段の向こう側で、こちらに歩いて来る恋和だ。
 度々起こる揺れや、大気を叩く砲音のなかで笑顔のまま近付いて来る。
「そしてあれは緋翼ですね。どうやら辰ノ大花が騎神を出撃させたらしく、その対処として送り込むとレヴァーシンクが言ってましたよ」
「あの通信はレヴァーシンクからだったんですね。だったら別に離れなくてもよかったじゃないですか」
「え? あ、ああ、そうでしたね」
 何処かぎこちない笑いをしながら、階段に辿り着いた。
 振り向き、火炎ノ緋翼に取り付けられた腰装着型加速機|《ウエストスラスター》から吐き出された、流魔の塵で出来た航跡雲を見て、顔を空へと上げていく。
「他にもネフィアとマギトが向かったらしいです」
「だいじょうぶ、なの? きしん、て、つよいから」
「倒すわけじゃないから大丈夫じゃないかと」
「だいじょうぶ、じゃない、の?」
「言い方が悪かったですね。平気です、皆帰ってきますよ。ほら、これ見てください」
 と言って、映画面|《モニター》を表示した。
 そこには戦いの様子が映っており、学勢達が映っていた。
 見て分かる通り、敵の数が多い。
 陣形を崩すことに成功はしたが、かえってそれが乱戦を招くこととなり不利な状況へと向かっている。
 経験の差は歴然だ。
 学勢側が潰れるのは時間の問題かもしれない。社交院の方は大人が多いため、どうにかはなっているかもしれないが彼方もきっと厳しい戦いを強いられているだろう。
 しかし、皆は頑張っている。
「辛くても皆、頑張っています。日来のために」
「馬鹿長のためでもあるわ。たった一人の告白が、国内を騒がす事態を招いたんだから歴史に残ってもいいくらいよね」
「それは行き過ぎではないと。でもまさかですよね、セーラン君が特定の誰を好きになるなんて。何時もは、皆好きだ、て言うのに」
「それだけ、すきってことなんだよ……きっと。きずついても、たすけること、あきらめてなかったから」
「他人の告白はさらっと断っておいて、自分が好きになった子には一途なんだから。ふふふ、あの馬鹿長、私の姫を傷付けるなんていい度胸してるわ……」
「怖いですから、その言葉。ほら、黒い変なオーラ出てますし」
 別に害のあるものではない。
 芸能系術の効果であり、それを発動させたのだ。
 だが演出がよく出来ているため、かなり恐ろしいものだ。
 すると、やる気が薄れていた飛豊が話しに加わってきた。
 どうやらここに来る前に、同じ覇王会のレヴァーシンクのアストローゼにお前いらない宣言をされたため傷付いたらしい。
 飛豊も大変ですね、と美兎は思った。
「そう言えばセーランが見えないが、どうしたんだ?」
 言われ、初めて気付いた。
 戦場となっている町のなか、何処にもセーランの姿が無い。
「本当ですね、何処に行ったのでしょうか」
「あれれ? 覇王会なのに知らされてないの」
「何がだ、私は何も知らされてないが」
「レヴァーシンクもよく理解してるんですねえ」
「なんか差別してないか、その言葉」
「気にしないでください。大したことじゃないので」
「気になるな」
 睨む飛豊に対し、恋和は笑って誤魔化した。
 追撃を阻止するために、視線を流して話を進める。
「セーランは捕まらないように単独行動してるんですよ。これもレヴァーシンクから聞いたんですけど、最悪だけど長であるセーランさえ残っていれば一人で宇天長の元へ行き、救出可能ということなのだそうです。そうなると色々とヤバいですが」
「ですが本当に宇天長の救出なんて出来るでしょうか」
 美兎のこの言葉に、この場にいる四人は彼女の方を見た。
 皆の視線が自分へと集まっており、緊張するが今は耐える。
 左人差し指を立てて、思ったことを口にする。
「だってそうじゃないですか。宇天長は四月二日の時、黄森から自身が解放されることを告げられ、それを阻止しようとしたセーラン君を突き放したんですし。それに今日、解放が行われるということは、辰ノ大花側は長を救えなかったことを意味します」
 言ってることは間違いでは無い。
 間違いでは無いからこそ、こうしてはっきりと言えるのだ。
「宇天長の仲間達でも救えなかったのに、他人のセーラン君が救えるんでしょうか。皆がいたときは空気を読んで言いませんでしたが、他人であるセーラン君では救えないと思うんです」
「あんたそれ、本気で言ってんの?」
 灯は顔を向けないまま、真っ直ぐ前を見ながら言う。
 その言葉に対し、迷わずこう返した。
「本気も何もそうじゃないですか。私だって宇天長が救われてほしいと思いますよ。ですけど、それにはやっぱり適格者みたいな人がいると思うんですよ。家族とか親しい人とか」
「そんなことセーランが思わなかったとでも思ったの? ばっかじゃないの」
「馬鹿ってなんですか、馬鹿って。セーラン君は小さい頃、苦しんでたんですよ。帰る場所が無くて、故郷を離れ、たった一人で日来に来た頃。榊先生が臨時保護者になってくれるまで一緒に住んでいたから知ってるんです。幼かった頃のセーラン君を……」
 今でも憶えている、あの時のセーランを。
 今とは違う、感情を表に出さなかったあの頃の彼を。
「日来に来た日から一年は口を開かないで、ただ生きていたんですよ。話しもせず、笑いもせず、遊びもしないで。まだ八歳の子どもが。それから少しずつ口を開くようになったんですけど、そこで初めて言った言葉が――」
 脳裏に浮かぶ、あの時の場面が。
 はっきりと、リアルタイムで流れているように。
『争い合って、皆死んで。どうして人は、それ繰り返すの……?』
 この言葉に両親は驚き、答えを返せなかった。
 八歳の子どもの言葉にしては、それはあまりにも重たい言葉だったからだ。
 きっと一人悩み続けていたのだ。そして、その悩みを人に聞けずにいたのだ。
「だから、出来るなら、もう悲しんでほしくないんです。宇天長が亡くなればきっとセーランは悲しみます。もしかしたらもう二度と、笑わなくなるんじゃないかと思うと、恐いんです」
「あんたってば何時も物事が始まってからぐちぐち言う癖あるから、こっちとしては面倒なのよねえ。それに前と比べて減ったとは言え、感情の上下運動激しいし、面倒な子よ。ほんとに」
 呟くように言ったが、その言葉ははっきりと聞こえた。
 灯の言葉は続き、
「まあ、セーランが強くはないことは確かね。あんたと同じ、皆のいないところでうじうじしてるのよ。そんなセーランが宇天長を救いに行った理由は簡単」
 とても簡単な理由だ。
 彼は度々、その言葉を口にしていた。
「好きになってしまったから、よ。好きになってしまったからほっとけないし、気になってしょうがないの。呆れるほど呑気だけど、可愛いところもあるのよねえ」
「好きになってしまったから、ですか。それで納得出来るんですから不思議なものですね」
「わたしも、そうだった。セーランがすきで、しょうがなかったときね、いっつもかんがえてたの」
「んもう、琴姫ったら。たまには私のことも想ってね」
「わかった」
 灯が急に美琴を強く抱き締めたため、美琴本人は苦しんだ。
 慌てて美兎は彼女を灯から引き離し、何の意味があるのか前に壁として飛豊を置く。
「おい、なんで私なんだよ!」
「やる気が無いようなので、役目を与えてやる気を上げようかと」
「これ絶対面倒事押し付けてるよな! てか明が怒ってるんだが、黒いオーラヤバいんだが!」
 不気味な笑い声と共に、何時の間にか消えていた黒いオーラが再び溢れ出るように彼女の周りを漂う。
 先程まで違うのは新たな芸能系術を発動したのか、長いその髪が逆立っている。
 怒れる鬼子の如く、歩む一歩で地面が揺れる。
 それは砲撃によるものなのだが、タイミングが良過ぎるため仕組んでいるのではないかと思う程だ。
 後退りする飛豊の背に恋和が張り付き、腕を前に
出し飛豊を自身の盾とした。
「ちょっと待て! お前も私を見捨てるのか!」
「何言ってんですか、そんな酷いことするわけないじゃないですか」
「今やってるだろ、今! さっさと美琴を渡してやれ、そしたら助かるから!」
「いやいや、美琴をやったら今度こそ離さないと思うのでしばらくは無理です」
「クソが! こうなったら取引をしよう。何が望みだ、言ってみろ」
「フフ、フフフ、フフフ……」
「“フ”だけじゃ分からないだろ、はっきり言ってみろ。て、聞いてないなお前! やめろ、近付いてくるな! 私は何もしてないだろ!」
 聞く耳を持たず、灯は近づいて来る。
 ふざけている場合じゃないだろ、と思うが言っても無意味無いことは分かっている。
 こうなったら腹を括るしかない。覚悟を決める飛豊の正面、数歩歩けば手が届く距離にいる灯が動いた。
 一瞬にしてその距離を積め、下から首へと右腕を伸ばし、こちらの息の根を止めに来た。
「そう言えば明の家系は――」
 言葉を言う前に、飛豊の悲鳴が響いた。
 この声を聞き付け、美兎の両親が来たのはすぐのことだ。
 おふざけが過ぎた彼女らが後で叱られたのは、もう言うまでもないだろう。



 町民グラウンドの周り。囲むように建っているナイター照明に一人の半獣人族が載っており、正面から来る流魔弾を右手で持っている銀の鞭で次々と弾き、砕いている。
 足場の悪い場所だというのに身体の軸はしっかりとしており、弾丸を弾く際に生じる衝撃を片足を軸に舞う形で逃がす。
 戦闘貴族の家庭に産まれた彼女は幼い頃から戦闘の仕方をその身に叩き込まれ、同時にどんな時であれ如何に美しくあるかを教えられた。
 美しくあることは戦闘貴族の誇りであり、美しくあればある程実力が高いことが証明させる。
 戦いの場であっても、如何に美しくあるかを彼らは求める。
 彼ら戦闘貴族において戦場とは、自身の美しさ、華やかさ、優雅さ。無論、力を証明する場所であり、なんら貴族が行う舞踏会と変わりは無い。
 戦いも娯楽の一つとして考え、楽しく、されど競い会うものとして自分の命が懸かっているとしても戦いを楽しむ。
 それは半分、獣人族の血が流れている半獣人族であるネフィアも変わら無い。
「距離にして三百前後ですわね、長距離からの射撃とはなんと花がありませんこと。そんなに近接戦闘はお嫌いなのでしょうか? 楽しいと思いますのに」
 独り言を言いつつも身体は動かし、鞭を振り、舞うだけという軽い動作だけで不規則に来る弾丸を対処する。
 これまでのことから彼方は今度、一機別々の方向へ計三方向へと別れた。
 きっと三方向からの集中攻撃をするつもりなのだろうが、対処は簡単だ。
 地上に下りて、建物の影に隠れればいい。
 しかし、今の自分の役目は騎神の的になり、結界の破壊を担当している者達の元へと騎神を行かせないことだ。
 だからここは一つ、動かないでいてギリギリの距離でカウンターを狙う方法を取った方がいい。
 だが彼方も馬鹿ではないだろう。きっとまた遠距離か中距離からの射撃を行い、待避するヒットアンドアウェイを取ってくる筈だ。
 加速機を噴かしたために宙に散った流魔光が線を描いており、騎神との距離は半分に縮まった。
 実戦機ではないが、やはり今相手にしているのも騎神に他ならない。
 一機は自身の正面、もう二機は左右下斜めの位置にいる。
 三方向から不規則に射たれれても防げる気はするが、次の動作に移る場合には何時もよりかは若干遅くなるだろう。
 相手の出方次第だ。運の要素が強いが、どうにかなるだろう。
 騎神が銃の引き金を引いた。
 音が鳴るがタイミングが違う。左側の騎神が一番早く、その次に右、そして正面。
 防ぐためには反時計回りに回転しながらの防御だが、こちらの行動を見越したのか先程の流魔弾ではなく実弾だ。
 これは厄介だ。
 流魔弾は衝突すれば砕け散るが、実弾はそうは行かない。
 衝撃と共に実弾そのものの重さが衝突時に掛かり、動作を遅らせる要因の一つとなる。
 弾数は各方向から五発、計十五発の実弾がこちらを穿とうと迫って来る。
 こうなったら飛び下りた方がいいのかもしれない。下手に負傷したら後で困る。
 もし飛び下りた場合、騎神はこちらを狙って再び発砲するか、それともこちらを無視して結界の破壊を阻止しに行くのか、どちらかだ。
 まあ、なった時にでも考えましょう。
 そう割り切って、高さ十五メートル越えのナイター照明から身を投げる。
 このまま着地しならば、たぶん骨にひびが入る程度だろうか。
 思っていると、背後から空気を裂き、ぶつかり合った銃弾が高い金の音を出す。
 耳障りな音だと、音を遮るように両の耳を畳む。
 背中から落ちるなかで持った銀の鞭を上へと振り、ナイター照明の柱へ繋げる。
 銀の鞭は柱へ衝突する前に形を変え、柱を掴むように広がりホールドする。
 身を柱に寄せ同時に鞭の長さを伸ばしつつ、靴底を柱に滑らせ減速させる。
 完全に速度が無くなる前に伸していた鞭を今度は硬化させ、柱の途中で一気に停止する。
 視界には空が広がる。
 その空には騎神が三機存在し、次の行動を行う筈だ。
 先に行動することは、こちらの手の内を晒すのも同然。彼方が動き出すまでは、こちらも動かないのが得策だ。
 だから彼方は自分よりも先に動いた。
 それはこちらを狙うものでもなく、離れるものでもない。
 何かを回避する動きだ。
 三機を狙うように宙を行くのは赤の砲撃だ。戦闘艦から放たれたものではない。
 これは魔法術師による魔箒|《イビルブルーム》から放たれた砲撃であり、しかし三発同時に魔力弾は並大抵の者では射てない。
 これが出来る魔法術師は、自分は日来で一人しかいない。
 それは――
「あやや、誤差数十センチかなあ? 遠くから三機同時はさすがに無理があったみたいだねえ、魔力の無駄遣いだったよ」
「やっと来たのですわねマギト、それに入直も」
 騎神よりも上空に二人の学勢がいた。
 一人は先程の砲撃を射った魔法術師のマギト。もう一人は赤い騎神の肩に乗っている入直だ。
 二人は上空から降りて来て、視線の高さをネフィアに合わせる。
「おまけで呼んでもらえるとはありがたいねえ?」
「怒ってます?」
「怒ってはないさ、気に障っただけでね」
「それはよかったですわ。わたくし、何か悪いことをしたのではないかと思ってましたが、気のせいでしたのね」
 沈黙の圧力。
 耐えかねたマギトは、まあまあ、と言いながら二人を間に割って入ってくる。
「冗談はさて置いて、二人とも話しは聞いてるよね?」
「ええ、聞いてますわ」
「あの騎神共とじゃれあってればいいんだろ? まあ、アタイはそんな気は無いけどさ」
「幾ら実戦機ではないとは言え、相手は戦闘専門の騎神ですのよ。さすがに作業用騎神では無理があるかと」
「今は準戦闘用騎神さ。日来の方で騎神用の武器の最終作業やってるから、それが終われば武器が手に入って破壊出来ると思うんだけどねえ」
「ほう、それならわたくしもやってみましょうかしら。楽しそうですし」
「ええ!? ……二人共正気?」
 騎神は容易くは壊れない。そのように設計されているからだ。
 しかし強力な力が加わればこれに限らないが、普通出来たとしてもやらない。
 何故ならば、こちら側に騎神は一機しかなく、それも作業用騎神を改良したものだ。
 心細いという言葉よりも、無理という言葉が浮かぶ。
 だが二人はそんなマギトを他所に、壊す気満々でいるのでマギトはため息を付く。
「やるなら勝手にやってね。マギト、今でもキツいから、これ以上キツくなると襲ちゃうと思うから」
「誰をですの?」
「女子学勢」
「そうですか。……て、ええ!? え、あ、でも、人それぞれ個性と言うものがありますし……」
「アンタってば男には興味無いんだっけね」
「興味無いわけじゃないけど、一緒にいたいのは女性だよ」
「確かに異性と一緒にいるのはしばし気を遣いますものね」
 三人が話している最中、加速機を噴かせて近付いて来るものがいる。
 辰ノ大花の騎神。自分達の目標となる相手だ。
 綺麗に一列、三機が正面に並ぶ。
「ホーミング入れてたけど、見た感じ防がれたみたいだねえ」
「さすがに対人用のそれじゃあ、騎神に当てることなんざ無理だろうさ」
「これ一応、対魔物用だからかなり強いんだよ? パートナーがいないと本気出せないから、主にそれが原因かな」
「ならばあまり無理はなさらぬように」
「はいはーい」
「無駄話はここまでにして、礼儀正しく待ってくれてる騎神とそろそろ手合わせしようじゃないか」
 言う入直が乗っている騎神の左肩に、ネフィアが足場代わりに着地した。
 ずっと柱に引っ付いていた状態では、戦闘開始時に支障を来すからだ。
 騎神の持ち主である入直は勝手に乗られ、おい、と言いたくなったが仲間割れはよくない。
 ここは我慢だ。
 煙管をふかし、香棒|《アロア》により気分を和らげる。
 戦闘時に邪魔になるため少し吸ったら炙っていた香丸の火を消し、煙管を専用のケースにしまい、スボンのポケットに突っ込んだ。
「それじゃあ、行こうか。準備出来てるね?」
 二人は頷く。
 それを見て入直は右の拳を、左の掌にぶつけて気合いを入れる。
「よし、なら派手に行ってやろうじゃいか!」
 辰ノ大花の騎神三機対魔法術師と半獣人族、準戦闘用騎神を操る入直との戦闘が開始させる。
 町民グラウンドの上に見える空には、まだ穏やかな風が流れていた。 
 

 
後書き
 ということで、今回は女性したか出てきませんでした。
 こんなのは初ですね。
 覇王会にも関わらず飛豊ちゃんに仕事は無く、何だが寂しいキャラクターだなと書いていて思いました。
 後でちゃんと仕事を与えねば。
 今回、作中で出てきましたセーランの過去。
 ほんのわずかですがセーランは日来出身ではなく、他の場所の出身なんです。
 後にセーランの故郷も分かってくるので、楽しみにしていてください。
 話すことが今回無い……。
 はて、どうしたものか。
 すみませんがここは一つ、短めに今回はここらへんでと言うことで。
 何か教えてもらいたいことがあるのなら、感想で何か書いてもらえばお答え致します。
 ではでは。 
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