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ニヌルタの石

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第二章

「アサックが使っていた石だが」
「あの草の様な緑の石ですね」
「あの石妙に硬くまた面白いものが感じられた」
「そうなのですか」
「だからだ」
 そうした石だからだというのだ。
「一つ他の神々に見てもらってだ」
「そうしてですか」
「そのうえで使えるかどうかな」
 このことをというのだ。
「確かめるか」
「そうしますか」
「どうだろうか」
「いいかと」
 即座にだ、従神は答えた。
「あの石は私も気になっていたので」
「そうか、ではな」
「はい、神々にです」
「見せよう、そしてな」
「使えれば」
「用いよう」
 こう言ってだった。
 実際に石を神々に見せた、すると鍛冶や石の神々が言ってきた。
「これはいいぞ」
「いい石だ」
「銅が採れるぞ」 
 そうだというのだ。
「こんな石があるとは」
「思いも寄らなかった」
「これはいい」
「銅を採るぞ」
 口々に言ってだった。
 彼等は銅を採っていった、そしてニヌルタに話した。
「まさか銅まで採れるとは思わなかった」
「水だけではないか」
「山にいたアサックを倒して得られるものは」
「銅もか」
「そうだな、だがどちらも抑えるか見付けないとだ」
 ニヌルタは鍛冶や石の神々を話した。
「水は洪水となりだ」
「禍になっていたな」
「チグリス川に持って来なければ」
「石を用いて」
「そして銅もだ」
 こちらもというのだ。
「若しもだ」
「何も思わず捨て置けば」
「見付からなかったな」
「アサックが用いていたそれを」
「ただ倒しただけでは駄目だった」
 アサック、彼をとだ。ニヌルタは言った。
「そこからだ」
「何かしてこそだな」
「大きなものが得られるな」
「戦いに勝ってからが肝心だな」
「そのことがわかった、ただ勝つだけでは不十分だ」
 自分に噛み締める様に述べた。
「むしろ大事なのはそれからだ」
「全くだな」
「勝って終わりではない」
「それで万事完結ではない」
「むしろそれからだ」
「それからが大事だ」 
 鍛冶と石の神々も頷いた、そして彼等は銅を採っていった。
 ニヌルタはその銅を人間達にもたらした、水もそうした。そうして彼等にもアサックとの戦いとそれから何があったか何を得られたか話した、そして言うのだった。
「戦に勝って終わりだと思わないことだ」
「それからですね」
「それから何が起こってどうするか」
「それが大事ですね」
「何を見付けるかも」
「そのことを覚えておく様にな」
 人々に言うのだった、そしてだった。
 この教えは人間達に伝わった、そのうえで今も残っている。メソポタミア神話にある古い話の一つである。


ニヌルタの石   完


                  2024・2・12 
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