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第67話
前書き
ネオ・代表05−1です。第67話となります。
今話は、一人称がメインです。どうぞ、ご覧ください。
私―――ラウラこと3号は、惑星《シュトラバーゼ》に存在する遺跡へ来ており、現在はその内部の広間に居る。
どうやって来たかというと、あれだ。
地球連邦が保有する【100式空間偵察機】に搭乗し、レドランズとかいう教授と共にやって来たのだ。
最も私は、教授に認知されていない。それは当然で、【透明マント】と呼ばれる代物を羽織っている為である。
【透明マント】。
「細胞内光線通過糸」から構成された「シースルー繊維」で生産され、それらが光を完全に通過させることによって、マントを被った人物は誰からも姿が見えなくする。付け加えると、気配も消せる。
つまりは、だ。
透明マントとは全身をスッポリと纏うことで、所有者の姿を他人より不可視とする代物である。
ちなみに透明マント、値段は戦艦に匹敵することから生産は少数に留まっている。
いやぁ、本当に素晴らしいものだ。おかげで、100式が収容されていた〈ヤマト〉格納庫に赴いても、バレないのだから。
ちなみに、この遺跡に来た理由はとてもシンプル。行きたかったから、それだけである。
そういえば教授の名前、忘れてしまった。
名前はなんだったかな。レ、レドド?それともレラドック?マッススルズ…いやチーズタルト教授だったか?
仕方ない。
教授と覚えればいいか。であれば、不便ではない。
そんな教授であるが、ピラミッドの形をしている遺跡に入った途端、人が変わったのでは思うほど「アケーリアス」を連続で云っているのだ。
いや、元々アケーリアス調査第一人者と聞き及んでいるが、それにしても変わり過ぎだ。悪霊に取り憑かれたのではと、そう信じてしまいそうな程だ。
その教授にビックリした私は、そっと隠れている。
透明マントは他人の目から見えなくとも、音が全て消せる訳ではない。自身の発する音に細心の注意を払い、全集中しなくてはならないのだ。
気配は消せているのに。戦艦に匹敵する値段であるというのに。
それにしても、と倒れ伏している男を見て思う。
「……うぅ」
私や教授以外にも、この男―――艦長代理の古代進がいる。教授を連れ戻しにやって来たのは明白だが、彼は現在も気絶している。
何故気絶しているのかであるが、彼の後ろにいた桂木透子が手刀で気絶させたのだ。
もう、な。改めて、私は認識したものだ。
桂木透子が、ガトランティスのスパイであるということを。考古学者は、仮の姿という訳だ。
そんな彼女は、古代を気絶させると直ぐ広間を後にした。足早で、遺跡を去ったのだ。
遂、首を傾げたものだ。
何故気絶させたのか、それがさっぱり分からない。拳銃を奪い、この世からサヨナラさせる事だって出来る筈なのに。それをしなかった。
何か、関係があるのだろうか。
であれば、微塵も分からない。関係性が見当たらないし。
そう逡巡していたその時だった。古代が目を覚ましたのだ。
「あれは―――」
倒れ伏していた古代は起き上がると、「アケーリアス」を連呼している教授を見つめた。固く、身を案じている顔であった。
「レドラウズ教授?」
一方の教授は、遺跡に来てから相変わらず無表情。シュール。教授は目覚めた古代を気配で感知したのか、語り手のように話す。
「アケーリアス。人間たるもの全ての源、それが古代アケーリアス人。そんな彼らは何故、己の似姿をこの宇宙に広めた?」
またこの話か、溜息を吐いてしまう私は断じて悪くない。
であれば、この男はあれか。古代の為だけに、演説を練習していたとでもいうのか。…なんて怖ぇ男だ、コイツ。ドン引きしてしまう。
青白く輝く幾何学模様の壁面に刻まれている、女神テレサと邪魔な存在を粉砕する彗星。それらを見つめる教授は大きく両手を広げ、無表情で語る。…ヤベェ男だ、コイツ。
「滅びに瀕した自らの後継者を育てる為か?」
滅びる、か……巨大過ぎる《星巡るの方舟》を造りあげた存在が??
絶対に《星巡るの方舟》の対と為す、破壊を司る《方舟》もこの宇宙に存在するだろうな。どうか、一つであって欲しい。精神的に死ぬ。
アケーリアス、この宇宙すべてを実験場としている事だってあり得る。《バラン星》がその例だろう。なんだったら、この《シュトラバーゼ》だってそうではなかろうか。
別の宇宙にでも旅立ったのではないかな。
ふと思い出したのだがアケーリアスの遺産の一つである―――亜空間ゲート、ブリリアンス本部が存在するアルポ銀河にもあるんだよな。
しかし…育てる、か。
謎過ぎる。やはり、この宇宙はアケーリアスにとって実験場か。
子供を放置するなよ、親だろうが。
育てるといえば、オリジナル1号も人のことが云えない女だ。娘スラクルへの教育、基本的に放置なのだから。ドロイドに任せっきりで、当の本人は悠々自適の日々かつ気分で教育する。母親失格である。だから幼少期からいつも、母親である1号を一度も「母さん」と呼ばないのだ。
「もしそうなら何故、人の形に拘ったのだ?それは、滅びに至った同じ形であるというのに…」
超文明がそう簡単に滅びて堪るか。
そのアケーリアスは、この宇宙を観察しているのだぞ。知った風ではあるが、実はこれ本当に正解ではなかろうか。
あ、無表情の教授が古代に振り返った。
「男と女が愛を育てなければ、繁殖も出来ない不合理な生き物―――人間」
愛を知らない場合はどうしたらよいでしょうか、先生!
オリジナル1号、愛を知りません!かくいう、私も!
「奪い、憎み、殺し合う」
確かに殺し合うよな、人間。
「この宇宙の調和を乱す、人という混沌」
知らんがな、調和など。
乱すのなら、「ルール」を制定していないアケーリアスが悪い。
「待っていたぞ」
教授は古代に告げる。
あれ、声音変化したか?
「お前は、誰だ?」
緊張の色を浮かべる古代。気持ちは分かる。イケオジな声音に変化したのだから。…いや違和感あるなこれ、明らかに教授の声音ではない。
もしや教授、憑依されているのか?
「我が名はズォーダー、愛を知る者だ」
どうやら、そのようだ。
それにしても、愛を知るもの、か。教祖様だろうか。
にしても、ドヤ顔で名乗ることはあるまいて。そんなに自慢したかったのだろうか。ズォーダーっという男は。
「破壊、革命、戦争。どの文明も、必ずこうなる運命となる」
確かに、アルポ銀河でもそういった事が起きたな。全て鎮圧したが。
「そして無益な繰り返しの末に、決定的な過ちを犯して自滅する」
無論、二度と鎮圧するような事が発生しないよう、管理は怠らない。自滅なんぞするものか。分かったように語りやがって。
女神テレサや、スノウが属する連邦の未来予測装置じゃないのだから。
「嗤うしかあるまい。国の為に、家族の為に、信念の為に。…フフ」
酷い奴だ。
心臓を捧げる人間を嗤うとは。
「愛故に奪い合い、殺し合う人間の無惨さは見るに耐えない」
その通りだ。
愛故に、1人の男を取り合う女達が奪い合うのは見るに耐えない。ヤンデレ属性と呼ばれる種族だって実在するのだぞ、堪ったもんじゃない。
「我々の真実の愛に包まれてこそ、人間は真の幸福と安寧が得られる」
分かるぞ。
ヤンデレ属性と呼ばれる女性は、その通り過ぎる。幸福と安寧は自分だけしか出来ないと、信じてやまないのだ。
「我らはガトランティス。創られし命である」
「創られた、命…?!」
ふむ………は!?
え、何、ガトランティスだと!?憑依存在は、ガトランティスだと!?
これは驚いた。ガトランティスは特定の人間に憑依可能であるとは…。
にしも、戦闘国家が愛を語るか………是非とも嗤いたい。バレるからしないが。
「最も、我々を創造した文明は既に無い。《ガトランティス》と呼び、蔑んだ者達は1人残らず死に絶えた」
その口ぶりに、古代が反応した。
「滅ぼしたのか?」
私も反応した。声を出さずとも反応した。
危険じゃないか、親である創造主を殺すなんて。
何をしてるんだ、ガトランティスの創造主。そういった兆しがあれば、直ぐに”鎮圧”しないと。
「我らは、一個体として生殖能力を持たない。故に、愛という鎖から自由にいられる。我らこそが、この宇宙に真の調和をもたらす」
古代の問いに答えないズォーダーだが、笑ったのだからそうなのだろう。怖い怖い。
「我が意のままに」
さも当然で結論だと、ズォーダーは断言した。それほどまでに、信念が固いようだ。
「テレサに呼ばれし―――〈ヤマト〉の戦士よ」
古代を呼んだズォーダーは続ける。嘲笑いながら。
「いや、本当に呼ばれし者と言えるのか?」
それに対し、古代は訳が分からないばかりに声を荒げる。
「何を言ってるんだ?!」
私もだ。
何を言っているんだろうか、ズォーダーは。
「憐れな」
その憐れ、ブーメランとして返そう。
「感情という毒に冒され、道に迷いし者……愛とは何たるか知らぬというのに。愛故に人は死に、星は壊れ、宇宙は滅びる」
その声音は、どこか満足げな色だった。
私からすれば、その逆である。この荒らしが!バーカバーカ!
「お前はこれまで、多くの大事なものを失って来た。だから、人一倍恐れている。愛する者が死に逝くことを。―――そうだろう、古代進?」
名前がバレている古代。
どこで知った。憑依している教授から得たのか。
個人情報保護が働いていない。…ひぇ。
「辛かろう。そうして失う恐怖を抱えて生き続けるのは。ならば縋れ、我らガトランティスに」
古代は睨みつけている。
ズォーダー、お前がしていることは浄化主義のそれだ。
オリジナル1号でさえ、WOSゲームのとある世界線でしか実行していない事。その世界線にて浄化プレイに勤しんでいた彼女も、呆れる他ない。
未だニヤリしているズォーダーよ。
地球に攻め込んで来たら覚悟しておけ、コテンパンにしてやるからな。
荒らし死すべし慈悲は無い、オリジナル0号と同じく好きな言葉である。
後書き
さてさていかがだったでしょうか。至らないところもあるかと思いますが、温かい目で観ていただけると嬉しいです。ご意見、ご感想お待ちしております。次回もお楽しみに!
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