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私 あの人のこと 好きなのかも やっぱり好きなんだよ 昔からー

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5-3

 8月も終わりの土日にも、峰ちゃんクラブの出店が予定されていて、私は日曜はドラッグストアのバイトに行かなければならないので、土曜だけ手伝うことになっていた。そして、来週の土日も日光駅前でも予定されているのだが、私は土曜日だけなのだ。道が混むからと朝の6時に集合が掛かっていて、キッチンカーとボロの軽自動車で分乗して向かった。8時前に着いて、外は少し肌寒かったのだ。勘治さんとこは、本業が忙しいので、今日は鬼怒川の駅前でやると言っていたらしいので、隣は唐揚げのお店だった。
 この日は、小さめのお好み焼きとタコ焼き串を売っていて、値段も安い目なので10時頃から売れ出して、行列まではいかなかったけど、絶えず買い求める人が居たのだ。だから交代で休憩を取っていて、私は持ってきたおにぎりを、店から少し離れたベンチで食べていたら

「となり 座ってもいいかなー」と、私 何にも言わないうちに座ってきて・・・40ぐらいの男の人。手にはカメラを、そして肩からも大きなカメラを下げていて、もう片方の手にはお好み焼きを持っていた。ウチのお店のだ。お客さん ?・・・。

「いやー いい匂いがしてね それに君の姿に魅かれたんだ 写真を撮っててね 後で 買おうと思ってて 今 行ったら、君の姿が見えなくて お好み焼きを買ってきたんだ そしたら めっけーって ラッキーだったよ」と、勝手なことを言っていたので

「あのー 早く 食べたほうがいいですよ 温かいうちに・・ ウチのは 他のお店のんみたいに ベチャーとしてなくて ふぁふあホコホコなんやからぁー」

「あっ そーかー ウン うまい! ふぁふあーだ 今日はこんなうまいものと君のような美少女に出会えてラッキーだよ 美人の隣だから余計にうまい! 君は関西人なのかな?」

「はっ まぁ そんなとこかなー」

「僕はね 戦場ヶ原から中禅寺湖の写真を撮っていたんだよ 普段は風景しか撮らないんだけどね お願いがあるんだけどー 中禅寺湖をバックに君の写真を撮らせてもらえないだろか? 衝動的に撮りたくなったんだ!」

「ええー そんなー 困ります ウチは モデルでもないですからー」

「いいんだよ その方が 素朴で純粋なお嬢さんと穏やかで澄み渡った中禅寺湖 君には不思議な・・・引きずり込まれるような魅力を感じるんだ」

「そんなこと 言われてもー」と、私はさっさと立ち去ろうとベンチから歩き出したら、その人も追いかけるようにしてきて

「頼むよー 1枚だけでもー」と、しつこく付いてきていて、それを見ていたのか朋子さんが

「どうしたの? あっ さっきのお客さん」

「そのぉー ウチの写真を撮りたいって・・・断っているんですけどー」

「ふぅ~ん あのね お客様 何度か そーやって声を掛けてもらえるんですけどねー そーいうのはお断りしてるんですよ」

「そうかー 君も なかなかの美人ですねー そうだ 二人揃ってならどう?」

「だからー 私達はひと様の前に曝すような者でも無いですしー 第一 お嫁入前なんですよー 将来の旦那様が、そんなの聞いて、嫌な思いしたらどうするんですか? だから、お断りします!」と、ビシッと言ったもんだから、その人も渋々去って行った。でも、たこ焼きの串を買って、去って行ったのだ。

「リーダー ありがとうございます ウチ どうしたらええんかなーって 困ってた」

「ふふっ マオは 可愛いから魅きたつからねー 呼び込みしていても・・・芸能スカウトが来ても不思議じゃぁーないヨ あのね 安斉なんとかってモデルの子 って知ってる? 似てるんだけど あの子よりも口元が可愛くて・・・言われたこと無い?」

「はぁ 誰ですか? その人?」

「まぁ いいよ さぁ もう ひと踏んばり 今日は4時までね」

 だけど、その後も終わり近くになって、リュックを背負った男性4人組がやって来て、たこ焼き串とお好み焼きをそれぞれが頼んでいて、山に登って降りてきたところらしくて、腹が減ったと私達に向かって、話していたんだけど、急に私に

「君 可愛いねぇー バイト? この辺の人? 名前なんて言うの?」とか、だけど、朋子さんが遮ってくれて

「お客さん達 どこから来たの?」

「うん 東京の大学のワンゲルのサークル」

「そうなのー あちこちの山 歩くの?」とか言って、私を遠ざけるように、話を逸らしてくれていたから、その間に私はお店の奥に入って片付け物とかをしていたのだ。

 お店の片付けを終えて、みんながほっとして休んでいる時に、リーダーが私に

「マオちゃん あなたはねー いつも笑顔で人あたりも好いしー 悪くはないと思うよ お客さんも、そのお陰で買ってくれる人も居るし・・・ だけど、あなたは自分が他の女の子より可愛くて美人だってこと自覚してる?」

「ハァ? そんなこと・・・」

「自覚してないよねー 誰にでも笑顔振りまいて 優しく接するしー 誰にでも好かれるよねー」

「あのー 私 そんなつもりじゃーぁ チャラチャラしてるみたいですか?」

「ちがうの ウチが気になるのはー マオちゃんは美人なのよ 人間 顔で差別するんじゃぁないけど 最初は見た目なんだよ 違うのよ マオちゃんは うまく言えないけど、その自覚があれば それなりの雰囲気が出てくるはずよ お高く留まれって意味じゃぁないよ 近寄りがたいものってあるじゃぁない? 凛とした雰囲気って で ないと このままじゃぁ なんでもかんでも男が寄って来るヨ! それを振り払うだけでも、マオちゃんが苦労するからね」

「・・・マオは リーダーの言っていること 理解出来ません どうすればいいのですか?」

「そうね あのさー 4年生の深川翠さんって知っている? ミス宇大って言われてる人 あの人1年のころから男の子の間では、すごいウワサだったのよ 美人で・・・だけど、誰も近づけなくて声も掛けれなかったの 雰囲気に圧倒されてね オーラがすごいのよー でも、女の子の友達も多いのよ いつも、何人かと一緒よ 勘治さんがね 彼女が2年生の時に、まだ 彼氏も居ないみたいなので、ナンパするつもりで声を掛けたんだって あいつ あちこちで女の子に声かけてるからね それでね、話をしていると段々と雰囲気に押されてしまって、そのうち俺なんか太刀打ちできないって、退散したんだって 言葉遣いとか育ちの良さもあるんだろうけど、同じ空気を吸っているのが申し訳ないと思ったそうよ ウチの隣の桾沢さん 知ってるでしょ? あの人も同じようなこと言っていたわ 今度、遠くからでも彼女を見てみればー 確かに、凛として構内を歩いているわ 教育学部よ よく 音楽室でピアノやってるのよー まぁ 参考になればネ」

「はぁ」と、私には、朋子先輩が何言っているのか、まだ わからなかった。
   
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