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Fate/magic girl-錬鉄の弓兵と魔法少女-

作者:セリカ
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無印編
  第十九話 三人目の魔法使い

 窓から入ってくる朝日を感じ、ゆっくりと意識が覚醒する。

「ん?」

 起き上がろうとして両腕に重さを感じ、左右に視線を向けると俺の腕に抱きつく形でなのはとフェイトが寝息をたてていた。
 そういえば一緒に寝たんだったな。

「―――解析、開始」

 とりあえず寝ているなのはとフェイトを起こさないように自身の身体に解析をかける。

 ―――左腕、戦闘運用難
 ―――左腕以外の身体、正常
 ―――『全て遠き理想郷(アヴァロン)』正常稼働中
 ―――魔力量、約九割

 左腕の損傷が酷かったためか、魔力の回復が若干遅いな。
 それに左腕に関しても戦闘運用に難があるとはいえ、無理をしなければある程度は戦える。
 これなら日常生活などでは問題はなさそうだ。
 それにしても

「温かいな」

 なのはとフェイトの温もりを感じる。
 一人ではない、誰かがそばにいてくれる懐かしい感覚。
 まったく二人には感謝してもしきれないな。

 だけど俺の手は血で汚れている。
 こんな俺が二人の傍にいることはふさわしくないだろう。
 それでいい。
 共に歩むことが出来なくても二人を支え、守る事は出来るのだから。


 それにしてもどうしたものか。
 腕に抱きつかれたこの状況では起きることもできない。

「まあ、のんびりと待つとしようか」

 学校の時間までまだ時間はあるし、二人が起きるまで寝顔を見つめながらのんびりと時間を過ごす。

 二人を起こす事もせず俺が寝顔を見始めてから三十分ほどでなのはとフェイトは眼を覚ました。
 眼があった瞬間真っ赤になったけど。

 そして今は朝食を三人と二匹で食べている。
 ちなみに俺は念のためというかちょっと用意があるので本日も学校は休む。
 なのはは学校に行くので本日の授業の教科書は俺のを貸すことにした。

 食事の片付けも終わり、なのはは学校に行き、フェイトも一度家に戻るらしい。
 そして、フェイトはなのはが学校に行くより先に家を後にする。
 玄関まで見送る俺となのは。

 そのとき、なのはとフェイトはお互いに一歩前に踏み出し、見つめ合う。

「なのは」
「なに、フェイトちゃん」
「私は譲れないし、あきらめないから」
「うん。私も譲れない」

 二人はお互いを認め合うように頷きあう。

「またね。士郎、なのは、ユーノ」
「またね。士郎は完治するまで無理するんじゃないよ」

 フェイトとアルフはそんな言葉を残して、家を後にした。
 そして、フェイトから遅れること数分後、なのはも学校に向かった。

「さてと俺も出かけるか」

 身体を休めていたほうがいいかもしれないが、その前に最低限準備しておくモノもある。
 服を着替え、先日の戦闘でボロボロになった服と同じ服を数着づつ購入する。
 ついでに食料を買い足して、家に戻る。

 そして、購入した服を戦闘用に細工を加え、新たな赤竜布を投影しておく。
 これで、何かあってもすぐに戦闘態勢は整えることができる。

 それに満足して、ちょうどいい時間なので昼食をとり、部屋で眠る。

 眠りに入ってどれぐらい時間がたったか

「っ!!」

 膨大な魔力を感じ、一気に意識が覚醒する。
 ……ジュエルシード
 身体を起こし、新たに用意した全身黒の戦闘服と赤竜布を纏い、フードと仮面を身につける。
 なのはとフェイトには正体がばれているのでつけなくてもいいのかもしれないが、俺が知らない第三者が現れる可能性を否定できないので念のためだ。
 あと左腕が使えない分アレを持っていくとしよう。

 そして、魔力反応があった場所に辿りつくと
 空中で向かい合う二人がいた。




side フェイト

 またジュエルシードが覚醒した。
 今回は樹が取り込んでいる。

「バルディッシュ、フォトンランサー!」
「Yes sir. Photon Lancer set up……Fire」

 フォトンランサーを樹に向け放つ。
 だけどそれはバリアによって防がれる。

「生意気に、バリアまで張るのかい」
「うん。今までのよりも強いね。それに……」

 なのはも来ている。
 樹の根が地面から突きだしてきて、なのはは空に上がる。

「アークセイバー」
「Arc saber.」

 刃を飛ばし、根を切り裂くけど中心には届かない。
 強固なバリアを持つ相手を叩く方法は二つ。
 一つはバリアを張る暇も与えない攻撃。
 もう一つはバリアを突き破る強力な攻撃。
 そして、樹はアークセイバーを止めるために、なのはへの注意がいっていない。
 なのはがその隙を逃すはずもない。

「撃ち抜いて―――ディバイン!」
「Buster!」

 なのはから砲撃が放たれ、上からの攻撃に樹の動きは妨げられる。
 これなら

「貫け轟雷!」
「Thunder smasher!」

 私となのはからの砲撃。
 それに耐えきれずバリアは破壊され、ジュエルシードが浮かび上がる。

「Sealing mode. Set up!」
「Sealing form. Set up!」
「ジュエルシード、シリアル7!」
「封印!」

 封印状態のジュエルシードをそのままに私も空に上がり、なのはと向かい合う。

「ジュエルシードには衝撃を与えたらいけないみたいだから」
「うん。この前みたいになったらレイジングハートも、フェイトちゃんのバルディッシュもかわいそうだもんね」

 敵であるはずの私のバルディッシュまで気にかけてくれる優しい子。
 だけど

「……譲れないから」
「Device form.」

 バルディッシュをなのはに向ける。

「私はフェイトちゃんと話をしたいだけなんだけど」
「Device mode.」

 なのはは真っすぐ私を見る。
 私も戦いたくないのかもしれない。
 だけど母さんの願いを叶えると決めたんだ。
 だから

 私は迷っちゃいけないんだ。




side 士郎

 封印したジュエルシードのそばで向かい合う二人を近くの木々の合間から見つめる。
 まさかあそこで戦う気か?

 ジュエルシードのそばで魔法を使うの自体が問題だ。
 これはのんびりみている場合じゃない。
 二人が一気に距離を詰めて、杖を振り上げる。
 さっさと止めるか。
 と思ったら

「なに?」

 海鳴市に何かが入り込んだ。
 と同時に青い魔法陣が現れ

「ストップだ!! ここでの戦闘は危険すぎる。
 時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。詳しい事情を聞かせてもらおうか」

 となのはとフェイトの杖を受け止めた少年がいた。
 歳の頃はなのはやフェイトより少し上ぐらい。
 黒の服を纏って杖を持っている。

「あれは……魔法少年とでもいえばいいのか?」

 新たに登場した魔法少年(?)の登場に少し呆然としつつ少年、クロノを見つめる。

「まずは二人とも武器を引くんだ」

 クロノの言葉になのはとフェイトも地に降り立つ。
 しかし、時空管理局といったかどちらにしろいきなり現れてこの場を取り仕切るのはいささか気に食わない。
 管理局というぐらいだから何かの組織か?
 魔術協会などの経験上あまり組織にいいイメージを持っていないのもあるが、好き勝手させるわけにはいかない。

「このまま戦闘行為を続けるなら……」
「どうする気かね?」

 クロノが言葉をつづけようとした時、三人の前に木の枝から跳躍し降り立つ。
 俺を見たクロノが杖を向けて警戒する。

「お前、何者だ!」
「それはこちらのセリフだよ侵入者。この海鳴の地は我が領地。
 いきなり侵入してきた者が杖を向けたのだ。
 この場で殺されても文句は言えんぞ」
「領地? 一体何を言っているんだ?」

 俺の言葉にクロノは困惑し理解が追いついていない。

 フェイトとなのはといえば俺とクロノのやり取りに驚いて俺とクロノの方を見ている。
 丁度いいか。
 クロノから視線をずらしフェイトと視線を合わせる。

「え?」

 眼があったことに驚いたフェイトだが俺が頷いて見せるとすぐに理解したようだ。
 一気に飛び上がり、撤退を……と思ったら撤退するついでにジュエルシードまで掴むつもりのようだ。
 まったく。

「なっ! させるか!」

 クロノがフェイトに杖を向け、杖の先端に五つの青い魔力弾が生成される。
 俺がそれを見逃すと思っているのか、執務官。
 太腿のホルスターからアレを抜き、引き金を引く。

「何っ!?」

 鳴り響く五発の銃声と共にクロノの杖の先端から放たれようとしていた魔力弾が掻き消える。
 予想外の攻撃と音で固まるクロノ。
 対して俺はクロノを見据えながら、撃ち尽くした弾を再装填すべく、空薬莢を取り出す。
 空薬莢がアスファルトとぶつかり響く金属音を聞きながらスピードローダーで弾を込め直す。
 俺の再装填が済むまで約三秒。

 それとほぼ同時に停止した思考から復活したクロノが杖をこちらに向ける。
 対して俺は再装填した銃を握ったまま構える事もせず、だらりと腕を下げている。

 対拳銃になれていないのか、それとも拳銃で魔力弾を掻き消されるとは思わなかったのかはわからないが、クロノの意識をこちらに向ける事は出来た。

 それにしてもこれで魔弾が魔導師にも効果がある証明が出来たな。

 さて、そろそろ固まっている二人に動いてもらうとしよう。

「退け。君のこの地での行動は黙認していると言ったはずだ」
「は、はい! アルフ!」
「あいよ!」

 俺の言葉に今まで固まっていたフェイトとアルフが飛び去る。

「よく動かなかったな。ああ、それとも足がすくんで動けなかったかね?」

 俺の言葉にクロノが睨みつける。

「ふざけるな。お前なんで質量兵器なんて持っている。その外套からも魔力を感じる。
 お前は魔導師だろ!」
「何か勘違いしているようだから説明しておいてやろう。
 私は魔導師ではない。
 私は魔術師。この海鳴を領地とする者だ」
「魔術師だと? そもそもこの世界に魔法技術はないはずだ」
「それはそちらの情報収集の力の問題だろう。
 理解したなら我が領地から出ていってもらえるかな」

 俺の言葉に敵意を向けながら僅かに腰が沈む。

「君の言葉を、はいそうですかと聞くと思っているのか?
 君こそ、武装を解除しろ。
 時空管理局局員に対する攻撃行為で逮捕する」

 クロノの言葉に内心ため息を吐く。

 どうしてこう、組織の人間と相性が悪いのだろうか。

 先ほどより腰が沈みいつでも戦闘準備になっているクロノに俺も動けるように僅かに腰を下ろす。

「奇遇だな。私も君の言う時空管理局など知らんし、なにより君が信用できん」

 クロノと言葉を交しながらレイジングブルの撃鉄を起こす。

「侵入者、一応聞いておく。
 武器を捨て投降する意思はあるか?」
「あるはずないだろう! それよりお前が武器を捨てて投降しろ!」
「そうか、ならば俺に殺される覚悟もできているな」

 瞬間、クロノに銃口を向け、一秒に満たない時間で照準を合わせる。
 それとほぼ同時に

「待ってください」

 俺の横にモニターが現れた。
 映っているのは若い女性。
 この女性が声をかけたのか?

「何者だ?」

 クロノに銃口を向けたまま、尋ねる。

「私は時空管理局巡行艦アースラ艦長、リンディ・ハラオウン提督です。
 どうか武器を下ろしてください。
 クロノ、貴方もよ」
「ですが」
「命令です」
「……わかりました」

 この女性、リンディ提督の命令に従い杖を下ろすクロノ。
 クロノが杖を下ろした後に俺も撃鉄を下ろし、銃口を下げる。

「リンディ提督でよろしいか?」
「はい」
「貴方やそこのクロノ執務官、貴方達が先ほどから言っている時空管理局とはなんだ?
 というかこれは何だ?」

 時空管理局という単語も気になるが、この空中に出てきたモニターも気になる。

「これはモニターとしてそちらにこちらの映像をだしているの」

 ……魔法の立体映像の類か。
 なのは達の杖といい、科学技術と魔法技術が混在した魔法体系なのだな。
 元の世界では考えられないことではあるが。
 それにしてもハラオウンと言ったか。
 クロノと同じ姓だな……身内か?

「我々、時空管理局は貴方と平和的な話し合いを望みます」
「それは構わんがどこで話し合うつもりだ?」
「私達としてはこちらの船に来ていただきたいのですが」
「クロノ執務官にも言ったが、私に時空管理局などという組織の知識はない。
 そんな相手の船にわざわざ乗り込むのは遠慮したいところだな」

 科学と魔法の混在技術でこんなモニターを出すような技術があれば、こちらが感知できていない機械的な監視もされている可能性が高い。
 相手の素性も知れないのに敵地に乗り込むような事は避けたいし、下手に乗り込んでホルマリン漬けになりましたじゃ、笑い話にもなりはしない。
 だがこれからの事を考えれば時空管理局に関する知識は絶対的に必要だ。

「ではどちらならお話を聞かせていただきます?」
「互いに中立である場において、互いの安全が確保された場所が理想だと思うがね。
 もっともこちらが勝手に決めるわけもいくまい?」
「私たちとしては貴方の家でも構いませんが?」

 リンディ提督の言葉に、この地の監視自体は前からされていた可能性が浮上した。
 そうなると俺の家や正体はばれているか。
 もしばれていなくても話しあいに髑髏の仮面をつけて望むわけにもいかないのでばれるのか。

 そして、リンディ提督が戦いを望んでいないのも事実だろう。
 ならばわざわざ話し合いの場を設ける必要はない。
 だが自分の家に入れるのは最終手段として残しておくべきだな。

 そうなるとお互いに戦闘に踏み込めず、話し合える状況が一番好ましい。

「明日の夕方四時にここで。ここならば多少人目はあるし互いに戦闘は出来ないだろう。
 そこにいる少女とその使い魔もその時に同席する。それで構わないな」
「ええ、構いません。では明日の四時にここでお会いしましょう」

 リンディ提督の言葉と共にクロノの足元に魔法陣が現れ消えた。
 ……空間転移か。

「では失礼します」
「最後に一つ」

 通信を閉じようとするリンディ提督を呼びとめる。

「なんでしょう?」

 なぜ呼びとめられたのか不思議そうにしている。
 俺は一度瞼を閉じ、殺気を含んだ眼をリンディ提督に向ける。

「妙な行動はするな。
 敵対するというのならば容赦なく反撃に出る。
 俺は引き金を引く事を躊躇わない」
「っ! わかりました」

 リンディ提督が通信を切ったのを確認し殺気を納める。
 そして、仮面とフードを脱いでなのはに歩み寄る。

「士郎君、いいの?
 仮面取っちゃって」
「ああ。どうせ明日話す時に顔を合わせるしな。
 それよりすまない。
 なのはとユーノも話しあいに参加する様な形になってしまって」
「ううん。全然。
 私も色々聞きたい事もあるし」

 なのははそう言ってくれるが、正直心配だ。
 最悪、俺と時空管理局の戦いがおこり、なのはが俺側として狙われる可能性があるのだから。
 だがもしそうなったら命に代えても守って見せる。

「ユーノ、あのクロノというやつは知っているか?」

 俺の言葉にユーノが頷く。

「うん。結構有名な執務官だよ」
「そうか。
 悪いが俺には管理局について知識が一切ない。それを教えてほしい」
「わかった」

 そしてユーノから時空管理局の説明を簡単に受ける。
 ユーノによると管理局は監視している世界の魔法的な事件の解決。
 そのほかロストロギアの回収、解析などか。
 クロノのような子供がいるというのは根本的にミッドチルダがこの世界より働き始める年齢が早いということが関係しているらしい。
 この点は今の世界とかなり違う。
 ほかにもレアスキルと呼ばれるものがあるらしい。
 もし俺の魔術がばれたらレアスキルに認定される可能性もあるわけか。

「ユーノ、もしもの話だが、レアスキルに認定された場合生きたままホルマリン漬けにされることはあるか?」
「あるわけないよ!! 管理局をなんだと思ってんのさ」

 なんだろう。
 こう改めて真実を聞くと元いた俺の世界の魔術師がどれだけ人でなし行為をしていたのか改めて認識させられる。
 この事は今は気にしないでおこう。

「とりあえず明日は管理局と話をするから、学校が終わったら各自一旦着替えて公園で待ち合わせにしよう」

 さすがに小学校の制服のままじゃ締まらない。

「はーい。じゃあまた明日ね」
「わかった」

 手を振ってなのはとユーノと別れた。
 さて、新たな勢力が現れたがこれからどう流れていくか。
 空に浮かぶ透明なナニカを一瞥し、家に向かって歩き始めた。




side リンディ

 正直頭が痛い。
 今もデバイスを持っていた少女、高町なのはさんは監視している。
 そして、赤い外套の少年、衛宮士郎君の事も勿論監視はしている。
 私達が監視していることがわかったのかあっさりと仮面とフードを取ったので顔はわかったし、サーチャーで二人をつけ、家が判明したので住所からエイミィに調べてもらって名前も判明している。

 高町なのはさんはいい。
 傍にいた士郎君に使い魔と呼ばれた子もなのはさんと共に行動しているので問題はない。

 だが衛宮士郎君は問題だ。
 今住んでいる洋館の持ち主や保護者には『藤村雷画』という方がなっている。
 なっているのだけどいくら調べても肝心の『藤村雷画』という人物の情報は一切出てこない。
 それに士郎君の戸籍自体が偽造したようで最近以前の経歴が出てこない。
 まるであの年齢でいきなり生まれてきたような記録である。
 それになにより最後の言葉

「妙な行動はするな。
 敵対するというのならば容赦なく反撃に出る。
 俺は引き金を引く事を躊躇わない」

 殺気の込められた視線。
 間違いなく彼は私たちを敵とみなせば武器を取るだろう。
 さらに彼の武器は質量兵器。
 しかも厄介な事にその質量兵器は魔力弾を撃ち抜き霧散させるという質量兵器でありながら魔力が込められているような異質なモノ。

 いくら魔導師がバリアジャケットを纏っているとはいえあの銃弾が防げるのかわからないし、だらりと下げた状態から一瞬で照準を合わせる非常識さ。
 いくらクロノが執務官といっても危険すぎるし、戦うことは避けたい。

「何にしても情報が少なすぎるわね」

 士郎君の武器にしろ何にしろ情報が少なく、実力もあの銃の仕組みもわからない。
 正体がわからない相手ほど怖い相手はいない。
 そんな事を思いつつ明日の話し合いの事に頭を悩ませていた。 
 

 
後書き
By 没ネタ
 クロノと言葉を交しながらレイジングブルの撃鉄を起こす。

「侵入者、一応聞いておく。
 武器を捨て投降する意思はあるか?」
「あるはずないだろう! それよりお前が武器を捨てて投降しろ!」
「そうか、ならば俺に殺される覚悟もできているな」

 瞬間、クロノに銃口を向け、一秒に満たない時間で照準を合わせる。
 それとほぼ同時にクロノが動く。

 やはり先ほどの反応から魔法を撃ち抜くこの拳銃の事は警戒しているのだろう。

 直線に飛んでくる弾丸を避けながら戦うのであれば、正面から距離を詰めるのも、後ろに下がり距離をあけるのも間違いだ。
 死徒やサーヴァントクラスになれば銃弾をギリギリに避けながらそれも可能だろうが、クロノの先ほどの対応から見てそれはない。
 つまりクロノが動くのは左右のどちらかまたは空だ。

 クロノが動く方向は方向は左。

 だが思いどおり動かせたりはしない。
 左足の傍を撃ち抜く。

「くっ!」

 反射的にクロノが右に逃れる。
 それと同時にクロノ頭の上に向かってさらに一発撃ち、空に飛ばせないように牽制する。
 その時クロノは頭の上を狙った銃弾から逃れようとさらに体勢が崩れ、視線が俺から外れる。

 瞬間、クロノの真正面に踏み込む。
 クロノが俺に気がつき、杖で打ち払おうとするが遅い。
 クロノの杖をレイジングブルで逸らし、銃口をクロノに合わせる。
 銃口とクロノの顔の距離は十センチとあいていない。

「最終警告だ。侵入者」

 その時

「待ってください」

 俺の傍にモニターが現れた。

 という没ネタでした。
 さすがにやり過ぎで協力関係が築けそうではないので没にしました。 
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