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現実世界は理不尽に満ちている!

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第68話「タスケテ〜」

 
前書き
ネオ・代表05−1です。第68話「タスケテ〜」となります。
今話は、一人称がメインです。どうぞ、ご覧ください。 

 
 「辛かろう。そうして失う恐怖を抱えて生き続けるのは。ならば縋れ、我らガトランティスに」

 古代は睨みつけている。

 ズォーダー、お前がしていることは浄化主義のそれだ。
 オリジナル1号でさえ、WOSゲームのとある世界線でしか実行していない事。その世界線にて浄化プレイに勤しんでいた彼女も、呆れる他ない。

 未だニヤリしているズォーダーよ。
 地球に攻め込んで来たら覚悟しておけ、コテンパンにしてやるからな。
 荒らし死すべし慈悲は無い、オリジナル1号と同じく好きな言葉である。

 手の甲をズォーダーへと向け、中指を立てる仕草―――「くたばれ」をしていたその時だった。

 「…!?」

 突然と、轟音と揺れが襲ってきたのだ。
 それだけではない。遺跡は悲鳴の軋みを発し続け、周囲の結晶体は次々と剥落していく。
 
 地面が大きく波打つように揺れたことで私と古代はよろけ、何とかその場で踏み留まることが出来た。
 教授に憑依したズォーダーは、ほんの少しもよろけることは無かった。体幹を、しっかりと鍛えているのだろう。

 この轟音に揺れ、只事ではない。外で、いったい何が起きているのか。
 
 「言っている傍からこれだ」

 だがそれは、ズォーダーは分かっているようだ。呆れた様子を隠さず、大仰に溜息を吐いた。
 まさか、星に対し攻撃しているのか。おのれガトランティス!やはり荒らしであったか!

 「反ガミラス統治破壊解放軍の仕業、か。惑星間弾道弾を使用したか。…フフ」

 これはまた、驚いたものだ。
 ガトランティスではなく、反ガミラス統治破壊解放軍の仕業だったとは…。
 
 反乱軍とも呼ばれている破壊解放軍は、現政権の意向に叛意を持ち逆らう政治犯が中心となって構成される組織で、ガミラス支配圏内で度々武力闘争を繰り広げている。
 その名目である大義名分は、デスラー政権の尻尾でしかない現政権の打倒、並びに周辺諸国の解放と自治独立。

 そのような組織がまさか、《シュトラバーゼ》にまでやって来るとは。
 もしやこれは、ズォーダーの差し金なのか。しかし、メリットがあるとは到底考えられない。
 
 「やはり、人間は導かれねばならん。個人の情愛に流されぬ愛、そして宇宙の摂理と調和できる、我らガトランティスの真実の愛に従って」

 …いや、このドヤ顔しているズォーダーのことだ。
 いったい何がしたいかサッパリ理解出来なくとも、私は一つだけ分かっている。それは、―――愛に拘りまくるヤべェ男であるということ。

 本当にお前、何がしたいんだろうか。微塵も分からん。
 
 「お尋ねしたい」

 その時だった。
 ドヤ顔で睥睨するズォーダーへ、古代が問うたのだ。あんなヤベェ男に、慇懃は必要ないというのに。

 「貴方は、ガトランティスの指導者である立場と推察する。その貴方が何故、一つの価値観で人を括ろうとする? 人は、そんなちっぽけな存在ではな―――」

 「なんと耳触りの良い言葉…だが、それこそがエゴ」

 そうわざとらしく強引に遮ったズォーダーが、嗤いながら告げる。

 「私は、何年も見てきた。人間の想い―――感情という病から湧き出すエゴを。これこそが、全ての闘争と混乱の源。数多もの知的文明は、この宇宙にとって有害な存在。病巣であると知るがよい」

 その言葉、そっくりそのまま返そう。
 有害な存在なのは、貴様らガトランティスである。

 「終止符を打たねばならん。真実の愛を、この私が真実の愛を示す。テレサの恩寵を以って!」
 
 それに、だ。なんだかんで、感情に冒されいるのはズォーダーも同じ。
 「愛」という感情に拘っている時点で、お前も人の事が言えない。

 …フフ、笑ってしまう。
 笑いの声を漏らさぬよう、気をつけなくてはな。

 ふと、私は思うのだ。
 ズォーダーは、”何処から視ている”のかを

 もしやだが、ズォーダーはレドランズに憑依している訳でなく、肉体を端末のように支配する能力を保有しているのではないのか。

 ………怖っ!
 そう思っていた時だった。ズォーダーの顔を見つめていた私は、白色彗星の姿を認識した。突如として、だ。

 幻覚、いやこれは…幻視だろうか。しかし、それにしては妙にリアリティーがある。
 白色彗星の姿だけではない。インスタント……名前間違えた。教授を操る男の姿も、私は認識した。

 絶対的な力の支配者という雰囲気を強く体現し、髪もやや跳ね返りの強い形となり、他者を圧する目力、更に武闘派を彷彿とさせる筋肉質の肉体。
 黒を基調としたスーツと黒色の肩掛けマントを着用し、白の手袋を身に付けた、眉毛と一体化した独特の白髪をしている男の姿を。

 間違いない。
 このドヤ顔している男こそ、個人の情愛に流されないガトランティスの愛こそが宇宙に秩序と調和をもたらすと主張する―――「大帝ズォーダー」なのだ。

 幻視は、音さえ伴った。
 遺跡を襲う地鳴りと共に、王座の間より重低音の弾奏を耳にした。パイプオルガンを思わせる音だった。

 奏でられる弾奏は転調し速度を増し、ズォーダーの姿が自身の認識から消え失せた瞬間、我がもの顔で進む白色彗星に変化した。

 間違いない。
 この白色彗星こそが、ドヤ顔しているズォーダーの―――ガトランティスの本拠地なのだ。
 
 そして、だ。
 最後となろう幻視を、私は認識した。
 
 金に輝く長髪を衣の代わりに纏った、生まれたままの姿をする美女を。青い星を背にする彼女は跪き、祈りを捧げていた。
 それはまるで聖女のような彼女の正体は、テレサだと断じた。あまりにも、神々しいかったからだ。

 幻視は終わり、視界は元通りとなった。
 
 それにしても、だ。その、まぁ、なんだ…。
 私としては、服を着ろよツッコミをしたいところである。女神でなければ、通報案件だ。

 しかし、最後に出てきたテレサ。
 ガトランティスとは、いったいどのような関係なのか。気になるな。まさかだがズォーダー、「《テレザート》の封印を破ったぞ♪」を自慢したい訳ではあるまい。

 「フフっ、フフフフ!」

 …本当に、溜息が出そうだ。

 突如と笑い声を上げるズォーダー。笑みが凄い。
 他のガトランティス人はどうだか知らないが、喜怒哀楽が激しいのではないか。オリジナル1号―――ギルド長スヴェートと、よい勝負になりそうな程だ。

 もう、あれだ。
 此処に、用は無くなったな。隠し持っていた拳銃を取り出して、教授を撃つか。

 そうと決まれば、早速だ。
 旧式の拳銃―――グロック17を取り出し、同じく隠し持っていたサイレンサーを銃身に装着する。

 サイレンサー拳銃となったグロック17の銃口を、教授へと狙いを定める。旧式の拳銃は本来であれば薬莢で排出されるが、ケースレス弾であればそういう心配は皆無。つまりは、バレない。

 すまないな、教授。
 分かるんだ、この私には。もはやお前は、もう助からないのだと。助かる見込みは無いのだと。だから、いいよな。撃ってもいいよな。

 安全装置を解除し、指をトリガーに掛ける。
 レディーパーフェクトリー、準備は完全に整った。では、撃ちま〜す!

 「見せてやろう。お前の愛―――古代進の愛が何を救い、何を救うのか」

 「こ、これは…!?」

 そう意気込んだは良いものの、私は撃てないでいる。
 気になってしまう。いったい、何を企んでいるのかを。

 トリガーへ掛けていた指を引いた私は、ズォーダーを見つめた。

 「地球の避難民を乗せたガミラス艦に、屍より造られし蘇生体を潜り込ませた」

 蘇生体?
 聞いたことが無い単語だ。
 
 ズォーダーを見つめていた私だったが、またもや視界が変化した。
 これは、ガミラス艦の内部のようだ。展望室なのだろう、《シュトラバーゼ》の大地が確認出来る。その内部には避難民と、引率する森雪の姿もあった。

 「ゆ、雪!」

 蘇生体とやらの視界を借り、共有させているのか。残る2隻の様子も、その気になれば共有出来るのだろう。
 …ん、共有?……私、蘇生体とやらで無いよな。ゾッと震えてきてしまった。クソゥ、銃口がブレてしまうではないか。
 
 ―――う〜ん、どれも美味しいそうだ。
 
 シャラップ!黙れ!
 引っ込んでろ!私は今、それどころではないのだぞ!

 「この私に、見せるがよい」

 チャンネルを切り替えるように、蘇生体との共有を遮断したズォーダー。
 
 落ち着け、落ち着くんだ私。
 まだ私が、蘇生体であるという確証は無い。そもそも私は、死んでいないのだ。だから、大丈夫な筈……ん?

 ふと私は、ズォーダーが操っている教授に生じている異変に気づいた。
 彼の身体から、湯気が立ち昇っているのだ。それはまるで、細胞全体が熱を発し温度を急上昇させているかのよう。
 そう、これを例えるならば、生物爆弾が爆発する前兆。

 ……ん、前兆?そうか、前兆か………爆発する前兆!?
 マズイマズイ、思わず血の気が引いてしまった私は悪くない筈だ!

 「この身体も蘇生体。我が兵士と同じく、自らを炎と化すことが出来る」

 どれ程の威力だ。
 手榴弾級か、ニトロセル級か、それとも……あぁもうッ、分からん!

 「古代進よ、1隻だけ助けてやる。選択しなければ3隻とも機関を損傷し、この星の崩壊と運命を共にする」

 青白く輝く教授は、その輝きを増すばかりだ。
 撃つべきか、いやしかし…あぁもうッ!
 こうなったらもうヤケだ、思い切って行動してやる!

 「足音、だと?」

 蘇生体である教授に近づいた私は銃口を向けると、即座に引き金を引く。発砲音を抑制するサプレッサー特有の音が、耳に入る。

 「…は?」
 
 「教授が倒れた?!」

 たった一発だぞ?倒れるとは情けない…。
 そんな貴方に、銃弾を更にプレゼント!値段は無料!

 「な、何g…ガハッ!」
 
 青白い光を発していた蘇生体の教授は、輝きを失いつつある。これはつまり、爆発の前兆が無くなりつつあるという証明か…?

 「古代!助けに来たz…教授!?」
 
 「斎藤!どうして此処に…?」

 「親父さん―――土方さんの指示でな。にしても、あれは…」

 「教授は人間爆弾で、たったいま爆発しようとしていた。しかしどういう訳か、突然と倒れた。…そうだ、そうだッ」

 「古代?」

 「選ばないと、俺が早く!でないと、雪が…!」

 「おいどうしたんだ、待てよ!…あぁクソッ、足が早いぜ!」

 ホラホラどうした。爆発、出来ないのか?

 「お…お前…は…」

 さぁさぁズォーダー、まだまだマガジンがあるんだ。プレゼント、受け取ってくれ。

 それにしても、撃つのって楽しい。相手が蘇生体でよかったと思う今日この頃である。

 「ブ…ブr…」

 おっ、魚のようにピクピクしている。凄い凄い。お礼に、銃弾のおかわりを進呈してやろう。
 リロードを終えた私は21発の銃弾をプレゼントし、最後のマガジンに交換し終えるや再び構える。

 「……」

 そう構えたはよいものの、コイツから息がしていない。足で突いてみる。ふむ、反応なし。

 ということは、だ。
 
 フッ、死んだか。達成感、素晴らしい。
 全身銃痕だらけの教授、安らかに眠れ。もう二度と、起き上がることはない。
 
 さて、私は御暇するとしよう。
 それにしても、古代がいないな。戻ったのだろうか…。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 さて、此処で問題。
 
 Q遺跡を出た私は、100式偵察機に乗って帰還したか?
 A回答。そもそも無い為、帰還しようにも出来ない。したがって現在、棒立ち状態。

 「タスケテ〜」

 ―――哀れ、これは死んだな。
 
 崩壊中の《シュトラバーゼ》に残された私は、ガクリと力なく頭を垂れた。
 
 

 
後書き
さてさていかがだったでしょうか。至らないところもあるかと思いますが、温かい目で観ていただけると嬉しいです。ご意見、ご感想お待ちしております。次回もお楽しみに!  
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