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ソードアート・オンライン~黒の剣士と紅き死神~

作者:ULLR
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フェアリー・ダンス編
世界樹攻略編
  On the day before the battle

 
前書き
フェアリー・ダンスも後、1,2話ぐらいかな? 

 




Sideセラ


「やっと……」

「着いたわね……」

「ああ。……ようやくな」


古代遺跡めいた石造りの建築物が縦横どこまでも続いている。《央都アルン》ここが世界の中心だ。


「色々ありすぎて疲れたわ……」

「同感。でもおかげで世界樹攻略にシルフとケットシーが協力してくれることになったし、トンキーにも出会えたし。良かったじゃない」


それにしても大きな街だ。そのさらに中央にそびえ立つ大きな樹――世界樹。

キリトはそれをじっと見つめている。

シルフとケットシーの同盟会談を強襲したサラマンダーの大部隊は大将のユージーン将軍をキリトが破ったため、撤退した。

そこまでなら良かったのだが、アルン高原に生息する巨大ミミズ的なモンスターにパクリとされ、放り出されたのはアルヴヘイム最大の地下ダンジョン、《ヨツンヘイム》だった。そこで出会ったクラゲ型邪神、《トンキー》と紆余曲折を経て友達になり、進化して飛べるようになったトンキーにアルンへ続く秘密の地下階段まで運んでもらい、今に至る。

その時、アナウンスで定期メンテナンスのためにサーバーが一次、閉鎖されるというアナウンスが入った。


「今日はここまでね」


座り込んでいた地面から立ち上がり、ぐぐぐっと伸びてから言う。キリトも頷いてから訊いてきた。


「メンテってんのは、何時まで?」

「今日の午後3時までだよ」

「そうか……」


ユイの見つけた激安宿屋に2部屋取る余裕もなくチェックインし、その日の冒険は終了した。













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Sideレイ



2匹の狼はほぼ同時に消滅して辺りに静けさが漂う。


「ふぅ……」


大太刀を背中にしまい、セイン達に向かって歩き出す。


「皆、大丈夫か?」

「うん、大丈夫。……レイ、あの人達は……?」

「今から話す。ヴィレッタとハンニャにも聞いてもらおう」


上空から降りてきた2人を労うと、草原を移動しながらセイン達にオラトリオの面々を紹介する。
次に、セイン達のことも紹介した。


「それはそれは……相変わらずやること成すことがでかいなお前。ALO最強のプレイヤーを仲間にしてアレを攻略しようだなんて……」

「お前達こそ何時からALOやってんだ?しかも全員違う種族って……」

「簡単さ。アードの連絡先はユウリが知ってるし、リオはあの眼鏡の役人から聞き出した」


脅しに弱いんだろうか、あの眼鏡は……。


「まったく……驚いたよ。ある日突然コイツが玄関先に現れて『俺にもう一度力を貸してくれ!!』って頭を下げに来たときは」

「うるせえな。ていうかお前、パッケージ既に購入済み、ってそっちの方が驚いたわ」

「……商店街のクジで当たってな……」


まるであの頃に戻ったような賑やかさだ。最初はぎこちなく接していたヴィレッタも今はつっかえながら話している。アルセは妙にホルンと気が合ったみたいで何やら盛り上がっている。

後は……


「どうした、セイン」

「え?いや……ガゼル――いや、秀も生きていたら、と思ってね……ごめん」

「いいさ。……大切な人を失う気持ちは俺も、よく解る」

「SAOでのこと……?」

「いや……」


皆がぞろぞろと歩く最後尾で、俺は彼に、他人に始めてそのことを話した。

「俺は……助けたい人が2人、いたんだ。……その為に、何でもした。手を、人の血で染めるようなこと、直接的にも間接的にもやった。それは、決して赦されることではない。……SAO事件が終わって、こっちに帰ってくると、その内の1人が死んで、もう1人もそんなに長くない……」


一度、話を切って心を静める。

彼はただ静かに話を聞いていた。


「もちろん、SAOでも親しい人を亡くしたこともある。それは悲しかった。……だけど、その子とは違うんだ。俺にとっては。大事な、人なんだ……」


セインは聞き終わると俯き、何かを考えているようだ。やがて、顔をあげると、静かに言った。


「1つ、確認させて」

「……ああ」

「僕の予想では君はSAOがデスゲームになるのを知っていて入った……そう感じた」

「合ってる。俺は茅場晶彦と知り合いで、やつの企みの中で犠牲者を1人でも無くすためにあの世界へ行った」

「……そう。……わかった。レイ、僕は君に最後まで着いていく。レイの大事な人を助けるのにも協力させて。力になるから」


その目はただただ真っ直ぐで力強いものだった。


「ああ。頼りにしてる」


それにセインはニッコリと笑うと自分から輪に入っていく。

総勢9人のプレイヤー達はまるで旧来の知り合いのように溶け込んでいた。

それを繋げたのが自分だと思うと、何だかこそばゆい気持ちになる。

俺はふと止まり、背後の空を見上げると、見ているだろう男を殺気を込めて睨んだ。










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Sideアスナ



ゾクッとするような鋭い視線を投げるレイの映るスクリーンを忌々しいと言うように唸って消すと何も言わずに出口に向かう。

乱暴に開けられた扉の向こうに須郷が消えると、ベットの上で長く息を吐く。

キリト、レイに加え、カイト達まで来てくれた。




(……私も)




須郷の隙を見て盗み見たこの部屋の鍵の解錠コード。それを使って脱出し、システムコンソールにアクセスしてこの世界からも脱出する。

もう少し……もう少ししたらそれを試みよう……。










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Side螢




「さて、洗いざらい吐いてもらうぞ」

「待てよレイ。俺ら別に悪いことした訳じゃないぞ!?」

「何で縛られてんだ!!」


午前10時、御徒町のエギルの店では『《オラトリオ・オーケストラ》リアルdeミーティング』(命名・ホルン/瀬田夏希)が行われていた。


「せ、先輩!助けてください!ていうか何で嬉々として縛ってるんですか!?」

「縛られてる海斗君……」


顔を赤らめてる危険人物が居るんだが……。


「……なあ、レイ」

「何だ、リオ?」

「俺は何故縛られてるんだ?」

「……ノリだ」

「おおい!?」


冗談はさておき、


「なるほど、海斗(カイト)(ユウリ)夏希(ホルン)はリアルで知り合い。狼李(アード)は凜と連絡先を交換してて、レオン(リオ)は海斗が探し出したと」

「……そう言ってるだろ」


ムスッ、としながら海斗がジンジャーエールを飲む。

そして、狼李に目を向けながら言う。


「それにしても、アードは日本人かと思ってたよ」

「……おじいちゃんが日本人なんだ」


などと雑談が一段落したころに本題を切り出す。


「よし、もう大体事情は解ってるとは思うが、SAO未帰還者約300人。その中にアスナも居るわけだが、彼女だけはちょいと事情が違うようだ。……コイツ」


用意していた写真を出すとテーブルの上に置く。


「須郷伸之。コイツが未帰還者を捕えている犯人だ。……海斗、知ってるか?」

「……会ったことはないけど、浩一郎兄さんが嫌がってたのは知ってる」

「ふむ……」


もう面倒くさいから捕まえに行ってしまおうか……。

などと考えに浸っていると、レオンが声をあげた。


「レ……じゃなくて螢、1つ聞きたいのだが、いいか?」

「ああ。答えられることなら」

「こ難しいことはどうでもいい。お前はコイツが犯人だという確かな情報を持っていて、裏を取ろうとしている……それで合ってるか?」

「ああ」

「じゃあ、俺達は協力する。1年以上一緒に戦ってきたんだ。お前が何を隠していようと、正しいことなら俺達は協力するだけだ」

「そうね。議論するまでもないわ。共に戦ったプレイヤー達がまだ囚われている。それだけで私達が動くには十分よ」


俺は思わず笑いを洩らした。本当に……。


「お人好し共め。分かったよ。お前達の力、もう一度貸してくれ」


黙って聞いていた店主は激励のつもりか、一品料理をサービスしてくれるのであった。







________________________________________









午後1時。

ALOのメンテナンス終了まで残りわずかだ。

恐らく、決戦は今日になるだろう。自室の端末からフォークスのメインサーバーにアクセスし、更にランダムに選出したコンピューターを踏み台に、ALOのサーバーへ侵入する。

余談だが、もちろんハッキングは重罪だ。それは各方面に顔が効く彼とて決して軽くなるような罪ではない。

だが、法の外の存在である『ホークス』を経由すればその限りではない。

ALOサーバーは現在、メンテナンス中であるため、侵入すればすぐに分かってしまう。だが、何もデータを盗んだり改竄したりしたい訳ではない。



――『ウイルス・モデルワーム――データをロード――ディフェンスプログラムを対象にリライト――』



全プレイヤーのデータに対して外部からの干渉を一時的に凍結する。



――『制限時間を設定――自律崩壊プログラムを起動――制限時間は残り15時間です』



運営には苦情が殺到するだろうが、仕方がない。万が一、やつがGM権限で俺達のアカウントを消去しないための措置だ。
撹乱するためにそれを全プレイヤーに施すのも今回だけ赦して貰おう。

サーバーから撤退し、ふと思い付いてホークスのメインサーバーから第三部隊のサーバーにアクセスし、あるものを取り出しておく。

それらが終わると、部屋から出て昼間でもあまり明るくない廊下を歩く。昔は爺さんが取り付けた罠が満載(曰く、修行)の恐怖の廊下だったのだが、建築法的にアウトなラインまでいってしまったので、現在は何のへんてつもないただの廊下である。

だが、幼い頃からの習慣でこの家の廊下を歩く時は無意識に足元を気にしてしまう。だから、それは偶然に近かった。薄暗い廊下に客間から洩れる光りと話し声。

その声を認識した途端、俺はその部屋に乗り込んだ。下座――つまり、客の方ーーを殺気を込めて睨む。


「おやおや、怖いね。螢。そんなに睨まないでくれ」


言葉とは裏腹にこっちをにこやかに見る女性。


「……何しに来た。ババァ」

「失礼な子だな。勿論、自分の子供達に会いに来たに決まってるじゃないか」


よくもまあそんなことが言えたものだ。実の子供である蓮兄までモノ扱いしているこの女に俺も沙良も母親らしいことをされたことがない。

今だにこちらを楽しそうに見つめる水城雪螺から目を逸らし、上座で俺以上の殺気を放つ冬馬を見やる。
すると、座れと顎をしゃくるので、2人の中間辺りに腰を下ろした。


「歓迎されていないのは解ってる。……でも、螢。今日はあなたに良いお知らせがあって来たんだよ」

「……何だ?」


雪螺はクスッ、と笑うと横に置いてあった書類ケースから紙の束、そして1枚のCDを取り出し、それらを重ねて手渡してきた。

その書類の冒頭に書かれていた文字を見た瞬間、俺は目を見開き、驚きを隠せないまま雪螺を見た。


「……あんた、どうしたんだ、これ……」

「何を驚いているのかな?私を誰だと思ってる」



――『神医』。その言葉の意味を俺が本当の意味で理解したのはこの瞬間だった。


「とはいえ、あなたがその媒体に記録されているものを解析し、更に臨床試験もクリア出来れば、の話だが……どうだ?やるか?」

「……解せないな」


書類とCDを脇にどけ、俺は再び雪螺を見た。さっきまでとは違う、疑いの目で。


「確かにこれは俺の望んでいたものだ。だが、あんたが俺に協力する意味が解らない。……何を企んでいる?」

「仲直りしたいから、って言ったら信じるかな?」

「無理だな」


この女と水城家の溝は俺だけのものではない。

故に、俺がこいつと和解したところで何の解決になるわけではない。


「勿論、蓮や沙良には私から話すよ。お義父さんはもう承諾されたしね」

「はっ?」


驚きのあまり、無言の当主を勢いよく振り返る。その表情からは何も読み取れなかったが、何か考えがあってのことだろうと納得する。


「……これだけは聞いておきたい。目的は何だ?」

「なに、簡単なことさ」


雪螺は芝居掛かった仕草で手をひらひらさせると、『簡単なこと』を明かした。


「山東家に狙われてる。助けてくれ」






 
 

 
後書き
お知らせ!

ALO編の後はショートストーリー集をやります。
『GGO編までの一年間のレイ達の日常、時々バトル。』です。
学校生活や菊岡の依頼をキリト&レイを中心に投稿していこうと思います。

べ、別にGGOで使う銃の下調べに手間取ってたりはしてないからね!?(嘘) 
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