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第23話「諦めたらそこで試合終了だろうが!ってイイよな」
前書き
ネオ・代表O5ー1です。第23話「諦めたらそこで試合終了だろうが!ってイイよな」となります。
スヴェートSIDEが中盤であります。序盤と終盤は某少尉SIDEであります。どうぞ、ご覧ください。
「寝ていられるか!」
生まれながらのガミラス一等臣民―――蒼い肌を持つメルヒ少尉は空腹の関係で、苛つきつつベッドから起き上がった。
無論、メルヒにも食糧は渡っているが、満足と呼べる程ではない。とはいえ、である。それは、彼に限った事ではない。
”ザルツ”―――古代達と”ガミラス一等臣民”のスヴェートからの戦闘糧食の配布が減り、水での生活も少なくない状況。スヴェートが居なければ、戦闘糧食の配布量は更に減り、水だけの生活もあり得ただろう。
だが、それでも青年メルヒは苛立ってしまう。
採掘作業で腹が減っても食糧は少なく、空腹過ぎて眠れずは短くなる一方だ。どこまでも続く労働、食糧不足、不眠、ザルツ人―――二等ガミラス臣民と寝起きを共にするストレスなどによって、メルヒは疲労困憊し判断が鈍ぶり、些細な事でもイライラするようになっていた。
既にこのホテルに閉じ込められてから12日、本日はその12日目の朝となった。
「…ラウンジ行くか」
時間を確認する。現在時刻は、6:40。朝食の時間には早いが、メルヒはラウンジに向かう事にした。
ラウンジの扉を開け、通路を歩き、そしてラウンジへと下りていく。すると、階段下のソファーで向かい合わせに座る3人の男女が居た。尊敬するバーガー少佐と彼よりも階級が上のスヴェート大佐と、そして―――ザルツ人の女、桐生美影が楽しそうに話していた。
何、ザルツ人と仲良くしてやがるんだ。それだけでも、メルヒは腹が立った。何故ザルツ人共と仲良くしなければならない。ザルツ人は二等臣民で、蒼い肌を持たぬ種族だ。彼は拳を握る。
そんな彼―――メルヒを知らず、バーガー・スヴェート・桐生は話しあっていた。しばらくしてからだった。桐生が、魔女―――ジレル人について問うていた。
「―――フォムトさん、ジレル人ってどんな種族だったんですか?」
話題はキリがよく変わり、現在は『ジレル人とやら何だ〜』の話題となった。
「ジレル人、か」
桐生から問われたバーガーは腕を組み、目を閉じた。思い出しているのだろう。思い出している彼を静かに見つめる1人の女性―――スヴェートは桐生の口から「ジレル人」が出た言葉に反応した。反応した彼女は、スノウから聞かされた魔女ことジレル人について思い返した。
ジレル人。
魔女とも呼ばれるジレル人は薄い灰色の肌をし、髪色は白銀または薄い灰色の髪の毛で、エルフのような耳をし、身体には特殊な模様がある種族。
生まれながらにして特殊な能力を備え、人の心内を読むことが可能で、所謂テレパシーによって脳内へ直接語りかけ、幻視によって人に幻覚を見せて惑わせる。
しかし、だ。
スノウから聞かされたジレル人という存在、まさか此処で聞くことになろうとは。私だけが知らないだけで、実際はジレル人への知名度は高いのだろう。思い返していたスヴェートはコップを手に取った。
「あいつらは魔女だ。人の心を読むんだ。まぁ、化け物みたいなもんだ」
スヴェートは手に取ったコップを口元に近づかせる。
「ジレル人は滅んでしまったんですよね?」
もしかするとだが、ジレル人は実在するのやも知れない。そう思っていたが桐生の口ぶりから、ジレル人は滅んでしまったようだ。コップを口元に近づかせたスヴェートは、コップに入っている水を一口ほど飲もうとする。
「ああ、…ん、いや、思い出したぜ。ガミラスにも居たな。確か、生き残りが2人」
コップに入っている水を一口ほど飲もうとしたスヴェートだったが、バーガーから実在するという事を聞き、思わずむせそうになった。実在するだと?気になるな。今更ながら、桐生が何処でジレル人が滅んでしまった話を聞いたのだ?
「でも、ネレディアさんがこの世界にジレルはもう居ないって。幽霊だとも言っていました」
どうやら桐生は、ネレディア・リッケよりジレル人が滅んでしまった事を聞いたようだ。もしや聞かされたのか。何にせよ、ガミラスのジレル人を除いて存在しない事は確かだろう。滅んでしまった原因は何だろうか……あ、迫害か。
「女2人だけじゃ、滅んだも同じさ」
バーガーは、ふっと笑みを浮かべた。確かに、男女ではなく女2人となると、滅んだも同然。いやでもなぁ、スヴェートは思う。迫害されていたのなら、絶対な安全地に辿り着いたジレル一行が存在し、聖地とした地で生き残っていても、おかしくはないのではと。
「その通り、ジレルは滅んだも同然」
スヴェートは、クールな顔つきでうんうんと頷いた。内心にて彼女は、ジレルがガミラスに実在するなんて口が裂けても言えない!の顔をしていた。
ジレル人についての話題が終わり、他愛もない会話をしていた時だ。メルヒ、バーレンの2人がやって来た。1分もしない内に、古代、新見、相原、沢村以下の4人がやって来た。ネレディアはまだ寝ているのだろうか?
ネレディアが居ない中、朝食の時間が始まった。
といっても、だ。食糧節約の為、今日の朝は水だけという、なんとも寂しい朝食。これでは、ただ打ち合わせするだけの時間だ。もっと持ってくればよかったな。だってほら、かの青年が震えていらっしゃるのだ。暴力、振るわれないか心配だ。まぁ、彼が暴力を振るえば、スタンモードにした銃で無力化すればいいか。
改めてだが、レーションもっと持ってくればよかったな。
例えば水を混ぜれば膨張して直ぐ出来る、外見メロンパンのインスタント・パンこと【ポーション・パン】。【ポーション・パン】をいっぱい持ってくればよかったか。レーション・バーのみは駄目だったかぁ、内心にてスヴェートは反省した。
「―――という方向性で、メルヒさんは10時より採掘作業をお願いしまs…」「うるせぇな!こんなの無駄、無駄なんだよ!穴なんか掘ったところでよ…っ、出られる訳がないんだ!俺達は此処で飢え死にするしかないねぇんだよ…っ!」「……っ!」
掘り進めているトンネルの見取り図を確認しながら、今日の作業目標を提案する沢村青年はこんな状況下でも前向きだ。メルヒとは正反対で、諦めの色を露わにしている。メルヒが吠えたことで、ラウンジに緊張が走った。耳が痛いなぁ。
「何を…何を勝手に諦めてんだよ!諦めたらそこで試合終了だろうが!」
言ってやれ沢村青年。私は、内心でメルヒに諦めるなと言ってやるから。というか沢村青年の世代でも、試合終了という名言は未だあるとは……感激深い。
「し、試合終了?言っている意味が分からねぇが、とにかく…」
メルヒは続ける。試合終了という名言が知らないのは当然だろう、異星人だし。
「やりたきゃなぁ、お前らザルツ人だけで勝手にやれよ!俺はもうやられねぇからな!」
メルヒは投げ出した。吠えた彼だが、それがお腹を空くというのに。
「諦めるな!」
「!?」
メルヒがビクッとなった。思わずビクッとなりそうだったスヴェート。
「ガミラスの軍人は可能性を信じ、すべきことをし、最後まで諦めない。…いつもそう言ってきただろう」
上官バーガーに論されたメルヒは、恥ずかしくなったのか立ち尽くす。
立ち尽くしていた彼だったが、「自分は少佐を尊敬しています。ですが、こいつらザルツ人と一緒に居るのはもう御免です。失礼します」とガミラスの敬礼をした直後、足早にラウンジから去った。
ラウンジから去ったメルヒを静かに見送っていたバーガーは、この場に集う全員へ謝罪した。
「最後まで諦めない、か。良い言葉だな」
古代はバーガーへと微笑むと、バーガーは照れた。確かに良い言葉だ、とスヴェートは頷いた。
「これは俺の言葉じゃねぇよ。受け売りさ。尊敬する上官のな」
「うちの艦長も同じことを言っていたよ。―――最後まで諦めるな!ってな」
「ハハハ、おっかなそうな上官だな」
「けど、凄い人さ」
楽しそうに会話している古代とバーガー。
「会ってみてぇな」
「君の上官もね」
「……」
「?」
バーガーが沈黙する。笑みを浮かべてはいるが、瞳は何処か寂しい。古代の「君の上官もね」を聞いていたバーレンは、つば付き帽子を目深に被っている。気の所為であれば良いのだがバーガーの沈黙により、穏やかであったラウンジの空気は冷えた空気に満ちたラウンジへと変わっているような……沈黙が支配する空間とはこのことか。
「…さてっと、メルヒを連れ戻しに行くか」
「じゃあ、自分も」「大丈夫だ、古代。1人でいいさ」「そ、そうか」
バーガーは古代へ笑みを向けつつソファーから立ち上がり、この場を後にした。
バーガーの後ろ姿を見つめていたバーレンはピアノの前にある椅子に座り、ピアノを弾き始めた。上手いが、悲しい音色なのは何故だろう。過去が語れそうな感じなのだが。それにバーレン爺様よ、いきなりだなピアノ弾くの。
1分もしない内にソファーに座っていた古代はピアノに寄り掛かり、同じくソファーに座っていた沢村はボケ〜っと天井を見上げていた。相原は今もソファーに座っている。
そんな中バーレンは、絞り出すようにポツポツと声を発する。それと同時に 一人言のように、聞いて欲しいように、静かな声音で発しているバーレンへ、この場に集う全員が彼へと振り向いた。若干1名、内心にて戸惑いまくる白髪オッドアイの女性。
「―――フォムトには昔、メリアという恋人がおってな。メリアはネレディアの妹じゃ。あの頃は今と違い、フォムトは生真面目で礼儀正しい若者じゃった。フォムトはメリアとネレディアと、いつも一緒でな。だが3人が軍に入り、3人が乗っていた艦への砲撃後のダメージ・コントロールでメリアが死んでしまった。メリアが死んでから、フォムトは変わった。あと少しでメリアを助けられた筈が眼前で隔壁閉鎖が閉じられた所為で、倒れている彼女を助けられなかった事を。アイツはいつまでも引きずっておる。あの時、もっと早く行けば……いや、軍に一緒に入らなければ、とな。それから―――」
「(……………あ、はい)」
何だか、唐突にバーガーの過去を語り始めたバーレンに、スヴェートは内心つい間抜けな声で返事をしてしまった。
過去の秘部を明かすことある?!と、そういうのは…を何とか堪えた結果、出て来たのがこの間抜けな声だ。
いきなりバーガー語りをされても何と言うか、反応に困る。いや、確かに悲劇と言えば悲劇なのだろう。
だがいきなりそれを語られて心に響くかどうかは、全くの別問題だ。そもそも相手は異星人だし。自分と同じ地球人であれば心に響くことだろう。
とりあえずバーガーが可哀想な男だという事だけは理解した。理解したのだが、本人の同意なしに、過去の恥部を明かされるという。
私はなんと応えればよい?なんと可哀想な男だ、とでも応えればよいのか?
その後も続くバーガー語り。
終わるのはいつになるのやら、の想いで聞いているスヴェートであった。
一方、ラウンジから出たメルヒはどこへも持っていくことの出来ない想いを抱えながら、階段を駆け上がり続け、最上階である4階に到着していた。
「クソぉぉぉおお!!」
勢いよく階段を駆け上がったメルヒは、固い壁を叩いた。無論、この程度で何も変えることなんぞ出来ず、彼の拳は痛みが走るだけだった。
この痛みの走りはまるで、こんな事をして何になると訴えているとようだ。あぁ、そうさ、何もならない。自分自身、こんな態度をとっているのが情けない事ぐらいは分かる。生まれながらのガミラス一等臣民であるメルヒは、二等臣民である古代達ザルツ人と対等に話しているバーガーの姿を見たくなかった。見たくなかったからラウンジを出たのだ。…自分だけが、グループに溶け込めていないように思えたから。
でも、どうすればいい?どうすればいいんだよ…。メルヒは葛藤する。
葛藤していたその時だ、メルヒにフッと右から冷たい風が吹きつけた。…何だ?こんなところに窓なんかあったか?
「こ、これは…!?」
メルヒは目を見開いた。無理はない。何故ならば先程叩いた壁には無かった筈なのに、1つの扉があったのだから。扉は開いており、屋上へ続く階段なのか、5階へ続く階段なのか、細長い金属製の階段が上へと続いていた。
「無理しないで、メルヒ」
そして、その中間には1人の女性が手を組みながら目を閉じ、静かに座っていた。
「ね、ネレディア大佐…」
その女性はネレディア・リッケ。ラウンジに集まらかった人物だ。メルヒは思う、何故そこに…。
「お腹、空いているんでしょう?」
その言葉と共に目を開けるネレディア。
メルヒは気づかなかった。普通ならば、気付く筈だった事に。いや、寧ろ気づけない程に深みに深みに、はまっていたといえよう。……目を開けた彼女の瞳が普段と違い、輝く白銀の瞳となっているのを、彼は気づかなかった。
後書き
メルヒ「何故、ザルツ人なんかと…!」
スヴェート「……」(そのザルツ人は地球人、私も地球人だが、言わないでおこう。しかし今更ながら、何故ガミラス人として見られるのか、蒼い肌を持っていないのに。これもまた、システムによってか)
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現状公開可能な情報:アーガス級 TE戦術駆逐艦II型
全長:550m
最高速度(大気中)800km
ハイパードライブクラス:1.5
装甲:中量級通常装甲、対ビームコーティング
武装
・二連装280mm重粒子キャノン砲x2(船体前方)
補助装備:中型格納庫
概要
艦隊の護衛を担う本艦は、戦闘機を格納可能な格納庫を備えており、中型戦闘機編隊を一つ搭載が可能だ。
武装は二連装280mm重粒子キャノン砲x2のみではあるが敵襲された場合は、搭載されている戦闘機編隊が主な戦力となり対応し、出撃する。
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さてさていかがだったでしょうか。至らないところもあるかと思いますが、温かい目で観ていただけると嬉しいです。ご意見、ご感想お待ちしております。次回もお楽しみに!
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