西部の娘
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第二幕その五
第二幕その五
「今は私に任せて。そんな身体で外に出ても凍え死ぬだけよ」
そう言って彼を屋根裏に押し上げた。
「多分あの男すぐにやって来るから」
ミニーにはわかっていた。誰が彼を撃ったのかを。
梯子を片付ける。そして何も無かったかのように小屋の中を取り繕った。
すぐに扉をノックする音が聞こえてきた。
「・・・・・・来たわね」
ミニーは思わず身構えた。そして扉の前に行く。
「どなた?」
ミニーは尋ねた。
「俺だ」
ランスの声だった。
「どうしたの?」
「ラメレスを捜しているのだが」
ミニーはそれを聞いてやはり、と思った。
「ここにはいないわよ」
「じゃあこの血は何だ!?」
ミニーはそれを聞いて内心舌打ちした。
「疑っているのね」
「保安官として当然だ」
ランスは答えた。
「小屋の中を調べたいんだが」
「・・・・・・いいわ」
ミニーは覚悟を決めて言った。
「どうぞ」
そして扉を開けてランスを小屋の中に入れた。
「ううむ・・・・・・」
小屋に入ったランスは中を見回した。
「好きなだけ捜したら!?」
ミニーは覚悟を決めた。そしてそのうえでランスに対して言った。
(何と気の強い女だ)
彼は内心そう思った。だが口には出さなかった。
「それで誰もいなかったら帰ってね。そして二度とここには来ないで」
「わかった」
ランスは内心歯噛みしながら答えた。そして小屋の中を調べ続ける。
カーテンの中を見る。寝台も調べる。
「どう、何かあった?」
ミニーが半ば勝ち誇るように言った。
「いや、何も」
ランスは彼女を悔しそうに見ながら言った。
(だが絶対にここにいる)
確信はあった。だからこそ調べているのだ。
(それに俺は奴をここに入れるのを見ているのだしな)
小屋から外に出して隠すにしても窓からしかない。窓からは傷を負っていて無理だろう。
それに外だとこの寒さでは凍死しかねない。厩も馬が騒ぐ。だとすればここしかない。
(しかし一体何処に・・・・・・)
何処にもない。ふう、と溜息をついた。
「ね、誰もいないでしょう?」
ミニーは勝ち誇った声で言った。ランスはそれを聞いて舌打ちした。
止むを得ない、諦めようとした。その時だった。
「!?」
見れば右手の甲に何か着いている。
「これは!?」
それを見たミニーの顔が蒼白になった。
「・・・・・・血か」
ランスはその赤いものを見て言った。
「何処かでひっかけた記憶は無いしな」
拭いた。やはり傷は無い。
「だとすれば何処かで着いたんだな」
考える。
「一体何処だ・・・・・・」
その時手の甲に再び着いた。
「ムッ!?」
上からだ。咄嗟に見上げる。そこは屋根裏だった。
「そうか、そこか・・・・・・」
ランスは上を見てニヤリ、と笑った。天井から血が滴り落ちてきているのだ。
「ミニー椅子を借りるぞ」
そう言って天井に行こうとする。
「駄目、それは駄目!」
ミニーは蒼白となった顔で叫んだ。
「いや、俺は遂に見つけたんだ!」
ランスは椅子を持って来ながら言った。
「ラメレス、貴様は縛り首だ!」
そして椅子に足をかけようとする。だがミニーがそれを押した。
「ウワッ!」
慌ててバランスを立て直す。何とかこけずに済んだ。
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