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環の理

作者:三島 渓山
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鋼の錬金術師
  終戦







 その後もイシュヴァール殲滅戦は続いた。中断するんじゃないかと勝手ながら思ったがそんな事はなかった。軍事国家だという事だろう。



 「ぐおっ……」

 「ガンダラ!」

 「ま、だ……死にたく、ねぇよ……」

 「ちくしょーーー!」



 途中で倒れる同僚の屍を乗り越え、新たなる犠牲者を作りだしていく。



 「殲滅戦はこのまま継続だとよ」

 「だろうな……」



 ヒューズ大尉が届けた言葉は更なる戦の激化を齎すものだった。



 「ガンダラ……」

 「……行くよ。ここで挫ければそいつの死は無意味となる」

 「……分かってるよ」



 死を悼む者、立ち止まる者、進む者、堕ちる者……それぞれの人間を抱えながら今日も軍は動く。





 ~~~~~~





 複数の軍人と一人の老人が会い見えた。老人は満身創痍、血を腹から流しながら横たわる犬に手を添えていた。



 「マスタング少佐、ここで最後です」

 「ご老人、貴方が最後だ。何か言いたい事はあるか?」

 「少佐……!」



 問いかける者にそれを諌める者に老人はこう告げた。



 「恨みます」



 パチン!と最後の錬成が終戦の鐘を鳴らした。




 「―――本部了解」



 その鐘を鳴らした軍人の顔はやるせなさに満ちていた。







 ~~~~~~





 「諸君、最後のダリハ地区が墜ちた。イシュヴァール全区、完全に国軍の管轄に入った」

 「「「……(シーン)」」」



 無言が場を支配する。その静寂も長くは続かない。



 「終わった……?」

 「終わったのか!?」

 「何だよ……何の余韻もねぇな!」



 後は国境沿いの残党掃除か……結局の所、この戦いは私に何の利益も齎さなかったな。



 「ああ……やっと帰れる……」



 家族……そんなものどこにもいないよ。





 ~~~回想開始~~~





 気付けば別の場所にいた。そんな事人生で何回かある事だと思った。



 「○○……?」



 でも、これは本来ありえない事で、



 「あれ……俺何してたんだっけ……?」



 これまでの平々凡々な、



 「おーい○○ー」



 人生の終わりを示していた。



 「よぉ」

 「……!(びく)」



 後ろから急に声を掛けられた。きょろきょろ見渡すのは仕方がないだろう。



 「誰だ!?」

 「ここだよここ。お前の目の前」

 「どこ……!」



 見つけた……白い空間に黒い靄で人間の形を作り出しているモノ。



 「……誰?」

 「おお!よくぞ聞いてくれました!」

 「?」

 「オレはお前達が“世界”と呼ぶ存在。あるいは“宇宙”、あるいは“神”、あるいは“真理”、あるいは“全”、あるいは“一”、そしてオレは“お前”だ」

 「!?」

 「ようこそ。身の程知らずの馬鹿野郎」



 後ろから引っ張られる。見ると扉が半開き、かつうようよした触手みたいのが俺を掴んでいた。



 「うおっ!?」

 「真理を見せてやるよ」



 ……正直、この後の事は覚えていない。ただ、分かっているのは“今までの全てを否定され、上書きされた”事だけだった。





 ~~~回想終了~~~





 「……中尉?」

 「ん……ん?」



 しまった……ちょっと落ちてたかな?



 「リザ?何でここにいるの?」

 「新人ですから」

 「あー……」



 いらぬ雑用を押し付けられたって訳だ。



 「ごめん」

 「そんな事はありません。個人的に話したい事もありましたから」

 「?」



 話したい事……?



 「歩きながら話そっか」

 「分かりました」



 立ち上がり、集合場所へ歩き出す。



 「……メイは」

 「?」

 「何故軍に入ったのですか?」

 「何故ねぇ……色々あるけど一番はやっぱり金かな」

 「金、ですか」



 無愛想な顔が更に険しくなっていく。表だけ見れば不純だったかな?



 「親は幼い時に死んで……それからは孤児院で親のいない子達と一緒に遊んでたの」

 「…………」

 「その孤児院がホントボロボロでさ~……何とかしてやろうって思って国家錬金術師の資格とって、軍学校に入った。それで今に至るって訳」

 「それじゃあ……」

 「前線に行きたくないのは死にたくないから、まだあの人達に借りを返せてないから……もっと改修させてやんないとね」



 どこにでもあるような話。錬金術は独学だったけど真理を見たせいかスムーズに習得出来たね。



 「……つまらなかったでしょ?」

 「……いえ、私にも親はいませんから」

 「そっか……」



 静かになった……何にも話す事がないや。



 「……メイには話したい事があるって言いましたよね」

 「そーだね」

 「これを見てください」

 「これ……!?」

 「焔の錬金術の全てです」



 何だこれは……私の錬金術とは桁が違うレベルだ。ただ一つ、ケチをつけるなら完成しているという点だけだ。



 「焔の錬金術師は私の父の弟子でした。彼はこれを父から受け継ぐように言われたのです」

 「……こんなの他人に見せてもいいのか?」

 「メイが最初で最後でしょう。これは後で焼き潰してもらいますから」

 「そうか……」



 真理を見ているせいか大体の錬成陣の事は分かる。これを自分の錬金術に生かせれば……どうする私?





 ~~~~~~





 結局、私は誘惑に負けた。焔の錬金術を習得した!みたいなテロップが出そうだったね。そんなこんなでイシュヴァール殲滅戦は終わりって訳よ。
 
 

 
後書き
次は時間が原作開始直前まで飛びます。 
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