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ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル

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第134話 3つの戦い!旧魔王派の新たな力!

 

 カトレアは以前敗北した後冥界の牢獄に捕らえられた、次郎のノッキングでグルメ細胞も封印されてしまい脱出は不可能だった。


「くそっ、私はここで終わりなのか……」


 現実を受けいられずに牢屋の中で打ちひしがれるカトレア、自分はこの世界を変える存在だと本気で信じていた彼女は二度の敗北で自信を失っていた。


 特に一龍達の無双っぷりには心を折られてしまった。自分達が世界を変えるなど不可能なんじゃないかと思ってしまっていた。


「ぐあっ!?」


 その時だった、見張りをしていた数人の悪魔が一斉に気絶したのだ。何事かと思い牢屋の外を見て見ると槍を持った青年とまるで曲芸師のような風貌をした人物が立っていた。


「貴方は……!?」
「曹操」
「はっ」


 青年は槍を振るうと牢屋の檻が斬られて地面に崩れ落ちた。特殊な結界を施されていたがまるで意味をなさなかった。


「無様ですね、カトレア。折角グルメ細胞を与えてやったというのにこの体たらくとは……
「ジョ、ジョア……!」


 カトレアは曲芸師のような人物に声をかけられて冷や汗を流した。普段の彼女なら自分を侮辱されたと喚き散らかすだろうが、そんなそぶりは一切見せなかった。


 如何に甘やかされた環境で生きてきた彼女でもジョアという人物が危険だと本能で理解しているからだ。


「さあ出なさい、他の2名ももう救出しています」
「クルゼレイ達も……?」


 カトレアは取り合えず二人についていく事にした。冥界を抜けて異空間に入るとそこにはクルゼレイとシャルバの姿があった。


「カトレア!」
「クルゼレイ!こうして会えて嬉しいわ!」


 恋人である二人は駆け寄り抱擁を交わした。


「さて、貴方達を助けたのはもう一仕事してもらう為です。決して善意で助けたつもりは無いと思ってください」
「ふん、本来なら貴様のような奴の言葉など聞く必要もないが特別に聞いてやろう」
「……我々は何をすれば良い?」


 傲慢な態度をとるシャルバ、このメンバーの中でも自分は選ばれた存在だと本気で信じているのでジョアを前にしても戯言をほざけていた。


 一方クルゼレイもプライドは高いが流石にジョアを前に余計な事は言えないと冷や汗を流しつつ自分達は何をすれば良いと問いかける。


「簡単なことです。貴方達には冥界で暴れてもらい魔王達や一龍達の目を釘付けにしてくれればいい」
「何故そんな事を?」
「そちらが質問をしていいなど言っていません。やるかやらないか、その二択だけお答えください」


 カトレアが質問するがジョアの威圧感に押し黙ってしまう。


「新しい力とグルメ界の猛獣も与えましょう、やりますか?」
「やるに決まっているだろう!今度こそサーゼクス共やあの無礼な赤龍帝、そして我々の邪魔を下一龍とやらも皆殺しにしてくれる!」
「良いでしょう、ではまずこれを」


 ジョアはシャルバに赤い錠剤を渡した。


「なんだこれは?」
「それはグルメ細胞の壁を強制的に打ち壊す薬です。飲めば間違いなく強くなれるでしょう」
「ははは、それは良い!さっさとよこせ!」


 シャルバはそう言うと錠剤を受け取って飲み込んだ。するとシャルバから凄まじいオーラがあふれ出した。


「ふははっ!力が溢れてくるぞ!これならもう負ける気がしない!今度こそ我らが勝つのだ!」


 自身の力に酔いしれながら意気込むシャルバ、だがクルゼレイは錠剤を見ながら嫌な予感を感じていた。


「……こんなものがあるならなぜ前にくれなかったんだ?」
「最近になって完成したからです。その錠剤の材料には赤龍帝の細胞も入っていますので調合に時間がかかりました」


 以前イッセーがトミーロッドとの戦いの際に指を失った事がある、その時の指を彼らは密かに回収していたのだ。


 そしてそこから赤龍帝の細胞を抜き取って錠剤を作ったようだ。


「嫌な予感がする、何かリスクがあるんじゃないだろうな?」
「なら別に飲まなくてもいいですよ、その代わりあなたは猛獣のエサになってもらいますが」
「ぐっ……!?」


 クルゼレイは確信した、ジョアは自分達を囮にして何かをするつもりだ。あの一龍達という化け物どもの注目を得るには相当派手な事をしないといけない、この錠剤を飲めば怪物のような姿に変化してしまうのじゃないかと悪寒を感じていた。


 だが飲まなければジョアに殺されて猛獣のエサにされるだけだ。今更ながら自分はとんでもない存在と手を組んでしまったんじゃないかとクルゼレイは後悔していた。


「クルゼレイ、飲みましょう」
「カトレア、だが……」
「どの道私達にはもう後がないわ。私も怖いけど貴方と一緒なら……」
「カトレア……分かった。最後まで一緒だ」


 クルゼレイとカトレアは覚悟を決めて錠剤をのみ込んだ。すると凄まじい力が二人からあふれ出した。


「な、なんだこの力は……!?イケる……これなら我らの悲願が達成できるぞ!」
「この力を持って私達は世界を掌握する!」


 それと同時に何の根拠もない自信も湧き上がってきた二人、その狂気の目には先程の警戒心など既になかった。


「哀れな奴らだ、最後には確実な死が待ってるというのに……」
「ある意味幸せでしょう、夢気分で死んでいけるのですから。さあ存分に暴れなさい」


 曹操は侮蔑するような眼差しで3人を冷ややかに見つめジョアは興味など無いと言った感じで一瞥した。


 そしてカトレアたちはイッセーとディオドラの決闘で集まった悪魔の重鎮たちを狙い襲撃を仕掛けたのだ。


「くそっ、サーゼクスめ!我々を危険な目に合わせおって!」
「この償いは必ずさせ……な、なんだ!?」
「黒い炎!?」
「はははっ、無様なモノね!」
「き、貴様はカトレア!」


 カトレアは悪魔の重鎮を狙い避難通路を襲撃する、突然の爆発に悪魔の重鎮たちは驚いていた。


「お前達は私達を否定してサーゼクスたちに組み入った、その罪は万死に値するわ!」
「黙れ!貴様ら、さっさとコイツを始末しろ!」


 悪魔の重鎮の一人の指示に護衛の悪魔たちが一斉にカトレアを取り囲んだ。


「死ねぇっ!」


 そして全員がカトレアに槍を突き刺しカトレアは頭、胸、腹を貫かれる。


「はっはっは!所詮はただの負け犬よのォ!」
「旧支配者はもういないのだ、新たな世界に貴様らの居場所はない。死んでしまうがいい」
「……ふふふ、哀れね」
「な、何だと!?」
「悪魔とはいえ頭と心臓を刺されてなぜ生きているのだ!?」


 悪魔の重鎮たちはカトレアが死んだと笑うが、カトレアが何事もなく不敵な笑みを浮かべて笑う光景を見て狼狽える。


「私の体はこの黒い炎そのもの!そんな何の変哲もない物理攻撃など効果は無いわ!」


 カトレアが刺された部分から黒い炎があふれ出した。


「火柱!」


 そして黒い炎の柱が兵士たちを吹き飛ばしていく。


「ぎゃああっ!?あ、熱い!?」
「ひ、火が消せない!水の魔法も効果がないぞ!?」


 黒い炎に焼かれて苦しむ悪魔の兵士たち、その一部の兵士が水の魔法で体に付いた炎を消そうとするが全く消えなかった。


「さあ次はお前達の番よ」
「ま、待て!私は助けてくれ!そ、そうだ!お前達の協力者になろう!」
「我々はサーゼクスに脅されて仕方なく今の悪魔政権に入ったんだ!」
「一緒に世界を変えようじゃないか!」


 悪魔の重鎮たちは情けなくそう命乞いをする、それを見たカトレアは失笑を浮かべる。


「なんて情けない奴ら……お前たちなど私達の作る新たな世界に必要のない存在よ」
「ま、待ってくれ……!」
「火拳!!」


 カトレアの拳が黒い炎に包まれて巨大化していく、そして拳を突き出すとその炎が拳の形になり悪魔の重鎮達を焼き焦がしていった。


「ぐわあぁぁぁぁっ!?」
「あ、熱いぃぃぃっ!!」
「あはははっ!いい気味だわ!私達を否定した奴らなど苦しめばいいのよ!」


 苦しむ悪魔の重鎮たちを見てカトレアは楽しそうに笑う。


「さあ、もっと苦しめてやるわ」
「止めなさい!」
「お前は……ふん、セラフォルーの妹か」


 そして再び苦しめてやろうと近づくが何者かが乱入してカトレアに立ちふさがった。それはソーナとその眷属たちだった。


「か、会長!拙いですよ!?この女はカトレア・レヴィアタンです!以前セラフォルー様にやられたとはいえ俺達が勝てる相手じゃありません!」
「それでもこの方々を見捨てる訳にはいきません」
「どうしてですか!こいつらの中には前に会長を侮辱した奴だっているんですよ!?」
「匙、それとこれは話は別です。そんな理由で目の前の悪を見過ごした私達に学校を作って人に何かを教えるなんて資格はありません」


 匙はソーナに逃げようというが彼女は若手の悪魔として重鎮たちが殺されかけているのを見過ごせないと返した。


「貴方達は逃げなさい、私の我儘で貴方たちまで危険な目にあう必要はありません」
「……そりゃ水臭いってもんですよ、会長」
「私達は私達の意思で貴女の眷属になりました、死ぬ時も共にあります」
「そうですよ!会長一人残して逃げたりなんてしません!」
「匙、椿姫、皆……ありがとう……」


 ソーナは眷属に逃げろと言うが眷属は誰一人として逃げようとしなかった。そんな眷属を見てソーナは苦笑するが同時に誇らしくも思っていた。


「お涙頂戴の友情劇はもうお終いかしら?蛮勇と勇気は違うのよ、貴方達は必ず後悔しながら地獄に落ちる事になるわね」


 カトレアはそんなソーナ達をあざ笑うと黒い炎を上空に集め出した。


「まとめて灰燼に帰すといいわ……大炎戒・炎帝!!」


 まるで黒い太陽のように纏まった炎は一直線にソーナ達に向かっていった。


「氷龍・青桜」


 だがソーナ達に直撃する前に氷でできた龍が6体飛んできてソーナ達の前で合体して巨大な氷の桜に変化した。


 その青い桜は黒い太陽とぶつかり共に消滅する。ソーナ達には怪我は一切なかった。


「今の氷はまさか……」
「待たせてごめんね、ソーナちゃん」


 ソーナが今の氷を放った人物を察すると同時に、上空から聞き覚えのある声が聞こえてきた。それはソーナの姉であるセラフォルーだった。


「ソーナちゃん、どうして逃げなかったの?殺されるって分かってたでしょ?」
「はい、仰る通りです。でも若手として重鎮の方々が殺されるのを黙ってみてられなかったんです……」
「……ふふっ、ソーナちゃんは相変わらずだね。でもそんなソーナちゃんが私は大好きだよ」


 落ち込むソーナにセラフォルーが笑みを浮かべて頭を撫でた。セラフォルーはソーナが重鎮に恩を着せようとして助けようとしたのではなく、純粋な正義感で動いたと分かっていたからだ。


「ほらよ」
「わぷっ!?」


 そのとき背後から何かの音が聞こえた。ソーナ達が振り返るとカラフルな長い髪をした男性が何かの水を重鎮たちにかけていた。


「お、おいアンタ!一体何やって……!?」
「黒い火が消えた!?」


 匙が止めようとしたが重鎮に纏わりついていた黒い炎が消えていた。それを見た椿姫も驚いた様子を見せる。


「サニー君、どうかな?」
「ああ、良好だ。この炎は療水で消える。まあグルメ細胞を持ってないこいつらじゃあ傷は治らないけどな」


 サニーはそう言うと面倒くさそうに頭を掻いた。


「セラフォルー……ようやく来ましたわね。それにサニー……貴方にも会いたかったですわ。あの時の屈辱、今こそ晴らしてくれます」


 カトレアは因縁のある二人を前にして黒い炎をたぎらせて怒りの形相を見せた。


「セラ、俺も手貸したほうが良さげ?」
「ううん、サニー君はそこで見てて。これは私の戦いだから」


 セラフォルーはそういって一歩前に出る。


「ははっ、セラフォルー、血迷ったようね。以前一人では私に叶わなかったことをもう忘れたのかしら?」
「カトレアちゃんこそいつまでそんなレベルで喜んでるの?私は更に上のステージに行ったんだよ?」


 あざ笑うカトレアにセラフォルーはニコッと笑みを浮かべると全身から冷気を放ち始めた。


「これは……!?」
「見せてあげる、私の修行の成果を」


 セラフォルーは辺りの景色を氷漬けの世界に変えながら妖艶にほほ笑むのだった。



―――――――――

――――――

―――


 一方その頃、フィールドの別の場所でガブリエルと護衛の天使とエクソシストたちが旧悪魔派と戦っていた。


「光よ!」
「ぎゃあっ!?」


 ガブリエルの放った聖なる光が数体の悪魔を塵に変えた。普段はおっとりとしている性格のガブリエルだが四台天使の一角として勇敢に戦っていた。


 そんな彼女の前ではグルメ細胞を得たとはいえ旧魔王派の悪魔など敵ではなかった。


「ガブリエル様に続け!!」
『おお―――――っ!!』


 天使とエクソシストたちは堅実な戦いぶりで悪魔たちを押していった。いくらパワーアップをしたといっても唯力を振るうだけの野蛮な戦闘をする悪魔に負けるはずもなかった。


「ミカエル様が来られなくて良かったわ。覚悟はしていたけど本当に襲撃をしてくるとは……」


 ガブリエルはこの場にミカエルがいなくて良かったと言葉にする。彼の実力はよく知っているがグルメ界の生物も出てきては流石に危険だと思ったからだ。


 だがこの調子なら何とかなるだろう、そう思ったガブリエルだったが……


「ガブリエル様、危ない!」
「えっ……?」


 死角から放たれた矢がガブリエルを襲った。近くにいた天使が盾で矢を防ごうとしたが盾ごと天使を貫いてしまった。


「大丈夫ですか!?」
「は、はい。問題はありません……痛みが全くないのです。これは一体……」


 矢が貫通した天使をガブリエルは急いで治療しようとするがその天使は痛みを感じないと言った。


 体を貫通したというのに血の一滴も出ていなかった。よく見れば矢の先はまるでハートのような形をしたものだった。


「とにかく一度引いて状態を見てください」
「いえ、このくらいなら……ッ!?」


 その時だった、矢が刺さった天使が突然ガブリエルに剣を振り下ろした。近くにいた天使がその剣を槍で受け止める。


「貴様、ガブリエル様に対して一体何をしている!?」
「……クルゼレイ様の為にお前達を殺す!」
「なっ!?」


 突然変貌した天使が仲間である天使を攻撃し始めた。困惑する彼らに再び矢の雨が降ってきた。


「皆さん、防御しないで回避してください!」


 ガブリエルがそう叫んだがかわせずに矢を受けてしまった天使やエクソシストたちが仲間を襲い始めた。


「お前達、正気に戻れ!」
「そんな……天使様が襲ってくるなんて!?」
「こ、攻撃なんてできない!」


 天使同士の戦いを絶望した様子で見るエクソシストたち、彼らは信仰の対象である天使に攻撃などできなかった。


「まさか先程の矢が……」
「ふふふっ、自身を信仰し尽くす存在に襲われるのはどんな気分かね、ガブリエル?」
「貴方はクルゼレイ・アスモデウス!」


 ガブリエルが同胞たちがおかしくなったのは先程の矢のせいなのかと考えていると上空からクルゼレイが降り立った。


「我が同胞たちに何をしたのですか!?」
「彼らは私に愛を誓ったのだよ。我がアスモデウスが受け持つ七つの大罪の一つ『色欲』の力……これこそがグルメ細胞を得て会得した私の力だ!」


 ガブリエルの質問にクルゼレイは色欲の力だと話す。


「受けよ、『魅力する愛欲の矢』……はっ!」


 クルゼレイの指から出てきた魔力がハートの形になってそれが矢に変化して一斉に天使達に襲い掛かった。ガブリエル以外のメンバーは全員矢を受けてしまい魅了されてしまう。


「浄化の光よ!彼らを正常に戻したまえ!」


 ガブリエルは癒しの光を天使たちに放つ、本来であれば上級悪魔の呪いすらも打ち消す聖なる光だったが……


「そんな……!?」


 ガブリエルの癒しの光をもってしても天使達を正常にすることはできなかった。


「無駄だ、ガブリエル。四大天使の力をもってしてもグルメ細胞の力によって強化された私の『魅了』は打ち消せない。私が術を解くか私が死なない限り奴らは永遠に私の人形だ」
「ならば貴方を滅します!」


 ガブリエルは極太の光の光線をクルゼレイに放つがハートのようなバリアがクルゼレイを守ってしまう。


「ふふっ、如何に貴様と言えど今の私には傷も負わせられないか」
「ぐっ……!?」


 自身の攻撃ではクルゼレイを倒せない、どうにかして同胞たちだけでも何とかできないか考えているとクルゼレイの後ろで事の成り行きを見ていた悪魔たちが前に出た。


「クルゼレイ様、ここは我々にお任せを」
「動くなよ、ガブリエル。天使たちに命令して自害をさせるぞ?」
「……はぁ」


 急に強気になって前に出る旧魔王派の悪魔たちに冷めた視線を向けたクルゼレイは、天使達を操り武器を首に付きつけさせた。


「や、止めなさい!彼らを傷つけないでください!もう抵抗しませんから……」
「はははっ、無様だな!ガブリエル!」


 抵抗を止めたガブリエルを悪魔たちが押さえつけた。


「ガブリエル、貴様も私の愛を受けて忠実な下僕になるがいい」
「お待ちください、クルゼレイ様。コイツを洗脳する前に我々にお楽しみをさせていただけませんか?」
「この忌々しい純白の翼を黒く染め上げてやりましょう!なんなら貴方様が最初に……」
「私にカトレアという最愛の悪魔がいると知って話しているのか?それ以上不快な言葉を話すなら貴様を洗脳して冥界のマグマの中に飛び込ませてやろうか?」
「も、申し訳ございません……」


 調子に乗った悪魔を睨みつけるクルゼレイ、流石に拙いと思った悪魔は彼に謝罪をした。


「さぁてガブリエルよ、貴様らにも恨みはたっぷりある。今から貴様の尊厳という尊厳を破壊して堕天させてやろう!」
「……私は貴方達に屈したりはしません」
「その強気な態度がいつ泣きに変わるか楽しみだな」


 悪魔たちはそう言ってガブリエルの衣服を破って脱がした、下着姿になったガブリエルは何もできずに押し倒される。


「下らん、事が済んだら連れて来い」


 クルゼレイは背を向けてこの場を去ろうとする。そんな彼を尻目に悪魔たちは邪悪な笑みを浮かべてガブリエルに迫っていく。


(このような下劣な悪魔たちに汚されるとは……ミカエル様、皆、そして主よ、申し訳ありません……!)
「ポイズンライフル!!」


 その時だった、何処からか放たれた毒の弾丸が悪魔たちの顔にヒットした。悪魔たちはまるで体を内部から焼かれるような痛みに襲われて辺りをのたうち回った。


「なにが起きた?」
「悪いけど見かけた以上放置はできない、僕も介入させてもらうよ」


 警戒するクルゼレイは上空から聞こえた声に上を向く、そこには巨大なカラスのような鳥が飛んでおりその背から誰かが飛び降りた。


「貴様は報告にあった四天王とやらの……」
「旧魔王派の幹部だね。話には聞いてある、君を捕縛させてもらう」


 それは美食四天王のココだった、彼はイッセーの助太刀の為にD×Dに来ていたのだ。


「これを着るといい」
「えっ?」


 ココは衣服を破かれたガブリエルにフードを渡した。


「そのフードは毒に強い素材で作ってある、その綺麗な肌が僕の毒で荒れることは無い」
「き、綺麗……ッ!?」


 ココの言葉にガブリエルは赤面して驚いた。信仰の対象として美しいと言われてきた彼女だが純粋な気遣いの中で褒められたのは初めてだったので困惑しているようだ。


「邪魔をするなら貴様も私の傀儡にしてやろう」
「生物を魅了する能力か……なら君を毒の虜にしてあげよう」


 オーラを湧き上がらせてクルゼレイが右手を構える、それに対してココは冷静に笑みを浮かべると全身を毒で覆う。


 そして毒の弾丸とハートの矢がぶつかり合うのだった。


―――――――――

――――――

―――


「とりゃあっ!」
「げふっ!?」


 リアスの放った飛び蹴りが一人の悪魔の顎を蹴り上げた。


「クリムゾン・ブラスター!」


 両手から魔力の光線を放ちそのまま回転して多くの悪魔たちを薙ぎ払った。


「くそっ!忌々しいグレモリーめ!」
「囲んで殺せ!」
「させないよ」


 リアスに一斉に襲い掛かろうとした悪魔達の前に祐斗が立ちふさがった。


「鬼斬り!」
「ぎゃああっ!?」


 10人ほどの悪魔が一斉に祐斗に襲い掛かったが、二本の刀を交差して放たれた斬撃に吹き飛ばされていった。


「早いぞ!防御を固めろ!」
「虎狩り!」
「ば、馬鹿な!?こんなあっさりと……!?」


 魔力の盾を展開した悪魔たちを背に回して勢いよく振り下ろされた二本の刀に紙切れのように斬りさいた。


「本当は口に刀を咥えて放つみたいだけど僕には無理だな……」


 祐斗は技の感想を言いながら苦笑する。


 この技を参考にした漫画のキャラは口に刀を咥えていたが、祐斗がそれをやろうとしたら歯が壊れそうになったので断念したようだ。


「小猫ドライバー!」
「ごはっ!」


 小猫は悪魔を地面に頭から叩きつける、その時巻き起こった衝撃が辺りの悪魔たちを吹き飛ばしていく。


「小猫流竜巻地獄です!」


 そこに追撃で小猫は悪魔をジャイアントスイングしながら鈍器のように扱い周りの悪魔を巻き込みながら攻撃していった。


「雷槍・霹靂一閃!」
「げひゅっ!」


 朱乃は雷のごとく速さでののさま棒を変化させた槍で数体の悪魔を切り裂いていった。


「落ちろ、雷!万雷!!」
「あばばばばっ!?」


 そして最後に複数の雷を落としてまとめて痺れさせていく。


「スタンドばかりに頼っていたら駄目です!新しく覚えた気化冷凍法で凍ってしまうですぅ!」
「うわあああっ!?」


 ギャスパーは悪魔の体内にある水分を気化させて全身を氷漬けにしてしまった。


「このガキが!!」


 一体の悪魔がギャスパーに向かっていったがギャスパーの目から魔力の光線が出て迎撃した。


「空裂眼刺驚……ですぅ。流石に体液は飛ばせないので魔力ですけどね」


 ギャスパーが使った技も漫画のキャラがモチーフなのだが眼球の体液を高速で飛ばす技なので実際にやったら失明してしまう、なのでギャスパーは魔力で応用した。


「調子に乗るなよ!」
「わわっ!?いっぱい来た!?世界、お願い!」


 怒った悪魔たちが一斉にギャスパーに襲い掛かってきたので涙目になったギャスパーは結局スタンドを発動した。


 ちょっと呆れた様子で出てきた世界は拳を構える。


「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァァァッ!!」
『ごべぇぇぇぇッ!?』


 そしてマシンガンのごとく放たれた世界の拳でのラッシュは悪魔たちの胴体に無数の拳の跡を刻みつけて吹っ飛ばした。


「私も最近読んだ漫画の技、やっちゃうんだから!」


 イリナは黒い靴を地面に押し付けて足を軸に激しく回転し始めた、すると摩擦熱で黒い靴が熱を帯びて赤くなっていく。


「これぞ『紅い靴』……なんてね」


 そして炎を纏った足でまるで閃光のように軌跡を描きながら悪魔に向かっていった。


「『最上級挽き(エクストラアッシ)』!」


 イリナの足から放たれた無数の蹴りが悪魔たちの体を打ち抜いていった。


「私も後に続くぞ、イリナ!」


 ゼノヴィアはデュランダルを右手に、そしてイッセーから借りていたアスカロンを左手に二刀流に構えた、そして二本の聖剣に聖なるオーラを剣に集めていく。


「秘剣!『月牙十字衝』!!」


 ゼノヴィアは十字を刻むように剣を振るう、すると集められていた膨大な聖なる光が斬撃となって悪魔たちを消し去った。


 悪魔たちは声も出す暇もなく消滅していった。


「……こんなところね」


 倒れる悪魔たちを前にリアス達は武器を下ろした。


「……」
「あら、どうかしたの?」
「いや……あまりにも強くなっていて驚いた」


 そんなリアス達をサイラオーグは呆気に取られた表情で見ていたためリアスは首を傾げてどうしたのかと尋ねる。


 そんなリアスにサイラオーグは強くなりすぎていて驚いたと答えた。


「そうかしら?貴方だって旧魔王派の悪魔に後れを取っていないじゃない」
「そう言って貰えて有難いがリアス達ほど活躍はしていないぞ」


 リアスに自身も強いと言われたサイラオーグは複雑そうにそう呟く。


 サイラオーグはバアルの生まれにして滅びの魔力を引き継げなかった。だがそんなマイナスを埋めてしまう程の特訓と信念によって現在は若手悪魔最強とも呼ばれる強さを持っていた。


 だがそんな自分をもってしてもリアス達は強くなっていたと実感する。


 リアスも才能ある悪魔だ、いずれは最上級悪魔の一角として名を轟かすとサイラオーグは考えていた。


 だが少し会わない内にリアス達はとんでもなく強くなっていた、最早別人じゃないのかと言う程にだ。


(状況を素早く見極める判断力、即実行する決断力、息の合ったチームワーク、なにより殺し合いの場でまったく怯えない揺るがさない精神力……強さもそうだが場慣れしすぎている)


 強さもそうだがそれ以上にリアス達が場慣れしていることにサイラオーグは驚いていた。自身も実戦をいくつか重ねてきたがここまで大きな殺し合いは初めてだ。


 正直恐れもあるし不安に負けそうにもなった。だがリアス達はまるでいくつもの地獄を乗り越えたような太い精神でものともしていなかった。


「リアス、一体どんな修業をしたんだ?」
「そうね……最近だと悪天候の中空を突き進んだり重力が何倍も上がる地下洞窟に潜ったりしたわね。それと息を吸うだけで肺が焼ける程の砂漠を進んだりもしたわね」
「そ、そうか……」


 あっけらかんとそう話すリアスにサイラオーグは一体どんな地獄を見てきたんだと内心畏怖した。なぜならばリアスの目のハイライトが消えていたからだ。


「まあ貴方も強くなりたいならイッセーにお願いでもして……」
「アーシア、何処にいるんだ!?」
「どうしたの、ゼノヴィア」


 会話を打ち消すほどの大声にリアスがゼノヴィアにどうしたのかと尋ねた。


「アーシアの姿が見えないんだ!さっきまで確かにいたはずなのに……」
「絶霧対策の人工神器だってアザゼル先生から借りていたのよ。でも反応は無かったわ」
「そんな……」


 ゼノヴィアはアーシアの姿が見えないと叫びイリナは対策していたが反応は無かったと話す。それを聞いたリアスは敵に一杯食わされたかと唇を噛んだ。


「ルフェイ、今すぐ魔法でアーシアの居場所を……!?ッ避けて!!」


 なにか殺気を感じたリアスは上を見ると複数の砲弾がこちらに飛んできたのが見えた。リアスは直ぐに回避の指示を出すと眷属たちはその場から離れる。


 そして1秒遅れて地面を抉るほどの大きな爆発が巻き起こる、リアスの素早い指示で怪我人はいなかった。


「敵襲!?さっきの砲弾の数を見ると結構な数がいそうね、皆気を付けて!」


 リアス達は警戒して辺りを見渡すが敵の姿は見えなかった。


「おかしいわね、さっきの砲撃は何処から……」
「部長、下です!」


 首を傾げるリアスだったが仙術で地面から何かが迫っていたのを感じ取った小猫の叫びと共に巨大な口が現れた。


「なっ!?」


 リアスたちは直ぐにジャンプして回避する、そして現れた大きな口は地面をまるでシャベルで掘ったかのように穴を開けてしまった。


「一体何者なの!?」
「ほう、私の顔をもう忘れてしまったのかね?」
「えっ?」


 聞き覚えのある声にリアスはまさかと思いその名前を叫んだ。


「シャルバ・ベルゼブブ!?」
「ご名答だ。久しいな、リアス・グレモリー」


 リアスはまさかと思ったが本当にシャルバだったと分かり更に驚いた。なぜなら彼の見た目が変わっていたからだ。


 まず体格がかなり大きくなっていた、そして右手に剣、左手に大砲が装着されていた。そして足はブースターのようになっていて背中にはジェット機のような翼が生えていた。


 そして何より顎が機械化されていて結構なイケメンだったのが見る影もなくなっていた。


 もはや機械の怪獣と化したシャルバにリアスは開いた口がふさがらなかった。


「本当にシャルバなの?その姿は一体……」
「これぞベルゼブブが受け持つ『暴食』の力!食べたものを私の体に取り込ませることができるようになったのだ!名付けて『暴食からの創生』!今私は武器と一体化して無敵と化したのだ!」
「グルメ細胞の力ね……!?」


 異常な姿になったシャルバの姿にリアスはグルメ細胞の力でこうなったのかと判断した。


「サーゼクスを血祭りにする前にまず貴様らから片づけてやる!覚悟しろ!」
「油断したな!」
「なに!?」


 だが既に背後に回り込んでいた祐斗とゼノヴィアが不意打ちで斬りかかった。普通ならこれで決まるはずだが……


「うわっ!?」
「弾かれた!?」


 背中に生えていたジェット機のような翼がまるでプロペラのように変化して二人の剣を弾いてしまった。


「甘いわ!」


 そして二人をなんと大きくなった口で食べてしまった。まるで一気食いするかのように一瞬の出来事だった。


「なあっ!?」
「そんな……祐斗君!ゼノヴィアちゃん!?」


 まさか人間が食べられるとは思っていなかったリアスと朱乃は絶句してしまった。


「ふ、二人を返してください!」
「許しません!」


 小猫とギャスパーが二人で襲い掛かるがシャルバは右手をなんとデュランダルに、左手を和道一文字にして二人を斬り付けた。


「牙突!」
「うわぁぁぁっ!?」
「月牙天衝!」
「きゃああっ!?」


 シャルバはギャスパーに和道一文字で高速の突きを、そして小猫にデュランダルから放たれた斬撃を繰り出した。


 世界が二人を攻撃からガードしてくれたがそのまま吹き飛ばされて地面に叩きつけられる。するとスタンドのダメージがギャスパーにも返ってしまい頭から血が出た。


「小猫!ギャスパー!」
「そんな……あれって祐斗君達の技……!?」
「言ったはずだ、私は食べたものを自由に取り込めると……今食った奴らの技も武器も既に私の物だ!」


 リアスが二人に駆け寄りイリナは先程シャルバが使った技が祐斗とゼノヴィアの技だと分かって驚いた。


 そんなイリナにシャルバは得意げにそう答えた。


「さあ、貴様らも私の血肉にしてやろう!貴様らの大好きな弱肉強食の始まりだ!」
「絶対に許さないわ、シャルバ!二人を返しなさい!」


 仲間を食われて怒りに燃えるリアス達とそれを見てあざ笑うシャルバ、3つの戦いが始まろうとしていた。
  
 

 
後書き
 イッセーだ。あちこちで戦いが繰り広げられているな、でも俺はアーシアを助けに行かないといけない、ここは仲間達を信じて前に進むしかない。


 第二の刺客は猛獣か、幸いグルメ界の奴はいないが人間界でもかなり強い奴らが揃ってるな。でも負けるわけにはいかない、必ずアーシアを取り戻す!


 次回第135話『戦いは続く!イッセーを狙う執念の刺客!』で会おうな。


 次回も美味しくいただきます! 
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