ニヌルタの石
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第一章
ニヌルタの石
ニヌルタ、黒く濃い髭に顔の下半分が覆われハンダゴテで奇麗にセットされている長身で逞しい若々し外観の彼にである。
鬼神アサックを征伐せよと主神達から命令を受けた、それでだった。
従神を引き連れて彼の征伐に赴いた、そしてこの神と闘うが。
長い闘いの末勝った、だがここでだった。
「何と、これは」
「アサックの住んでいた山からです」
少年の姿をしている従神も言った。
「水が吹き出してきました」
「戦の時に何かあったな」
「先程ニヌルタ様が矢を放たれて」
従神は率直に話した。
「その一撃がです」
「山を撃ったか」
「それによってです」
「水が吹き出したのか」
「山の中から」
「鬼神は倒したが」
それはよかったがというのだ。
「これではだ」
「はい、水の勢いは強いです」
「その水が洪水となりだ」
「世に禍を与えます」
「そうなる、だからな」
それでというのだ。
「この水を防ぐ壁を出そう」
「そうしますか」
「そしてその水をだ」
神はさらに言った。
「チグリスの川にだ」
「流れ込む様にしますか」
「そうなれば水は禍でなくだ」
「恵になりますか」
「そうなるからな」
だからだというのだ。
「壁を出してだ」
「チグリスの川まで、ですね」
「水を流そう」
「わかりました」
従神もそれはよいと応えた、こうしてだった。
山から吹き出る水がチグリス川に流れていった、ニヌルタはその様子を見てこれでいいと思った。だがここでだ。
初老の女の姿をした創造の女神ニンハマが彼のところに来て起こって言った。
「川に水を流すのはよくありません」
「どうしてですか、それは」
「川の流れは自然なものでその恵もです」
こうニヌルタに話した。
「自然のもの、洪水もです」
「自然のものですか」
「自然を乱すことはよくありません」
こう言うのだった。
「だからです」
「なりませんか」
「止める様に」
「いえ、そうすればです」
ニヌルタはニンハマに反論した。
「多くの人や生きものが困りますので」
「なりませんか」
「ですから」
そうであるからだというのだ。
「ここはどうか」
「それはしてはなりませんか」
「お願いします、その恵はです」
洪水をもたらす水が川に流れその水が世にもたらすそれがというのだ。
「多くの穀物や果物、木々や家畜を育てるので」
「いいのですか」
「貴女にもです」
ニンハマにもというのだ。
「恵がもたらせられますが」
「それでは」
「ここはどうかです」
「水が川に流れる様にですね」
「されて下さい」
「私にも恵が来るなら」
それならとだ、ニンハマも頷いた。そうしてだった。
女神も納得した、その後でだった。
ニヌルタは従神にだ、こんなことを話した。
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