| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

スーパーヒーロー戦記

作者:sibugaki
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第54話 敵か味方か?謎のライダーマン

 デストロンによって家族を殺された青年【風見志郎】は、復讐を誓い人の体を捨て、仮面の戦士【仮面ライダーV3】となった。
 だが、その心は怒りと憎しみに支配され復讐の悪鬼と化していた。只戦う事のみに固執する志郎。
 そんな志郎に涙する死した妹、雪子。
 その涙を知り、志郎を救う為にフェイトは志郎を説得する。
 フェイトの必死に説得の甲斐あり、風見志郎は復讐の悪鬼から脱し、愛と正義の戦士【仮面ライダーV3】へと生まれ変わったのであった。




     ***




 デストロン怪人、イカファイヤーとの激闘を制したフェイトは風見志郎を連れて一度アースラへと帰還した。
 当初はなのはの入院している病院へ行きたかったのだが色々とゴダゴダが出来てしまったので仕方なく帰還する事にしたのであった。

「此処がアースラの艦内ですよ」
「あ、あぁ……そうか」

 フェイトの隣で志郎は半ば驚いた顔をしていた。
 無理もない。先ほどまで地球に居たのに突如こんな場所に転移されたのだ。驚かない方が無理と言えるだろう。

「ついて来て下さい。皆さんに志郎さんを紹介しますんで」
「分かった」

 言われた通りにフェイトの後を志郎は歩く。見行く局員達の目線が志郎に向けられる。余程志郎が此処に居るのが珍しいのだろう。
 見れば皆見慣れない制服を着ている。地球ではまず出回ってないデザインであった。

「なぁ、あいつらが着てる制服……あれが例の【時空監察局】の制服なのか?」
「風見さん、【時空管理局】です。はい、そうですよ」

 サラリと訂正されたのが気恥ずかしかったのか、志郎は指で鼻っ柱を搔きながら視線を背けた。そんな志郎が新鮮だったのか、歩きながらもフェイトは思わず微笑んでいたのだが、それに志郎は気づく事はなかった。
 通路は真っ直ぐ進み、最奥にあった扉の前に立ちノックをする。

「フェイトです。只今帰還しました」
「ご苦労様、開いてるから入って頂戴」

 扉の奥から女性の声が聞こえた。別に女性だからどうとかそう言うのではないが、こう言った上司はてきめん男性が多いので、やはり其処でも志郎は新鮮味を感じていた。

「失礼します」

 扉を開き一礼する。その後に続いて志郎も入ってくる。其処に居たのは会社で言う専務等が使いそうなテーブルに座った女性とその隣に立っている少年であった。

「リンディさん、クロノ君、この人が風見志郎さん。仮面ライダーV3です」
「宜しく」

 フェイトの紹介を受けて志郎が一礼する。リンディもそれに応じて一礼するも隣のクロノは驚愕の顔をしていた。

「は、早川さん! 早川さんじゃないですか?」
「???、誰の事だ? 俺は風見志郎と言っただろう」
「あ、すみません……知り合いと似てたものでして」

 クロノが動揺するのだろうから恐らく風見志郎とその早川と言う男は余程似ているのだろうと想像が出来る。
 が、今はそれ程関係がある内容ではないので無視しておく事にする。

「それで、風見志郎君。貴方には引き続きこのアースラでの戦闘に協力してくれると認識して良いかしら?」
「それで構わない。だが、条件がある」

 志郎がリンディに対しそう申し上げてきた。当然とも言える事だ。
 実力のある者は必ず自分を売る。その最に見返りを要求する物だ。
 然程珍しい事ではない。

「何かしら?」
「デストロンとの戦闘があったら必ず俺を前線に出して欲しい。お宅ら魔導師風情じゃデストロンの怪人相手にするのは分が悪いだろう?」
「言ってくれるわね……まぁ、事実だししょうがないわね」

 確かにそうであった。現状で魔導師達がデストロンの怪人や怪獣を相手に戦うのは実に骨が折れる。その為管理局の中には地球を見捨てようと言い張る輩も少なくないのだ。
 そう言った輩を説得するのは専ら彼女の仕事となる。
 中間管理職の辛い事でもあった。




     ***




 デストロン本部内。その中の最高幹部でもあるヨロイ元帥の前に今一人の男が引きずり出されて来た。その服装から彼は科学者である事が推測される。

「ヨロイ元帥! これは一体何の真似だ!」

 男がヨロイ元帥を前にして吼える。しかし当の本人は涼しい顔をして男性を見ていた。

「フフフ、結城丈二! 貴様は我等デェェェストロンを裏切った愚かな反逆者よ。よくもこの私にそんな口が叩けたものだなぁ?」
「な、反逆者だと? ふざけるな! 俺にはデストロンを裏切る気などない!」

 全く身に覚えがなかった。
 彼の名は結城丈二。デストロンの科学者であった。優秀な頭脳を持ち人望も厚い。正しく次期幹部に打ってつけの存在でもあった。
 だが、それがいけなかったのだ。

「知らないとは言わせんぞ! 前回のイカファイヤーの戦い。あれは我等が首領のお考えになった完璧な作戦だった」
「それは知っている。俺もその作戦に携わったのだからな」

 結城が頷く。其処へヨロイ元帥が待ってましたとばかりに指を指す。

「それよ、それこそ貴様が我等デェェェェストロンを裏切った証! 貴様がこの作戦に携わったばかりに今回の作戦は失敗に終わってしまったのだ! これは紛れも無い反逆の証に他ならない!」
「嘘だ! 俺はちゃんとお前に言われた通り擬似ジュエルシードを組み込んだ! もしその作戦にミスがあるとするならばヨロイ元帥! 非は貴様にある筈だ!」

 結城が尚も吼える。だが、その言葉を聞いた途端、ヨロイ元帥が結城を蹴り飛ばす。蹴られた結城が部屋の隅へと吹き飛ぶ。

「えぇい、この期に及んで見苦しい! 貴様は即刻処刑する! 直ちに処刑の準備をしろ!」
「おのれヨロイ元帥! 貴様だけは絶対に許さんぞ!」
「何とでも吼えるが良い! 哀れな裏切り者め!」

 連れ去られていく結城丈二を前にヨロイ元帥が声高らかに笑った。
 やがて、結城丈二が部屋から連れ去られた後、入れ替わりでヨロイ元帥の前に一体の怪人が現れる。
 新たな怪人【マシンガンスネーク】であった。

「ヨロイ元帥。何故あの男を処刑する必要があるのですか? 確かに今回の作戦に不備があったようですが何も処刑する必要はないかと思いますが?」
「フッフッフッ、当たり前だ。本来なら奴が死ぬ必要はない」
「???」

 笑いながら言うヨロイ元帥の言葉にマシンガンスネークは首を傾げた。そんな彼の前にヨロイ元帥は続ける。

「あの男は科学グループのリーダーであり、またデストロンのエリートだ。いずれは俺を追い越し大幹部になるだろう。それでは俺が大幹部になれなくなってしまう。そうなる前に奴を始末しておくのよ」
「成る程。そうすれば自ずとヨロイ元帥様が大幹部になられますね」

 全てはヨロイ元帥の仕組んだ策謀であった。自分が大幹部に出世する。
 只それだけの為に結城丈二を処刑しようと企んだのである。

「その通りだ。危険な芽は小さな内に摘み取っておくに限る」
「確かに……ところで、協力したら私に何か恩恵は御座いますかな?」
「フフフッ、勿論だ。今回の結城丈二処刑を手伝った暁には、お前を私の参謀として迎え入れてやろう」
「これはありがたいお言葉。早速結城丈二を処刑致しましょう」

 醜い欲望が渦巻くデストロン。それから間のなくして、結城丈二の処刑が執り行われる事となった。
 結城丈二は天井に吊るされたロープで両足を縛られ宙吊り状態にされていた。
 そして、その真下には不気味な液体が並々と注がれたプールが用意されている。

「くそっ、俺は謀反など企ててない! 首領と話させてくれ! これは何かの間違いだ!」
「ギー! 五月蝿いぞ裏切り者! 貴様の処刑は最高幹部であらせられるヨロイ元帥様の決定なのだ! 大人しく刑を受け入れろ!」
「くそっ、くそっ、くそぉぉ! ヨロイ元帥! 居るんだろう? 姿を現せ!」

 力いっぱい叫ぶ結城。それは部屋中に響き渡るほどの怒声であった。やがて、それを聞きつけたのかゆっくりと部屋に入ってくる者が居た。
 ヨロイ元帥だった。甲殻類を思わせるヨロイを身に纏った姿は紛れもなく彼である。

「お呼びかな? 裏切り者結城丈二君」
「ヨロイ元帥! 何故こんな真似をする? 其処まで俺が邪魔なのか?」
「当然だ。貴様は科学グループのリーダーでデストロンからの信頼も厚い。あの首領でさえお前をお気に入りとして側に置きたがっている。
だからお前には死んで貰う。全てはこの俺が大幹部になる為よ!」
「ヨロイ元帥……貴様あああぁぁぁぁぁぁぁ!」

 結城の怒号が響き渡る。その怒号もヨロイ元帥にはとても心地よく響いた。

「フフフッ、貴様の恨み言を何時までも聞いていたい所だが、生憎私も忙しい身でな。降ろせ」

 ヨロイ元帥の合図と共に結城を吊っていたロープが落ちる。それは、丁度結城の手が液体のプールに入る位の高度で止まった。
 その際、左手は無事であったが、右腕が肘から下までプールに浸かってしまった。

「ぐわあああぁぁぁぁぁぁぁ!」

 激しい痛みが結城の右手に伝わってくる。余りの痛みに腹の底から叫んだ。
 そして、同時に聞こえて来る肉の溶ける音。見れば結城の右手がドロドロに溶けてしまっていた。最早骨すら溶け出している。

「う、腕が……俺の右腕がぁぁぁぁ!」
「ハッハッハッ、一息には殺さん! じわじわと死の恐怖を味わうが良い! さて、私は忙しい。貴様が完全に溶け切った時にでもまた会うとしよう」

 右腕を失った結城を尻目にヨロイ元帥は去って行く。去り際にヨロイ元帥の笑い声が響いていた。
 だが、意識が朦朧としていた結城にそれを悔しく思う程の意識はなかった。
 そんな結城に向かい先ほどの戦闘員が近づき鼻で笑う。

「馬鹿な奴だ。科学チームのリーダーでありながらデストロンを裏切るとは」
「所詮インテリの考えだ。俺達には理解出来ないのさ。それよりさっさとこいつを溶かしちまおう。このプールは調整に失敗した怪人や裏切り者を処分するのに適した特殊液体のプールだ。落ちれば5秒と経たずに骨まで溶ける代物よ」
「ハハハッ、裏切り者にはお似合いの最期だな」

 二人の戦闘員が声を出して笑う。最早結城丈二の命も風前の灯であった。ヨロイ元帥の策謀に巻き込まれ、言われのない罪を着せられての処刑だ。
 さぞ無念であろう。悔しいであろう。
 
「結城さんを殺させやしない!」
「これはヨロイ元帥の陰謀なんだ!」

 突如、背後から声が聞こえてきた。
 二人の戦闘員が振り返ると、其処にはまた二人の白衣を着た白戦闘員が立っていた。

「な、何だ貴様等は?」
「えい!」

 白衣の戦闘員が戦闘員達を思い切り突き倒す。
 当然背後にあるのは並々注がれた特殊液体のプールである。
 二人の戦闘員達は叫ぶ間も無く特殊液体のプールの中に飛び込み忽ち骨も残さず溶けてなくなってしまった。

「急げ! 早く結城さんを降ろすんだ!」

 見張りの居なくなった隙に白戦闘員達が吊るされていた結城丈二をゆっくりと床に降ろす。

「結城さん……しっかりして下さい。結城さん!」
「う……お、お前達……」

 目を覚ました結城が目の前に居る白戦闘員達を見た。彼等は皆結城丈二の指揮する科学グループのメンバーでもあった。
 皆結城丈二を心の底から信頼しており、今回の死刑を聞きつけ襲撃したのだ。

「早く結城さんを安全な場所を連れて行こう!」
「そうだな、もうすぐ仕掛けておいた時限爆弾も起爆する筈だ!」

 メンバー達は動けない結城を抱えて処刑場を後にしようとした。
 だが、その際に先ほどの戦闘員の悲鳴を聞きつけて別の戦闘員がやってきた。

「あぁ、脱走者だ! 直ちに殺s……」

 言い終わる前に戦闘員の居た箇所が爆発する。どうやら仕掛けていた時限爆弾が起爆したのだろう。
 そのせいで基地内は大パニックとなってしまった。その隙に彼等はまんまと逃げおおせたのであった。




     ***




 デストロン基地から脱走した結城丈二と数名の科学者達はとある場所に潜伏していた。
 読者の皆様には逢えてその隠れ場所の名は言わないでおこう。
 でないと此処にデストロンの追っ手が来てしまうからだ。

「此処まで逃げればもう大丈夫ですよ。結城さん」
「こ、此処は……どこだ?」
「此処はかつてショッカーが使用していた非常用施設なんです。今じゃ誰も知りませんよ」
「そうか……だが、何時まで此処に隠れていられるか」

 デストロンの執念深さは一番良く知っている。
 奴等の事だ。きっと血眼になって探し回っているに違いない。
 そして、もし見つかればその時は……

「お前達、俺の右腕はもう治らない。俺が開発していたアタッチメントは持ってきただろう?」
「一応持ってきては居ますが……まだ実験段階の代物です。それに、今の結城さんに手術に耐えられるかどうか?」

 結城丈二の体はかなり疲弊しきっていた。果たして改造手術に耐えられるかどうか疑問でもあった。
 第一この施設はかなりの間使われていない為装置も古い。その為助手である彼等に果たして上手く出来るだろうか?

「構うな! やってくれ。俺はヨロイ元帥に復讐するまで死なん……構わずにやってくれ!」
「わ、分かりました。おい、今の内にあそこに連絡を入れておけ!」
「あそこ? それは一体何処だ?」
「デストロンから逃げた俺達にとって頼れるのはあそこしかない――」




     ***




「ん?」

 その日、オペレーティングを行っていたエイミィの元に一通の奇妙な電波が届いた。
 しかもその差出人がなんと、あのデストロンだったのだ。

「一体何だろう? とにかくリンディ艦長に報告しないと……」

 急ぎこの電波はアースラ隊の皆に報告される事となった。

「デストロンから? それに間違いはないのか!」
「は、はい! あの……凄く怖いんですけど――」

 エイミィを睨むように風見志郎が尋ねる。その顔には狂気が篭っていた。

「志郎さん!」
「す、すまない……デストロンと聞くとつい――」

 やはりそうすぐには復讐の怨念を取り払う事は難しいようだ。

「それで、内容は?」
「はい、このポイントに潜伏しているので助けて欲しい……だそうです」
「何だいそれ? 今更助けてくれだなんて虫が良すぎる話だよ!」

 最もな事だ。アルフが怒る理由も頷ける。
 デストロンは今まで何人もの罪無き人々を殺してきた。それが今更になって助けて欲しいなどどう考えてもおかしい。

「待ってよアルフ。助けを求めてるなら助けに行かないと」
「フェイト~。相手はあのデストロンなんだよぉ? もしそれが罠だったらどうすんのさぁ?」
「だったら俺も一緒に行こう」

 名乗り出たのは志郎であった。

「志郎さん」
「相手がデストロンならば話しが早い。どっちにしろ動けないのだからとっちめて奴等のアジトの場所を洗いざらい吐いて貰うさ。もしそれが罠なら、罠ごと叩き潰す」
「あ、あはは……何か怖いね……あんた」

 怒りに燃える風見志郎にアルフは正直震え上がった。今の風見は並々ならぬ怒りをその身に宿しているのだ。

「しょうがない、今度はあたしも一緒に行くよ」
「お前もついてくるのか? 足手まといにだけはなるなよ」

 皮肉掛かった言葉を投げ掛ける志郎。
 それを聞いたアルフがムッとした顔をする。

「何言ってんだい? 新米が偉そうな顔すんなっての」
「はっ、それじゃお手並み拝見させて貰いますよ。先輩」

 忽ち睨み合う両者。その間でしどろもどろするフェイト。なんともギクシャクしたメンバーであった。

「このメンバーで大丈夫だろうか?」

 不安の絶えないクロノであった。




     ***




「此処がそうか」

 志郎ら三人は指定されたポイントにやってきた。其処は既に廃棄された家屋であった。所々ヒビ割れており壁にはコケすら生えている。とても人の居る気配はない。

「ねぇ、これって誰か居るのかい? あたしにはどうも人が居るとは思えないんだけどさぁ」
「うん、もしかして悪戯だったのかなぁ?」
「待て! 二人共隠れろ」

 志郎が二人に指示する。一瞬戸惑うも二人共すぐに茂みに姿を隠す。
 家屋からぞろぞろと現れたのはデストロンの怪人と戦闘員達だった。どうやら情報はガセでは無かったようだ。

「あれはデストロン怪人……一足違いだったか!」

 舌打ちしながら三人は家屋内に入る。其処は正に惨状であった。
 辺り一面蜂の巣となった跡があり、家具類は滅茶苦茶にされておりその中に三人の科学者達が横たわっていた。

「おい、しっかりしろ! フェイト、アルフ、そっちの二人はどうだ?」

 目の前に居た科学者を抱き抱えながら志郎が指示する。それに応じてフェイトとアルフが残りの二人の元へと行く。

「あぁっ!」
「うっ!」

 二人は思わず口元を覆った。二人共死んでいたのだ。体中に弾丸を浴び床一面に血を流して死んでいた。

「どうした?」
「あ、だ、駄目だった……こっちの人達は皆死んでます」
「こっちもだよ……」

 二人共何処か声のトーンが低い。どうやら死体を見たせいで些か動揺しているのだろう。
 それが普通の反応だ。そう思いながら志郎は抱き抱えている科学者を見た。
 どうやら彼だけはまだ微かに息があるようだ。

「おい、しっかりしろ! お前が俺達に連絡を寄越したのか?」
「うぅ……この二階の……秘密の部屋に、結城さん……結城丈二さんが居る。あの人を、あの人を助けて下さい……がっ!」

 その言葉を最期に科学者は息を引き取った。風見に感じられるのは徐々に冷たくなって行く感触だけだった。

「結城丈二……一体何者なんだ?」

 そっと立ち上がる志郎。その時、背後から誰かが降りてきた。青いスーツを着た青年であった。

「こ、これは!」
「お前が結城丈二か?」
「誰だお前は? 何故俺を知っている? これはお前達がやったのか?」

 目の前に居た志郎とフェイト、そしてアルフの三人に警戒しだす男。面倒な事になった。

「落ち着いて下さい。私はフェイト・テスタロッサと言います。時空管理局嘱託魔導師をやってます。こっちが同僚のアルフ。そして風見志郎さんです」
「時空管理局? 聞いた事がある。しかしお前みたいな子供が時空管理局のメンバーだったとは……はっ、飛んだ笑い話だ」

 途端に結城丈二は狂ったように笑い出す。

「何がおかしい?」
「これが笑わずにいられるか! 天下のデストロンがこんな子供に手を焼くなんて。栄光あるデストロンも先が見えたな」
「やはり貴様はデストロンの幹部か? だったら話が早い」

 突如、志郎が結城の胸倉を掴んで目の前に引き寄せる。

「さぁ、デストロンのアジトを洗いざらい吐いて貰おうか?」
「お断りだ! 俺にはなすべき事がある。こんな所で時間を無駄に出来ない!」
「何だと?」
「この傷は、マシンガンスネークの物……おのれヨロイ元帥。奴だけは絶対に許さん!」

 突然家の外へと飛び出す結城丈二。その後を追いかけたがその時には既にバイクに乗り走り去っていた。

「いけない、すぐに追いかけないと見失う」
「大丈夫だ。あの男の行く先は俺のV3ホッパーで追跡できる。どうやらこの先の平地に向ったみたいだな」

 志郎は予めV3ホッパーを飛ばしておいたのだ。その為彼の中には常に結城丈二の行く先が手に取るように見えるのである。

「追い掛けるぞ。ハリケーン!」

 V3が叫ぶと何処からとも無く彼専用のバイク【ハリケーン】が現れた。志郎がそれに跨る。

「乗れ、フェイト。すぐに追い掛けるぞ」
「分かった」
「え、えぇ! あたしは?」
「生憎俺は3人乗りはしない主義だ。来たかったら勝手に付いて来い」
「ひどっ! 何であたしだけ?」

 異議を訴えるフェイト。勿論それは志郎が別にロリコンだからじゃない。

「お前はフェイトの使い魔だろう? ならば狼にでもなって走れば早いだろうが。それにフェイトを飛ばしたら移動で魔力を使っちまうだろう。それで戦闘の際に足手まといになられたら困るからだよ」
「あぁ、成る程……何か納得出来ない」

 文句を言いながらもアルフは狼形態になり猛スピードで走るハリケーンについて走っていく。




     ***




 その頃、結城丈二は助手達を殺したマシンガンスネークの元へとやってきた。其処にはお誂え向きにヨロイ元帥も居た。

「結城丈二、わざわざ殺されに来るとは馬鹿な奴。だがこれで探し出す手間が省けたと言うものよ!」
「ヨロイ元帥! 殺された仲間達の無念。この俺が晴らす」

 復讐の炎を燃やし滾らせる結城丈二。だが、そんな結城の前にマシンガンスネークが立ちはだかる。

「シャシャシャ~! 結城丈二、科学者である貴様がこの俺様に勝てるかなぁ?」
「俺は最早人間ではない! 復讐の鬼となったのだ。今その証拠を見せてやる――」

 結城はそう言うと頭上に青いヘルメットを掲げた。それを被る。
 すると彼の姿は忽ち全く別の姿へと変わってしまった。
 結城丈二のもう一つの姿。それは彼がヘルメットを被る事により腕のアタッチメントと連動し、復讐の鬼【ライダーマン】となれるのだ。
 ライダーマンとなった結城丈二はアタッチメントの能力を最大限にまで使用出来、あらゆる能力を使用する事が出来るようになるのだ。

「覚悟しろ! ヨロイ元帥」
「馬鹿め、腕だけ改造した貴様如き、しかもたった一人で何が出来る?」

 ヨロイ元帥の言う通りであった。今目の前にはマシンガンスネークを筆頭に戦闘員が10体は居る。それにヨロイ元帥も居るのだ。果たして今のライダーマンだけで勝てるかどうか。

「くっ、ヨロイ元帥を前にして……」
「死ね、結城丈二! そして我がデェェストロンの恐怖を胸に地獄へ落ちるが良い!」
「地獄へ落ちるのは貴様等だ!」

 突如放たれた声と共に現れたのは一台のバイクと一匹の狼であった。
 しかも見ればその狼はかなり息を切らしている。

「貴様、風見志郎!」
「ショッカー最高幹部か。丁度良い!」

 ハリケーンから降りた志郎が直ちに変身しV3となる。フェイトもまたバルディッシュを起動させてBJを身に纏う。
 が、アルフだけは人間態にこそなるも息が荒かった。

「どうした先輩。さっさとやるぞ」
「あ、あんた良い性格してるよ……本当にさぁ」

 文句を言ってる間に戦闘員達が雪崩れ込んできた。直ちに乱戦状態へと陥る。

「お前達は一体何者だ? 何故奴等と戦うんだ」
「俺はお前と同じ目的で戦ってた男だ」
「戦ってた?」

 V3の言葉にライダーマンが疑問を抱く。何故過去形なのか?

「どう言う意味だ?」
「その前に奴等を倒すのが先だ!」
「良いだろう。だが、その後にはちゃんと話して貰うぞ」

 此処は共に戦う選択をしたV3とライダーマン。共にデストロンにより掛け替えのない者を奪われた者同士息が合うのだろうか?
 二人の連携は見事なものであった。
 近づけばV3のパンチとキックがお見舞いされ。離れればライダーマンのアタッチメントの餌食となる。
 正に今の二人に死角がなかった。

「おのれ、マシンガンスネーク! 奴等を片付けろ」
「シャシャァァ!」

 マシンガンスネークの腕から突如弾丸がばら撒かれた。さながらマシンガンその物であった。

「わわっ!」
「危ない、ロープアーム!」

 戦闘員達と戦闘をしていたアルフ目掛けて放たれた弾丸。それを救う為ライダーマンがアルフにロープアームを使う。
 発射されたロープはアルフの体に絡みつくと物凄い勢いで引き寄せた。

「大丈夫だったか?」
「あはは、何とか」
「しっかりしてくれよ先輩。尻の重い女はもてないぜ」
「大きなお世話だよ!」

 どうやら結城の方が少し紳士的なようだ。それに対し風見は若干女性の扱いに関してはぞんざいなようでもある。

「おのれぃ、遊びは終わりだ! 今度こそ俺のマシンガンで皆蜂の巣にしてやる!」
「そうはいかんぞ! パワーアーム!」

 突如ライダーマンの右腕が変化した。
 それは円月状の刃がついたアームであった。それを手にライダーマンの一撃が飛び出す。
 その一撃はマシンガンスネークのマシンガンを切断するに至った。

「シャシャァッ! し、しまったぁ!」
「今だ、フェイト!」
「はい!」

 V3は飛翔し、其処へフェイトが雷撃を放つ。
 雷撃はV3の両足に集まりそれを纏ったV3が空中で回転を加えながらキックの構えを取る。

「行くぞ! V3稲妻キィィィック!」
「シャギャァァァァ!」

 V3とフェイトの合体技を食らいマシンガンスネークはヨロイ元帥の前に吹き飛ばされる。

「ヨ、ヨロイ元帥様~~~」
「ちっ、使えない奴め! 貴様はそこでのたれ死ね! 仮面ライダーよ! 今日の所は貴様の勝利に花を添えてやろう。だが、最期に勝つのは我等デェェェェストロンよ!」

 その言葉を最後にヨロイ元帥は霧の様に消え去っていく。そして、それと同時に爆発し果てるマシンガンスネーク。

「待て、ヨロイ元帥!」

 叫んだがその時には既にヨロイ元帥の姿は其処にはなかった。

「くそっ!……奴を前にしながらむざむざ取り逃がすなんて……」

 仇を取れなかった悔しさを胸に拳を握り締めるライダーマン。そんなライダーマンにV3達が集まる。

「ライダーマン……」
「V3か……さぁ、教えろ! お前は何故復讐の為に戦わなくなったんだ?」
「簡単だ。これ以上俺みたいな人間を増やさない為にだ」
「何だと?」

 その理由にライダーマンは驚いた。その後もV3の話は続いた。

「俺はかつて、デストロンに家族を殺された。そして俺は奴等に復讐する為に改造人間となり鬼となった。だが、心の底で俺は鬼になりきれずに居た。そんな俺を救ってくれたのがこいつだ」

 隣に居たフェイトの頭に手を乗せる。

「その子が?」
「こいつが俺に力の使い方を教えてくれた。復讐をしたって殺された者達は帰ってこない。逆にそいつらを悲しませるだけだと。だから俺は誓ったんだ。この力を使ってもうこれ以上悲しむ人を作らない為に戦うと」
「それが……お前の戦う理由か?」

 静かにV3は頷いた。その答えを聞いたライダーマンは俯いた末、彼等を見た。

「俺はお前の様に割り切る事は出来ない」
「結城さん!」

 フェイトの悲しそうな顔が目の前に現れる。そんなフェイトの頭に結城がそっと左手を乗せる。

「だが、お前の言い分も分かる。確かにこれ以上俺みたいな人間が増えて欲しくない」
「ライダーマン」
「ふっ、何時までもその名で呼ばれるのもこそばゆいな。俺の事は結城と呼んでくれ」
「分かった。ならば俺の事もV3ではなく名前で呼んでくれ。俺は風見志郎だ」

 互いに変身を解き、堅く握手を交わした。

「共に戦おう。風見」
「こちらこそ、宜しく頼むぞ。結城」

 新しい仲間の登場であった。彼もまたデストロンに大切な者を奪われた男であった。だが、その男もまた正義の心に目覚め人類の自由と平和の為に戦う事を誓った正義の戦士であった。

「さて、それじゃ帰るとするか」
「ちょ、ちょっと待って! またあたし走って帰るの?」
「当然だろう。それが嫌なら歩いて帰るんだな」
「鬼!」

 相変わらずフェイトには優しいが他の人間には厳しい志郎でもある。

「大丈夫だよ。俺の後ろに乗りな」
「やったねぇ! さっすが丈二。紳士だねぇ」
「ふっ、当然だ。俺は志郎と違ってエリートだからな」
「どうせ俺は脳筋だよ」

 不貞腐れながらもハリケーンに跨る志郎。そんな志郎を見てフェイトが半ば嬉しそうに笑っていた。

(良かった。志郎さんも結城さんも分かってくれて……私も上手く出来たかな? なのは)

 フェイトは空を見上げながらなのはの名を呟いた。人の心を惹かせるのはなのはの方が上手い。だが、自分でもどうにか出来たような気がする。
 今は彼女は必死に頑張っているだろう。だから自分も負けずに頑張らねばならない。

「何してるんだフェイト。置いてくぞ」
「御免なさい。すぐ行きます」

 今、フェイト達の前に立ちはだかるはかつてのショッカー以上の悪の組織。だが、それ以上に心強い仲間達が居る。彼等が居る限りヒーローは決して負けないだろう。
 人類の明日と言う夜明けが来るその日まで――




     つづく 
 

 
後書き
次回予告

 再び日本侵略に乗り出したミケーネの戦闘獣軍団。しかし其処へ現れるは偉大な勇者であった。

次回「大空へと飛び立て! グレートマジンガー」お楽しみに 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧