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利口な女狐の話

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第二幕その四


第二幕その四

「まだ夜は長いですし」
「そうですね。それでは」
「ではそれでいいですね」
「すいません、どうも」
「いえいえ、礼には及びません」
 それはいいというのである。
「ですからそれで」
「わかりました」
 こんなやり取りをしたうえで校長の家に向かうことになった。そして校長は残った一人である管理人に対しても声をかけるのであった。
「そうだ、貴方も」
「わしもですか」
「はい。どうですか?」
 穏やかな声をかけるのだった。
「それで」
「そうですな。わしはですね」
「ええ、一杯」
「そうですな。それでは御一緒させてもらって」
「はい。それでは」
 こうして三人でまた飲むことになった。ビストロウシカはそれを見てからまた一人呟くのだった。
「何か楽しそうね、人間も」
 ここで人間のことを思うのだった。
「あれはあれで」
 こう呟いてからそのうえで森に入る。するとだった。
 ここで見事な赤い毛並みをした容姿のいい雄狐が出て来た。顔立ちも見事だ。
「あれっ、あんないい狐いたのかしら」
「おや、これは」
 ここでその雄狐も言うのだった。
「こんな美人がこの森にいたなんて」
「今まで気付かなかったわ」
「貴女の名前は?」
 彼の方から尋ねてきたのだった。
「何と仰るのですか?」
「私の名前が?」
「ええ、一体何と」
「この森にいて私の名前を知らないのね」
 少し不敵に笑っての言葉だ。
「またそれは」
「この森の南の方にいたからね」
 だからだというのである。
「貴方は何処にいたのかな、この森の」
「私は大体東の方よ」
 そこだと答えるビストロウシカだった。
「だから南には殆ど行かなかったから」
「だったら知らないのも無理はないね。僕は南からここに来たのははじめてだったし」
「ここに来るのはなのね」
「そうよ。それでなんだよ」
 穏やかに笑って答える彼だった。
「ここに出て来たのは」
「そうだったの」
「それで君の名前は?」
 ここでまたビストロウシカの名前を尋ねたのだった。
「何ていうのかな」
「私はビストロウシカっていうのよ」
 名前をそのまま名乗った彼女だった。
「そう呼んでくれていいわ」
「そうか。ビストロウシカっていうのか」
「そのあんたは?」
 今度は彼女から尋ねたのだった。
「あんたの名前は何ていうの?」
「ズトラシュビーテクっていうんだ」
 彼は明るく名乗った。
「これが僕の名前さ」
「そう、ズトラシュビーテクね」
 その名前を覚えた彼だった。
「覚えたわ、その名前」
「うん、覚えておいて」
「そうするわ」
「そして」
 さらに言う彼だった。ビストロウシカもそれを聞く。
「もう一つ言いたいことがあるけれど」
「何かしら、それは」
「結婚してくれないか」
 こう彼女に言うのだった。
 
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