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ドラゴンクエストⅢ 勇者ではないアーベルの冒険

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第8章 そして、伝説へ・・・
  第61話 そして、現地へ・・・

どうして、こうなってしまったのだろう。

アリアハンの城壁前で、俺とテルルはセレンとタンタルの帰還を待っていた。
大魔王ゾーマから逃げ帰った俺達は、全員がそろってから今後どうするか、話をしなければならない。

だが、その前に何が問題だったのか検証する必要がある。
先に問題点を洗い出し、つぶしていかないと、同じ過ちを繰り返すことになる。

勇者がさらわれたあと、追跡をあきらめたのは、正しいと考えている。
勇者を連れ去った3姉妹は、レベル99の盗賊と武闘家ふたりであり、全ての呪文を身につけているという。


当時の俺達の戦力では、1人だけなら倒せるが、相手は決して隙をみせないだろう。
大魔王ゾーマを一度は倒した今の状況でも、勝てるとは考えられない。
さらに、「きえさりそう」で姿を隠すため、追跡自体も難しい。

それに、相手は、勇者を人質にする可能性もあった。
人質を無視する方針もあったが、直接勇者と相対すると決意が鈍る可能性があって、結局追跡はあきらめた。


そうなると、今度は、勇者を無視して大魔王ゾーマを倒す方針に切り替えた。
俺の目的は「魔王バラモスが倒される前に、大魔王ゾーマを倒す」である。
勇者を連れ去った3姉妹が、俺達の代わりに、先に大魔王を倒すとは思わない。

3姉妹の行動原理は理解できないが、タンタルの証言からオーブの回収が目的とあった。
上の世界での動きが活発であるため、先に魔王バラモスを倒す可能性が高かった。

竜の女王の城に赴き、光の玉を入手した。
俺達の戦力で、大魔王ゾーマを倒すには必須のアイテムであり、無事に入手できたのは問題なかった。

そして、大魔王ゾーマを襲撃する作戦について考察した。
経験を積み、ステータスを上昇させるアイテムを食べたこと。
ゾーマの城に侵入するために竜に変身する呪文「ドラゴラム」を改良したこと。
魔法の玉を、ゾーマの城にぶつけて、破壊することで、ゾーマをおびき寄せたこと。
ゾーマとの長期戦に耐えるために全体回復魔法「ベホマラー」と同じ効果を得るアイテム「賢者の石のようなもの」を開発したこと。
これら全ては、大魔王ゾーマを一度は倒したことから、間違ってはいなかった。

ただし、1点見落としがあったのだ。
「精霊ルビスを助けなかった」
大魔王ゾーマは闇の力を用いて再生した。

ゾーマの再生は原作にない行動なので、精霊ルビスを助けていたら、復活することはなかったはずだ。


そのことを、ふまえて、これからの行動を組み立てる必要がある。


上空から、こちらに向かう人影を発見した。
「セレンか」
俺は隣に座るテルルに視線を送ると、立ち上がって到着地点に向かい始めた。



セレンは、俺とテルルの姿を確認すると、抱きついてきた。
セレンは、涙を流し、あえぐように話し出した。
「タンタルさんが、タンタルさんが・・・」
「落ち着いて、セレン」
「何があった?」
テルルが膝をついたセレンの肩を抱きかかえ、俺がセレンに状況説明を求めた。
「タンタルさんは、私を飛ばしてすぐに、魔法の玉で爆発しました」
それだけ話すと、セレンは嗚咽を続けた。


俺達は、状況を確認するため、明日再びラダドームからゾーマ城を目指すことにした。
ゾーマ出現の可能性は低いとはいえ、出現したら、全滅が確定する。
そのため、事前に準備を行うことにした。
ソフィアから、新しい「賢者の石のようなもの」を入手した。


俺とテルルは、塔の中にいた。
マイラの村で妖精の笛を入手してから、北西にあるルビスの塔に侵入を果たした。
ようせいの笛を入手する際に、事件に巻き込まれたが、無事解決した。
あの事件は、あまりにも後味が悪かった。
同時に、俺達の冒険とは関係ない話なので、詳細は割愛する。
ただこれだけは断言する。
「嫌な、事件だった」

ルビスの塔に行くために本来は船が必要なのだが、時間がかかるため俺の「ドラゴラム」飛行形態で塔に侵入することにした。
ちょうど、塔の北側の2階の壁が無い部分があったので、そこから侵入した。
ちなみに、俺とテルルの2人で侵入しているため、竜も小型化にして、消費MPも節約している。

ちなみにセレンは、アリアハンの自宅で休んでいる。
俺達を手伝うといっていたが、精神的に心配して強制的に1日休ませた。
無理に1人でゾーマ城に行く危険性があるが、俺が竜に変身しないかぎり、ゾーマ城にいけないので、問題ない。

どこかの勇者のように、泳いで行くことも無いだろう。
水着も持っていないし。


2人での侵入は危険が伴うことと、俺の残りのMPがこころもとないため、「聖水」の使用と「しのびあし」との併用で、モンスターを回避しながら、ルビスの封印された場所まで到達する。
精霊ルビスは、石像のようになっていた。

「さあ、吹くわよ」
テルルが、妖精の笛を吹いた。
事件解決の影響で、俺ではなくテルルが吹くことになった。
そのことは、不満はない。
だが、あの事件は後味の悪い事件だった。

テルルが笛を吹き終わると、封印されたルビスに光が集まりだし、やがて内部からルビスを封印してた表層部分が砕け散り、ルビスの体に生気がみなぎっている。

「まるで、夢のよう」
精霊ルビスは喜びの声をあげる。
「よくぞふういんをといてくれました」
途中に嫌な事件がありましたが。

「私は精霊ルビス、このアレフガルドの大地を作ったものです」
ルビスの自己紹介に頷く。
したり顔をするわけにはいけない。
「お礼に聖なるまもりをさしあげましょう」
最初、受け取りを拒否しようかとかんがえたが、時間がないので受け取った。
あとで、勇者にあげることにする。

「そして、もし大魔王をたおしてくれたなら、きっといつかその恩返しをいたしますわ」
どうしよう、一度は倒した事を話すべきか。
お礼はいらないが、大魔王ゾーマが復活できないようお願いする必要がある。
もし、精霊ルビスの力ではないとすれば、大魔王ゾーマが復活できないようにするための方法を尋ねる必要がある。

「そうでしたか」
精霊ルビスは、俺の説明を聞いた後、答えてくれた。
「私の力があれば、大魔王の復活を阻止することができます」
「俺は、大魔王が倒れれば、あなたの封印も解けるものとおもっていました」
俺は頭をかいた。

「残念ながら、この封印は大魔王が倒れても解けません。もし、封印さえなければ」
精霊ルビスは、すまなそうな顔をする。
済んだことを責めてもしかたない。
俺が、あらかじめ助けていたら、問題なかったという点では俺の責任だ。
これからの事を考えなければならない。
「では、大魔王が倒れたときの事はよろしくお願いします」
俺は、帰還呪文「リレミト」を唱えた。
「私は精霊ルビス、この国が平和になることを祈っています」



翌日、俺達三人はゾーマ城の入り口付近にいた。
城は綺麗に修復されており、俺達が魔法の玉で攻撃した傷跡は、全く残っていない。

城の左手には、大きな穴が開いている。
「ここか」
俺は正直、ここに来たくはなかった。
俺はここでの戦いで、仲間を死なせてしまった。
そして、死体が残らなかったことから、復活は無理だ。
ここに来れば、自分の愚かさを嫌でもつきつけられるからだ。
それでも、確認しなければならない。
それが、タンタルによって生き延びた俺達の責任でもある。

穴の一番深いところは、地表から約5メートルあった。
無論、そこには何も無い。
タンタルが生きていたことを示す物は、ここには存在しなかった。

「アーベル」
セレンは、俺に優しく声をかけた。
「タンタルさんからのことづてです」

「俺はこれまで、何回も死んできた。
死んだままでいる事が、許されなかったからだ。

俺は、3姉妹から解放され、最初に思ったことは、もう無駄な死を強いられることはなくなったのだと喜んだ。
そして、アーベル達と一緒に冒険をするようになり、俺は何のために生きているのだろう。
そのことばかり、考えてきた。
だが、今日まで、答えは見つからなかった。

ようやくわかったよ。
俺はここで、みんなを脱出させるために生まれてきたことを。
ありがとう、アーベル。
俺に生きる意味を教えてくれて」

「タンタル」
「タンタルさん」
「・・・」
俺達は涙がかれるまで、立ちつくしていた。


「一度、帰ろうか」
「うん」
俺の提案にセレンが頷く。
この場所には、タンタルの遺品は存在しない。
俺達の記憶だけが、タンタルが生きていた証になる。
ならば、タンタルの死を無駄にしないためにも、きっちりとゾーマを倒す必要がある。

問題は、戦力の補充である。
俺は最終手段として、母親であるソフィアに依頼するつもりだ。
ソフィアの力があれば、問題ないはずだ。

俺達は、ルーラでアリアハンに帰還した。



「どういうことだ?」
俺はアリアハンに到着してすぐに、違和感を覚えた。

「モンスターの気配がしないね」
「!」
セレンの感想に驚いた俺は、慌てて町の入り口に向かう。
勇者がバラモスを倒したのか! 
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