DQ4TS 導く光の物語(旧題:混沌に導かれし者たち) 一~四章
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一章 王宮の女戦士
1-15おねえちゃん
同僚の屍を置いて、邪悪な気配で満ちる地下を目指し、階段を下りる。
階段の先の廊下を、奥へと進む。
廊下の奥の広間から、子供が駆け出して来た。
「えーん、えーん。たすけてー、こわいよー」
広間の奥の台座の上に、一体の魔族が、その脇にはおおめだまがいる。
子供を庇いながら戦って、勝てるだろうか。
難しい、賭けるにも分が悪い。
「おばちゃん、たすけて!こいつらぼくのこと、勇者だろうっていじめるんだ。」
魔物の狙いは、あくまで勇者。
勇者と確認しないまま殺しては、いくら攫い、殺しても安心できない。
魔物は子供を、簡単には殺せない。
ならば、手はある。
ホイミンが奇妙な顔をしている。
「うわーん!うわーん!ププルが……ププルが化け物に食べられちゃうよ!」
「おばちゃん、ププルを助けてよう!」
広間の片隅の檻には、別の子供たちが閉じ込められている。
外の子供も檻の近くに置けば、魔物たちにも自分たちにも、戦い易い。
魔物たちはまだ、自分たちは絶対に、子供たちを傷付けたく無い。
ホイミンがますます奇妙な顔をしている。
ライアンは、自分に縋り付く子供に語りかける。
「いいかい、これからおばちゃんたちが」
「おねえちゃんです」
ホイミンの様子がおかしい。
しかし、今は子供に話さねばならない。
「これからおばちゃ」
「おねえちゃんです」
「おば」
「おねえちゃんです」
昨日、イムルの村で言われたことを思い出す。
そんなことも知っているとは、流石は人間に憧れるだけある。
だがしかし、今は。
「ホイミン。今はそんな場合では」
「ライアンさんはっ!おねえちゃんですっ!」
ホイミンの瞳が潤んでいる。
仕方が無い。
魔物たちを待たせてしまうが、子供らが近くにいれば手も出さぬだろう。
子供たちに伝わるかはわからないが、できるだけやってみよう。
ライアンは子供の手を引き、檻の近くに移動する。
微笑みながら子供たちの顔を順々に見回し、語りかける。
「いいかい、これからお」
ホイミンの瞳がキラリと光った。
「ねえちゃんたちが、化け物たちをやっつけるからね。化け物は、お」
キラリと光った。
「ねえちゃんたちしか、いじめないからね。間違って当たるといけないから、ここでみんなと、じっとしているんだよ。お」
キラリ。
「ねえちゃんたちは、絶対に負けないからね。わかったかな?」
ホイミンは、微笑んでいる。
子供たちの顔が、赤い。
昨日の子供は、かなりの時間窘められていた。
途中で止めたので、納得したのかもわからない。
そもそもライアン自身、よくわかっていない。
しかし、今は時間が無い。
多少無理にでも、話を進めねばならない。
ライアンは、笑顔で問いかける。
「わかったら、おへんじは?」
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