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八条学園怪異譚

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第五話 水産科の幽霊その四


「凄く怖いわよね」
「ギャップのせいかしら」
「ギャップ?」
「そう。そのせいかしら」
 聖花は首を少し捻って愛実に言った。
「ほら、お昼の学校って人が一杯いるじゃない」
「ええ、放課後もね」
 部活があるせいだ。
「賑やかよね」
「けれど夜はね」
「一気にいなくなるわよね」
「人がいる筈の場所に急に人がいなくなるとね」
「かえって怖くなるのね」
「そうじゃないかしら。しかもね」
 それに加えてだというのだ。夜の学校は。
「造り的にね」
「怖くなるの?」
「物陰とか多いし」
 それもあるというのだ。
「階段のところとか扉の向こうとか」
「そういえば多いわね」
「机の下もそうよね」
「言われてみれば」
 愛実も聖花の話を聞いて納得した。言われてみれば確かに学校の校舎は物陰が多い。それの宝庫と言ってもいい。
 二人が今いる廊下もよく見ればだった。
「結構隠れる場所あるわよね」
「そうでしょ。消火器の裏とかね」
「小さい生き物だったら隠れるわね」
「鼠とかね」
 聖花はこの動物を挙げたが愛実はこう言った。
「小さなお化けとかだと」
「お化けね」
「そう。普通に隠れることができるわね」
「言われてみればそうね」
「だから夜の学校って怖いのね」
 愛実は納得した顔になっていた。
「そういうことなのね」
「納得してるの?」
「実は」
 聖花にもこう返すことができた。
「わかってきたら。夜の学校が怖い理由がね」
「それがなの」
「ええ、わかってきたわ」
「怖い理由がわかれば克服とかできるかな」
「どうかしら。それとこれとは別じゃないかしら」
 愛実は少し苦笑いになって聖花に答えた。
「またね」
「別かしら」
「そうじゃないかしら」
 こう聖花に返す。
「またね」
「勇気とは恐怖を知ることだっていうけれど」
「ああ、あの漫画ね」 
 どの漫画か。愛実も聖花もよくわかっていた。
「最初の頃に出てた台詞よね」
「実際にそうじゃないかしら」
「だからなのね」
「そう、怖いって自分が思ってることに気付けば」
 それならばだとだ。聖花は愛実に話していく。
「違うと思うけれど」
「自分が怖いって感じてることをわかること」
「愛実ちゃん今怖いわよね」
「ええ」
 それはその通りだというのだ。
「とてもね」
「私も。やっぱりね」
「怖いのね」
「そう。凄く怖いの」
 見れば聖花もだった。暗さに慣れた目で見てみるとその顔は蒼白になっている。j表情は怯えのあるものだった。
「震えそうな位」
「そうよね。本当に幽霊がいるかもって思うと」
「お守りにお経はあってもね」
「それに十字架も持ってるけれど」
 そうしたものを揃えて持っていてもだというのだ。
「怖いことは怖いわよね」
「うん。どうしてもね」
「本当に首をばっさりってなったらどうしようかしら」
 愛実は今もそうなるのではと怯えていた。 
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