スーパーヒーロー戦記
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第55話 大空へと飛びたて!グレートマジンガー
デストロン最高幹部【ヨロイ元帥】の卑劣な策謀により陥れられた男【結城丈二】。
彼はヨロイ元帥に復讐を誓い新たな仮面ライダーとなった。
その名は【ライダーマン】。V3とフェイトの説得により彼もまた正義の為に戦う事を決意する。
徐々に戦力が増強されていく中、再び日本に巨大な悪が迫っていた。
***
その日、日本全域に集中豪雨が直撃していた。朝から記録的な豪雨が降り注いでおり台風並みの突風が吹き荒れていた。
それだけに留まらず雷鳴が響くなど悪天候も此処まで来ると凄まじい物があった。
今回の物語はそんな悪天候の中から始まる事となる。
「どうかね? 結果の方は……」
その日、此処科学要塞研究所内で険しい顔をしながら兜剣造博士が研究員の解読している結果を待っていた。それに対し研究員の顔色が明るくなる。
「素晴らしい成果です。高度5万メートルからの急上昇と急降下を行ったと言うのにグレートマジンガーにも、そして鉄也君にも目立った異変は見られません!」
研究員の報告を聞き兜博士はさも当たり前の様に頷く。彼にとってはその報告は当然の報告に他ならない。
「これでグレートマジンガーはほぼ完成状態になりましたね」
「うむ、来るべきミケーネ帝国との戦いに備えて一刻も早くグレートマジンガーを完全な物にしなければならないのだ」
「その為のアースラへの転属なんですね?」
研究員の問いに兜博士は頷いた。グレートマジンガーのアースラ隊への転属はかねてから予定してあった事だ。激化する戦いの中、一番前線での戦闘経験が豊富なアースラ隊への転属は兜博士の予定しているグレートマジンガーを完成させる上でどうしても避けては通れない道でもある。
それに、パイロットの成長にも欠かせない要素が満載でもあった。
「いかに鉄也君が戦闘マシーンとして調整された存在だからと言っても、実戦経験が少なければ咄嗟の時に対応出来ない。それを補う為には実戦を経験させるほかないのだ。それを考えれば今度のアースラへの転属は私にとっては願っても無い誘いなのだ」
「ですが、あの鉄也君が果たしてアースラのメンバーと上手くやって行けるでしょうか?」
その問いには率直に答える事は出来なかった。兜博士は自慢の髭を弄りながら難しい顔をしている。どうやら鉄也の性格に若干難があるようだ。
彼の性格の難が発覚したのはつい数週間前の事だ。きたるべきミケーネとの戦いに備えて日々訓練を行っていた鉄也の実力を計る為、国際平和連合屈指の兵士を訓練の相手として組み手をさせたことがあったのだ。
勿論訓練とは言え実戦さながらの思いでやる為、双方本物のナイフを持たせてのである。その際に鉄也は相手の兵士が彼の事を侮辱したのに腹を立て、彼の手足をへし折り、あばら骨を粉砕させてしまったのだ。
勿論兵士にも非はある。しかし、だからと言って兵士に瀕死の重傷を負わせて良いかと言われればそれは駄目だ。
結局、その後兵士は即刻病院送りとなり鉄也は暫しの間反省も込めて独房内で過ごす事となった。この事から分かる通り鉄也は既に戦闘マシーンとしては完成されては居るが、人としてはまだ未完成な部分がある。
そんな彼が果たしてアースラ隊で上手くやっていけるかどうか正直不安ではあった。
「機械は手を加えればすぐに結果を出す。だが人間は別だ。こればかりは時間を掛けてやらねばどうしようもない。無責任だが、鉄也君自身が変わってくれる事を祈る他ないな」
静かに兜博士が呟いた。丁度外は嵐が去り青空が顔を見せ始めた。この青く美しい空を何時までも人類の物にする為にも、一刻も早くグレートマジンガーの完成を急がねばならない。
時間は余り残されていないのだ。
***
暗黒大将軍の苛立ちは頂点に達しようとしていた。無理もない。日本攻略の為に放ったミケーネ七つの軍団の精鋭がいとも簡単に倒されてしまったのだから。そのせいで本来なら既に世界は占領され地球はミケーネ帝国の物となっていた筈だったのだ。
しかし、マジンガーZへトドメを刺そうとした際に現れたバイカンフー、そしてグレートマジンガーの横槍により計画は断念せざるを得なくなり、結果として計画を大きく遅らせる事となってしまった。
その事が暗黒大将軍を激しく苛立たせる要因ともなっていたのだ。
「暗黒大将軍様、お怒りの程はこのゴーゴン大公自分の事の様に思います」
「黙れ! 貴様情報官の癖になんたる腑抜けだ! 何故あの様なロボットの存在に気づかなかったのだ! 貴様さえしっかり情報を回しておけばこの様な停滞など無かった筈なのだ! 恥じを知れ!」
「ははぁっ! 肝に銘じます!」
低く、地面と擦れあう程にゴーゴンは頭を下げた。しかしその内心は暗黒大将軍と同じ位怒りで煮えくり返っていた。しかしその怒りの矛先はグレートマジンガーにではなく、目の前で怒っている暗黒大将軍にであった。
(おのれぃ、自分の失敗を俺のせいにしやがって……いずれこの屈辱を晴らしてやる!)
堅く胸の内に誓うゴーゴン大公。その屈辱が晴らせる時が来るかどうかは分からない。少なくとも今はそれよりも大変な事態が起こってしまったからだ。
上空で激しい稲妻が起こる。天が怒り狂っているかの様なほどの激しい稲妻であった。
【何を悠長にしておるのだ暗黒大将軍よ!】
「おぉ! こ、これは闇の帝王様! 滅相も御座いません。只今我等は地上侵略の作戦会議をしていたのです」
【部下に当り散らす事が作戦会議なのか?】
「ぐっ……」
見抜かれていた。闇の帝王の鋭い指摘に暗黒大将軍は返す言葉がなかった。それを見ていたゴーゴン大公は密かに「ざまぁみろ」とばかりに微笑んでいる。
【暗黒大将軍よ、貴様が精鋭を誇る七つの軍団を打ち破ったあのロボット。何としても叩きのめせ! 我等ミケーネ人の栄光は貴様の双肩に掛かってる事を忘れるな!】
「ハハッ! 直ちに新たな戦闘獣を選りすぐり日本攻略に向けて出陣させます!」
【吉報を待っているぞ。暗黒大将軍】
その一言を最後に雷鳴は鳴り止み、闇の帝王の声は聞こえなくなった。嵐が過ぎ去ったとばかりに暗黒大将軍は安堵の溜息を吐く。彼ほどの男が恐れるのだから闇の帝王と言うのは相等恐ろしい存在なのだと思われる。
「七大将軍よ! おぬし等の精鋭の中であのグレートマジンガーなる者を打ち倒せる猛者は居るか?」
「それでしたら暗黒大将軍! 是非この怪鳥将軍バーダラーめに出陣のご命令を!」
暗黒大将軍の前に並ぶ七人の異形。それらは暗黒大将軍の懐刀とも呼ばれている七大将軍である。彼等の姿はそれぞれの種類に応じた姿をしていた。
昆虫、鳥、爬虫類、魚、人、獣、悪霊。それらの姿をした将軍達こそ七大将軍なのである。
「おぉ、バーダラーよ。お主が出るか? して、その猛者の名前は?」
「戦闘獣オベリウスに御座います。空中戦に置いては無敵の猛者に御座います」
「よし、直ちに戦闘獣オベリウスを地上に送り込め! そして地上の人間共を抹殺し、憎きグレートマジンガーを地獄へ叩き込むのだ!」
暗黒大将軍の野太い号令が響く。それを受け、七大将軍が皆声高く咆哮する。それは新たな戦乱の幕開けを予感させるには充分な物であった。
***
フェイトは半ば落ち着かない気持ちで座っていた。着慣れない管理局の制服に身を包み、隣に居る養母であり上司でもあるリンディと共に用意されたソファーの上に座っていた。
部屋の広さは7~8畳位のスペースしかなく、置かれてる物も簡素なテーブルとソファーのみと言った質素な部屋だ。向って右側には大きく付けられたスライド式の窓が張られており、其処から嵐の後の青空が見えた。
空に上っている太陽の高さからして時刻は昼過ぎだと言う事が伺えられる。そんな時刻、二人は此処科学要塞研究所へ訪れていた。理由は勿論、グレートマジンガー、並びにそのパイロットの受け取りである。
茶色の木製扉のノブが回り、扉が開く。其処から白衣を着た壮年の男性が現れた。
その男性を一言で言い表すとするならば厳格そうな男性と言えた。
整った太い眉毛に鋭い眼光。綺麗に揃えられた髭、そして両手は何故か機械の様な手を曝け出している。何故そんな手なのか聞こうと思ったのだが止める事にした。人には触れられたくない傷の一つや二つ位ある。自分にだってそうだ。
「お待たせしました」
厳格そうな顔は相変わらずのまま、男性は一言そう述べた。それに対しリンディも返しの言葉を送る。互いに一言交わし終えた後、男性は丁度フェイトとリンディのまん前に座る。
やはり、近くで見るとその厳格さは増している。パッと見るとまるで怒っているようにも見えた。
思わずフェイトは背筋が震えるのを覚えた。別に自分は怒られるような事をした覚えはない。だが、何故かこの男性を見ていると自分がまるで怒られているような気がしてならないのだ。
そんなフェイトの心境を察したのか男性はフェイトに向い優しく微笑んでくれた。
(思った程怖い人じゃないんだ)
内心ホッとする。以下に時空管理局嘱託魔導師と言う大層な称号を得ていたとしても中身はまだ9歳の少女なのだ。まだ自分に正直な年頃でもある。従って怖い物は怖い。
だが、何時までも怖がっていては流石に格好がつかない。すぐさま表情に緊張の色を織り交ぜて気を引き締める。
「それでは、本題に入りましょうか」
話題に入ろうとリンディがそう言葉を投げ掛ける。それに静かに男性は頷いた。フェイトは一人取り残された気持ちになりながらも必死について行くつもりでその話に参加していた。自分もいつかはこの話をする立場になる。
その日の為にこうした現場研修は必要な事なのだ。
ふと、フェイトは男性の手に目が行った。男性の手は明らかに人の手ではなかった。かと言って手袋をしている訳ではない。言ってしまえば彼の手は機械で出来てるのだ。その証拠に機械特有の光沢を放ち無機質感も漂っている。
そんなにその手が珍しいか? 今はその手を気にしてる場合ではないでしょう?
ふと、自身にそう言い聞かせ、フェイトは頭の中を切り替える。今必要な事は二人の会話をよく見て頭に叩き込む事だ。一連の行いが未来の自分に影響する事なのだから片時も気を緩められない。
「それで、グレートマジンガーの性能向上はどうなりましたか?」
「無事成功致しました。かつての時よりも15%強化してあります」
二人の難しい会話が続く。フェイトには正しくちんぷんかんぷんな世界でもあった。その際に襲い掛かってくる猛烈な睡魔。話についていけない場合てき面こう言った症状が襲い掛かってくる。
しかし寝る訳にはいかない。此処で寝てしまってはわざわざ今回の話し合いにわざわざ出席した意味がなくなってしまうからだ。
必死に目を擦り話についていこうと努力するフェイト。
そんなフェイトを横目で見ながら笑みを浮かべるリンディが居た。フェイトが眠気と必死に格闘しているのは既に両者が知れ渡っている事でもあった。
だが、必死に戦ってる彼女を見て何となく声を掛けないであげていたのだ。
「それでは、当初の予定通りグレートマジンガーは我々アースラ隊が引き取る形で宜しいですね?」
「お願いします。パイロットにもグレートにも実戦経験を積ませるには貴方方に預けるのが一番有効な手段ですからね」
どうやら話は済んだようだ。軽く息を吐き、リンディは隣で微かに寝息を立てているフェイトに目をやる。彼女なりに結構頑張ったようだが結局最後まで粘る事は出来なかった。見るからに話の半ば辺りで撃沈したと思われる。
「フェイト、起きなさい」
「ふぁ?」
思い切り虚ろな表情をし、口からは涎を垂らしながらフェイトは顔を上げる。余程面白かったのだろうか目の前の男性は必死に笑いを堪えているようにも見える。
それを見て、フェイトは自分がこの話の間眠ってしまっていた事を自覚した。
何やってるんだろう。私ってば――
思わず俯きだす。顔は赤面状態となり穴が有ったら入りたい心境になった。
***
話し合いを終え、暫しの休息時間を貰い、フェイトは付近の海岸を歩いていた。今の時期は冬に入った辺りのせいか海は荒れているらしく波が高い。
それに海特有の塩の香りがした。フェイトには新鮮な香りであった。海鳴市も海に面した町だった為塩の香りはしたが此処まで近くで海を見たのは恐らく初めてであろう。
良いなぁ、海の香りって。
そう思いながらフェイトは胸一杯に塩の香りを吸い込んだ。香りも良いがこうして耳の中に入ってくる波の音もまた良い。寄せては返す波の音はそれだけで心を癒してくれる。何時まで聞いてても飽きないとはこの事なのだろう。
とは言え、自分は管理局の嘱託魔導師。何時までも感傷に浸ってる訳にはいかない。今回の話も済んだ事だしすぐにアースラに戻り次の出撃に向けて準備をしなければならない。
立ち上がり、スカートについた砂を手で払い落とす。少々名残惜しいが海を眺めるのは終わりにする。
波の音しか聞こえない筈なのに別の音が聞こえてきた。砂浜を走るバイクの音だ。それと同時に漂ってくる排気ガスの匂い。それは丁度フェイトの前を通り過ぎていった。大型バイクに跨っているのは紫のマフラーを巻き、青いショートトレンチにズボンと言った落ち着きのあると言えば聞こえは良いが、言い方を変えればそれは年寄り臭い服装とも言えた。
そんな服装を身に纏っていたのは18歳頃の若い青年であったのだ。
誰だろう? この付近の人かなぁ?
バイクに乗って走っている青年を見ながらフェイトはそう思った。と、その青年がこちらに向ってきている。近くで見たその青年の顔はとても険しい顔つきをしていた。歴戦の勇士――と、聞こえは良いが早い話しが怖い顔をしているのだ。
先ほど出会った兜博士と同じかそれ以上に怖い顔であった。その青年がフェイトの前でバイクを止める。鋭い眼光でこちらを見ていた。まるで戦士の目であった。
「お前が例の管理局とか言う連中か?」
突如、男が問い掛けてきた。どうやら今フェイトが着ている制服を見てそう思ったのだろう。確かに管理局の制服デザインは地上のデザインとは一風変わった所がある。
フェイトは男の問いに静かに頷いた。それを見ると突如男は信じられないと言った顔でかぶりを振り始める。
「なんてこった。これから一緒に戦う事になる場所にはお前みたいなガキも居るのか? とんだ貧乏くじだぜ」
「私が居たら……そんなに邪魔ですか?」
心外であった。確かに自分は子供だ。だが、それでも今まで必死に頑張って戦ってきた自信はある。その自信を根っこから否定された気分だった。
フェイトにしては我慢出来ない罵りでもあったのだ。しかしその言葉に目の前の男は当然と言った顔をしていた。
「大いに邪魔だ。俺はお前達の様にお飯事をする気はない。俺の戦いの邪魔をするようなら俺は後ろからでもお前を撃ち落す。それが嫌なら隅っこに引っ込んでろ!」
それは余りにも厳しい一言であった。彼は戦う為に生まれてきた戦士、嫌、そんな生易しい言葉では片付けられない。彼は戦う為だけに作られた戦闘マシーンなのだ。感情もなく、只目の前の敵を倒す事だけしか頭にない。
それを邪魔する者は例え味方でも容赦しない。そんな感情が彼からは漂ってきた。
「貴方にとって、私達の戦いはお飯事だったと言うんですか? 私達は今までこの星を守る為に必死に戦ってきたんです! それを……」
「機械獣も禄に倒せない癖して偉そうなことをほざくな!」
「うっ!」
フェイトの言い分は男の一喝により黙らされた。事実ではある。しかし、幾ら事実でも酷い言い方であった。
「これから俺が戦う敵は機械獣とは次元が違う。そんな奴等との戦いの時にお前等がヒラヒラ飛び回られたら邪魔なんだ。戦力にならない奴等は大人しく引っ込んでろ! ガキは戦場より家族の下に居る方がお似合いだ」
容赦のない言葉の刃がフェイトの胸に突き刺さる。フェイトの胸には言いようの無い悔しさで一杯になった。彼の言い分の通りだった。自分は今までロストロギアを倒せてきたかも知れない。だが、なのはの様に機械獣や怪獣を仕留めた事はない。結果的に何時もなのはに助けられていた。
その事を指摘されたのだ。その事実がフェイトにはとても辛かった。そして悔しかった。
突如、突風が巻き起こった。竜巻にも似た激しい突風だ。この次期にこんな突風が巻き起こるのは明らかにおかしい。
二人は空を見上げた。其処には一羽の鳥が羽ばたいていた。嫌、只の鳥ではない。明らかに巨大なのだ。
普通の鳥で全長20m強ある筈がない。そして所々機械を思わせる作りをしてある。明らかに只の鳥じゃない事は明らかだった。
「戦闘獣か!」
戦闘獣。あれがそうなのか?
フェイトは上空を飛び回る戦闘獣オベリウスを見た。あれが5ヶ月前世界各国を襲撃した新たな敵。そして、なのはに重症を負わせマジンガーZを戦闘不能状態に追い込んだ強敵。
それが今、目の前に現れていた。
「フン、良い機会だ。改良されたグレートの慣らし運転の相手になって貰うぜ!」
「あのままじゃ町に行ってしまう。何としても此処で食い止めないと!」
目の前の戦闘獣は明らかに首都に向おうとしている。首都では以前の傷跡からの必死の復興作業が行われている真っ最中だ。其処へ再び奴を行かせる訳にはいかない。何としても此処で倒さなければならないのだ。
「お前も戦うのか?」
「私だって嘱託魔導師です! それに、あそこまで言われて黙ってられません」
どうやら先ほど言われた事が相等効いているのだろう。それを見て鉄也が意地悪そうに笑みを浮かべた。
「ほぅ、どうやら根性は据わってるみたいだな。良いだろう。俺がグレートを出すまでの間奴を足止めしろ。後は俺で片付けてやる!」
「分かりました」
互いに了解しあい、鉄也は急ぎ研究所へと戻って行った。グレートが発進するまでおよそ数分。あの戦闘獣ならその間に首都に向う事など訳ない。そうさせない為にも自分が此処であの戦闘獣を食い止めなければならないのだ。責任重大であった。
「行くよ、バルディッシュ」
待機状態のバルディッシュを取り出し起動させる。金色の閃光が体に纏わり魔力を帯びた鎧が装着された。手には起動状態となったバルディッシュが握られる。黒い鎌を連想させる姿であった。
フェイトの体が大空へと舞い上がる。魔力を使用した飛行能力だ。首都へと向おうとする戦闘獣オベリウスの前にフェイトは突如姿を現す。当の戦闘獣としては驚きの瞬間であろう。
何しろ人間が空を飛びまわっているのだから。
「此処から先へは行かせない! 私が相手だ」
「ふん、人間風情が偉そうな事を!」
一瞬フェイトは驚愕した。目の前の戦闘獣が突如言葉を発したのだ。今まで機械獣やメカザウルス等と戦ってはいたがどれも言葉を発する事はなかった。なのに目の前の戦闘獣は言葉を発しているのだ。それは即ち敵に相等の知能を有している事が明らかとなる。生半可な戦法はコレ以降通用しないだろう。
「何であろうと俺様の邪魔をするのなら切り刻むだけだ!」
「負けない! 私だって強くなるんだ!」
自分自身にそう言い聞かせ闘志を奮い立たせる。巨大な相手の場合気持ちで負ければ意味がない。それはいかなる戦いでも同じ事なのだ。
フェイトは高速で戦闘獣へと近づいた。彼女の戦闘は一撃離脱戦法だ。ならば一気に相手の懐に近づいて攻撃しなければならない。多少リスクは大きいがフェイトならではの戦法でもある。
手に持っていたバルディッシュから金色の閃光刃が姿を現し、それを一気に横薙ぎに振るった。
堅い岩盤を叩いたような感触が手に伝わってきた。見れば展開した魔力刃には亀裂が入っておりヒビだらけになっている。恐ろしい強度だ。こんな敵が相手となると魔導師では到底勝てない相手だと言える。しかも切りつけた箇所を見たが其処は傷一つついていない。
別にフェイトが弱い訳ではない。彼女は此処数ヶ月間必死に特訓を積み重ねてきたお陰でジュエルシード事件の時より数段強くなっていたのだ。では、何が違うと言うか。それは明白である。
敵が強すぎるのだ。
「その程度か? 蚊に刺された程度にも効かんわ!」
大声で笑う戦闘獣。そして二枚の巨大な翼を力強く羽ばたかせて突風を発生させる。華奢な体のフェイトではその風に逆らう事など出来ず木の葉の様に大空を跳ね回る結果となった。魔力で空を飛べると言っても自然の力に逆らう事は出来ない。しかも相手が巨大なのだ。
「ハハハッ、弱い弱い! それで我がミケーネに逆らうつもりか? そんなに死にたいのなら望み通りに殺してやる!」
突如、オベリウスの口が大きく開かれる。喉の奥、暗くて何も見えなかった箇所が突如光り輝く。
放たれてきたのは不気味な色をして飛んできた光線だった。物質破壊光線だった。人間の身であるフェイトが浴びれば忽ち体組織がボロボロにされ死に至る。
猛烈な風に逆らい横に飛ぶ。そのお陰か間一髪で破壊光線をかわす事が出来た。だが、それは想像以上に大量の魔力を消耗する結果となった。
避けきった後のフェイトは大量の汗を搔き息も絶え絶えの状態であった。次に同じ攻撃をされたらまず回避しきれない。
突如、轟音が響いた。岸壁に座礁していた難破船の穴から何かが高速で飛び出したのだ。
赤い、それが第一印象だった。次に目に飛び込んできたのは赤い小型戦闘機であった。それが上空を飛び回っている。
「マジーンGO!」
赤い小型戦闘機からその叫び声が聞こえてきた。その声は先ほどの青年の声だ。
海面に巨大な渦が発生する。螺旋状に発生した巨大渦の中央から一体の巨人が姿を現した。黒いボディの鋼鉄巨人だった。
「あれって、マジンガーZ!?」
一瞬、フェイトは我が目を疑った。
何で、何で此処にマジンガーZが?
マジンガーZは今光子力研究所にある筈。では今現れたあの巨人は一体何なのか? 疑問に感じるフェイトの前で赤い小型戦闘機は渦の中から現れた巨人の頭部へと突っ込んでいく。
「ファイヤーNO!」
再び青年が叫ぶ。赤い小型戦闘機が黒い巨人の頭部に合さる。巨人の両目が激しくスパークし、全身にエネルギーが行き渡る光景が見える。
巨人が背中から赤い色の翼を生やし大空へと舞い上がった。大きい! 全長はマジンガーZよりも一回り位大きい。大空に舞う雄雄しき巨人が其処に居たのだ。
「き、貴様がグレートマジンガーか?」
「その通りだ。ミケーネ戦闘獣! 今度は俺が相手だ」
青年の声を皮切りに戦闘が開始された。戦闘獣が先ほどと同じように翼を力強く羽ばたかせて突風を発生させる。だが、今度の相手にはそれは通用しなかった。
1m弱の子供になら通用しただろうが20m以上の巨人にその手は通用しない。
「そんな子供騙しが俺に通用するか!」
難なく突風の渦を掻い潜る。その後も突風を発生させるが相変わらずグレートは華麗な動きでそれをかわしていく。かなり手馴れた操縦技術だ。まるで巨人が青年自身かと錯覚させる位な動きを見せている。
「おのれ、おのれぃぃ!」
「その程度か? これ以上貴様のお遊びに付き合うつもりはない!」
グレートの足から両刃の剣が飛び出す。古代ギリシャ時代に使われた剣と良く似ていたその剣を手に持ち戦闘獣目掛けて投げつける。
投げつけられた剣は戦闘獣の体を貫く。突き刺さった箇所から不気味な色の血液が噴出し戦闘獣の顔が苦悶に歪む。
言葉を発し、知能を有しているだけあり痛みなどを感じる事もあるようだ。
「聞け! ミケーネ帝国。今度戦闘獣を出すんだったらもう少し骨のある奴を出して来い!」
この戦いを何処かで見ているであろうミケーネ帝国に向かい盛大な啖呵を切る青年。グレートが右手を天に掲げる。先ほどまで晴天だった空に暗雲が集まり、雷鳴が轟く。
一筋の雷光が掲げたグレートマジンガーの腕に降り注ぐ。稲妻がグレートの手に集まる。掲げていた腕を戦闘獣に向ける。集まっていた雷光が腕に呼応して戦闘獣目掛けて降り注いだ。
「これでトドメだ! 必殺パワー、サンダーブレーク!」
降り注いだ雷光は串刺し状態の戦闘獣を焼き尽くしていく。全身の機械が悲鳴を上げてショートしていき、やがて破壊されていく。300万ボルトの高圧電流を誇るサンダーブレークを浴びたが為に戦闘獣の人工頭脳も破壊され、悲鳴を上げる事なく爆発し、その場で残骸を撒き散らす結果となった。
圧倒的強さであった。自分が全く敵わなかった戦闘獣をあのグレートマジンガーは呆気なく倒してしまったのだ。それだけでもこのグレートマジンガーの強さを伺うには充分でもあった。
明らかにこのグレートマジンガーはマジンガーZ以上の強さを持っている。そして、これからはそのグレートマジンガーと共に自分達は戦う事となる。
だが、フェイトは不安であった。先ほどの青年の事だ。あの青年はまるで感情もなく戦い続ける戦闘マシーンに見えた。そんな人間とこれから共に戦い続けることが出来るのだろうか?
「なのは……私、なのはみたいに上手く皆を纏められるか不安だよ――」
フェイトは、自分を無視して帰っていくグレートマジンガーを見ながら今は居ない親友の名を呟いていた。だが、その呟きが親友に届いたかどうかは、知る術はなかった。
つづく
後書き
次回予告
偉大な勇者、グレートマジンガーがアースラ隊に加わった。更に赤い巨人が今再び大空へと舞い上がろうとしていた。
新たな若い命を加えた三人の若者達が今再び戦線に舞い戻る。
次回「蘇れ、われらのゲッターロボ」お楽しみに
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