| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

100年後の管理局

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第十二話 圧倒、圧倒

 
前書き
連投。アリスさん、誠也さんの戦闘回。 

 
「逃げ切れる!俺たちの未来に希望が見えるぞ!」
男の心には喜びが渦巻いていた。
転移妨害の結界はあと少しで抜けられる。
そこを抜けてしまえば、すぐさま転移をして逃げることができる。
そうすれば任務達成。何一つ問題ない。
ただ男はあまりに浮かれ過ぎていたと言えるだろう。
突如として自身に降り落ちた稲妻に何の反応もできなかったのだから。


「くははは!!!」
「くそ!何度見ても無茶苦茶な攻撃だ!!」
地下100メートル。二人の戦闘はいまだに続いていた。
とはいっても、もしかしたら戦闘と呼べるほどの物ではなかったかもしれない。
無数のアクセルシューターがそこら中を飛び回り、相手に一切の隙を与えない。
相手もアクセルシューターを消し去ろうと懸命に抗戦するが、消した次の瞬間には誠也がすぐさまアクセルシューターを繰り出す。先ほどからその繰り返しが続いている。
「ははは!!反撃しなよ!テロリスト!」
「ちっ!付き合ってられるか!」
アクセルシューターによって蹂躙された地下の部屋は、徹底的に壊されていて施設の設備のほとんどが壊れて原形をとどめていない状態になっている。
「……一度離脱するのが賢明か。」
ぼそっと呟いた相手はすぐさま誠也の開けた大穴に向かう。
「逃がさないよ!」
部屋を飛び交っていた全てのアクセルシューターを差し向ける。
けれども相手はそれを巧妙に避けながらどんどん上に昇っていく。
誠也もすぐさま地面を蹴り出し、大穴から一つ上のフロアに昇る。
そしてそこからさらに大穴を通って一つ上のフロアに昇る。
誠也はこれをどんどん高速で繰り返していく。
空を飛べない以上、身体強化の魔法でこの程度はできる必要があったのだ。
そのまま相手にアクセルシューターを差し向けたまま、追いかけ続ける。
「ちぃ!」
高速で昇ってくる誠也に思い切り舌打ちをした後、相手は誠也めがけて全力の魔力砲を撃ちこむ。
「ショートバスター!!」
『Short buster』
けれども誠也はその砲撃をショートバスターの一撃で相殺する。
「くそっ!『最終兵器』の異名は伊達じゃないってか!」
自らの全力の魔力砲撃すら、威力を減らしたショートバスターの一つで相殺され、しかもその間もアクセルシューターの攻撃が止むことは一度もない。
幾つもの修羅場を乗り越えてきたと言えど、毒づかずにはいられなかった。
それほどに『最終兵器』という異名にふさわしい無茶苦茶ぶりであった。
「ディバインバスター!!」
『Divine buster』
「ちっくしょぉ!」
桜色の砲撃を間一髪で避ける。
回避。それに専念しなければ一瞬で落とされる。
それゆえに、常に自分の周囲を把握し続け、全ての攻撃をかわし続けていた。
けれどもそんな紙一重の戦いではいつか無理が訪れる。
「ぐぁ!」
徐々にアクセルシューターがかすり始めてきたのだ。
一発かすれば二発目三発目とかわし四発目がかする。といった具合である。
どんどんとかわすことのできる弾丸が減り、当たる回数が増え始めていた。
(エネルギー切れかよ!)
体全体に気怠さが出始め、これにより動きが鈍くなり始めているのだと推察できた。
ならば仕方がないと、ポケットから小さなキューブを取り出す。
それは一センチ四方の立方体程度の大きさしかなかった。
(一度外に出て戦況を変えなければ!)
高町誠也は飛行魔法ができない。それはわざわざ軽業師のような真似をして追いかけていることからも推察できるだろう。だからこそ足場のある屋内ではなく、足場のない屋外に戦闘場所を移さなければ恐らく勝ち目はない。
そう決意し、キューブを口に入れ嚥下。気怠さが吹き飛んだ体で外壁を全力で殴り壊し屋外に脱出する。
「待て!!」
先ほどよりも大量の魔力弾が襲いかかってくる。
それはもはや数えるのも億劫になるほどだったが、
「だぁ!!!!」
自身のスキルを全開にし、魔力弾を全て消滅させる。
浮遊機能を起動させ空に浮きながら、中から出てきた誠也と対峙する。
「なるほど。お前が口に入れたあのキューブ、携帯食料だな。と言うことはお前はジーンドライバーか。しかもあの消滅の仕方から見て、先ほどから使っているそのスキル………。」
誠也から発せられたその言葉にどきりとする。
仮にその先にたどり着かれると後々厄介なことになる。
たどり着かないでくれ!と心から願う。
しかし、そんな期待とは裏腹にわずかに考え込んだ誠也はある結論へと至る。
「ディバイド系の能力持ちのジーンドライバーだな。」
「ぐっ………。」
(気付かれた――!)
ものの見事に自らのスキルの正体を看破されてしまう。
確かに自分の行動はやや安易とは言えた。
生体エネルギーを使用するジーンドライバーにとって、命を削らないためにエネルギーを補給する携帯食料は必需品中の必需品。これがなければ戦闘なんてできないと言いきれるほどだ。携帯食料の発展はジーンドライブシステムに端を発していると言っていいほど携帯食料とジーンドライブシステムは切っても切れない関係にある。
だからこそ、キューブを口にした時点で自らがジーンドライバーだと明かしているようなものだった。
それに、あの無数の魔力弾に対抗するためとはいえ、安易にスキルを使い過ぎてもいた。
そうだ、確かに、確かに安易とは言えるけれども。
けれど、自らの能力の系統すらもこうもあっさり看破されるとは予想外であった。
図星を指され、返す言葉もなく黙り込んでいると、誠也から声がかけられる。
「ここにおける沈黙は是とみなすぞ。」
「くそっ!!」
もしかしたら言った時点では完全な確信には至ってはいなかったのかもしれない。
けれどこのタイミングで沈黙してしまったことにより、自らの能力についての推察を肯定してしまう形になってしまった。
「そこまでタネが分かれば対処は容易い。」
先ほどまでと同じように無数の魔力弾が生成される。
だが、この魔力弾は先ほどと同じように消滅させることはできないだろう。
新暦70年ごろのJ・S事件、新暦80年ごろのエクリプス事件の両事件を皮切りに、対魔法技術に対する対策と言うのは十全に練られてきていた。
AMF、ディバイド能力。そのどちらについても今の時代では対策がなされ、使っていると分かれば多少の威力減衰はやむなしにしろ、攻撃を消されると言うようなことは無くなっている。
先ほど生成された魔力弾は同じように対策された魔力弾だろう。
それを消し去ることは難しい。
それにどちらにしろ、能力の制約のせいでまだ発動することはできないのだが。
「ちくしょう……、ここまでか……。」
この時点で残された選択肢は二つ。
撤退か、徹底抗戦か。
撤退ならばリスクは少ない。増援さえなければ、誠也が空戦の適性を持たない以上、比較的楽に逃げることが可能だろう。ただ、誠也はあるタイミングを境に迷いや焦りが唐突に消えたことを見ると、もしかしたら増援はすでに来ているのかもしれない点が最大のネックである。
徹底抗戦はかなりリスクが高い。恐らくこのまま戦っても勝つことはできないだろうし、捕まる可能性が高まる。ただ、もしもうまくいけば自分達のもう一つの目的も達成することができるかもしれない。
(よし!)
一つの決意をし、誠也に背を向け走り出す。
「逃がしはしない!」
魔力弾を放つ。
その軌道はまっすぐ相手を追うのではなく、迂回しある一点で全弾が相手に全て直撃するような軌道である。
その軌道に相手は自らの勝機を見た。
突如反転し、全力で地面を蹴り出す。
その背後で魔力弾が着弾し爆風を巻き起こす。
その爆風すらも利用し一気に加速して誠也に迫る。
「おおあっ!」
全力を賭けた拳を振りかぶり、誠也のもとへ駆ける。
「だりゃああ!!!」
高速の拳が誠也へと襲いかかった。


「ぐっ……、くぁ……。」
突如として襲いかかった痺れに一体何が起こったのかと思う。
結界の外を間近にして、突如として襲いかかった痺れ。
自分に一体何が起こったのか。
そして手に持っていたはずのロストロギアはどこに行ったのか。
さまざまな疑問が頭をよぎる。
そしてその答えは後ろから放たれた。
「ぐぁああ!!」
雷撃。それが全身に突如として襲いかかる。
すぐさま対麻痺の術を行使して、後ろを振り向く。
「アリス・T・ハラオウン執務官です。あなたをロストロギア強奪の現行犯で逮捕します。」
そこに居たのは金色の髪をたなびかせた黒のバリアジャケットを纏う少女であった。
それを見て思わずうめく。
「ハラオウン執務官まで出てきたのかっ……!」
片手に握っているのは閃光の戦斧、バルディッシュ。
もう片方の腕に抱えているのは、先ほどまで自分が持っていたはずのロストロギアの入った箱だった。
取り返さなければならない。自分たちの希望を。
けれど取り返せるのか。そんな絶望が脳裏を支配する。
「大人しくこちらに従ってくれれば、これ以上の武力行使はしません。おとなしく従ってください。」
先ほどの誠也と同じくこれは警告。
従わないのならこれ以上の武力行使を覚悟しろ。そう言う警告だ。
「畜生――!!」
最後の抵抗としてアリスに飛びかかっていく。
例え勝てなくても、希望を取り返す努力くらいはと。
「……バルディッシュ。ハーケン。」
『Yes, sir』
バルディッシュは変形し、光刃を持つ大鎌になる。
アリスは冷静に飛びかかってくる相手を見る。
その動作、行動を細かく見切っていく。
「だあああ!!!」
「はあああ!!!」
一瞬の交錯。
光刃を受けた相手は気絶したのか、自由落下で墜ちていった。


ぎし、ぎし。
何かがきしむ音が耳に届く。
その何かとの衝突によって発生した煙が晴れると、拳の先にあったのは、
「バインディングシールド――!!」
それは自らの腕を鎖で縛り、しかもさらにその鎖は長さを増し右肩、左肩、胴と拘束の範囲を伸ばしていく。
そして数瞬の後、拳を突き出した体勢のまま完全に拘束され、身動きが取れなくなっていた。
「これでチェックメイトだ。」
目の前に突き出されるレイジングハート。
チャージは完全に終了していた。

「ストライク・スターズ」
 
 

 
後書き
なぜか、敵側の視点よりで進行してしまいました。
書いていると、敵側が主人公に思えるし、主人公側が悪に見えてくる不思議w
敵側の言動にも色々意味がありますが、それもまた追々。

次回、一章完結 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧