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茨の王冠を抱く偽りの王

作者:カエサル
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02.ヴォイドゲノム

『オウマ シュウ!とそこにいる奴!15秒やる。いのりを回収して離脱しろ』

ふゅーねるがどこからか現れ、そこからガイの声がする。
その場から俺たちは離脱する。


離脱した俺たちはすぐにガイと接触し、どこかの屋上に連れてこられる。

「君が無事でよかった、綾瀬」

ガイは綾瀬という人とモニター越しに話している。

「目覚めたか.....」

ガイが見る方向を見ると先ほどまで気絶していたいのりが目を覚ましていた。

「いのりさん!」

「ガイ....私ちゃんと出来た?」

いのりは心配そうな顔でガイに聞く。
ところがガイは.......

「......お前には失望した」

と、冷たい言葉を放つ。

「あの.......」

集が口を挟む。

「ちょっとひどいんじゃないですか?口挟むのも、なんですけど彼女すごくがんばってた。ひどい怪我までして......」

「知っている」

すべてを知ったように.....いや、すべてを知っているんだ、ガイは。

「結果が全てだ。こいつは最後に大きなヘマをした。お前に"ヴォイドゲノム"を使わせた」

ヴォイドゲノムって、さっきの力のことだよな?

「おれは本来、俺が使うハズだった.......お前はそれを奪った.....!あのシリンダーはセフィラゲノミクスが三基のみ培養に成功した強化ゲノムだった使用者に付与されるのは......"王の能力"ヒトゲノムのイントロンコードを解析し、その裡に隠された力をヴォイドに変えて引き出すことが出来る」

「ヴォイド.....って?」

「形相うぃ獲得したイデア....お前が使ったあの剣のことだ。あれはいのりのヴォイド。別の人間からはまた別のヴォイドが取り出せる。神の領域を暴くゲノムテクノロジーの頂点......それがお前の手にしたものだ......いや、お前たちが手にした力だ」

ガイは俺の結晶化している右腕を見ながら言う。

「お前たちってことは俺のこの右腕も"王の能力"ってことか?」

「すこし違う.....いや、お前は異例すぎる」

「.....じゃあ、僕の右手は.....」

「チカラを得た以上もう昨日までのお前のように無力に立ち止まり命を見過ごすことは許されない。お前たちにも戦ってもらう」

「そんな!いきなり.....」

集は驚きを隠せない。
そんな集の胸ぐらをガイが掴む。

「覚えておけ、桜満集。この先、お前が選べる道は2つしかない。黙って世界に"淘汰"されるか.....世界に"適応"して自分が変わるかだ」

ガイは集の胸ぐらを放し、投げる。

「お前はどうだ。お前もこいつと同じように黙って世界に"淘汰"されるか....?」

「俺はこうなることは何となくわかってたから覚悟は出来てる。......あの日から.....始まりのあの日から覚悟は出来てる」

集がいのりを見るがいのりは集から目を背ける。
ピピピピピ、とガイの通信機が鳴る。

「どうした?」

『やべぇことになったぞ、ガイ。14区画の地下駐車場に白服共が突入しやがった』

「地下駐車場?.....避難所か」

『ああ、誰かが安全だって言い出して百人近くが一気に捕まっちまった。.......それに......綾瀬を喰った新型って皆殺しのダリルだ。ちょっと面倒臭ェぞ』

「ダリル.....あの"万華鏡"か」


屋上から下の階に降りるとそこにはガイの仲間が数十人いる。

「ガイ、不測の事態です」

まず、声を上げたのは白髪のロングで眼鏡をかけている男性。

「現時点での戦力差を鑑みるに救出はリスクに見合いません。"撤退"を進言します」

ガイは少し笑いながら言う。

「いや、見過ごせないな。これは、不測じゃない、天佑さ。我々はこれよりアンチボディズを殲滅。フォートの住民を救出する!」

ガイの言葉に俺と集は驚きを隠せない。

「なお本作戦は、これまでのような隠密作戦ではない。......現時刻を持ち.....我々葬儀社は、その存在を世界に公表する!存分に働けッ!」

ワァアアァと言う歓声がこの場全てを包み込む。

「流石ですねシナリオを飛ばしますか。ただ少し急ぎ過ぎでは?」

ガーイ!ガーイ!ガーイ!ガーイ!

ガイコールがこの場を包み込む。

「返事はどうした?」

ガイは俺たちを見る。



俺と集、いのりは今、ダクトの中を進んでいる。
何故ここにいるかと言うと話は、だいぶ前に遡る。

「僕たちが侵入!?無理ですよ!」

「お前たちは命令通りに動け、それで全てが終わる.....」

「あの.....僕なんかじゃ絶対うまく行く訳ないと思うんですけど.....」

「ああ、俺の作戦だからうまくいく」

ガイの作戦は確かにスゴイだけど一つだけ問題がある。
........俺が作戦に入っていること事態が問題だ。

「無駄な抵抗をっ!!」

ダクトから見える外の景色には白服の兵士が一般人に銃を突きつけている。

「吐け!リーダーは誰だ!?言えっ!!」

「あの兵士.....GHQ?なぜこんなこと....?」

「ヒデェ.....」

俺の右腕がうずき出す。

『連中は白服だからな.....』

ガイの話を聞くには.....
特殊ウイルス災害対策局"通称アンチボディズ"
独自に感染者の認定権限を持ち、その判断に基づいて感染者を処分する権限を持っているらしい。

「予定ポイント到着」

俺たちは予定ポイント到着したようだ。

『よし、次の命令まで動くな』

処分って......普通に考えて.......死だよな。


俺らの見ている光景が本当に日本なのか?
数人の日本人が白服の連中に銃を突きつけられていて、金髪の少年は女性をビール瓶で殴っている。
そして、ついに無数の銃声が放たれる。
目の前で人が殺された。手が届く範囲で人が.........死んだ。

「なんなんだよ、これ.....」

「ふざけんなよ.....!?」

『世界の本当の姿が見られて良かったんじゃないか』

ーーふざけんなよ!?まじでふざけんじゃねぇよ!?
俺の右腕がうずき出す。少しづつ包帯が取れていく。

『作戦開始!!』

通信機ごしにガイの声がする。

「始まった」

いのりが集の手をそっと握る。

「平気?シュウ....」

「.....本当に全て、あいつの作戦通りになるのかな?」

「うん」

「うまくいくのかよ?」

「あなたも安心して、ガイの作戦通りなら大丈夫」



作戦は進行していく。ついに俺たちの出番が近づいてくる。

「リーダーは俺だ」

ガイは敵から完全に狙われる場所に現れる。

「世界は常に選択を迫る。そして正解を選び続けた者のみが生き残る。"適者生存"それがこの世界の理だ。俺たちは淘汰される者に葬送の歌を送り続ける、故に葬儀社。その名は俺たちが常に送る側であること、生き残り続ける存在であることを示す」

「貴様たちが盗み出した遺伝子兵器はどうした!?」

「そんな話、初めて聞いたね」

「吐け!!!」

坊主の男が叫ぶと無数のレーザー銃をがガイに向けられる。

「10数えるまで待つ。その間に言わねば貴様はハチの巣だ!10!9!」

ガイは平然とした顔をしている。

「.......時間よ」

「すごい....!全部あいつの作戦通りだ.....」

「流石.....だな」

いのりが集の手を再びそっと両手で掴む。

「信じて....できる絶対に....」

いのりが集の手を胸に持っていく。

「.....私はもう、あなたのものだから」

いのりの胸が光り出す。
集がそこに手を突っ込むとそこから、前にも見た剣が姿を現す。

「これが.....ヴォイド....か」

集は剣を携え走る。
いのりは気を失っている。

ーー集が、頑張ってるなら俺も頑張らないと

「5!4!3!2!」

坊主の男のカウントダウンがもう終わる。

「いーち!時間だ!」

レーザーがガイ、目掛けて発射される。

「やれ!シュウ」

「行けぇ!"万華鏡"!わぁぁぁあっ!!」

放たれたレーザーはガイにあたる寸前に何かに弾かれる。

「.....何!?」

「弾けろぉぉぉぉぉ!」

集の声がしたと共にレーザーが空中に現れた鏡に反射していく。
そのレーザーはエンドレイブやらなんやらを全てが破壊しながら坊主の男へと迫っていく。

「馬鹿な.....!だが、貴様だけは殺す」

坊主の男は最後の悪あがきにもう一度無数のレーザーを放つ。

「今だ、貴様の出番だ。イバラ」

「うぉぉおっ!!」

俺は叫ぶ。
ーーもう一度、俺に力をかせ右腕!!

その瞬間、俺の右腕が光に包まれる。
そして、ガイの前へ俺は立つ。何が出てこようとこんなレーザーを防げない訳がねぇ!!

オギャァァァァーー
頭の中に直接くるような赤子の声がしたと同時に無数のレーザーは姿を消す。
その代わりに現れた.....いや、俺が呼び出して姿を表したヴォイドは二匹の赤子が合体している化け物が俺たちを守っていた。
その赤子は二匹が合体していて後ろの方には6本くらいの筒が存在している。それを見る限りはオルガンのようにも見えるが......しかも、今回のヴォイドは俺の右手だけ結晶化したままだった。多分これでこのヴォイドを操れということだろう。

「これがお前のヴォイドか」




「よくやったな。今日、お前は一つ自分自身を越えた。それは誇って良いことだ」

「でも....」

「見ろ、お前が救った人々だ」

集は周りを見る。
そこには、助かった人々が笑顔を浮かべている。

「お前も良くやった、イバラ」

「どってことないですよ。それよりも集を......」

「でも、僕はただ.....あなたの言う通りにしただけで」

「来い、シュウ、イバラ。俺たちと共に」

ガイはシュウに手を伸ばす。
シュウはその手を掴む。
その後、俺に手を差し出す。
俺は右手で握手をしようとする....が辞めて、左手を出す。

「フッ、そうだったな」

ガイはそう言って、左手を差し出し俺と握手をする。



これが俺と葬儀社の話の始まりだ。
 
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