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環の理

作者:三島 渓山
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鋼の錬金術師
  少年との出逢い

 
前書き
原作直前まで進むといったな。あれは嘘だ、ごめんなさい。 

 






 「子供がいる?」

 「ああ、何でも国家錬金術師試験を受けに来たらしい」



 終戦から五年経った今、私は中央で未だに這いつくばっている。醜い現実を直視してでも、金の為に働くのが大人ってもんだよね。



 「何処で聞いたんだ?」

 「ジュンティーヌの野郎に聞いたんだよ」

 「後輩いびりかよ。みっともねえぜ?」

 「違うわい!可愛がってるんだよ!」

 「同じ意味だろうが……」



 今話してるケルベアも准将に就任したらしい。いびり云々はこいつが軍学校特別指導者に選ばれてから中退する奴が増加しているからだ。原因は鬼軍曹ばりの特訓に耐えきれないからとか……。



 「見に行くか」 

 「仕事はどうすんだよ?」

 「既に終わってるつーの」

 「流石は大佐。階級が高い奴は仕事も早い!」

 「嫌味じゃねえか」



 立ち上がって試験所に向かう私達。



 「お疲れさん」

 「通るぞー」



 銀時計を見せて受付をパス、あっという間に到着する。



 「……あれか?」

 「らしいな」

 「只のちびにしか見えんが?」

 「12歳だからな」



 不遜な顔に厳つい鋼の義手。ハネッ毛に三つ編み……変な奴だな。



 「……おいおい」

 「どうした?」

 「大総統が来ているぞ」

 「どうせ話の種程度の気持ちだろ?」



 軍に有益なる者ならどんな奴でも構わないってか。



 「緊張しなくていいぞ。落ち着いて……錬成陣を書く道具は持ってるか?」

 「いらないよそんなもん(ぱんっ)」

 「……!(掌錬成!?)」



 バチッ!ズズズズズズズズズッ、ガ!



 「これは……」

 「年齢通りの腕ではないという事か」



 これは面白い。皆の興味を引く中、少年は突然大総統に斬りかかる!



 「閣下!」

 「野郎……!?」

 「まあ待て」



 どうせお芝居だろう。国家錬金術師は「軍に忠誠を誓うべし」だからな。



 「……さて、帰るぞ」

 「分かったよ」



 そう不貞腐れるなよ。





 ~~~~~~





 「終わってみれば面白い見世物だったな」

 「こっちは冷や冷やしたぜ。大総統に刃向ける野郎だったなんてよ」

 「肝っ玉があるじゃねえか」

 「その肝っ玉で命を落としそうだったがな」



 錬成した槍が綺麗に斬り落とされた事に驚いていたから抜刀の瞬間が見えなかったんだろうな。



 「……准将先帰っていいぞ」

 「何だ用事か?」

 「友達に挨拶してくるわ」

 「了解っと」



 視界に歩いているリザがいたので話しかける事にした。



 「よーリザ!久しぶり」

 「お久しぶりですシルバーバーグ大佐」

 「メイで良いってば。マスタング大佐の子守りなんて仕事の内に入らないからさ」

 「失礼な事を言うね君は……」

 「いつも仕事サボってるのが悪いんだよ」



 中央まで噂が運ばれているのによく大佐まで昇進出来たよね。



 「大佐この人は?」

 「メイザース・シルバーバーグ、階級は大佐、国家錬金術師の一人さ」

 「リザ、この少年は?」

 「エドワード・エルリック、イーストシティ出身で今回の試験を受けに来た少年です」

 「つまりは同僚になるかもしれないって訳ね」

 「シルバーバーグ大佐の方が随分と有能そうだな」

 「そうだろ?」

 「私の悪口はそこまでにしていただきたい」



 私とエルリック少年の会話をぶった切る大佐。イシュヴァールでは凄い働きっぷりだったのに、階級が私と一緒なのは努力の差じゃないのかな?



 「……君も掌錬成が出来るみたいね。何を錬成したのかな?」

 「!!?」

 「……?」

 「あんたまさか……」

 「コラ!(ゴン!)」

 「あべしっ!」

 「年上の女性にあんたなんて言うもんじゃないよ?ね?」

 「ご、ごめんなさい……(ぷしゅー)」



 躾はちゃんとしないとね!(眩しい程のゲス顔)



 「そろそろ帰るとしよう」

 「まだお仕事残ってるのかな?かな?」

 「うっ……!な、何を言ってるか分からないな……ははは」

 「リザ……このアホマスタング大佐の事で困った事があったらいつでも中央においで。何とかしてあげるから」

 「そこまで心配される事では……ない、と思います」

 「……何で間が空いたのかね?」

 「大佐の所為だろ」

 「大佐の所為だね」

 「大佐の所為です」

 「……orz」



 大佐弄りは面白いなぁ!(凄まじい程までのゲス顔)



 「さて、私も帰るとするよ。マスタング大佐もさっさと中央に来ればいいのに」

 「そうは思っているのだがね……なかなかチャンスが来ない」

 「来る時は彼氏候補になりそうな男連れてきてよ」

 「メ、メイ……?」

 「アームストロング少将みたいに一生独身は貫けないからね。若い内に籍入れておかないと」

 「少将が聞いたら殺しに来るレベルだな」

 「ですね」

 「?」



 ブリッグズの氷壁も婚期には勝てないと思う……思いたい。



 「しかし、伝えるなら君の特徴を……」

 「階級大佐、国家錬金術師、スタイルまあまあ、性格普通……ぐらいかな」

 「自画自賛じゃねーのかそれ?」

 「事実は誇張されるものよね」

 「詐欺じゃねーかそれ!」



 HAHAHAHAHA!



 「それじゃ今日もケルベア少将の奢りでパーッといきますか」

 「それでは、お疲れ様でした」

 「乙ー」



 少年とマスタング大佐、リザと別れ、隊舎に戻った。





 ~~~~~~





 「……なあ大佐?」

 「……何だ?」

 「あいつ、何者だ?」

 「何だ、惚れたのかね?」

 「違うわ!……さっきあいつに……」

 「?」

 「いや、何でもない」

 「そうか……合格発表まで一週間ある。イーストシティに戻ったらゆっくりしていたまえ」



 こうして俺の試験は終わった。新たな疑問を抱えて……。
 
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