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義眼の秘密

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第一章

                 義眼の秘密
 大学生吉田実の右目は義眼である。黒髪は右で分けていて小さな目で唇は薄く面長だ。背は一七二位で痩せている。
 義眼であることは誰にも言っておらず家族だけが知っている、その為誰も気付いていないが。
 父の聡は彼に言っていた。
「何かあったらな」
「義眼をだね」
「使うんだぞ」
「いざという時はだね」
「ああ、いいな」
「そうするね」
 自分がそのまま初老になった様な父に答えた、そしてだった。
 普通に暮らしていた、大学を卒業して就職した時は会社に義眼であることは話したがそれでも障害者になることは隠してもらってだ。
 普通に働いていった、そうして婚活の中で知り合った弘前保奈美細く奇麗なカーブを描いた眉と切れ長の二重の目に小さな頭と黒の波がかったロングヘアを持ち一六七位のすらりとしたスタイルのOLの彼女と付き合いだしてだ。
 結婚を前提とする様になってだ、彼女に話した。
「実は僕右目義眼なんだ」
「そうだったの?」
「生まれつき右目がなくてね」
「全然気付かなかったわ」
「驚かないんだ」
「いや、そうした人もいるって知ってたし」
 保奈美はそれでと答えた。
「小説のキャラクターで両目義眼の人いたから」
「そうだったんだ」
「貴族出身の軍人さんで」
 そうしたキャラクターでというのだ。
「生まれつき両目なくて」
「義眼なんだ」
「未来が舞台だから機械で見えるけれど」
 それでもというのだ。
「そうしたキャラクターいたから」
「それでなんだ」
「いいでしょ。それに左目見えるのよね」
「何でもないよ」
「片目の人もいるでしょ、ネルソン提督だって戦争の怪我だけれど」 
 それによるものだがというのだ。 
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