ソードアート・オンライン 守り抜く双・大剣士
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第62話 =空への一歩目=
前書き
…タイトルおかしくないかな…
…あのまま寝落ちしたのか……気がつけば俺は頭に銀色のヘルメット、ナーヴギアを被った状態でベッドに倒れていた。時計の針はそろそろ12時を誘うとしている。もちろん深夜では無く昼だ。その証拠に辺りが明るい…。
「…あ」
午後3時集合なら朝練できたな…美菜実には申し訳ないことしたかも…。
「おーい、陸也!?そろそろ昼だぞ!!」
「…ん、あぁ今行くよ…」
恐らく声からして和人にナーヴギアを外しながら答える。ナーヴギアの構造上、頭部に隙間が出来ていないため嫌な汗でびっしょりだ。それでも壊れないのはさすがに汗対策はしてあるってことか…。
「…シャワー浴びよ……」
まずはこの頭と眠気をどうにかしたいという思いで部屋の扉を開けてシャワーへと向かった。1階に降りてそのまま風呂へ、リビングで和人がなんか言っているが何言っているのかわからない…。
そうしてガラガラと扉を開けると
「………」
「………え?」
タオルを体に巻いているだけの直葉がそこにいた。
「きゃああああああっ!!!????」
「…ぅおっ!?」
和人の話では剣道で結構上位に入ったいう直葉。さすがと言うべきかその身体能力+羞恥心から投げられたコップが寝ぼけていた+驚きのあまり固まっていた俺にクリーンヒット、そのまま俺の頭は後ろの壁に思いっきり頭を打ちつけ目の前がブラックアウトした。
――――――――
「…いつつ……死ぬかと思った…」
意識をあのコップを投げられた十数分後に取り戻した俺はシャワーを浴びて和人たちが作っていた昼飯を食べて、自室へと戻っていた。それからずっと部屋にある小さなテレビで「テイルズオブシリーズ」の最新作をやっていたがいまだに痛みが残ってるくらいだ。どれだけ肩がいいんだよ…。それにしても…
「でかかったなぁ…」
こんな呟きを聞かれては今度は彼女の竹刀でボコボコにされそうな気がする、というか絶対にされる。でも、ああいうのをラッキースケベというのをどこかで聞いた覚えがあるが…実際に体験してしまうと気まずさしか残らないから最悪だな…。
「……よし!」
時計を見るといつの間にか時間がすぎており3時近くを指していたのでベッドの近くにあるナーヴギアを被りながら横になる。残された時間はあと今日も入れて約5日ほど。それまでにあの広い世界の中心にいかなくてはならない。時間があるかないかと言われれば正直、ないとしか答えれない。でも、やるしかないんだ。
「……リンク・スタート!!」
最初の接続ステージを抜けもう1人のリクヤへと意識を移動させ目を開けると、すずらん亭の一角にある椅子に座っていた。ソードアート・オンライン時からあまり変わっていないと言われたアバターだが、冷静に見てみると少々違ったところも多い。1つは声、現実のものよりか微妙に高くALOのキリトの声よりか高い。あとは顔のパーツが微妙に違うとかだけど…。
いろいろと自分のアバターを観察していると目の前に黒衣の姿をしたつんつん頭の少年が実体化した。
「おっす、キリト」
「俺、間に合ったか?」
時計を見るとジャスト3時、キリトはギリギリだが間に合っている。そしてほぼ同じタイミングでこの宿屋のスイングドアが開かれ、そこからシルフの少女が入ってくる。
「やぁ、はやいね」
「それとも俺たちが遅かったか?」
その少女、リーファは横に首を振って「今来たところ」と言った。外から来たのはいろいろと消費アイテムなど旅に必要なものを買い揃えていたかららしい。
「あ、そうか。俺たちも準備しないとな……」
「その前に君たちのその装備はどうにかした方がいいかもね」
「…だな。ぜひ俺もそうしたい。こいつじゃ頼りないし…」
そういいながら自分の背にある片手剣に視線を映すキリト。まだ、キリトはいいと思うが俺はその剣すらないただの皮装備、頼りないどころかこのまま戦うのはほぼ無理に等しい。あとは重いものを持ちたいと言うただの欲求が俺の中にあるからせめて武器は持ちたい。
「うん。じゃあ、武器屋に行こっか。…お金、どのくらい持ってるの?」
リーファに言われたので俺はメニューを開き金と思われる部分を探していると0がいくつもついたような数字の羅列がウィンドウの片隅にあった。
「ねぇ、リーファ。この…ユルドってやつがそうなのか?」
「そうだよー。……もしかして…」
「いや、大丈夫。結構あるから」
恐らくこれもステータスと同じくSAOからの引継ぎなのだろう。アスナと結婚していたキリトはその分まで追加されてると思うから俺よりかは多いはずだ。
「なら、早速武器屋だね」
「う、うん。……おい、行くぞ、ユイ」
さすがに初心者でこの金の多さは半端ないのか少し挙動不審なキリトだったが話をすらすようにユイを呼ぶと、彼の胸ポケットの中からちょこんと黒髪の小さな妖精が姿を現し小さくあくびをした。
「おはよ、ユイ」
おはようといってもリアルではすでにおやつの時間の午後3時、ALO内ではまだ午前5時くらいだ。それでもユイは元気に「おはようございます!」と言ってくれた。うん、いい子だ。
リーファを先頭にシルフの町をテクテクと歩いていく。朝日が少し出ているのかスイルベーンがその柔らかな光に包まれていて夜のときとはまた違った美しさが引きだっていた。変な目で見られながらしばらく歩くと壁にいろいろな武器がかかった武具屋が見えてきた。客もいなかったので早速店員らしきNPCに防具、武器を注文した。
そして数十分後…………
「……うーん…」
「……そうだなぁ…」
ここ、リーファ行きつけの武器屋にて、俺とキリトは武器の選択に相当な時間がかかっていた。防具についてはキリトは上下に防御属性強化のされている服に黒いロングコート、SAOのときとほとんど変わっていないものだ。対して俺は称号という機能が無いため少し時間はかかったものの隅に小さく黄色で竜のようなモンスターの刺繍が入っている黒いズボンにシャツ、そして向こうでは戦いのときによく【抜刀騎士】として着ていた灰色のロングコートだ。ちなみにもちろんだが全部防御属性強化されている。
でも問題は……
「「…軽すぎるな……」」
キリトは片手剣、俺は大剣を注文するが出される武器が全部軽くて逆に扱いづらいのだ。
「それでは、こちらではどうでしょうか?」
店主のNPCがそういい差し出したのは黒い大剣と大きな片刃の刀だった。大剣はその名の通りキリトの身長はあろうかというほどの大きさでいかにも重く黒光りしている。俺にとっては軽すぎて残念なものだったが…。それに対し俺は形状はリーファの長刀に似ているのだが長さと剣の幅がおかしいくらいに大きい。長さは2メートルを優に超え幅も10センチは超えている長さがある。
「…それ、どういう武器?」
「太刀と大剣を合わせたような…そんな感じだよな…」
試しに持ってみるがなんか物足りない重さでオータムリリィやキャリバーンのようにしっくりとは来なかった。隣でリーファが目を見開いて驚いているがそれは恐らくこの剣を片手で持っているからだろう。どうやらこの世界では筋力値というものが隠しパラメータとして存在するらしく種族、体格などで大体は決まっていて上げることはほぼ出来ないらしい。そして俺の種族と体型では大剣は使えない分類に入るそうなのだが…。
「…もうちょい重いのって…?」
「あるわけ無いと思うよ?」
リーファの言うとおりこれが最高重量の剣らしく、NPCにも首を横に振られた。なので剣の方は諦めるとしてヴォルトの初期の戦闘術を扱うために新たに簡単な装飾のついた拳装備を買いそれをつけることにする。この世界では重複によりソードスキルを発動できないというルールもないし、そもそもソードスキルがも無いらしいのでこれならいろいろできるはずだ。キリトも先ほど買った大剣っぽい片手剣をいつものように背中に吊ったが、鞘の先が地面に擦りそうになっているのを見たリーファがクスクスと笑っていた。
俺はあのでかい刀では腰につけたり背中に吊ったり、と言うことが出来ないため鞘の中間らへんを紐で結んで無理やり取っ手を作ることにして持つことにした。
「これで、準備完了だね!これからしばらく、ヨロシク!」
そういいリーファが右手を突き出してくる。
「こちらこそ」
「よろしく頼むよ、リーファ」
俺とキリトもそういいながら拳をあわせる。するとキリトの胸ポケットから飛び出たピクシーがその真ん中にストンと立ち、その小さな拳を上に上げていた。
「頑張りましょう!目指すは世界樹!!」
「「おぅ!!」」「うん!!」
―――――
先ほどの武具屋を出て数分、俺たちの目の前に現れたのは昨夜、キリトのぶつかった例の塔だった。キリトもあのときのことを思い出してか嫌そうな顔をしている。
「ブレーキングの練習しとく?」
「……いいよ。今後は安全運転することにしたから……というか心配するならリクヤのほうだろ」
「俺?何でだよ」
「昨日、随意飛行できていなかったじゃないか」
キリトはそう言うが随意飛行については出発するときに驚かせてやろう、ということでニヤリと笑いながら仮想の骨と筋肉を動かすイメージを強める。昨日のあの恥ずかしい出来事は考えないことにした。
「……おぉ」
「昨日とは大違いね」
少々のドヤ顔をしながら俺たちはそのまま足を進め風の塔といわれる翡翠色の建物へと入っていく。何かこの塔に用事があるのかとリーファに聞いたところ高度が稼げるから長距離移動のときはこの塔からの出発が当たり前らしい。地理がまったくと言っていいほど解らない俺たちをリーファが引っ張っていく形で塔の中へと入っていく。正面扉をくぐると周囲をぐるりとショップが取り囲んでいる。雑貨屋やちょっとした武具屋、飲食店まであってモールのようなものになっていた。その中央には周りにあっているデザインで魔法で動くと思われるエレベータが2つ設置されて定期的にプレイヤーを吐き出したり吸い込んだりしている。
アインクラッドにもこんなにぎやかなところは少なかったので感心しながら周りを見ていると腕を引っ張られある方向へと動き出した。どうやら今来たエレベータの一基に駆け込むらしい。駆け込み乗車が危険なのは電車だけじゃないから気をつけろよ…。
「ちょっと危ないじゃない!!」
たく…とため息をつこうとするがどうやらそれは乗り降りの問題ではなくその前に何人かのプレイヤーがリーファの道をふさいだからだった。どうやらリーファはそのプレイヤーを知っているらしく「こんにちは、シグルド」と笑顔で挨拶はしたが完全に引きつっている。
「パーティから抜ける気なのか、リーファ」
「うん……まぁね。貯金もだいぶ出来たししばらくのんびりしようかと思って」
リーファはその偉そうな雰囲気の人物に頷き答える。
「勝手だな。残りのメンバーが迷惑するとは思わないのか」
「ちょっ……勝手…!?」
この男の言葉にリーファもカチンと来たらしく声を張り上げて反論しようとする。が、それすらも無視しシグルドの言葉はさらに続く。
「お前は俺のパーティの一員として既に名が通っている。そのお前が理由も無く抜けて他のパーティに入ったりすれば、こちらの顔に泥を塗られることになる」
「………」
その大仰な言葉にリーファは言葉を失いうつむいてしまった。そこから辺りに妙な空気が流れ双方が沈黙している俺はその馬鹿げた理由にあいた口がふさがらなかった。本来…というか俺がリーダーに必要だと思っているのは個よりも全を考えることだと思ってる。もちろん、その個も捨てっぱなしじゃ無くてちゃんと対応を考えなければならないし力も知恵も必要だ。だがこいつは完全に自分の名誉のことしか考えていないいわゆる独裁者タイプだ。
そんなことを思っているとこの沈黙を破る者が。
「…仲間はアイテムじゃないぜ」
スプリガンの少年、キリトだった。その声に俺もリーファも、相手のシグルドたちもいっせいにキリトの方を見る。
「…なんだと…?」
「他のプレイヤーを、あんたの大事な剣や鎧みたいに、装備欄にロックしとく事は出来ないって言ったのさ」
そのキリトの言葉に怒りからかシグルドの顔が一瞬でに赤くなりつかつかとキリトとリーファに近づいてくる。でも、そうはさせないと2人をかばうように割り込みシグルドの足を止めさせる。
「キリトの言うとおりだな。リーファはアンタの物じゃない、リーファはリーファ自身のものだ。だから束縛する権利も無いはずだ」
「だが、リーファは我々のパーティの一員だ。彼女の行いによっては我々の面子が」
「だったらシグルトさん、アンタはリーファにパーティから抜けるなってあらかじめ言ったのかな…?どうも後ろを見るとそんな様子じゃなさそうだけど……どう、リーファ」
「……リクヤ君の言う通りよ。あたしがスカウトに乗ったのはパーティ行動するのは都合のつくときだけ、抜けたくなったらいつでも抜けられる…そういう条件だったはずよ」
「…って言ってるけど」
「き…貴様らっ!!」
どうやら向こうの堪忍袋の緒が切れたらしいのかその真っ赤な顔のまま肩から下がったマントの下にある剣の柄を握りそのまま立派な装飾のついたブロードソードを抜刀しようとするシグルド。
「この……脱領者どもが付け上がるな!!」
「失礼なこと言わないで!!キリト君とリクヤ君…この2人はあたしの新しいパーティの仲間よ!!」
「なん……だと…!?」
額に青筋を浮かべながらも、シグルドはリーファの発言に驚愕をにじませた声で唸った。
「リーファ……お前は領地を捨てる気なのか…?」
そのシグルドの言葉にリーファはその目に迷いの色を見せていた。今日、ここに入る前に軽くアルヴヘイム・オンラインについて軽く調べたがどうやらプレイスタイルが2種類ほどあるらしい。
1つは種族ごとにある領地を本拠地として同種族のパーティを組んで稼いだ金の一部を上に納め勢力の発展に貢献するグループ。そしてもう1つは領地を捨てて異種族とパーティを組んでゲーム攻略を行うグループだ。どうやら後者は前者に蔑視されることが多くその領地を捨てたプレイヤーを『脱領者』というらしい。
そして今の迷いの色とシグルドの言葉でリーファは恐らく前者、発展貢献の側だというのがわかる。だがリーファは何かを決意したのか一度自分を落ち着かせるように呼吸をすると口を開いた。
「…そうよ…あたし、ここを出るわ」
リーファの決意にシグルドは気に入らないかのように唇をゆがめ、食いしばった歯をわずかに出すと今まで手のかけていたブロードソードをいきなり抜刀した。
「シ、シグさん落ち着いてください!こんな人目のあるところで無抵抗の相手をキルなんてしたら…」
そんなシグルドの後ろにいたプレイヤーの1人が小声でささやいていた。周りにはトラブルの気配に惹かれたように野次馬の輪が作られていた。その光景を見たシグルドは歯噛みしながら俺たちを睨んでいたがやがて剣を納める。
「せいぜい外では逃げ隠れることだな……リーファ」
俺とキリトにかっこ悪く捨て台詞をはいておいてリーファへと視線を移す。
「……今俺を裏切れば、近いうちに必ず後悔することになるぞ」
「留まって後悔するよりかはずっとマシだわ」
「戻りたくなったときのために、泣いて土下座する練習をしておくんだな」
それだけを言い放つとシグルドはそのまま身を翻し、塔の出口へと歩き始めた。それに付き従うパーティメンバーも何かを言おうとリーファを見ていたが、やがて諦めたようにシグルドをおって行った。
「危なかった……舌が回ったやつなら完璧に負けてた……」
どちらかと言えば俺は口より体が先に動く方だから今回のようなケースは自分の中でも珍しい。ただ、ボキャブラリーが限られているので口が達者だったら言いくるめられていたと思う。
「……ゴメンね、妙なことに巻き込んじゃって…」
「ん、いや…俺も火に油を注ぐようなこと言っちゃったし」
「しかし…いいのか?…領地を捨てるって…」
キリトの言葉にリーファは返答に少し時間をかけていたが、答えが見つからなかったためか俺たちの腕を無言で引っ張りエレベータへと向かいはじめた。
そしてちょうど降りてきたエレベータに飛び乗り数十秒後、扉が開いたときには広大な空が俺たちの目に入った。
「……おぉ…すごい眺めだな……」
キリトの言うとおり空だけじゃなくここから見えるアルブヘイムの地はとにかく凄かった。
「……手、届きそうだ…」
子供みたいに手を天に向かって伸ばすが当然届くはずはない、でも届きそうと思わせるほど空が近かった。
「でしょ。この空を見てると、小っちゃく見えるよね、いろんなことが」
俺たちに言われたのかと思い、2人してリーファを見るが、彼女の顔は少し悲しそうに笑っており独り言のように呟く。
「……いいきっかけだったよ。いつかはここを出て行こうと思ってたの。1人じゃ怖くて、なかなか決心がつかなかったんだけど…」
「それを後押しできる存在になれて光栄だな……でも喧嘩別れさせちゃったのは…」
「あの様子じゃ、どっちにしろ穏便には抜けられなかったよ……どうして…なんでああやって、縛ったり縛られたりしたがるのかな…せっかく、翅があるのに……」
そんなリーファの疑問に対して答えたのは俺やキリトじゃなく、キリトの胸ポケットからちょこんと顔を出したプライベートピクシーのユイだった。
「フクザツですね、人間は」
キラランと飛び立つとキリトの肩に飛び移り小さな肩を組んで首をかしげる。
「ヒトを求める心を、あんなややこしく表現する心理は理解できません」
「…求める?」
「他者の心を求める衝動が人間の行動原理だとわたしは理解しています。ゆえにそれはわたしのベースメントでもあるのですが…わたしなら」
と、言葉を切り小さな手をキリトの頬に添えたと思ったらかがみこんで音高くキスをした。
「こうします。とてもシンプルで明確です」
……似たようなことをいってたやつがいたっけ…ユイと同じAIだったからあいつも、もし体を持ってたのならこんな風に行動を起こしていたのだろうか…。
「だな…でも、そんな簡単じゃないのが人間なんだよ」
欲求を理性やら倫理やらで押さえ込んだのが人間だ。そのおかげで他の動物には見られないほどの大発展を繰り返してきたがその分だけコミュニケーションが取りにくくなったのも事実。
「手順と様式ってやつですね」
「……変なこと憶えないでくれよ…」
ユイの発言にキリトに睨まれるが俺じゃないという意志を出すため全力で首を横に振る。もしアスナに誤解されたらこの2人に俺が殺される…。
「す、すごいAIね……プライベートピクシーってみんなそうなの?」
「こいつが特にヘンなだけだよ」
そういいながらキリトは起用にユイを摘み上げて胸ポケットにひょいと放り込む。
「ヒトを求める心かぁ……」
ヒトを求める…か。サチにシリカ、リズ、そしてユカ…あいつらは今、俺のことをどう思っているのかな…。あの世界でそこことを言われてからすでに結構な月日が経とうとしている。でもいまだに俺はその答えが出ていない。…あいまいな答えは出たけれど…責任を持てって言われても最近じゃそれもよくわからなくなってきた…。
今ここで考えていてもすぐ出るようなことでもないし、すぐに出してはいけない答えだと思うので考えるのをやめてリーファの指示に従いロケーターストーンと言うセーブポイントでセーブさせてもらう。
「リーファちゃーん!!」
そしていざ出発、と言うときにエレベータの中から弱気な少年の声が。
「あ、レコン」
「ひどいよ…一言声をかけてから出発でもいいじゃない」
「ごめーん、忘れてた」
がくりと肩を落としたレコンだが、気を取り直したように顔を上げて初めて見るような真剣な顔で言った。
「リーファちゃん…パーティ抜けたんだって?」
「ん…まぁね…その場の勢い半分だったけど……アンタはどうするの?」
「決まってるじゃない、この剣はリーファちゃんだけに捧げてるんだから…」
そういいながらレコンは愛刀である短剣を抜きリーファに見せ付ける。…もうちょっと長いものなら見栄えがよかったのに…と思ってしまった俺は悪くないと思う…。人それぞれ好きな剣や思い入れのある武器は違うから何もいえないが…。
だが、リーファはそんなレコンを軽く一蹴した。だが、それで折れるつもりも無いのかレコンは剣をしまいながら言う。
「…まぁそういうわけだから当然僕も…といいたいところだけど、僕はもうしばらくシグルドのパーティに残るよ…キリトさん、リクヤさん」
「どうした?」
「彼女、トラブルに飛び込んでいく癖があるんで気をつけてくださいね」
なるほど、キリトと同じタイプか…いや俺ともか?
「あ、あぁ…わかった」
「それと…彼女は僕の…ンギャっ!」
突然悲鳴を上げたかと思うとどうやら思い切り足を踏まれたらしい。その足を踏んだ張本人のリーファは少々怒り気味だ。
「しばらく中立域にいると思うから何かあったらメールしてね!」
早口でそういうと翅を広げて宙に浮かび上がる。それを名残惜しそうに見つめるレコンに向かって大きく手を振りながら随意飛行の練習、サラマンダー領には近づかないこと…などまるで姉のように言ったあと世界樹の方向を向いて滑空を始めた。
「…ま、がんばれ、レコン」
「はい…じゃあ」
「…あ、ちょっと待って」
俺も追いかけようとするがそういえばレコンとフレンド登録をしていないことを思い出しエレベータに乗ろうとしていたレコンを呼び止め早速申請をする。彼はちょっと気弱なだけでいい人らしく快く申請に応じてくれた。
「…じゃあ、頑張ってください!」
「おぅ!!そっちもな!」
レコンの言葉を背に俺も随意飛行を始め、いきなりブーストして少し差の開いてしまったキリト達を追いかける。しばらくするとすぐに黒と緑の翅が見え追いつくことが出来た。
「あ、来た来た。この飛行であの湖まで飛ぶよ!」
「わかった!」
随意飛行の気持ちよさを味わいながら俺の新しい空の冒険はこうして始まった。
後書き
リ「…久しぶりだな」
涙「そーですね!そしてテスト帰ってきたぜ!!」
リ「…でどうだった?」
涙「いやぁ…LINEで教えてもらったやつはまだ帰ってきてないけど他のはめちゃくちゃいいのがあった!」
リ「なんだよ、それ」
涙「古典!!しかも…91点!!」
リ「す、すげぇ……で、あのモデルのヒトには?」
涙「今回も全敗wwすごいね~あのヒト、数2平均24のテストで88取ったんだもん」
リ「……圧倒的だな」
涙「すでにレベルが違ってたねww…なんで中学のとき2回くらい勝てたんだろ?」
リ「知らないよ…って今回もテストの内容で終わりそうじゃないか!本文いけよ」
涙「ですね。さて感想やら待ってますよ~」
リ「それだけかよ…」
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