ファイアーエムブレム~ユグドラル動乱時代に転生~
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第十五話
前書き
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ある程度予想していたとは言えトラキアは南に行くに連れ降雨に乏しく、地下水の汲み上げ過ぎによる弊害なのか定かでは無いが、平野であっても窪地が多く、丈の短い草でさえまばらにしか生えそろわない有様であるのを、俺は眺めるというより確認しながら王都へと護送された。
私物の持ち込みは特に制限されなかったが、植木鉢関係が多いのでぎょっとされたりはした。
王都と呼ばれるトラキア城に至っては文明国の街というよりもむしろ、軍事拠点との趣が強かった。
そこでトラキアの王と面談しました。
豪華な衣装に身を包みやわらかそうなクッションが溢れるような玉座に座っていたのが印象的です。
面談のあと係の人に連れられ、王宮の外れの東屋のような場所へ案内され、ごゆるりと過ごされよ。
なんて言われたわけです。
それに先立ちルテキア城で俺はカール王と身柄を交換された。
カール王は俺に会うと詫びてくれた。
この人とてそう悪い選択をした訳じゃあないよなー。
各国持ち回りでやってるミーズの太守を信頼出来る弟に任せて自分は本国で支援に専念。
今回の総大将についても本人の意思じゃ無く重臣達に押し切られた結果のようだしね。
その重臣達は王の帰国後にどんな運命を辿ることか・・・発言権を上げること疑いなさそうなのが今は男爵のレイドリックだよなぁ。
裏付けも無く貶めることは言えないわけで、
「才覚のある人物なのでいざとなったら最も利益を得る行動がどういうものかを瞬時に見抜くでしょうから動向に目を光らせてください」
ドリアス伯爵には伝えておいたが・・・あの様子の父上には言えはしなかった。
与えられた東屋の周りの庭を薬草園にでもしようかと区画整理をレンナートさんに手伝ってもらいながらやっていた。
トラキアに送られる前に、着いてきても苦労するだけなので近習の任を解こうと申し出たのだけれど
「賭けみたいなもんでさぁ、今後殿下が国に戻れることにでもなったら俺みたいなもんでも騎士様に取りたてられっかも知れませんしね」
そんな言葉と伴に着いてきてくれました。
この人が居なかったら区画整理だなんて時間も力もかかる仕事は出来なかったと思う。
ルテキア城で、付き人はたった一人でいいのか?と言われたけれど
「無駄飯喰らいは少しでも少ない方が両国の為です」
そんなふうに伝えたら係の人に神妙な顔をされたよ。相変わらず空気読めない自分を再確認。
こちらで暮らし始めて1カ月、トラキアの王宮からは毎日俺の様子を見に来る年配の騎士が居る。
東屋の周囲はおそらく警備の兵は詰めているのだろうにおかしなものだと思っていたのだが、気になって問いただすと、二年ほど前に孫を亡くしたそうで、孫が生きてたらいまごろ俺と同じくらいの背格好だったろうと語り、つい孫を思い出してしまって。などという事情だった。
「お爺ちゃーーーん!ボクも故郷を離れてさみしいの>< 」
そんな言葉と共に抱きついてあげたら涙を流して喜びました。
チョロイよなぁ。だが、これは使えそうだ。まずは信頼関係の構築をじっくり組みましょうか。
それから毎日、お爺ちゃんの様子をよく観察するようにした。
予想通り騎乗中や乗り降りで鞍に座る時がつらそうだ。
かのナポレオンにしろドン・ファン・デ・アウストリアにしろ優れた指揮官と呼ばれた人達には職業病がある。
痔疾だ。
そして、俺はそれに効く薬草を持ち込み育てていた。
レンスターから持ち込んだドクダミ。
この世界、社会的地位が高い人になればほんの小さな痛みでも回復の魔法ですぐに痛みそのものを消してしまう。
「あなたにライブ~^^ 」
という感じで。
痛みの原因を治すか弱めるか、そういう方面の研究は進んでいるのか疑問を持っていた。
植物がたくさん生い茂る環境ならば、薬草の専門家などが自然発生的に現れるであろう。
ここ南トラキアは全く植物が育たないと言う訳ではないが、自生してる草の種類はそう多くはなさそうだから余り発達してないだろうとアタリをつけていたのだ・・・
充分に懐いたおじぃちゃんに、言葉を慎重に選んでも失礼ではあるのだがなるべく失礼にならないよう痔のことを確認した。
細めの木の台に楕円の縦溝を彫り、丸めの石でぐちゃぐちゃやって生薬と乾燥したドグダミを渡して使い方を説明した。
生薬はなるべく清潔にした患部に直接、乾燥したほうは細かく砕いて水やお湯に溶かして飲んだりお風呂へと。
そして俺は生えてるドクダミを1本ひっこぬくと水で洗い、そのまま食べた。
毒なんて無いですよアピールなのだが念の為、しかし慣れてもキツイんだこの臭いと味は。
「毒とかは無いのでだいじょぶです。ちょっとニオイが独特ですけれど、気味が悪かったら捨てちゃってください、でも痛いのが少しでも良くなって長生きしてくれたらボクはうれしいの(はぁと)」
って上目遣いでお願いした。
3日、出来れば1週間、理想は1カ月続けてくれたらなぁ・・・と思いながらも今日1日ぶんを手渡した。
……翌日もそのあとも、さらにそのあとも使ってくれたようです。
水がそこそこ貴重な環境なもので乾燥のほうは小さなタライにお湯と乾燥ドクダミいれて患部だけ浸かってたってお話でした。
おじぃちゃんは同じ苦しみを患うお友達にも効果を伝えてくれて、薬草園は大忙しになりました。
それから3カ月もしないうちにトラキアの王宮へと呼び出された。
談話室のようなところで待つように言われると、そこにはお爺ちゃんとその友達が数人あとからやってきた。
「今日はどのようなお呼び出しでしょう? 」
恐る恐る俺が尋ねてみると
「王子、いましばらくお待ちください。陛下がお出でになるでの」
しばらくすると、わかめ(トラバント)を伴い国王がやってきた。
他の人たちに倣い、俺も起立して敬礼した。
「皆、楽にするがよい。そしてミュアハ王子」
呼ばれたので俺が返事をすると
「ここの爺どもは儂の古くからの戦友でな、古傷が時として痛むようだったが、おぬしが良き薬を分けてくれた為にだいぶ痛まなくなったと聞いた。仔細を語ってはくれぬか? 」
国王は真剣な顔つきであった。
「まず、薬の効果は使った人それぞれで効き目が異なります。そしてそれを見分ける方法をわたしは存じていないということをご理解ください。加えて申し上げますならば、完治する人も居れば、あまり効かない人もいます。そこもご納得いただけるでしょうか? 」
俺の出した前提に国王は納得したようなので、詳しく続けた。
「…さらに、陛下のご期待する効能以外にも切り傷打ち身などの外傷、おでき腫れものなどにも効果があります。
乾燥させたものを細かく砕き入浴すると、こちらも陛下のご期待する効能があります。
ただし、長時間ドクダミ粉の混ざったお湯を浴槽に入れたままにしておくと浴槽に色が移るので2時間、長くても3時間程度でお湯を浴槽以外に移すことをお勧め致します。
乾燥させたものを湯や水に溶かし、飲んだ場合にもふるつわものの皆さんの古傷を癒す効果、臓腑がしくしく痛む場合の緩和などがあります。
飲みにくいと思われますので蜂蜜に限りませんが、味をよくするものと共に摂られることを初めの内はお勧めいたします。ただし、どのような薬であろうとも使う量をあやまてば毒となることもありますのでご留意いただきたいです。」
恐る恐る様子を窺うと、国王は俺のもとへ近づき両肩をしっかり掴んだ。
「さっそく試してみたい」
トラキア王の顔は鬼気迫るものだった。
……様々な面倒事がありました。
まず使うのを1本ひっこぬいてから俺がはっぱなり茎なりを食べて2時間程度様子を見られたりとか。
乾燥したのを飲むのはまず俺が半分飲んでやはり2時間程度様子見られたりとか。
爺さん連中は国王にも他の側近にも大丈夫!大丈夫!って言ってくれたけれど、やはり彼らも立場上仕方ないよなーって許せるあたり、俺も成長したってもんでしょう。
多少なりとも効果はあったようで、それから2週間、1カ月と時間が経つにつれ俺の待遇は良くなっていった。
この国の最高権力者に恩を売ったわけで、これからいろいろとやりやすくなるはずだ。
後書き
現代でも一日中机に向かって仕事の方々を悩ます病ですしね。
軽装備の現代ですら発生するのに、重い鎧を来て何時間も行軍する昔の上級騎士さんらは相当苦しんでいたのでは?と思ったのが創作の発端の一つだったり。
日本人だと加藤清正とかが疾病者として有名ですね。
14話はおじぃちゃんと出会う迄の1カ月の間に起きたイベントです。
あと、2話で触れたディアンケヒトという神の息子のうちミアハは親をも凌ぐ医術の才を見せたという伝説があったので、やくそうの使い手として考えました。でも作者が詳しくないのであまりうまくいきませんw
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