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義眼の秘密

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第二章

「右目なかったし」
「あの人右手もなかったね」
「戦争の怪我でね」
「そうだったね」
「そんなこと誰だって有り得るし先天的でも病気でも怪我でもね」
「なるから」
「気にしても仕方ないでしょ」
 こう言うのだった。
「別にね」
「そうなんだ、よかったよ」 
 実は保奈美の言葉に笑顔で応えた。
「じゃあ義眼自体のこともお話するね」
「何かあるの?」
「毎日洗ってるけれど実はこれ宝石なんだ」
「宝石?」
「細工でよく見てもわからない様になってるけれど」
 それでもというのだ。
「売ればかなりの値段になる」
「宝石なの」
「そうなんだ、だからいざという時は」
「売るのね」
「そうしてお金にしろって親から言われてるよ」
「そうだったのね」
「眼球と同じ大きさだから」
 その義眼になっている宝石はというのだ。
「かなりだよ」
「じゃあ隠された財産ね」
「僕の目のことを知った母方のお祖父さんが宝石商でインドで安く貰って造ってもらったけれど」
「日本だとなのね」
「かなりの値になるんだ」
 売ればというのだ。
「だからいざという時は」
「売るのね」
「そうするよ」
「成程ね、けれどそのお話滅多にしない方がいいわよ」
「取られるからだね」
「私だって義眼には驚かなかったけれど」
「宝石だってことには驚いたから」
 それ故にというのだ。
「言わないでね」
「じゃあこれからは」
「気をつけてね、私も変な気起こさない様にするから」
「信頼してるから言ったけれど」
「それはわかるけれど人間魔が差すこともあるから」
「気を付けるんだ」
「そして滅多に言わないでね」
 こう言うのだった。
「いいわね」
「それじゃあ」
 実は保奈美の言葉に頷いた、そして以後は息子と娘が生まれて分別がついたと思った頃に言っただけだった。そうしてだった。
 彼は義眼のままでいた、右目が義眼であることも義眼が実はどういったものか信頼出来る人にしか言わずことなきを得た。やがて見える義眼が開発されるとそれに切り替えて何ともなくなった。前の義眼は遺産の中に入れたのだった。


義眼の秘密   完


                 2024・8・18 
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