Tales Of The Abyss 〜Another story〜
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#0 始まりを告げる声
もう、いったいどのくらい時間が経っただろうか。
何度考えても、考えても、判らない。
――……何も思い出せない。
唯、感じるのは、目の前に広がる無限の闇。一体何処まで続いているのか、検討すらつかない。そして……自分自身が何故、この世界に存在しているのかさえ、判らない。
「ここは…どこ……? いったい……なに……?」
闇の中で、意識が覚醒し、考える。でも、何を考えても判らない。どれだけの時間が経ったのかさえ、判らない。時間と言う概念が存在しているのかさえも。
――……これが、永遠に続くのかな? 恐怖の類は何もないけれど、続く闇の世界を眺めながら、そう思っていると。
《アル……我が……えるか………》
闇の中で確かに聞こえてきた。初めての自分以外の存在の気配。この世界には自分以外誰か・・がいる。
「………誰?」
声が聞こえてきて、誰かがいる事に気づいた彼は、語りかける様に闇に向かって聞いていた。返事が返ってくるのか少し不安だったけど、それは直ぐに帰ってきた。
《我が名は……主の名は、アル…》
その声は途切れ途切れだが、返事は帰ってきた。聞こえてくる言葉の中に、名前と思しき単語も聞こえてくる。《アル》と言うそれが自分の名だろうか?その名前を頭の中、脳裏に刻みつけながら、……口に出す。
「………な、まえが、……なは、ある…? それが、じぶんの……?」
自身の名前を、発し そして どれだけ思い返しても、……名前を聞いてもやはり自分のことは全く思い出せなかった。
《そう、か……今……、まだ…覚…では…無い…か…… 後……》
考え込んでいる最中、自分の胸中を悟ったかの様に、再びあの声が聞えてきた。聞こえてきた、と言うよりは 頭の中に直接流れ込んでくる感覚に近い事が判った。
《我が…よ… 力の…一部を…授け……、この……生きぬいて…… 世界…オールドランド……覚醒………》
流れ込んでくる声は、必ずと言っていいほど、途切れ途切れ。おおよその内容の意味すらよく判らない。だからこそ、強い欲求が生まれてきた。
――……知りたいと言う、知識欲が。
「……いったい、なんのこと……? わから、ない。……ここは、いったい……? どういういみ?」
だからこそ闇の中で、ただただ 答えを求め続けた。
《……今こそ、目覚め……時。……さぁ……へと……目覚めよ!》
答えは帰ってこず、そして途切れているのにも関わらず、その声の力、大きさが一段と増した気がした次の瞬間。
闇に包まれていたと思っていた世界に一陣の光が差し込んだ。
光は、自分の身体を包み込む。……寒いのか、暑いのかさえ判らない。
突然の光に、眼を背けたくなる様な衝動にかられていたけれど、しっかりと光を受け入れる事が出来た。
――声の主はいったい、誰なのか?
頭の中に、疑問が浮かび上がる。そして、何よりも自分自身のこともそうだ。
判らぬままに、光の世界に変わったその場所で今度は飛んでいる様な浮遊感が生まれた。そのまま意識は光の中へ消えていった。
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