茨の王冠を抱く偽りの王
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01.偽りの王
いつもの日常。
何事もない普通の日常の光景が目の前にはあった。
「おい、シュウ、カイ!」
俺、茨 壊(イバラ カイ)と桜満 集(オウマ シュウ)が席についていると魂館 颯太(タマダテ ソウタ)と寒川 谷尋(サムカワ ヤヒロ)が俺たちに近づいてくる。
「ごめん。コンクール用のビデオクリップ、まだ出来てないんだ」
「.....って、違ーよ!別に催促しに来たんじゃねェっての!」
「まぁ、まぁ、颯太。落ち着いて」
「じゃあ、何の用?」
パタン。本を勢いよく閉じる颯太。
「本当に一人で出来るのかって聞きたいのさ颯太は、な?」
八尋が止めてなければ颯太は今にも集を殴りそうだ。
「昼休みに部室の機材借りて片付ける、つもりだけど何か問題ある?」
「いいのか?ホントに一人で」
颯太が集に問いかける。
「押しつけられたなんて思ってないよ」
集の言葉をすこし遮るように颯太が言う。
「そうじゃなくてさ」
「映研の部室は居心地がいいし期限には間に合わすから」
集が言っている映研とは、"現代映像研究同好会"略称。
「あのなぁシュウ!俺ら友達だろ!」
「......うん」
「じゃ、頼んだぜ」
八尋が颯太を連れて教室から出て行く。
「任せてよ」
集は一段落終えたような顔をしている。
「かわいそ。颯太君」
集の席の斜め前、俺の隣の席の少女、校条 祭(メンジョウ ハレ)。映研の一人だ。ついでに俺も映研の一人だ。
「.....?なんで?頑張って空気読んだつもりだけど」
「読めてないよ」
「確かに全然読めてない」
「ニブすぎだよ。いろいろ」
集の考えは人とは少しズレていると俺は思う。今日の昼食もそうだ。昼食を颯太と八尋と俺が一緒に食おうと言ったが、部室にいくから、と断った。やはり、少しズレている。
まぁ、俺は人間としておかしいから言えた話ではないが......。
俺の右腕には包帯が巻かれている。この右腕は俺の右腕ではない。この右腕はあの日.....全てが失われたあの惨劇の日に自分の右腕を失い手に入れたもの。
昼食の途中、集のことが気になり映研の部室に向かう。
映研の部室は校舎から橋を渡った先にある。映研の部室に向かおうとする......だが、映研の部室から見たことない人が出てくる。だが、問題はそこではない。その人たちが銃を持っていることだ。
俺はとっさに隠れた。
映研の部室から出てきたのは三人。二人は銃を持ち白い防弾チョッキを着てヘルメットにサングラスらしきものをかけている。一人は坊主の色黒で白衣を着てサングラスをかけている。一人は女性でピンクの髪に大胆な服装で腕からは血が流れている。その子は銃を持った二人にひきづられている。
よく見てみるとその女の子は最近、ネットで流行っているウェーブアーティストのいのりだ。
ーーな、なんで彼女がGHQの奴らに!?
GHQとは日本の恩人とされるている組織。あの事件、ロストクリスマスの時に日本政府が機能を失った時に日本政府に変わって指揮をとった組織。
また、誰か出てくる。
今度は集が白いロボットみたいなものを持って出てくる。
集は何処かに向って行くようだ。
それを俺はあとをつけて行く。
集を追ってついた場所......そこは、第一級汚染地区....六本木だ。
集について行くとさらに六本木の奥地に向かって行く。
奥地に向かうに連れてそこには、怖そうな顔の人がそこらにいる。
ーーおい、おい大丈夫かよ、集のやつ。
案の定、集は囲まれる。
「いやっ....!無理なんですよね。これは....」
集は坊主の男に顔面を殴られる。
「ナメてんの?いいからよこせ」
どうやら、集の持っているロボット目当てらしい。
「そぉいよ!!」
続けてパーカーをつけた男が集の腹を蹴る。さらに殴る。
だが、集はロボットを渡そうとしない。
「ごめんなさい。預かりものなんで!」
坊主の男が集の頭を掴み地面に叩きつけようとする。
「その辺にしとけクソ坊主がっ!!」
俺は耐えきれず、物陰から出てきて坊主の男の顔面を左手でブン殴る。
「なっ、なんだコイツ!!」
パーカーの男が殴りかかってくる。それを左手でブン殴る。
だが、後方からバンダナをつけた男が俺を殴る。そいつを右手で殴.....るのをやめ、俺はパーカーの男とバンダナの男に殴られる。
結局、助けに入ったのに集と同じように床に倒れこむ。
その後、俺は男たちにボコボコにされた。
「放せって.....」
集の声が聞こえた.....と同時くらいに俺たちを照らす光。そして、瓦礫の上に誰かが立っている。
長い金髪に黒色の長い服が見える。
「やあ、死人の諸君」
「死人......だと!?」
「ああ。今、この状況は君たちの生存を許さない」
金髪の男は瓦礫の上からおりてくる。
「故に君たちは死んでいる」
「こいつ、まさか.....ガイ!!」
「勇気あんな、オメー」
そう言って、坊主の男がナイフを取り出し金髪の男に向かっていく。
だが、金髪の男はナイフを軽やかに除け、腕を掴み腕に衝撃を与えてナイフと男は落とす。次にパーカーの男が向かって行くが顔面を殴られすぐに倒される。さらに二人に向かうもあっさりと倒される。
「さて、君たちも死人かな?」
スゴイとしか言いようがなかった。だが、なぜか悔しかった.....。
「この状況は君たちの生存を許さない」
「くそぉっ!!」
坊主の男が急に立ち上がり銃を金髪の男に向ける。
「....なるほど」
驚くほど冷静な金髪の男。集は驚いて後ろに少し下がる。
「それが世界に殺された君の精一杯の抵抗か。.....嫌いじゃないが.....」
金髪の男が指を鳴らす。するとどこから出てきたかわからないくらいの人が銃を持って現れる。
「及ばないな」
「ひいっ!」
にげろォォ、と言って去っていく。
「それ、ふゅーねる?」
「え?」
後ろを振り向くと集の後ろに身長は小さめで腰くらいまで伸びた髪に何故か猫耳みたいなものをつけている。
「返して!」
集が持っていたふゅーねるというらしいロボットを奪い取る。
「「オウマ シュウ」か.....」
「あれと一緒にいた女はどうした?」
集が黙り込む。
それも、そのはずいのりは連れてかれてしまったのだから。
「くっ.....!.....それは、その.....」
「見捨てたのか」
俺は思わず立ち上がる。その瞬間、ドォン、という爆発音が鳴り響く。
「ガイ!GHQの白服共が街に入りこんできます!!」
高台から金髪の男.....ガイだったか?その仲間が叫ぶ。
「....ガイッ。逃げてくださ.........」
男が血まみれで倒れてきた。
「う....嘘だろ...!?」
「警告もなしかよ!?」
「このままじゃ、やられちまう!」
ガイの仲間たちが慌てて走り出す。集と俺はそれに巻き込まれ倒されてしまう。
「狼狽えるなッ!!!」
ガイの怒声にどこにいる全員が立ち止まる。
「生き残りたければ俺の指示に従え!」
おう!、とガイの仲間が声をあげる。
「ツグミ、綾瀬たちはどうしている?」
「アイアイ!」
さっきの小さい子が何かをいじっている。
「えーっと、綾ねぇたちは....」
ツグミが驚いたように声をあげる。
「左右に機影!」
「あ.....」
「おい、おい、マジかよ....!」
俺たちの横にロボット......いや、エンドレイブがいつのまにかいた。
「....!シリンダーを渡....」
上からロボットが降ってくる。
これもエンドレイブなのか?
その衝撃によって瓦礫が崩れて、俺と集、ガイたちとで分断されてしまう。
「くっ....」
「.....行け、シュウ!そいつを絶対に手放すな!今度こそ守ってみせろ!!」
集が走り出す。その顔を見るが覚悟を決めた顔だ。そのあとを俺は追って行く。
集が急に走るのをやめる。
「あっ....」
「どうしたんだよ、集?」
集の視線の先にはいのりがいた。
「いのりさ....」
その前にはエンドレイブが2体。
集は物陰にまた隠れてしまう。
「また、逃げるのか、集?」
「壊?」
「.....こんな、俺で言い分けない」
「好きなようにやれよ、集。俺はお前について行く」
「うぉぉぉお!!!」
集はいきなり走り出す。
「そんな急にとは言ってないぞ、集」
集はフェンスを乗り越えていのりの元へ向かう。
「いのりさん!」
エンドレイブがいのりに銃口を向ける。
「うわぁぁあぁあぁ!!」
集は走る、いのりの元へ。
「やめろぉぉぉおぉぉおっ!!!」
「集ぅぅうぅうっ!!!」
間に合わなかった。
いのりと集はエンドレイブが打った銃弾が起こした煙に消えた。
「う....うそだろ。うっ.....」
右腕がうずき出す。いつのまにか包帯が取れて俺の右腕が出てきてしまっていた。俺の右腕は金属の結晶が腕の形をしていると思わせる右腕だ。
急なことだ煙から一筋の光が空に向かいのびる。
「なっ、なんだ!?」
煙の中をよく見るといのりと集はちゃんと生きている。
だが、いのりは気絶している。集は右手に長剣を握っている。
「なっ、何だよあれ?」
その瞬間、俺の右腕が光に包まれる。
「うっ.....一体、これは?はっ.....!?」
俺の右手の中に持ち手が金属の結晶で作られており、その先にのびる長身の刃。まるで処刑剣のような姿である。
驚きはそれだけではなかった。俺の右腕は普通の人間の右腕に戻っていたのだ。
「まっ、待って....」
集の声がするととにミサイルがこちらに飛んでくる。
「マジかよ!?」
そのミサイルごとブった切る。
「ああぁぁああぁぁああぁっ!!!」
向こうを見ると集はエンドレイブへ向かい剣を振り下ろす。
エンドレイブは剣で斬られ爆発する。
もう一体のエンドレイブがミサイルを集に向けて打つ。
「うっ、うわあああ!!」
「集、伏せろぉぉぉ!!」
集は伏せるどころか紋章を踏み台にして、空中に逃げる。
ーーまぁ、充分だ。
処刑剣を一振り.....処刑剣から斬撃が放たれミサイルが全て爆発する。
「これで、終わりだ!!」
処刑剣でエンドレイブを一突きで突き刺す。
激しい爆発音。
「いのりさん!」
「大丈夫か、集、いのり?」
集の剣と俺の剣が姿を消す。
「....なん、なんだ。剣が....戻った....!?」
「とりあえず、大丈夫みたいだな」
ふぅーっ、一息つくといつのまにか俺の右腕は金属の結晶に戻っていた。
「戻っちまった」
『オウマ シュウ!とそこにいる奴!15秒やる。いのりを回収して離脱しろ』
これが、俺の.....いや、俺たちの物語の始まりだ。
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