とあるの世界で何をするのか
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第十八話 とある魔術の主人公
「なぁなぁ、ゴールデンウィークどうする?」
「別に今のところ特に何も考えてないけど……どっか遊びに行きたいなぁ」
「僕は一回家に帰るつもりだよ」
「おれっちも帰るかなぁ」
「神代はどうするんだ?」
4月も下旬になるとクラスの雰囲気にも慣れてきて、普通に話す友達も増えた。そして、放課後になって仲の良い男子数人で今話しているのがゴールデンウィークの予定である。中学から学園都市にやってきたメンバーは、やはりこのゴールデンウィークに帰省するようだ。逆に学園都市に居たメンバーは普通に休みとして過ごすようである。幼稚園時代から学園都市に居たメンバーから聞いた話では、夏休みと正月の年2回帰省でも多いほうらしい。
「学園都市に居るつもりだけど、特に予定はないよ」
俺が答えると帰省組み以外で一緒に遊ぼうという話になって盛り上がる。当然、俺にはこの世界に帰省する場所などないので、帰省するということもない。まぁ、原作開始まではまだ時間もあるし、ゴールデンウィークぐらいは普通に休みを楽しんでもいいだろう。まぁ、暗部の仕事がなければの話である。
「でも、神代は中学から学園都市に来たんだろ? 折角レベル4になってるんだし、帰省してもいいんじゃないか?」
中学から学園都市に来たメンバーの中で、唯一帰省しないと答えた俺に気を使ったのか、一人の友達が帰省することを勧めてくれた。
「そうそう、故郷に錦を飾るってやつだよ」
「あー、いや……。俺、帰る場所ないから……」
別の友達も妙に難しそうな慣用句を使って囃し立ててくるが、俺が答えると同時に教室内が静まり返った。って、他の皆も普通におしゃべりとかしてたはずなのに、俺の話聞いてたのか。
「帰る場所がないって、どういうこと?」
俺に聞いてきたのは佐天さんだ。佐天さんのおしゃべりグループには佐天さんの他に、初春さん、アケミさん、むーちゃん、マコちんが居る。
「俺の両親、離婚して家売っちゃったから」
俺が答えているのは、土御門さんと相談して決めた俺の設定である。
「でも、父親でも母親でも住んでる場所に帰ればいいんじゃないですか?」
「いやー、どっちとも連絡付かないんだよねー」
次は初春さんに聞かれたことを答える。
「え? でも、それって……」
「そ。俺、今はチャイルドエラーだから」
今度はアケミさんがつぶやいたことに対して答える。すると、教室の雰囲気が一気に同情的な感じに変わった。
「まー、連絡が付きさえすればチャイルドエラーじゃなくなるんだし、そんなに気にしないでいいよ」
余りにも教室の空気が重くなったので軽く言ってみた。それによって空気の重さも多少は緩和されたようだ。しかし、皆教室に居づらくなったのか、その後はすぐに皆帰宅していったのである。
「ただいまー」
あのあと、俺も教室に残る理由がなかったのでそのまま寮に帰ってきた。
(少しよろしいですか?)
玄関に鍵をかけたところでシェーラが話しかけてきた。
(ああ)
(インデックスという少女に付けられた枷についてなのですが、……残念ながら全てを解除するには、心臓を停止させるという方法しか残っていませんでした)
シェーラからの報告は俺に現実の非情さを突きつけるものだった。インデックスにかけられた枷は相互に作用するようになっていて、どれか一つでも壊そうものなら全ての機能が停止するようになっているらしい。なお、インデックスにかけられている魔術的な枷は、食べ物や飲み物に魔術的な意味合いを持たせてインデックスの体内に刻み込んだものらしく、その枷を破壊するということは内蔵機能なども破壊してしまうということのようだ。
魔術の枷というのは一つ一つなら安全に解除する方法があるはずなのだが、インデックスにかけられている枷は、一つを安全に解除しようとすればいくつかの別の枷が引っかかり、それの解除にまた別の枷が……という風に、全ての枷が別の枷に引っかかるようにかけられているということなのだ。つまり、インデックスの枷は最初から正規に解除することが出来ないように組み込まれているというのだ。
しかし、1年で記憶を消去しなければ死んでしまうという首輪は、上条さんの右手でのどの魔方陣を破壊したし、その時に起動した自動書記も同じく破壊できたと思うのだが……。
(首輪と自動書記は破壊しても大丈夫だと思ったんだが、違うのか?)
(はい、首輪に関しては禁書目録の安全装置的な役割なので他とはつながりがありません。一応、首輪に何かあると自動書記が起動するようにはなっていますが……)
(そうか。なら、その二つは破壊しても大丈夫ということでいいんだな)
(いえ、自動書記に関しては首輪以外の禁書目録機構ともつながっているので破壊するのは危険です)
(禁書目録機構というのは?)
(これは魔導書の内容を外部から参照するための機構です。主に13の外部参照機構と、27の手続き機構、そして49の検索機構からなっています。この機構はそれぞれに防御機能が備わっていて、自動書記同様インデックスの魔力を使用して攻撃をすることができます。正規の参照にはイギリス清教の霊装を使う必要があって、不正な参照がされた場合には自動書記が発動するようになっています。もし、自動書記が発動しなければそれぞれの機構の防御機能で迎撃することになりますが、その場合には接続された参照機構をはじめ、不正な参照で使用された手続き機構と検索機構も迎撃の発動をしますので、その時にはインデックスの体そのものを破壊してしまう可能性が高いと思われます。最悪、不正参照で自動書記が起動し、その途中で自動書記が破壊されるようなことがあれば、全ての禁書目録機構が迎撃体勢となりインデックス本人はもとより、その場を中心に半径数メートルが跡形もなく吹き飛ぶ可能性すらあります)
(そういうことだったのか)
確かに上条さんの手で首輪を破壊したあとに自動書記も停止させたけど、その時は禁書目録機構は使われてなかったから助かったわけだ。そして、フィアンマは確かイギリス清教の霊装を奪って禁書目録の参照をしたっていう話だったはずだから、それは正規の参照として扱われたということになる。しかし、破壊しようとすると内蔵機能ごと破壊してしまい、解除しようとすれば自動書記やその他迎撃機構が働き、正規の手段を用いずに禁書目録を参照しようとしても自動書記やその他迎撃機構が働く。そこまで綿密な枷をかけられるほどの技術があるなら、インデックスに10万3000冊を覚えさせる必要なんてないんじゃないかなぁ。
その後、シェーラからイギリス清教の内部事情や勢力関係なども聞き、表面上は必要悪の教会が意外と力を持っていないことも分かった。というか、裏では物凄く力を持っている、というのは予想通りだったのだが……。
シェーラから色々な話を聞いている間にいつの間にか夕方になっていた。夕食の材料は昨日の内に使いきっているので、今日は外食の予定である。いくら学園都市といえども、野菜や肉を腐らせないような技術はまだ開発されていない。なので、休日に近所のスーパーで数日分の食料を買い込んで、その食材が残っている間は自炊、なくなり次第ファミレスという生活をしている。
「行ってきまーす」
寮を出ると近くのファミレスへ向かう。ファミレスといえば、持ち込みでシャケ弁やら鯖缶やら食ってる連中が思い浮かぶが、今向かってるファミレスでは見かけたことがない。ちゃんとレベルアッパー対策は出来たのだろうかと、少し心配になってしまう。
ファミレスに到着してから席に案内されると、メニューを頼んで水を一口飲む。別にフラグは立っていなかったみたいで、さっき考えていた連中がファミレスに居るなんてことはなかった。まぁ、考えてみればそんなに簡単にフラグが立つなんてことは……あったか。そう言えば、神裂さんとかステイルのことで土御門さんのことを考えたときに、その土御門さんからドンピシャのタイミングで電話があって、見事に神裂さんとステイルを迎えに行ったんだった。
夕食を食べ終えファミレスを出ると、明日の朝食を購入するために少し遠いが美味しいと評判のパン屋へ向かうことにした。10分ほどは歩いただろうか、ようやく店に到着して中に入ってみると、青い髪がやたら目立つ店員が目に入った。耳のところを確認してみると間違いなくピアスが光っている。そう言えば、彼はパン屋でバイトしてるっていうことだったか……、良く覚えてはいないが女性店員目当てとかそんな感じだったと思う。
「まいど、ありがとうございましたーっ」
普通に食パンを買ったのだが、青い髪のバイト店員は少し関西弁っぽいニュアンスを出しながらも、普通に対応してくれた。まぁ、俺が姫羅で来たときには多少対応の仕方が変わるのかもしれない。
パン屋を出るとそこそこ大きな通りを使って寮に帰る。既に暗くなってきていて、ビルの間の狭い路地は当然ながら、普通に人通りの少ない狭い道でも何らかのトラブルに巻き込まれる可能性が高いからだ。確かアニメで見たときは片側2車線とかの道が描写されていて、俺の中ではそんな道が多いイメージだったのだが、学園都市は人口の8割が学生ということもあって、実は団地内の道路のような車2台が何とかすれ違える程度の道ばかりなのである。そんなわけで、俺は人通りの多い道を選んで帰っているわけだ。
道を歩いていると、前方で通行人が不自然に避けている場所があった。建物の影になっていて分かりにくいが、よく見るとどうやら不良がたむろしているようだ。あれ……さっきのってフラグだったのか? まぁ、俺も普通に避けて通れば大丈夫だろう……とかって思ったのはフラグか!?
内心ドキドキしながら、他の通行人と同じく不良たちを避けるように道の端のほうを歩いていく。
「あー、居た居た。探したんだぞー、駄目じゃないか、勝手にはぐれちゃ」
とにかく不良たちに目を付けられないように歩いていたのだが、なんか聞いたことのあるような声が聞こえたので見てみると、ちょうど上条さんが女の子を不良の輪から連れ出そうとしているところだった。
普通にアニメを見ただけの知識で考えれば、ここは上条さんが御坂さんを連れ出そうとして失敗し、不良たちに文句を言っていたら御坂さんが怒って電撃を飛ばす……という場面だと思うところだが……というか、俺は最初そう思ったのだが、実際に不良の輪から連れ出されてくる少女は御坂さんではなかった。
「なんか連れがお世話になったみたいで、いやー、どうもどうも」
上条さんは不良の輪から少女を連れ出し、しばらく歩いたところで少女と一緒に走り出す。不良達もしばらくは呆然としていたが、一人がハッと気付いて声を上げると全員が追いかけ始める。こういうのも一応主人公補正になるんだろうか。
俺は一応不良達にスロウの魔法をかけておく。これで上条さんはともかく、もう一人の少女が不良達から逃げるのも少しは楽になるだろう。
しかし、上条さんって御坂さん以外にも同じことしてたんだね。アニメで御坂さんを助けたときは確か夏服だったはずなので、よくよく考えればまだ冬服のこの時期にアニメの場面に遭遇することは有り得ないのだ。しかし、主人公との初遭遇がこれだけとは……ちょっと残念。
(あ、そうだ。シェーラ、アリス、居るか?)
(はい)
(うん)
そう言えば、上条さんのことで二人には注意してもらわないといけないことがあったんだった。
(さっき女の子助けた男の右腕には関わらないようにしてくれ。幻想殺しって言って異能の力は全て消し去る能力だから、触れたとたんに消滅する可能性があるからな)
(かしこまりました)
(うん、分かった)
取り敢えず、二人が上条さんの右手に注意してくれればそれでいいだろう。本当は上条さんの右手についても調べたいところだが、二人にとっては余りにもリスクが大きすぎるのだ。
「さて、帰るか」
不良が居なくなったので俺はそのまま歩き出した。途中で土御門さんの寮の横を通るが、多分土御門さんの部屋の隣が上条さんの部屋のはずだ。とはいえ上条さんはさっき少女を助け出して、不良達から逃げ回っているはずだからまだしばらくは帰ってはこないだろう。
「お、神代。奇遇だにゃー」
ちょうど寮から出てきた土御門さんに声をかけられる。
「あれ、土御門さん。今から出かけるんですか?」
「ああ、ちょっとねーちん達に話があってな」
どうやら土御門さんは魔術方面の暗部活動らしい。
「なるほど、お気をつけて」
「あれ、土御門。今から出かけるのか?」
俺が土御門さんを送り出そうとしたところで後ろから上条さんの声が聞こえた。ってか、早すぎだよね。
「おう、上やん。ちょっと出かけてくるぜい」
「この子は知り合いなのか?」
上条さんが俺のほうを指差しながら土御門さんに聞いている。
「ちょっとした知り合いだぜい」
「そうか、じゃー、気をつけてな」
「おう、じゃー行ってくるぜい」
土御門さんは特に俺のことを紹介せずにそのまま行ってしまった。しかし、折角のチャンスだ、しっかり利用させてもらうとしよう。
「さっきはお手柄でしたね」
俺は上条さんに声をかけた。
「ん? さっきって、なんだ?」
「不良の中から女の子助けてたのって、貴方でしたよね」
あの場面をちょうど目撃したのだから、それを話題に出さないほうがおかしいだろう。
「ああ、さっきのあれか。見てたのか?」
「ええ。不良達がたむろってるなーって思ってたら、女の子が絡まれてたんですね。その女の子を面白い方法で見事に助け出してたから、印象には強く残ってますよ。それで、あの女の子はどうしたんですか?」
「うわぁ、恥ずかしいところを見られちまったなー。まぁ、あの子は家の近くまで送ったよ」
「それでもうここまで帰ってきたんですか? 早すぎません?」
「あー、あの子の家ってそんなに遠くなかったし、この近くだったからな」
「そうだったんですか」
「それで土御門とはどういった知り合いなんだ?」
「友達の友達です」
上条さんに聞かれて咄嗟に出た答えが友達の友達だった。まぁ、下手なことを言うよりはいいだろう。
「そうなのか。あ、俺は上条当麻。よろしくな」
「……あ、はい。俺は神代騎龍です。こちらこそよろしくお願いします」
上条さんに自己紹介をされて右手を出される。さっきシェーラとアリスに話していたことが頭をよぎって、一瞬握手するのを躊躇ってしまったが、ここで握手を拒否するのもおかしな話なので俺も右手を出した。しかし、上条さんは俺の出した右手と握手した瞬間に手を離した。
「あっ……手が触れるのは苦手だったのか?」
「いや、別にそういうわけでは……、自己紹介でいきなり握手っていう経験がなかったので……」
もしかしたら上条さんが俺の何かしらの能力を打ち消してしまって、それに気付いた上条さんが瞬間的に手を離したのかとも思ったのだが、ただ単に俺の一瞬の躊躇を潔癖症とかそんな感じだと思ったようだ。しかしまぁ、咄嗟に答えた俺の言い訳ももうちょっと何とかならなかったかなぁ。
「そっか。じゃー、俺はここだから」
上条さんが目の前の寮を指差す。まぁ、まず間違いなく土御門さんの部屋の隣が上条さんの部屋のはずだ。
「土御門さんと同じ寮なんですね」
「ああ、それじゃー、またな」
「はい、お疲れ様でした」
上条さんが寮へ入るのを見送ってから俺も歩き出す。
(シェーラ、アリス)
(はい)
(うん)
やはり二人に一応確認はしておかないといけないだろう。
(今の握手で何か変わったことはないか?)
(はい、触れていた一瞬だけ魔力が切断されました)
(それに、能力も使えなくなってたみたい。けど手を離した瞬間に全部が元に戻った)
(やはりそうか、ありがとう)
(いえ)
(うん)
思ったとおり上条さんの右手は俺の魔法にも効果があるようだ。あ……そう言えば、上条さんのパラメーター確認しとけばよかった。まぁ、またいつか機会があるだろう。
寮に帰ってから思ったのだが、結局何かフラグは立ってたのか!?
後書き
インデックスの設定については独自設定というか、恐らく設定改変してると思います。
実は原作は14~22巻までしか読んでないんですよね。しかも一度しか読んでないのでうろ覚えの部分が多いという^^;
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