Tales Of The Abyss 〜Another story〜
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#1 鉱山の町アクゼリュス
瞼に、光が差し込む気がした。闇の中で感じた光とは違う。
「……ぁ」
気づいた時には、天井を眺めていた、そこは知らない天井だった。目を開ける事は確かに出来けれどまだ 意識がハッキリとはしていなかった。……頭が揺れる。
そんな中でも、はっきりとしない頭でも判る事はあった。
どうやら、自分はベッドで寝かされていると言う事。
「……あれ……ここは?」
ゆっくりと、上半身を起こし辺りを見渡した。やはりまったく身にに覚えの無い場所。
(ここはいったい何処……?)
冴えない頭で、考えても混乱ばかりしてしまう。
そんな時だった。
「あ……っ!」
部屋の入口が開き、そして声が聞こえてきた。
「おにいちゃん! おきたんだっ!」
扉が開く音、そして突然の声に驚いた。そしてその声がした方に ゆっくりと視線を向ける。
「おにいちゃんだいじょうぶ?ちょっとまっててね。ママたちよんでくる!」
見てみた感じ歳は5〜7歳だろうか? と思える幼い女の子がいた。自分の顔を見てまるで花開いく様に笑顔を見せてくれた。……その笑顔は、見ただけで何だか安心出来る。心が温かくなる気がする。
「えっと…君、は?」
焦点が完全に合い、少女の顔をはっきりと見れた。でも、やはり見覚えの無い少女だった。
「ママー!!パパー!おにいちゃんおきたよーー!!」
質問をしたと同時に、女の子は両親を呼びに部屋から飛ぶように外へと出て行った。
「……えっと…」
女の子の顔を見てもやっぱり身に覚えが無いだけじゃない。……自分自身が何者かも判らなかったのだ。頭痛の様なモノも全くなく……、兎に角、頭の中が真っ白なのだ。
「オレ……いったい………」
自問自答している間に、再び部屋の扉が開いた。どうやら、女の子の両親だと思える人たちが来た様だ。
「大丈夫かな??」
恐らく父親だろう男の人が、自分の方を見て話しかけた。
「あ……あの…… こ…ここは? ……オレはいったいどう……」
「ここは 鉱山の町アクゼリュスだよ。君は町の外れで倒れていたんだ。本当に無事で良かった。この辺りも物騒だからね」
場所を説明してもらい、自分がどうしてここにいるのかも一通り教えてもらった。
でも、やはり解らなかった。……この街の名前を聞いても、《アクゼリュス》と言う名にもまるで身に覚えが無かった。
「そうだったんですか…。 助けていただいて、どうもありがとうございます」
自分が、なぜ倒れていたのかは分からない。でも、それでも判る事はある。この人たちは、自分の命の恩人にはかわりないと言う事だ。
自分の命を助けてくれたんだから。だから、お礼を言い立ち上がろうとした。
「あっ……」
突然、身体を起こした為、頭が揺れる。まるで、大地が いや空間そのものが揺れているかの様に錯覚し、倒れそうになってしまう。
「あ! ダメっ ムリをしちゃダメよ? だって、あなたは5日間も眠っていたんだから。まずは安静になさい。はい、食事を持ってきたわよ。」
倒れそうになる自分を支えてくれた。そして、その上食事まで用意してくれていた。支えてくれた温もりと、良い香り。それらを身体が認識したと同時に、身体の芯から安堵感も生まれた。安心していいんだ、と本能的に判った様だ。
「っ……。本当に何から何まですみません…。……ありがとうございます」
見知らぬ他人である自分にここまでしてくれる。嬉しくて、そしてありがたくて。感謝の言葉しか、出てこなかった。
「ふふふ、困った時はお互い様。さあ、まずは体を元に戻しなさいな。 サラ? お兄ちゃんの看病をよろしくね」
「はぁ〜〜いっ!」
呼ばれた少女、サラは自分のすぐ側までやってきて、備え付けられているベッドの側のイスに座った。
「おにぃちゃん! わたしがかんびょうしてあげるからねっ! はやくげんきになってね」
それは、満面の笑顔だった。
「うん……。ありがとう………」
声を搾り出すように、自分の今の気持ちを搾り出すように、今の思いを伝えた。
この世界に目覚めて最初の1日はこのように始まったのだった。
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