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戦国異伝

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第八十六話 竹中の献策その十一


「丁度よい頃合いじゃ」
「ではここで、ですか」
「撃たれますか」
「そうじゃ。皆鉄砲を構えよ」
 まさにそうしろとだ。堀は己が率いる者達に対して告げた。
「そのうえでじゃ。わしの合図を待て」
「はい、そのうえで」
「敵を撃ちますか」
「一撃でもよい。ふんだんに撃て」
 一斉射撃、それを出せというのだ。
「三好の軍勢に向けてじゃ。思いきり撃て」
「では今から」
「撃ちましょうぞ」 
 三好の軍勢を見ながらだ。鉄砲を持っている足軽達がそれぞれ弾を込める。そうしてだった。
 彼等は銃を構え片膝をついてそのうえでだ。狙いを定め。それからだった。
 堀は采配を振り下ろした。それと共にこう叫んだ。
「撃て!」
 この言葉と共にだ。鉄砲が一斉に放たれ雷の如き音が鳴り響いた。その音を聞いてだ。
 三好の者達は動転した。只でさえ蒲生の攻勢を受けていてそれからだった。
「こ、今度は鉄砲か!?」
「鉄砲か来たぞ!」
「いかん!撃たれた!」
「どうするのじゃ!」
 こうしてだった。三好の者達はだ。
 実際には鉄砲に当たった者達はいなかった。だがそれでもだった。
 彼等はさらに動転した。そして言うのだった。
「織田の軍勢は鉄砲が多いらしいぞ」
「千丁は持っているらしいぞ」
「何っ、千丁じゃと!?」
「千丁も持っておるのか」
 戦をしながらだ。彼等はその混乱の中で話していく。
「千丁もの鉄砲で狙われては敵わんぞ」
「我等には鉄砲なぞ殆どないのだぞ」
「それで狙われてはどうにもならん」
「何もできんぞ」
 こう言ってだ。彼等はだ。
 先程以上に浮き足立つ。だがそれでもだ。
 面頬の男は馬上からだ。その兵達に刀を向けて告げた。
「言ったな、退く者は斬る!」
「し、しかし!」
「これでは!」
「死にたくなければ戦え!」
 まだ言う男だった。声は地獄の鬼のそれの様だった。 
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