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ソードアート・オンライン〜Another story〜

作者:じーくw
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SAO編
  第4話 はじまりの街・初めてのパーティ



 目の前の空間が真っ黒になる。真っ暗になってるのは当然だろう。……だって、目を閉じてるんだから。

 でも、目を閉じていても、よく判る。

 この世界は、自分が待ち望んだ世界だと言う事が判るのだ。
 心を躍らせて待ちに待っていた世界についたのだと。ほら……目を開けて見ると、直ぐに見えてくる光と一緒にあの世界(・・・・)の光景が、目の前に広がる。

「来た……。帰ってきた」

 目の前に広がる現代日本ではお目にかかれない町並み。そして、この世界を象徴する、空高くに伸びているとてつもなく巨大な塔。……現実では有り得ない自分自身の姿。

「オレのもうひとつの現実に……!帰ってきたんだっ!」

 そう実感し、思わず声を上げたその時だ。“どぉん、どんどぉん”と言う爆発に似た音が空に響き渡る。……空の上に花火が立ち上がっているのだ。それは、SAOサービス開始を記念。花火が上がると同時に、町中から歓声が上がった。

「わぁぁ………。すごいっ!」

 この時の彼の表情はまるで遊園地に来た少年。幼い少年のそのものだった。暫く、自分のゲーム内でのキャラ?を忘れて楽しんだ後、直ぐに我に還った。なぜならば、ここはゲームの中だから。

 彼は、オンラインゲームでは全世界でも屈指の実力者なのだ。

 HN:Ryukiの姿に戻っていた。


「……さて……と。行くか」

 他のプレイヤーは大体はうかれているか、街を見物したりしていた。……そう言う自分もうかれていたけど直ぐに調子を取り戻す。自分にとってはこの世界は現実そのものなんだ。人生と言うゲームであって、……決して遊びではない。

 それは、茅場の言葉だが、共感できる。

 この世界は自分にとって現実のそのもの。

「今は、当然ながら初期状態。……装備もそうだしレベルも1。……まずは、レベリングから、だな。でも、今の装備でもはじまりの街周辺は問題ないだろう。……外の草原へ行くか」

 活気付く他のプレイヤーを尻目に、リュウキは駆け出した。それはまるで自分の体じゃないように軽い。まだまだ、本気じゃないのに、羽の様に、羽ばたくように走れる。本気を出せば、世界記録とか出せそうと思ってしまう程だ。

 先ほど確認した通り、今現在の彼、《リュウキ》のステータスパラメーターはLv1。

 だが、明らかにその能力値以上の速度の様な錯覚をリュウキはしていた。一目散で駆け抜ける。街の外の草原を目指して。

 そんな時だ……。

「おい、アンタ!」

 走る自分の横につけた男が1人いた。夢中になっていたから、接近に気がつかなかったようだ。自分の中にある得点に減点1。注意力が散漫だったから。

「……何だ?」

 リュウキは無愛想に答えた。……現実も同じ、この世界で彼が他人に心を開く事は殆ど無い。ほぼ損得、後は気まぐれな時。そして、仕事≪ゲーム内≫を頼まれることくらいだ。だから、MMOであってもソロプレイの方が圧倒的に多いのだ。
 そんなリュウキだったが、声を掛けた当人は気さくに話しかけ続けた。

「アンタ……走る脚、速いな。本当にレベル1か? その敏捷性(AGI)ありえなくないか?」

 笑いながらリュウキにそう言うが、リュウキは首をかしげた。この男も余裕でリュウキに付いてきてるように見える。と言う事はリュウキにに行った言葉がそのまま、自分自身に帰ってくるのだから。

「ありえないも何も、SAOのサービスは本当にたった今始まったばかりだろう? なら、普通レベル1に決まっているじゃないか。それにそれを言うならお前も、だろ……? ありえない、と言ってるオレに付いてきてるんだから」

 リュウキは、そうそっけなく返した。速い、と言いつつもこの男は、自分に今もついてきている。それは、紛れもない事実なんだから。

「ああ、それもそうだったな? はは、それより……アンタ、元βテスターだろ? その姿、容姿に覚えがあってな。流石に装備は違うが」

 その男は次にそう言っていた。その表情から察するに、先ほどの敏捷性の会話はどうでも良いらしく、そして どうやら、そちらが本命のようだ。

「………まあ、そうだ。……見るところによるとお前もそうなんだろう? ……ああ、思い出した。βの時に会ったな」

 リュウキは、彼の姿を見て、思い出しながらそう答えた。βテスターの中に本格的なプレイヤー……熟練者(advanced)と呼べる者は実の所、そんなにはいなかった。
 いや……そんなにじゃない、殆どいなかったのだ。だが、それは別に不思議でもない抽選で、βテストをプレイする資格が得られるのは、たった1000名。その中で玄人が選ばれると決まっているわけではないのだ。中には初めてネットゲームを……MMOをするという者もいた。
 そう言う連中は、あちこちで色々と聞いて回っていたからよく覚えている。そう……所謂 新しい物好きのプレイヤーだっていた。

 単に話題沸騰の最新作。

 そして、仮想世界と言う新たな世界。だったら、やってみたい。

 ……半ば呆れそうになったが、人それぞれ十人十色だろう。ゲームと言う娯楽を楽しむものだ。
だけど、自分にとっては住む世界が違う人たちだ。そう思い、割り切っていた。でも……目の前の男は違った。偶々当選したプレイヤーの中でも熟練者はいたんだ。

「そうだ……その姿……確か……、キリ、ト。キリトだったな。ああ……間違いない」

 リュウキは、印象に残った時のモノの記憶力には自信はある。何人かは、覚えているが、この男は上層にまで上ってきていた男だった筈だ。

「ああ……そうだ。アンタは、リュウキか?」

 今度は逆にキリトがそう聞いた。自信があったものの、どうやら100%、と言う訳ではないようだった。

「……ああ」

 リュウキは、頷いた。
 キリトとは、少しの期間ではあるがゲーム上で唯一パーティを組んだ男だった。過去のゲームで組んだ事など殆ど皆無だと言うのに、たった2ヶ月の期間でパーティを組む。以前の自分では考えられないと思う。だけど、それは……初めての世界、VRMMOで自分は浮かれてしまったんだと、一笑した。

 つまりは互いが互いを覚えているようだ。……それも本当に珍しかった。

 1000人と言うネットゲームの中では少ない数だが、VR世界ではそうはいかない。現実に1000人いるのとまるで変わらないからだ。ましてやパーティを組んだとなれば更に。

「やっぱりか。お前は開始早々にログインするだろうって 思ってたけどドンピシャだったな。そして、するのは、まずレベリングから。だろう? それとコル()稼ぎか」
「まぁ、否定はしないな」
「……それは判るんだ。だけど、今だに判らない事もある」

 キリトはそのままのペースで走りながらリュウキに聞いていた。

「………何がだ?」
「あの時だ。β時代。お前とオレ、レベルは多分同等だった時期だろう。まあ、他人のレベルとステータスは判らないけど。……それなのに、何であそこまで差が出たのか……だよ」

 キリトも相当なゲーマーである。……だが、自信を持ってプレイしても、後塵を拝してしまう男が目の前にいる。確かに悔しくも思えたが、これは競うゲームでないのが良かったとも思っている程だった。

「今の状態と、殆ど同じだった筈。所謂初期状態。ステータスは変わらない筈なのに、お前には。リュウキには、後塵を拝してた。それが気になったんだよ」
「成る程。……VR世界とは言え、所詮はデジタルデータの世界。……オレには全部視えてる。その差が現れたんだろう。……それだけの事だ」

 リュウキは、最後まで言うと、内心戸惑っていた。なぜこう話をしているのだろうか? と。

「……悪い。言ってる事の意味が判らん」

 キリトはキリトで、意味が判らない様子だ。……多分、10人中10人がキリトと同じ反応だろう。『視える』といわれても、『何が?』としか返せれない。

 リュウキは、少しだけ安堵していた。

「……判らんなら、気にしない事だ。……お前とは昔、同じパーティを組んだ誼み、……街の外、草原までは一緒する。そこからはどうなるかは知らんがな。各々の判断で、だ」
「はっ! 今度は最後まで付いてって見せるさ。いつまでも、置いていかれたりしないよ!」

 リュウキの最後の言葉を聞いて、キリトはニヤリと笑うと、更に闘志を燃やしていた。

――……あれは、いつの時だっただろうか、そう、ソロプレイ同士の時だった。

 モンスターのPoP率はプレイヤーが狩場に少なければ、永遠に続くのじゃないか? と思う程で続ける。だからこそ、経験値を上げるのにも丁度いい狩り場だった。リスクはあるが、それがソロの魅力でもあったのだ。

 そして、そんなモンスター出現の穴場で昼夜問わず、ソロプレイしていたのがこの男、リュウキだ。勿論キリトもそこを狩り場としていた。

 その為、狩場に2人だけと言うのもあった。確かに効率良く倒せるのだが。
何故か、この男には後塵を拝してしまう。
 倒した数もそうだし、スキル熟練度、そしてレベルが上がる量も。……何より、Mobを倒す速度だ。
 
 一緒に闘っていて、それがBOSSではなく、ただの連続PoPしたMobだったら、絶対に先に仕留めていて、しまいには、待てなくなってしまって、『行きたい所があるからまたな……』……と言われてしまい、置いていかれる始末だった。

 キリトにとって、勝負をしていた訳じゃないのに、これ以上無い敗北感だった。

 だが、何度か共にプレイしていく内に、感じた。『目指すべき男』だと言う事を。この男(リュウキ)が、理想像なのだという事を。何処かで、強く思えていたのだ。

「……まあ、頑張れ」

 そう、こんな感じでリュウキは、あの時も自分にエールを送っていた。それを何度も聞く内に、キリトの中では認識が変わる。

「……なんかお前に、頑張れと言われると嫌味に聞こえる」

 エール=嫌味だと。 勿論、リュウキはそんなつもりは無い。

 ……リュウキは、不思議だと思っていたのだ。

 なぜなら、ずっと他人と関わるのは嫌だった。心を通わせれるのは後にも先にも……爺やだけだった。
それは、今までのゲーム内でも……同じだった。ネットゲームでは人間の本性が出やすいところだ。

 だからこそだ。

 初めこそは浮かれていたが、この世界でも相応の対応をしていた。自分自身が仮想世界に入ってプレイするとは言え、本当の姿はアバターに隠れる事はできる。だから、従来どおりだろうと感じていた。
だが、目の前の男には嫌な感じはしない。過去どんなゲームでもこんな男はいなかった気がする。……であった期間は短かったが、それは良く判った。

(……こんなヤツもいるんだな。こんな、プレイヤー、男も)

 リュウキはキリトを横目で見ながらそう思い走った。そんな時だ。

「おおーーい!!そこのにーちゃーんたちーっ!」

 また、後ろから声が聞こえたようだ。声の大きさから、キリトの時よりも遠い位置。だからリュウキは振り返らず、………空耳と言う事にしておこうと、そのままスルーしていた。

「……………」

 声に振り向かず、構わずどんどん走るリュウキ。

「って、おいっ! 待てよ。明らかに俺らが呼ばれてるから、ちょっと止まれって!」

 リュウキは気にせずに、走り去ろうとしていたのだが、キリトに服を掴まれて、捕まってしまった。リュウキは観念して止まると、ため息を吐きながらキリトに言った。

「………まさか、お前に捕らえられるとは。少しショックだ」
「って おい! 別に逃げてたわけじゃないし、それくらいでショックとは、幾らなんでもオレの事、舐めすぎだろ!?」

 それは一方的にキリトが突っかかっている風に見えるが、火種をまいたのは、リュウキだ。でも、口喧嘩してても、傍から見たら、楽しそうに絡んでいる風にしか見えていなかった。

「ちょっとちょっと! まってくれって……はぁぁ〜〜。やーっと、追いついた……。その迷いの無い動き……お前ら、絶対βテスター上がりだろ?」
「それがどうかしたのか?」
「ああ。そうだが」

 とりあえず、リュウキも返事を返した。一応、オンラインゲームでのマナーだ。……最初は、リュウキは逃げようとしたけど、今は立ち止まって振り返ったから大丈夫だろう。

「なっ? なっ? 俺今日が初めてでな! 序盤のレクチャーをしてくれよ! 頼む、このとーり!」

 男は両手を合わせて懇願していた。『そこまで言う事か? 最初は色々と試行錯誤させながら、手探りでプレイしていくのが楽しいと思うが』……と思っていて、リュウキは返事を返すのが遅れてしまっていた。

「あ……ああ」

 キリトの方はは、断らずに直ぐに了承していた。あまりにも情熱的?で、断れなかったんだろうか?

「……ん。キリト1人いればいけるだろ? じゃあ、オレはここで……」

 リュウキは、自分は必要ないだろう、と判断し手を上げて立ち去ろうした時。

「ちょ〜っとまった!」

 キリトは今度はリュウキの手を掴んでいた。捕まえられたのは二度目だ。

「……? まだ、何かあるのか?」

 リュウキは、正直キリトの行動。自分を誘った事もそうだし、意味が判らなかった様だ。この男(キリト)は、βテストの時も自分と同じで1人が多かったと記憶している。そんなに、仲間を欲しているわけでもなさそうなのだと言うのが第一印象だった。なのに、今は違う印象を受けるのだ。

「ほら、1人じゃ出来ない事が他にもあるだろ? パーティの組み方だってそうだし、パーティ組んだ時の有利性や操作性。戦闘面だったらスイッチだったりさ? その辺は2人いた方が断然良い。言葉で説明するより、実演してみせた方が断然」
「む。……まぁ、それもそうか」

 リュウキもとりあえず、キリトの言い分に納得し脚を止めた。操作方法は問題ないが、チュートリアルをするのは別に悪い事ではないからだ。

 それに、確かに意味が判らず、意図も読めなかったけれど、悪い男じゃないと言う事は判っている為、それ以上は何も考えなかった。

「おっ! マジでか? 結構上級も教えてくれるんだな? ありがとよ! オレの名はクラインだ! ヨロシクな。2人とも!」

 赤毛のロングの男が自己紹介をしていた。『別に上級と言うわけでもないのだが』と野暮なつっこみは2人とも言わないようだ。

「オレは、キリトだ」
「……リュウキ」

 其々挨拶をし、3人で街の外へと向かう。

 向かう場所は ≪始まりの街周辺の草原≫。3人は、そこへ向かって走り出した。

 無限に広がっているかの様な大草原まで……。




 
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