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トーゴの異世界無双

作者:シャン翠
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第五十六話 ここにきてツンデレかぁ

 王族フラグきたぁぁぁぁっ!!!
 またか! またこんなとこで王族と出会っちゃったよフラグ建立かよ!
 ていうか、クィルもそうだが、何で王女が供もつけずに、一人で危険地域にいるんだよ!
 流行ってんのか危険な一人旅フラグ!
 闘悟が頭を抱えてると、ステリアが首を傾げる。


「どうしたの?」
「いや……何でもねえ……ってか何で王女がこんなとこに?」
「依頼を受けたって言ったわよ?」
「いや、そうじゃなくて! 何で王族の、しかも第一王女がギルド登録して、依頼を受けてんだよ?」
「そんなの決まってるじゃない! 面白いからよ!」
「……はい?」
「だってそうでしょ? 城にいても姫様姫様。過保護に甘やかされて、何をするにも侍従(じじゅう)がついてくる。外に出ようものなら、軍隊が動くわよ」


 そ、そりゃそうだろ。
 一国の姫なんだから。


「アタシはね、自分の好きなことをしたいの!」
「好きなことって?」
「刺激があることよ!」
「刺激? ああ、だから依頼を?」
「そうよ。まあ、登録しようとしたら、ギルドマスターは腰を抜かしてたけどね」


 そりゃ抜かすだろうな。
 まあ、コイツのことだから、強引に登録させたんだろうけど。
 闘悟は呆れるようにステリアを見る。


「ん~でもなぁ、立場ってもんがあるだろ? 今回だって、下手すりゃ死んでたかもしんねえし」
「でも死んでないじゃない」
「いや、それはそうだけどさ」
「いい? 世の中結果が全てよ! 生きてるんだからそれでいいのよ!」


 何とまあ、気持ちのいいくらいのポジティブ精神。


「……まあいいや。それで? ステリアはオレを王国に連れて行って何がしてえんだ?」
「一緒に冒険ができるじゃないの!」
「お前……姫の自覚あるか?」
「あら? その姫にも遠慮なくものを言ってくるアンタも相当よ?」


 あ、そういや、これってもしかして不敬罪(ふけいざい)?
 そうだよな、相手は一国の王女なんだから、完全に処刑もんかもしれねえ。
 ………………よし、逃げるか?
 闘悟はその場から逃げようとした時、ステリアに腕を掴まれた。


「なっ!?」
「逃がさないわよ?」


 何て勘のいい奴だ!
 どうやら、オレの目論見は失敗に終わったようだ……ちくしょう。


「それに、別に言葉使いとかどうでもいいわよ。むしろそっちの方が新鮮で気分がいいわ」


 確かに、王女ともなれば、家族以外は敬語で接してくるのが当然だ。
 こんなふうに、親しく話しかけてくる同年代の人物は、闘悟が初めてかもしれない。


「サバサバしてるんだな」
「あら? ネチョネチョしてた方が良かった?」
「そ、それは嫌だな」


 裏で暗殺とかされそうだしな。
 そうでなくても、変な嫌がらせとかされそうだし。


「さあ行くわよ?」
「……どこに?」
「もちろんアーダストリンクよ」
「行かねえぞオレ」
「え? な、何でよ!?」


 まるで、自分の思う通りにことが進んでると思っていたステリアはショックを受ける。


「だってさ、オレ学園にも通ってるし、今はグレイハーツの宮殿に住まわせてもらってるしな」
「学園? ああ、ヴェルーナのこと? ううん、それよりも宮殿に住んでるですって?」
「ああ」
「どういうこと?」


 闘悟は自分が『ネオアス』に来た経緯と、これまでの出来事を掻(か)い摘(つま)んで説明した。


「いよいよ、異世界人だっていう話に信憑性(しんぴょうせい)が出てきたわね」
「おいおい、まだ信じてなかったのかよ?」
「当たり前でしょ? 確かにアンタみたいな変人見たことないけど、異世界人だなんて、はいそうですかって信じられるわけないでしょ?」


 まあ、そうだよな。
 だが、それはともかく、誰が変人だ! 


「でも……そう、ヴェルーナに通ってるのね……」


 急に思案顔になるステリア。


「もしかしてアンタ、『ヴェルーナ魔武(まぶ)大会』に出る気?」
「まあな」
「そう…………分かったわ」
「ん?」


 思案顔を止めて、闘悟に視線を向ける。


「今日のところは、顔合わせということで納得してあげるわ」
「はあ……」
「でも、アタシはアンタを諦めたわけじゃないんだからね!」


 指を差しながら言ってくる。


「ほどほどにしてくれよ?」
「ええ、ほどほどにアンタを籠絡(ろうらく)してあげるわ!」
「籠絡って……」


 すると、ステリアは頬をさっと赤く染める。


「か、勘違いしないでよ! 気に入ったっていうのは……そう! オモチャとしてよ! 面白そうだから気に入ったの! 別に好きとかそういうんじゃないからね!」


 どこのツンデレだよおい。
 その仕草と言葉が似合うのは良しとするけども。


「へいへい、そんな必死に言わなくても理解してるから」
「べ、別に必死になってるわけじゃないわよ!」


 闘悟は頭を掻きながら肩を落とす。


「そんじゃ、麓(ふもと)まで行くか」
「う~ホントに分かってんの?」


 闘悟はその問いを無視して歩き出した。


「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」


 二人はそうして山を下りることになった。





「そんじゃ、気をつけろよ? まあ、ステリアなら大丈夫だと思うけど」


 何たって上級魔法の使い手だ。
 ここら辺の魔物では太刀打ちできないだろう。
 闘悟は手を軽く上げて立ち去ろうとした瞬間、ステリアが声を出す。


「ねえトーゴ」
「何だ?」
「一か月後、楽しみにしてるわよ?」
「ん?」


 それだけ言うと、彼女は足早に去って行った。
 一か月後というと、『ヴェルーナ魔武大会』がある。
 もしかして、彼女も参加するのかもしれない。


 大会は参加希望すれば誰でも参加できる。
 たとえ他国の住民でも関係無い。
 ヴェルーナと名がついているのは、ヴェルーナ魔法学園の闘武場で行うから、その名がついているだけなのだ。
 だが最近は、専(もっぱ)ら参加者も少なくなり、ほとんど地元の者しか参加してはいなかった。
 だが今回は、賞金もついてる。
 まあ、一部疑問に思う商品(王妃のデコチュー)もあるが、賞金に釣られて参加する者がグッと増えるのは間違いないだろう。


 この一か月で闘悟がやりたかったことの二つは経験できた。
 後一つは、結果待ちだった。
 すでに種は蒔(ま)いたが、それが芽になるかはもう少しで分かるだろう。
 闘悟はそんなことを思いながら、グレイハーツに戻って行った。

 
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