ドリトル先生の長崎での出会い
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第九幕その五
「カステラも食べるのは一切れとかだったんだ」
「少ないね」
「当時は高級品でも」
「それはまた」
「そうだよ、兎角質素な方で」
そうであられてというのです。
「おやつがあっても少しで他のこともね」
「質素だったんだ」
「明治帝は」
「今の皇室もそうだけれど」
「昭和帝だってね」
「着られる服は軍服だけで」
先生はさらにお話しました。
「裏が破れても縫って」
「それで着られたんだ」
「着替えるんじゃなくて」
「捨てないで」
「縫えばまだ着られるから」
それでというのです。
「暖房も火鉢一つで」
「どんなに寒くても」
「それだけだったんだ」
「真冬でも」
「そうであられて」
そしてというのです。
「皇居もね」
「そうそう、質素だよね」
「観たらね」
「ベルサイユ宮殿みたいなのじゃなくて」
「とてもね」
「そうした方であられて」
明治帝はというのです。
「カステラもね」
「一切れだね」
「召し上がられても」
「そうだったんだね」
「そのことをね」
まさにというのでした。
「覚えておかないとね」
「駄目だね」
「そうだね」
「立派な方だったね」
「あの方は」
「そうだよ、その辺りの独裁者とは違うよ」
全くというのです。
「皇室自体がね」
「日本の皇室を批判する人はいても」
「それが真実だね」
「皇室は質素であられて」
「色々節制しておられるね」
「そうなんだ、僕には無理だよ」
先生は笑って言いました。
「あそこまでの節制はね」
「カステラ一切れだけなんて」
「おやつの時にね」
「こうしてティーセットでもないだろうし」
「それならね」
「そう、ティーセットがないなんて」
それこそというのです。
「僕には無理だよ」
「先生にとって絶対だからね」
「ティータイムは」
「三時にお茶を飲むことは」
「ティーセットと一緒にね」
「もっと言えば十時にね」
この時間にもというのです。
「軽くね」
「そうそう、お茶を飲む」
「その時講義でならその前か後にね」
「紅茶を飲む」
「お菓子も軽くつまんで」
「そうすることがね」
ティータイムがというのです。
「僕の日課でね」
「楽しみだね」
「そのうちの一つだよね」
「先生にとっては」
「昔は煙草もだったね」
笑顔でこうも言いました。
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