境界線上の転生者達
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第四話
その日の授業が終わり放課後。部活やアルバイト等の用事がある者を除く俺達梅組のメンバーは今、校門前にある橋に集まっていた。何故俺達がこんなところに集まっているのかというと、明日のトーリの告白を成功させるための作戦会議をするためだ。
「はい、それではこれから臨時生徒会兼総長連合会議を行います。本日の議題は“葵君の告白を成功させるゾ会議”ということで」
今この場を取り仕切っているのは生徒会書記のトゥーサン・ネシンバラだ。
ネシンバラは今空中に出現せている鍵盤、パソコンのキーボードみたいなものを叩いて、この場の会話を記録しながら会議を進行していた。本当だったら書記補佐である俺も彼の横に立って記録の補佐をしなければならないのだが、「これは臨時だし、それほど重要な会議でもないから」ということでキャスターと一緒に橋の段差に座って話を聞いていた。
「それじゃあ葵君、何か意見があるんだったら言ってくれない? 僕、早く家に帰って原稿書きたいから、こんな無意味な会議早く終わらせたいんだ」
「こ、この作家! オメエ、俺の告白とオメエの原稿、どっちが大切なんだよ?」
「原稿に決まっているじゃないか。というか締め切りが近づいてきていて地味にピンチなんだよ、僕。青野君もそうだろ?」
ネシンバラはトーリの言葉に即答するとこちらに話をふってきた。俺とネシンバラは頭に「同人」がつくが小説を書いて出版している作家仲間なのだ。
「いや、俺はちょうど昨日、新作の原稿があがったよ」
「………!」
俺の言葉にこの場にいた全員が息を呑む。そんな彼らを代表してトーリが口を開いた。
「おいおい北斗! それってあれか? 「運命の夜」の最新作か? もう書けたのかよ?」
トーリが今言った「運命の夜」とは俺が書いている小説のタイトルだ。その内容は各国の代表である術者が過去の英雄を呼び出して、所有者のどんな願いも叶えるという聖杯を巡って世界各国を巻き込んだサバイバルバトルを繰り広げるという内容である。
まあ、ぶっちゃけていうと前世でムーンセルに教えてもらった「冬木の聖杯戦争」の出来事を俺なりのアレンジを加えて書いただけなんだけどね。でもそれが人気を呼び、今では武蔵だけでなく各国でも人気の作品になっているんだから嬉しい誤算である。
「Jud.そうだよ」
俺が答えるとトーリがただでさえ高いテンションを更に上げて顔を近づけてくる。
「マジかよ? 前のって確か主人公がK.P.A.Italiaが呼び出したヘラクレスに襲われて大ピンチってところで終わったんだよな? 読ませてくれよ」
「Jud.今日持ってくるよ」
なにせ今日はキャスターがエロゲを燃やしてしまったからな。それぐらいはしてもいいだろう。
「ちょっと待て」
「ん? どうした、シロジロ?」
「その新作、この馬鹿に渡す前に私に渡せ。そしたら新作の前半をオークションにかけて高値で売ってやる。取り分は半々で構わないな?」
「ちょぉおおっとまったぁ! そこの強欲商人、何勝手に話を進めているんですか? 取り分が半々? ふざけないでください。取り分は私が七、あなたが三に決まっているじゃないですか?」
俺とシロジロの会話に突然キャスターが乱入したかと思うと、そのまま俺を置いてきぼりにして取り分を決める交渉に突入していった。どうやら俺の新作の一部をオークションにかけるのは決定事項らしい。
「あの……いいんですか? キャスターさん、あなたの原稿を売ったお金、そのまま自分のものにするつもりですよ? あの会話から察するに」
キャスターとシロジロの交渉をのんびりと眺めていると、智が心配そうな顔で小声で話しかけてきた。うん、俺もそう思う。だけど……。
「Jud.別に構わないよ? キャスターの全てが俺のものであると同時に、俺の全てもキャスターのものだからね。これは生まれた時から決まっていることだし」
この世界に転生する前、月の聖杯戦争の時から俺とキャスターはお互いに協力しあい、支えあっていくことを約束していた。だから今の台詞もごく普通に口から出たのだが、それを聞いた智を初めとする女性陣が顔を赤くしたり、驚いた表情となって俺を見てきた。
「う、うっわ! 甘っ! 激甘っ! 今この人、恥ずかしがる様子を微塵も見せず、ごく自然に大胆発言をしましたよ!?」
智が女性陣を代表するかのように叫ぶ。そんなに変なことを言ったか、俺?
「ふふん。聞きましたか? 今のマスターの『キャスターは俺の嫁&俺はキャスターの婿』発言! マスターと私は前世からの固い絆で繋がっているんですよ! 羨ましいですか? 羨ましいでしょう! ふははははぁ!」
俺の台詞にトーリ以上ハイテンションとなったキャスターが高笑いをあげる。
「……ん?」
何だ? 今、隣のクラスの三要先生らしい人が泣きながら逃げるように走っていくのが見えたんだが……気のせいか?
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