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英雄伝説~黎の陽だまりと終焉を超えし英雄達~

作者:sorano
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第50話

少し前――――



ヴァン達がアルジュメイラホテルに起こった異変に気付いた少し前、ホテルの最上階の受賞式の会場でゴッチ監督達はパレードの異変をモニターで見ていた。



~アルジュメイラホテル・最上階~



「こ、この騒ぎは…………」

「ワ、ワシのフォクシーパレードがぁっ!!?」

「……………………」

「―――――予想していた”最悪”になりつつあるようだね。ナージェ、”ハルワタート号”に連絡を。地上の支援に向かわせたまえ。それとシーリーン要塞のメンフィル帝国軍にも連絡を。正直”軍による鎮圧”は避けたかったが…………このサルバッドに潜んでいる”A"の脅威がなくなっていない状況で映画祭を行い、”Aが関わっていると思われる異変”が起これば即座にメンフィル帝国軍に連絡するというマーシルン総督との約定でもあるからね。」

モニターに映るパレードの異変を目にしたニナは不安そうな表情を浮かべ、ゴッチ監督は嘆き、ジュディスは厳しい表情でモニターを睨み、重々しい様子を纏って呟いたシェリド公太子はナージェに指示をし

「は!かしこまり――――」

「うふふ、無駄じゃないかな?さすがに要塞に仕込むような余裕は無かったけど、君たちの飛行船の方には仕込んでおいたし♪」

シェリド公太子の指示にナージェが答えかけたその時青年の声が聞こえ、声を聞いたその場にいる全員が視線を向けるとコートの男と共にメルキオルがいた。



「くっ…………!」

「君たちがアルマータ――――――ギャスパー社長に導力シーシャによる薬物汚染を指示していた黒幕か。…………なるほど。皆を暴走させたのはその”装置”かい?」

メルキオルとコートの男の登場に唇を噛み締めたナージェはシェリド公太子の前に出て武装を構え、シェリド公太子はコートの男が持つ黄金の光を放ち続けているゲネシスに視線を向けた後メルキオルとコートの男に問いかけた。

「フフ、ご明察。クレイユや煌都の件も知ってるのかな?それじゃあ一緒に盛り上げようか♪同じ後援者(スポンサー)同士として存分にね!」

「ああ――――――”これで役者は揃った。””幕引き”まで付き合ってもらうぞ、シェリド・アルヴァール公太子。」

メルキオルの言葉に頷いたコートの男は不敵な笑みを浮かべた。一方その頃、ホテルの近くで滞空しているアスヴァール公王家専用の飛行船である”ハルワタート号”では乗組員達が黄金の力によって暴走した仲間達を抑えていた。



~ハルワタート号~



「殿下、ナージェ殿…………!――――――駄目です、応答ありません!」

「このままでは…………!オアシス湖に着水させるぞ!」

「シーリーン要塞のメンフィル帝国軍にも救援要請をしろ!」

船内で起こった異変に対して乗組員は主の危機に焦りつつも、冷静に対処を始めた。



~サルバッド~



「ま、まさかこんなことが…………」

サァラは信じられない表情で結界に包まれたホテルを見つめ

「…………”元凶”はこの中だな。多分、アルマータのサルバッドに持ち込まれてこの事態を引き起こしているんだろう。」

「はい…………間違いありません。あの地下水路で見た”4つ目”が。」

ヴァンの推測にアニエスは頷いた。

「―――――そしてどうやら無差別というわけでもなさそうです。おそらく操られている方々は何らかの”因子”があるのでしょう。」

リゼットは争っている観光客達を見つめながら推測した。

「あの観光客達と同じ…………!」

「じゃあ、こいつも導力シーシャの仕業ってワケか…………!」

リゼットに続くように黄金の瞳になり、全身からも黄金の力を発している観光客達を見つめてマリエルとシャヒーナを誘拐した観光客達の様子を思い返したフェリとアーロンはそれぞれ真剣な表情で呟いた。



「ま、待ってください!それじゃあシャヒーナは…………!?」

ヴァン達の話を聞いていたサァラは導力シーシャを接種していないにも関わらず暴走状態になっているシャヒーナについての疑問を口にし

「―――――妹さんの方は間違いなくあの”仮面”だろうね。”元凶”による干渉を踊りで増幅してみんなを狂乱に巻き込んでるんだと思う。多分、どこかのタイミングで”黒幕”に渡されたんじゃないかな?」

「ううん…………シャヒーナさんの今までの事を考えたら、多分昨夜の着替えを取りに行ったタイミングだろうね。やっぱり私かフィーちゃんが付き添えばよかったよね…………」

そこに駆け付けたフィーと共に説明をしたアネラスは悔しそうな表情を浮かべ

「そんな…………」

二人の話を聞いたサァラは不安そうな表情を浮かべた。



「いずれにしてもこの状況――――――”一年半前”と似すぎていますね。」

「ああ――――――”あの事件”を何らかの方法で無理矢理再現したのかもしれねぇ。」

「あの事件…………(ひょっとして。)」

「何かご存じなんですかっ?」

「ハッ、チョウから聞いた…………『ヘイムダル決起』とやらで”舞姫”が操られたっつーアレか。」

リゼットとヴァンの会話を聞いて心当たりがあるアニエスは真剣な表情を浮かべ、フェリは二人に訊ね、心当たりがあるアーロンは推測を口にした。

「クラウゼル――――――確かその時お前さんも現地にいたはずだな?何か打開できそうなヒントはねぇか?」

「あ、あの事件をそこまで把握していたなんて…………」

「…………ふう、本当にとんでもない情報通だね。あの時は本当に色々な人が力を合わせて乗り越えたけど…………”舞姫”については――――――やっぱりもう一人の”舞姫”が決め手かな。闇に落ちた不死鳥を引っ張り上げて再び一緒に空へと舞い上がった。」

ヴァンのフィーへの問いかけを聞いたアネラスが驚いている中、フィーは溜息を吐いて苦笑をした後答え、フィーの答えを聞いたヴァン達はサァラへと視線を向けた。

「だ、そうだが――――――どうする、”お姉ちゃん”。」

「―――――やらせてください!シャヒーナを取り戻せる可能性が少しでもあるなら…………!」

ヴァンの確認に対してサァラは決意の表情で答えた。



一方その頃、警官達や刑事達は暴徒達の鎮圧に苦戦していた。

「クソッ…………!………このままじゃあ…………!」

状況の悪さにダスワニ警部が焦りを感じたその時フィーとアネラス、サァラがダスワニ警部の横を駆け抜けてシャヒーナ達が踊りつつけているパレード車の上に乗った。

「ぐっ…………」

「ううん…………」

背後から聞こえてきた呻き声に気づいたシャヒーナが振り向くとそれぞれ周囲の暴徒達を制圧したフィーとアネラスが見守っている中、踊り子の服装を身にまとったサァラがシャヒーナと対峙していた。

「あはは、お姉だぁ…………特等席で観てくれるんだねぇ…………?」

「っ…………シャヒーナ…………ごめんなさい、私が不甲斐ないばっかりに。」

仮面によって操られている様子のシャヒーナに唇を噛み締めたサァラは辛そうな表情を浮かべて謝罪した。



「…………なんのこと…………?見てよお姉、あたし、もっと輝ける…………!…………黄金の太陽にだってなれる…………!もう二度とお姉を苦労させない…………!最後まで踊り切ってみせるからね…………!」

「…………っ…………」

自分への気遣いの為に操られてしまったシャヒーナの様子に唇を?み締めたサァラが背後へと振り向くとフィーとアネラスはそれぞれ頷いた。





――――――サァラ様、こちらの予備のザイファをお使いください。



ホロウに指示した霊子妨害(ジャミング)が多少、助けになるかもしれません…………!



きっと届くはずです…………サァラさんの踊りならシャヒーナさんに!



俺達は”元凶”を叩く――――――妖精達共々バックアップは頼んだぞ!





「―――――貴女の今の踊りは、私達が受け継いで大切にしてきたものじゃないわ。」

シャヒーナの元に来る前のヴァン達の言葉を思い返したサァラはザイファを起動させて、自身の周囲に霊子妨害を展開した。」

「思い出させてみせる――――――貴女のたった一人のお姉ちゃんとして!」

「…………キャハハ、いいよ!だったらあたしはお姉すら呑み込んで…………!もっともっと――――――最高に輝いてみせるっ!!」

そしてサァラはシャヒーナと踊りによる対決を開始した。



~同時刻・アルジュメイラホテル前~



同じ頃ヴァン達は結界に包まれているアルジュメイラホテルの前に到着していた。

「”ゲネシス”を介した同調率、70%を超えました!」

「今です――――――ヴァンさん!」

「おおおおおおっ!!」

リゼットとアニエスの言葉を聞いたヴァンが咆哮を上げながら自身の得物を結界に叩きつけると結界の一部が破壊され、人一人通れるようになった。

「開きました…………!」

「入んぞ!!」

それを見たフェリとアーロンは声を上げてヴァン達と共に結界の中へと突入し、ヴァン達が突入し終えるとすぐに破壊された結界は修復されて元に戻った。

「アブねぇアブねぇ…………ったく、力技にもほどがあんだろ。」

「ま、今更ってな…………」

半分呆れた様子で呟いたアーロンの言葉にヴァンが苦笑したその時、ディンゴ達が結界の外に駆け付けた。



「こ、これって…………!」

「お前たち――――――大丈夫なのか!?」

マリエルは結界に驚き、ディンゴはヴァン達の状態を確認した。

「ああ、これから”元凶”を叩きに行く。お前らはパレードカーの方を!シーリーン要塞のメンフィル帝国軍とサルバッド近郊の各都市のギルドへの連絡もな!」

「!わかった…………!」

「んもう、人使いが荒いんだから!でも任せてちょうだい!」

「あ、頭が混乱しっぱなしですけどちゃんと記録しておきますっ!」

ヴァンの指示にそれぞれ答えたディンゴ達はその場から走り去り

「”元凶”を考えたら戦力を出し惜しむ必要はねぇ。二人共今の内にそれぞれの”切り札”を呼んでおけ!」

「はい!来て――――――メイヴィスレイン!!」

「おうよっ!頼むぜ――――――姉貴、オフクロ!!」

ヴァンの更なる指示にそれぞれ頷いたアニエスとアーロンはそれぞれが契約している天使達を召喚した後ホテルへと突入した。



~アルジュメイラホテル・ロビー~



「むうウン、お客様、ゴ予約はおすミでしょうか…………?」

「ハアあっ、お済でなけれバお引き取りお願いマショう…………!」

ヴァン達がロビーに突入すると黄金の力によって操られているホテルマンたちがそれぞれの武装である銃や警棒を構えてヴァン達を阻んだ。

「…………よりにもよってこのガチムチどもかよ…………!」

「仕方ねぇ、無力化するぞ!」

そしてヴァン達はホテルマン達との戦闘を開始し、協力してホテルマン達を無力化した。



「…………制圧完了っ。やはり”強化”されています!」

「ええ、昨日の観光客の薬物強化より遥かに強力なブーストのようです。」

「面倒だが落としていくしかねぇ。――――――ゲネシスの反応はどうだ?」

フェリとリゼットの報告を聞いたヴァンはアニエスに確認し

「この反応…………多分、最上階の受賞式会場だと思います。ニナさんにジュディスさん、監督や公太子殿下もそちらに…………」

「ハン、ヤベェ護衛に痴女キャットもいるし心配はいらなさそうだが…………」

光を放ち続けているゲネシスを持つアニエスの話を聞いたアーロンは真剣な表情を浮かべた。

「それともう一つ気になる点があるわ。――――――私達”天使”特有の気配も上層の方から感じられるわ。」

「更にその傍に”悪魔”の気配まで感じますね。」

「”天使”っつったら、確かこの都市で活動しているエースキラーの連中の中にもいたよな?」

「ああ、どうやら連中もこのホテルに”元凶”がいる事を突き止めてホテルの攻略を始めているようだな。できれば、最上階に行く前にエースキラーとの合流・共闘をしたい所ではあるが…………」

マルティーナとメイヴィスレインの話を聞いてすぐにルファディエルの事を思い返したアーロンの問いかけに頷いたヴァンは考え込み

「最上階ではなく、上層から感じられるという点が気になるわよね。」

「ええ、恐らく彼らの方も”元凶は最上階”であることは推測できていると思われますし…………」

「それと”悪魔”の気配まで感じるという話も気になりますね。」

「その”悪魔”だが恐らくバニングスが契約している”使い魔”だろう。確かバニングスは”叡智”の他に”悪魔”とも”使い魔”として契約しているという話を聞いたことがある。それと連中が最上階ではなく、上層にいるという話だが………状況を考えれば最上階直通のエレベーターが使えず、階段と可能な限りの上層へ迎えるエレベーターの兼用で最上階を目指しているからだと思われるが…………ダメ元ではあるがまずはこっちの直通のエレベーターも使えるかどうか調べるぞ。」

ユエファとアニエス、フェリの疑問に答えたヴァンは仲間達を促した。その後直通のエレベーターを調べたがロックされて使えず、セキュリティーも最大ですぐには解除できなかった為5Fまで行けるエレベーターを使って5Fまで上がり、攻略を開始した。攻略の最中ホテルマン達に襲われている受賞者達の一部を助けたヴァン達は受賞者達に安全な場所に立てこもるように指示をし、安全な場所に避難するのを見届けた後攻略を再開した。



~6F~



非常階段を使って更なる上層へと上がったヴァン達がエレベーターや上層への階段を探し始めようとすると聞き覚えのある女性の声が聞こえてきた。

「ちょっ…………アンタたち、放しなさいよ~!?」

「向こうの方からです!」

「この声…………やっぱりか。」

声が聞こえきた場所へと向かうと、なんとグリムキャッツがホテルマン数人がかりで壁に抑えつけられていた。

「むうウン…………!」

「ハアあ…………っ!」

「だ、だからいい加減に――――ってアンタたち…………!?」

「グリムキャッツさん!?」

「…………ワリ、お楽しみだったか?」

「うふふ、私達はお邪魔そうだし、すぐに退散した方がいいかしら?」

「貴方達…………この状況を見て、よくそんな事が言えるわね…………」

(な、なんだかドキドキします。)

自分達の登場にグリムキャッツが驚いている中アニエスも驚きの声を上げ、アーロンは苦笑しながら、ユエファはからかいの表情でグリムキャッツに指摘し、二人のグリムキャッツへの指摘にマルティーナが呆れている中フェリは興味ありげな様子でグリムキャッツ達を見つめた。

「プレイじゃないからっ…………!いいから早く助けなさいっ!」

するとグリムキャッツは声を上げて救援の要請の声を上げた。

「仕方ねえな…………!」

「盗賊の救援等正直本意ではありませんが…………!」

グリムキャッツの要請に対してヴァンとメイヴィスレインはそれぞれ仕方なさげに呟いた後協力してグリムキャッツをホテルマン達から解放した。

「これで貸し一つ――――――いや、おとといの夜も入れて二つか?」

「うるさいわねっ!――――――このまま無力化するわよ!」

そしてグリムキャッツを加えたヴァン達は協力してホテルマン達を無力化した。



「ふう、傷つけないように気絶させるのも難しいわね…………――――――てゆうか、遅いじゃないっ!」

戦闘終了後安堵の溜息を吐いたグリムキャッツはヴァン達を睨んで文句を言った。

「盗賊の分際で助けられていながら何を厚かましい事を…………」

「別にお前さんを助けにきたわけじゃねえんだが…………」

「いや、厳密に言えばコイツも保護対象なんじゃね?」

「あ、確かに…………よくご無事でしたねっ。」

グリムキャッツの文句に対してメイヴィスレインと共に呆れた様子で反論したヴァンにヴァン同様グリムキャッツの正体に気づいているアーロンは苦笑しながら指摘し、アーロンの言葉を聞いたフェリは納得した後笑顔を浮かべてグリムキャッツに声をかけた。

「う、うぐ…………な、なんんことぉ~?」

(…………考えてみればこのノリ、どこかで…………)

(成程…………もしかして。)

アーロンとフェリの言葉を聞いて唸り声を上げて誤魔化している様子のグリムキャッツを見て心当たりがあるアニエスは考え込み、リゼットはグリムキャッツの正体に気づいた様子だった。

「―――――とにかく貸しは貸しだ。まずは情報交換といこうぜ。」

そしてヴァン達はグリムキャッツのと情報交換を行った。



「導力シーシャを吸った人が…………そういうことだったのね。それをあの連中が無理矢理暴走させたってワケか…………」

「”アルマータ”―――――ホテルに紛れ込んでやがったとはな。そしてやっぱりあれを持ち込んでいやがったか。」

「…………はい、色からしてあの人形が持ち去ったものかと。多分あの後、アルマータに渡したんだと思います。」

「自分達の役目はここまで――――――確かにそう言っていましたね。」

ヴァンの言葉を聞いたアニエスとリゼットは天使型の傀儡――――――イシュタンティが持ち去ったゲネシスを思い返した。

「で、ですがあのメルキオルはともかく”コートの男”っていうのは…………」

「さあ…………残念だけどあたしには見覚えは無かったわ。殿下とナージェさんが連中とやり合う隙に他の人達は逃がしたんだけど…………結局、はぐれちゃって…………ニナや監督たちも多分まだあの場所に…………」

「グリムキャッツさん…………ニナ?…………監督?」

(彼女、本当に正体を隠す気はあるのかしら?)

(まあ、本人としては”あれ”で本気で正体を隠しているつもりなのでしょうね…………)

グリムキャッツの話を聞いたアニエスは心配そうな表情を浮かべたがグリムキャッツがニナやゴッチ監督の事を親しい呼び方で呼んだことに気づくと眉を顰め、無意識で正体がバレるような事を口にしているグリムキャッツにユエファとマルティーナは苦笑しながら小声で会話をしていた。



「―――――というわけで、今度はこっちが要求する番よ!階段はロックがかかってる――――開けられるのはこのカードだけ!上に向かいたければあたしに手を貸してもらうわ!」

するとその時グリムキャッツは懐からカードを取り出してヴァン達に要求した。

「カードキー…………成程、”前もって”確保してやがったか。」

「ハッ、コソドロの面目躍如ってか?」

「怪・盗!フン、それに本命はこれからよ。連中に乗っ取られた映画祭を、捕まってる皆を、なんとしても奪い返す…………!でも一人じゃちょっとだけ難しそうだからアンタたちに手伝わせてあげるってだけ!――――文句ある!?」

アーロンの指摘に反論したグリムキャッツはヴァン達に問いかけた。

「いえっ、願ってもないです!」

「いまだ厳しい状況――――――戦力的には渡りに船かと。」

「それこそ猫の手もってヤツだ。よろしく頼むぜ、怪盗さんよ。」

「猫の手言うな!まあいいわ、とにかく共同戦線成立ってわけね。それじゃあ改めて目指すわよ、ホテル最上階――――――受賞式会場をね!」

了解(ウーラ)っ!」

「ハア、しっかしイイ女なのにどこまでも残念っつーか…………」

グリムキャッツの言葉にフェリが元気よく返事している中アーロンは残念そうな表情を浮かべてグリムキャッツを見つめ

(…………えっと。うん、今は後回しですよね…………!)

グリムキャッツの正体に薄々気づきかけているアニエスは気まずそうな表情を浮かべてグリムキャッツから視線を逸らした。そしてグリムキャッツを加えたヴァン達が最上階に向かってホテルを探索していると黄金の力による薬物汚染状態のアルマータのマフィア達とある人物達が戦闘をしていた。



~10F~



「炸裂せよ――――――爆裂光弾!!」

「うおっ!?」

「ががっ!?」

「逃がさないわよ―――――クイックトリガー!!」

「―――――!!??」

ルファディエルが放った神聖魔術を受けたマフィア達、イセリアの二丁拳銃による広範囲への早撃ちを受けた人形兵器達はそれぞれ怯み

「そこだぁっ!」

「ぐっ!?」

「沈めやぁっ!」

「があっ!?」

「爆雷符!!」

「「かふっ!?」」

それぞれ怯んでいる隙にロイドはトンファーでマフィアの顎を攻撃し、ガルシアは得物であるメリケンサックを付けた剛腕による一撃でマフィアを殴り飛ばし、リーシャは起爆符をつけたクナイを残りのマフィア達に投擲してそれぞれ気絶させ

「我輩の一撃、受けてみなぁっ!――――――宵闇の一撃!!」

「クロス――――――リッパー!!」

「「――――――!?」」

ギレゼルは暗黒の魔力を込めた槍の一撃を、ラヴィは一気に距離を詰めた後自身の得物である双銃剣による斜め十字(クロス)斬りで人形兵器達に止めを刺した。



「ハッ、ざまあないぜ。」

「皆さん、あそこを…………!」

戦闘終了後ガルシアは鼻を鳴らして倒れているマフィア達を見つめ、マフィア達の傍に落ちているカードキーに気づいたリーシャはカードキーを指刺した。

「これは…………カードキーか。」

「もしかして目標(ターゲット)がいる最上階に行く為の…………」

「ええ、恐らくそうでしょうね。」

「ふ~、これでようやく階段地獄から解放されるわね…………」

カードキーを拾ったロイドに続くように呟いたラヴィの推測にルファディエルは頷いて答え、それを聞いたイセリアは安堵の表情で溜息を吐いた。

「―――――どうやら、ちょうどいいタイミングだったみたいだな。」

そこにヴァンの声が聞こえ、声に気づいたロイド達が振り向くとヴァン達がロイド達に近づいてきた。

「また、テメェらかよ………クレイユの時といい、ベガスフィルムの時といい、相変わらず鼻が利く連中だぜ。」

「ハッ、それはこっちの台詞だっつーの。」

「あら?貴女は…………」

自分達を見つめて呆れた様子で呟いたガルシアにアーロンが鼻を鳴らして指摘し、ヴァン達の中にいるグリムキャッツに気づいたリーシャは目を丸くした。



「”同胞”の気配を感じ取っていたメイヴィスレイン達の話から、あんた達も現在このサルバッドで起こっている”異変”の”元凶”を制圧するためにホテルを攻略していることはわかっていた。俺達も映画祭を守るために”元凶”の制圧を目的としている。どうやら今回も煌都の時のように”敵”は同じのようだから、共闘関係になれると思うんだが?」

「ええ、俺達としても戦力は多いに越したことはありませんから、よろしくお願いします。」

「まあ、貴方達との共闘関係については私も賛成だけど…………そちらの”怪盗”は私達と共闘することについて、文句はないのかしら?」

「あ…………」

共闘を提案したヴァンの提案にロイドが頷いた後ルファディエルはグリムキャッツに視線を向けて問いかけ、ルファディエルの問いかけを聞いたアニエスはロイドとルファディエルは”現役の刑事”であることを思い出して気まずそうな表情を浮かべてグリムキャッツを見つめた。

「フン!本当は”体制”側のあんた達の力になるつもりはないけど、アルマータに奪われた映画祭やニナ達を奪い返す為にも、あたしに手を貸すことを仕方なく認めてあげるわ!」

「初対面、それも明らかに怪しい人間にだけは言われる筋合いはない。」

「ん~?な~んか、どっかで見たことがあるわね~?」

鼻を鳴らして答えたグリムキャッツの答えにその場にいる全員が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中ラヴィはジト目で反論し、イセリアは首を傾げながらグリムキャッツを見つめた。



「―――――旧首都で活動している貴女達なら、雑誌や新聞で一度は”彼女”を目にしているでしょうから見覚えがあって当然よ。――――――何せ彼女は”怪盗グリムキャッツ”なのだから。」

「へっ…………ああっ!?」

「旧首都を中心に活動しているっていうカルバードの女怪盗か。ルバーチェがまだ健在だった頃からそいつの噂は俺も耳にしていたが…………クク、女怪盗といい、テメェといい、カルバードの”裏”の有名な女連中は、揃いも揃って痴女ばかりじゃねぇか、(いん)?」

「痴女言うなっ!」

「あの…………私もそうですが、彼女もそれぞれの”裏稼業”の関係上あくまで動きやすい恰好をしているだけですので。それよりも…………久しぶりね、グリムキャッツ。」

ルファディエルの指摘を聞いたロイドは呆けてグリムキャッツをよく見つめた後すぐに心当たりを思い出して声を上げ、グリムキャッツを見つめて呟いたガルシアは口元に笑みを浮かべてリーシャに指摘し、ガルシアの指摘にグリムキャッツが声を上げて反論し、リーシャは疲れた表情で答えた後苦笑しながらグリムキャッツに話しかけた。



「ええ。裏稼業から手を引いた貴女がこのサルバッドに滞在している話は聞いていたけど、まさか”体制”側に貴女が協力しているとは思わなかったわ。」

「なに…………っ!?」

「もしかしてリーシャ…………彼女と知り合いなのか?」

リーシャと知り合い同士で話す様子のグリムキャッツにその場にいる多くの者たちが驚いている中ヴァンは驚きの声を上げ、ロイドは目を丸くしてリーシャに訊ねた。

「はい。今は詳しい事情を説明している時間はありませんが…………簡単に説明すると、私にとって彼女は見習い時代からの唯一の同い年の友人であり、ライバルでもあった人なんです。」

「そうだったのか…………」

「…………なるほどね。――――――指名手配犯と遭遇した以上、本来はクロスベル中央警察の一人として逮捕に動くべきでしょうけど、今は非常事態の上”エースキラー”としての役目の方が重要だから、このサルバッドで起こっている異変解決の為の戦力になってもらう代わりに、貴女の事は見逃しておいてあげるわ。」

「フン!”体制”側のあんた達に、そんな気遣いされるなんて御免被る所だけど、今はそんなことを気にする事よりやるべき事があるから、仕方なくあんた達の気遣いを受け入れてあげるわ!」

「よかった…………!煌都の時と違って、現役の警察の人達もいるエースキラーの皆さんがグリムキャッツさんを捕まえようとしないかちょっと心配でしたので…………」

「寛大なご配慮、感謝致します。」

「つーか、テメェもこんな時くらい感謝の一言くらい言ってもバチは当たらねぇと思うぞ。」

リーシャの話を聞いたロイドが驚いた様子で聞いている中、静かな表情で呟いたルファディエルはグリムキャッツを見つめて答え、ルファディエルの話を聞いたフェリは安堵の表情を浮かべ、リゼットは感謝の言葉を口にし、アーロンは呆れた様子でグリムキャッツに指摘した。



「ルファ姉、本当にいいのか?」

「ええ。そもそも彼女(グリムキャッツ)はエースキラー(わたしたち)の管轄外よ。ただでさえ、アルマータ捜査の件で皇帝直々の命令とはいえ同じ警察でありながら”様々な無茶”ができることもそうだけど、”中央”の私達が両カルバード州の縄張りに介入し続けていることは両カルバード州の警察にとって”色々と思う所”はあるでしょうに、管轄外であるグリムキャッツにまで手を出したら、間違いなく両カルバード州の警察の中央警察に対する思う所が更に悪化すると思うわよ。――――――それこそ、黒の競売会(シュバルツオークション)に手を出したかつての特務支援課(わたしたち)に対する当時のダドリー達”一課”の内心なんて比べ物にならないくらいに。」

「う”っ。それは…………」

ロイドはグリムキャッツを見逃すことについてルファディエルに確認したが、苦笑しながら答えたルファディエルの推測を聞いてかつての自分達の独断によって一課の刑事達を出し抜いた出来事を思い返して疲れた表情で唸り声を上げて答えを濁した。

「それに…………――――――”怪盗Bの下位互換”みたいな”小物”にまで構っている暇は今の私達にはないわよ。」

「誰があの外道愉快犯の下位互換よっ!?しかもこのあたしを”小物”ですってぇっ!?そんなにあたしの事を馬鹿にするんだったら、いずれあんたを含めたクロスベルの”体制”側の連中の度肝を抜いてやるわよっ!?」

「あはは…………悪いことは言わないから、ルファディエルさんを敵に回したら、後悔することは間違いないから止めた方がいいわよ。」

そして笑顔を浮かべて答えたルファディエルの答えにその場にいる全員が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中ルファディエルを睨んで反論したグリムキャッツにリーシャは苦笑した後疲れた表情で忠告した。

「ハッ、話は纏まったようだし、互いの準備が出来次第乗り込むぞ!」

「はい!」

ヴァンの言葉にロイドは力強く答え

「―――――確か貴女が”力天使”メイヴィスレインだったかしら?貴女も既に気づいているでしょうけど、私も貴女と同じ位階の”力天使”よ。少しだけ話があるのだけど、いいかしら?」

「――――――いいでしょう。」

「…………?」

ルファディエルに話しかけられたメイヴィスレインがルファディエルと小声で何かの会話をしている様子に気づいたアニエスは不思議そうな表情を浮かべて首を傾げた。



そして準備を終えたヴァン達とロイド達はエレベーターに乗り込んでカードキーを使って最上階まで向かい、受賞式会場に突入した――――――!



 
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